八咫の聖人〜最強のはぐれ悪魔祓い〜   作:赤嶺

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第五話

はぐれ5

 

イッセーはいまとてつもなく焦っていた。

 

突然現れた美青年が自分を殺しに来たといったのだ。

 

幸いまだ自分が『赤龍帝』と気づいていないようで少しホッとしているがいつバレるかわからない。

 

それにイッセーや木場といった他の眷属たちはゼノヴィアとイリナがいった名前に驚愕していた。

 

『ルシウス』

 

と言う名前に。

 

眷属になって間もない匙もソーナから聞いていたのだ。

 

『緋髪王子(スカーレットプリンス)』

 

白銀の髪を持つ彼につけられた蔑称。

 

相手を殺すときに浴びる血に染まった髪をみてつけられたものであり、悪魔の恐怖する災厄の名の一つ。

 

ただ女性たちには別の意味でも知られている。

 

血に染まった紅い髪から覗く微笑の浮かんだ顔は冥界のどの貴族令息よりも美しく王子のようだと。

 

だか、やはりその名は恐怖をもたらすことが多い。

 

悪魔と堕天使を見れば即座に殺しにくる戦闘狂でその力は最上級悪魔クラス。

 

あと10年もしないうちに魔王クラスになるのではないかと恐れられている人間の怪物。

 

そんなのが目の前にいる。

 

匙はもう生きてソーナのところに帰ることは諦めた。

 

「ルシウス、なんていったのかな?私には赤龍帝を殺しに来たと聞こえたんだが」

「そうよ。どうしてイッセーくんを殺しに来たの?」

 

イリナがイッセーの名前を出した途端ルシウスは堕天使や悪魔を殺すときに見せる冷酷な笑みを浮かべ、イッセーは顔を青くしながらイリナを弱々しく「どうして俺の名前を言うんだ……」と睨みつける。

 

「それはね。僕の使い魔が教えてくれたんだ。赤龍帝兵藤一誠がアーシアの服を無理矢理破って襲ったって」

 

それを聞いたゼノヴィアとイリナはなら仕方ないと納得する。

 

匙はなんてことを!とイッセーを睨みつけ、小猫はゼノヴィアたちと同じように納得し、木場は苦笑いした。

 

だがそれにイッセーは黙っていない。

 

このままだと滅せられてしまうから。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!確かに破いてしまったけど、あれは不可抗力というか」

 

イッセーは誤解を解こうと前に出た。

 

イッセーの顔を知らないルシウスの前に。

 

顔を知られていないのだからひょっとしたらこれから起こる惨劇にあわないという可能性も僅かながらに存在したというのに。

 

「うん?たとえ不可抗力でもアーシアの服を破いたんだよね?だったら殺しても問題なくない?」

 

「いやいや!超問題ですよ!俺はアーシアの服を破るつもりではなくイリナのを破るつもりだったのを間違えただけなんですから!」

 

イッセーは焦って自分が何をいっているのかわからない。

 

もし正常に働いていたら言うはずのないことまで口走ったイッセーはルシウスの『殺る気』をさらに上げさせる。

 

「へぇ。アーシアを狙ったんじゃなくてイリナを狙ったところを間違えてアーシアの服を破いてしまったと?」

 

「そ、そうなんですよ!」

 

ルシウスは「そっか。アーシアだけじゃなくてイリナも」とつぶやき、そのつぶやきが聞こえていないイッセーはルシウスの表情の変化にこれはもしかして助かるのでは、と密かに思い始める。

 

ゼノヴィアとイリナ、その他の者が見れば明らかにキレているとわかるルシウスだが、イッセーは気づけない。

 

ルシウスが放つ殺気が増し、それをイッセーにぶつける。

 

周りにいる者でも顔を青くするレベルなのにイッセーはそれを真正面からピンポイントに受けた。

 

体が震えだし脂汗が全身から流れる。

 

これほどまでの殺気をイッセーはおろかこの場にいる全員受けたことがなかった。

 

現に近くにいた一般人たちは泡を吹いて倒れている。

 

イッセーは肌で感じる。

 

絶対強者の存在を。

 

ああ、これならあのライザーが可愛く見えるとそう素直に思えるほどの存在感。

 

それはこの場にいないリアスやソーナといった実力者たちも感知した。

 

なんだこの気配は、と。

 

「ねえ。そういえば聞いてなかったんだけど。キミ、名前は?」

 

普段見せない笑顔でイッセーに問いかけるルシウス。

 

「……ひょ、兵藤、一誠……」

 

苦しそうにしながら、答えるイッセー。

 

「そっか、キミが兵藤一誠か」

 

イッセーの名前を聞いたルシウスはイッセーから目を離しイリナを見る。

 

だが、殺気は相変わらずイッセーを向いていた。

 

「イリナとゼノヴィアは大丈夫?何か変なことされてない?」

 

「だ、大丈夫よ!イッセーくん私よりずっと弱いし!」

 

「私もだ。もしされたとしてらこの剣で滅している」

 

「そっか。それならいいんだけど」

 

普段のイッセーが聞くと落ち込むか怒り出すかだが、いまはその余裕がない。

 

ちょっとでも気を抜くと気絶してしまいそうなほど濃厚な殺気で動くこともできないでいた。

 

「それでイリナとゼノヴィアはどうしてこんなとこにいるの?エクスカリバーも装備して?」

 

ルシウスは気になっていた。

 

教会内でもそこそこの力を持っていた元部下の2人がわざわざエクスカリバーを持ち出してこんな遠方の島国に来ていたから。

 

「それは教会から──」

 

「ああ、そういえばエクスカリバーがコカビエルに奪われたんだったね。2人は取り返しに来たんだったかな」

 

ルシウスは思い出したようにいった。

 

「どうして知ってるの!?他勢力に知られないよう極秘だったのに!」

 

「僕には優秀な使い魔がいるからね。それにしても教会のジジイたちも酷いことする。2人がコカビエルの剣を交えて生きていられるはずがないのに」

 

ルシウスは「捨て駒にでもするつもりなのかな?」と酷いことをあっさりといった。

 

「そ、それはやってみないとわからないだろう⁉︎」

 

「そうよ!まだ死ぬかは決まってないわ!」

 

「いいや、絶対死ぬよ」

 

わかるかい?

 

「キミたち2人は僕を相手に2人掛かりでも勝てなかったんだよ?コカビエルは僕と同等、もしくはそれ以上だ」

 

だから

 

「キミたちがコカビエルと戦ったら絶対に勝てない」

 

ルシウスはハッキリと告げる。

 

「で、でも……」

 

「私たちはやらないといけないんだ!」

 

「どうして?それが主のためだから?」

 

「そうよ」

 

イリナに同調するようにゼノヴィアも頷く。

 

「……そうだったね。2人とも根っからの信者だったね」

 

ルシウスは呆れたようにつぶやく。

 

それにより周りに張り詰めていた殺気が消え去りイッセーはようやく解放されて気が抜けたのか地面に手を着く。

 

木場たちも冷や汗が止まり、強張った顔が元に戻る。

 

「何を言うルシウス。お前も私たち同様信者だろう?」

 

ゼノヴィアはルシウスの先ほどの発言に眉を顰める。

 

「違うよ。僕はもう神を信じない」

 

その発言にその場の全員が目を丸くする。

 

「どうして!?この前まであんなにも主のために頑張ってたのに?」

 

イリナが先ほどの発言はなぜかと問う。

 

「それは僕の両親が死んだから。僕の兄妹が教会に殺されたから。そして何よりアーシアを追放したからさ」

 

だから、僕は

 

「神なんて嫌いだ」

 

「……そうか。なら私たちはルシウス、お前も断罪しないといけないな」

 

「僕をキミたちが?それもできないと思うよ?」

 

「……やってみないとわからないわ。私たちもあなたが抜けてから頑張ったんだから!」

 

イッセーたちは突然始まった悪魔祓いたちの戦いに驚く。

 

先ほどのまではイッセー殺すという状況だったにもかかわらず、いまは全く別のはぐれとなった元悪魔祓いとエクスカリバー使いの戦いになっているんだから。

 

イリナとゼノヴィアがエクスカリバーをルシウスに向ける。

 

ルシウスはそうか、と小さく声を出すと胸の前に祈るように手を結ぶ。

 

「親愛なるガブリエルさま。どうか僕に力を」

 

ルシウスがガブリエルに祈りを捧げるとルシウスの足元に黒い穴が出現する。

 

そこから生えてくるように一本の剣が現れた。

 

ルシウスはそれを手に取り穴から抜き放つ。

 

抜き放たれた瞬間、イッセーたち悪魔に恐怖、戦慄、畏怖といった様々な負が体を支配する。

 

なんだ、あれは!?

 

イッセーはそれを口に出そうとするが声がでない。

 

足が震え、立つことも話すこともできなくなる。

 

「『聖剣アロンダイト』最も堅いただそれだけの聖剣だ。──ガブリエルさま、我が勝利をあなたに捧げます」

 

ルシウスがアロンダイトを掲げガブリエルに誓いを立てる。

 

それにゼノヴィアとイリナ、イッセーたちは驚く。

 

さっき神を信じないとかいってたのになぜ?っと全員が思った。

 

「……おい、ルシウス」

 

「ん?なにかな?」

 

「さっき神を信じないとか嫌いとかいってたのになぜ祈りを捧げる?」

 

ルシウスは意味がわからないのか首を傾げる。

 

「そうだよ。僕は神が嫌いだ。でもガブリエルさまは別に嫌ってないし、むしろ敬愛し信仰してる」

 

「なんでガブリエルさま?主と何が違うの?」

 

「そうだ。主は嫌いなのにガブリエルは敬愛してるとはどうゆうことだ」

 

「言葉どおりだけど?」

 

ルシウスはわけがわからないと言いたそうにし、それはゼノヴィアたちも同じだった。

 

「主がお前の大切な人たちを救わなかったから嫌いになったのはわかる。だが、主と同じでお前を救わなかったガブリエルは敬愛しているとはどうゆうことだと聞いてるんだ」

 

「ああ、そのことか」

 

ルシウスはやっと納得がいったと頷きいった。

 

「ガブリエルさまは僕のお母さんなんだ」

 

ルシウスの発言に何度目かわからない驚愕を全員する。

 

また、何処かの天使がその発言にを聞いて喜ぶと同時に落ち込んだ。

 

「敬愛してくれるのは嬉しいけど、お母さん……私がこんなに想ってるのに……」

 

ルシウスのことが好きだった天使は彼から向けられる感情が親に対するものだとしって丸3日ほど寝込んだのだった。

 

「ゼノヴィアたちにはいってなかったけど僕を育ててくれたのはガブリエルさまなんだ。アーシアを除けば最も好きといっていい」

 

この発言にある天使は落ち込んでいて聞こえていない。

 

聞こえていたら飛び上がって喜んでいただろう。

 

「……そうか。なら私たちと戦う必要はないな」

 

ゼノヴィアとイリナはエクスカリバーをしまう。

 

「どうして?」

 

ルシウスはどうしてやめるのか問う。

 

「ルシウスくんがガブリエルさまを信仰しているからだよ。主じゃないけど信仰の対象だしね」

 

「そういうことだ」

 

「そっか。いや、よかったよ。もしあのままだったら2人を殺してたところだった」

 

ルシウスの発言にやめてよかったとゼノヴィアとイリナは思う。

 

先ほどはああいったがルシウスに勝てるとは微塵も考えられなかったのだ。

 

ゼノヴィアとイリナはルシウスの本気の姿をみたことがなかったから。

 

「さてと、じゃあそろそろ僕は目的を果たそうかな」

 

戦いが始まることなく終わったことにほっとしたのも束の間、再びイッセーに殺気を放つ。

 

無事解放されたと思っていたイッセーは腰が抜けていて動くことができないでいた。

 

「ちょ、待ってくれ!謝ります!謝りますから!」

 

「誰に?」

 

「アーシアにです。それにイリナと小猫ちゃんにも」

 

小猫ちゃんと言うのを聞いて、ああ、となにか思い出す。

 

「そういえば、妹ちゃんも襲われたんだったね」

 

「妹ちゃん?」

 

イッセーはルシウスの妹ちゃんと言うのが誰かわからずつぶやく。

 

「まあ、謝るっていってるし許してやるかな」

 

「っ!ありがとうございます!」

 

ルシウスが許してくれたことにイッセーは土下座をして頭を下げる。

 

よかった。

 

これで死なずに済む。

 

まだ、ハーレム王になれるチャンスが!

 

と喜ぶがルシウスがそこに絶望を告げた。

 

「──半殺し(・・・)で」

 

「え?」

 

その言葉を理解できなかったイッセーはすっとんきょうな声を上げた。

 

「だから半殺しで許すよ。そうだね、とりあえず四肢を切り落とそうか」

 

ルシウスはアロンダイトを振り上げイッセーの右手に向け振り下ろそうとする。

 

それを慌ててイッセーが止めようとする。

 

「ダアァァァ!ま、待ってください!え?四肢を切り落とす?それって両手と両足がなくなるってことですよね?」

 

「うん。そうだね」

 

ルシウスはなにいってんの?とイッセーにかえす。

 

「つまり、それだと俺がハーレム王になれなくなるじゃないですか!?」

 

「どうして?」

 

「だって手と足がない人を好きになったりします?」

 

「うーん?いるんじゃない?少しは」

 

「いいや、いない!いないんですよ!俺はこのまま手と足がなくなったらハーレム王になれなくなってしまうんですよ!」

 

「じゃあ、介護してもらえば?お金をだせばきれいな人にいっぱい介護してもらえると思うよ?」

 

「ッ!?……なるほど、それはそれでってねぇよ!それだとおっぱい触れないじゃないか!?俺の目指してるハーレムとも違う!」

 

「そっか。それは残念だったね」

 

ルシウスはイッセーの言ってることを軽く受け流し、再び右手に向け振り下ろす。

 

 

 

だが、止められた。

 

横から飛んで来た、魔力弾によって。

 

「ぶ、部長っ!」

 

イッセーはリアスの登場に笑顔を見せまだ死んでないことを喜ぶ。

 

ルシウスは邪魔をしたリアスをただじっと見つめる。

 

「これはどういう状況かしら?」

 

リアスのうしろには魔方陣がさらに二つ現れ、ひとつはグレモリーの紋章が描かれた魔方陣。

 

もうひとつシトリーの紋章が描かれた魔方陣だった。

 

魔方陣の中から現れたのは4人。

 

ソーナ・シトリーにソーナの『女王(クイーン)』新羅椿姫、リアスの『女王』姫島朱乃、そしてアーシアだった。

 

ルシウスはアーシアを見た途端、アロンダイトを放り投げアーシアの元に走り出す。

 

「アーシアァァァ!」

 

「え?…………ルシウス?」

 

ルシウスはアーシアに抱きつき頬ずりをする。

 

「アーシア!ずっと会いたかった」

 

「ルシウス、どうしてここに?」

 

アーシアはなぜルシウスがここにいるのかわからずなされるがままになる。

 

それをみたリアスとソーナはイッセーたちをみて、

 

「どう言うことか説明してくれるかしら?」

 

 

 

どうやらイッセーの安寧はまだ先らしい。

 

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