はぐれ6
私はいま、とても混乱しています。
先ほどまでイッセーさんの家で部長さんと2人でお母さまのお手伝いをしていました。
すると、急に部長さんが動きを止め何か嫌なことでも起きたような表情をしたのです。
それからボソボソといいながら何かを考えていました。
ようやく戻ってくるとお母さまに用事ができたのでまたあとでお手伝いします、といって私を連れ、イッセーさんのお部屋にいきました。
そこに朱乃さんがやって来て、何やら話があるらしくイッセーさんたちが来るのを待っていたのですが、全然来ません。
部長さんはため息をついて、私と朱乃さんの2人に話し始めました。
なんでも町に放っていた使い魔が何者かによって殺されたらしく、それを調査するということです。
部長が話している途中に会長さんからも連絡が来たので何者かがこの地にやって来ているのは間違いないとのこと。
ゼノヴィアさんたちではないかと考えもしましたが、どうやら違うらしいです。
2人とも互いに無干渉でいたがってましたし、私たちに手を出すことはないからだそうです。
とりあえず、使い魔が殺されたところに行くために魔方陣を展開しました。
場所はここから少し離れたところにあるファミレス前。
人通りの多い場所です。
魔方陣が完成し、部長さんが先に向かいます。
それに続いて朱乃さん、私と転移していきました。
転移した先ではどうやら会長さんも転移して来たようで隣に立っていました。
ドキッとしたのは内緒です。
突然隣に人が現れるのですから仕方ないですよね?
改めて前を向くと、イッセーさんが地面に正座し部長さんをみていて、その隣に聖剣を持ったルシウス。
そこなら少し離れたところにゼノヴィアにイリナさん、木場さんと小猫さん、えっと……そう、匙さんがいました。
すろと、どこからか私の名前を呼ぶ声が聞こえて来ました。
「アーシアァァァ!」
その声はどこか懐かしくて。
声のした方を向けばそこには。
ルシウスが私に走って来ました。
「え?……ルシウス?」
どうしてルシウスがここに?
そんなことを考えている間にルシウスは私を抱きしめ耳元で囁くように
「アーシア、ずっと会いたかった」
そういってきました。
鼓動が早くなってきて頬が赤くなるのがわかりました。
久しぶりのハグです。
ルシウスの胸の中は前と変わらず心地よかったです。
でも、聞かなければいけないことがあります。
「ルシウス、どうしてここに?」
どうしてここにいるかです。
ゼノヴィアさんたちの話ではルシウスは教会を離れ私を追いかけていったとのこと。
だとすればルシウスがここにいるのは私がいるから?
そうだといいなぁ。
それならこれからもずっと一緒にいられるかもしれないから。
「赤龍帝がアーシアを穢したって聞いたから」
「イッセーさんが?」
「うん。服をビリビリに破った聞いたよ」
私はそのときのことを思い出して顔を赤くなった。
「そ、それは本当ですけど、穢されてなんかいませんよ?」
「それならいいんだけど。アーシアが嫌な思いをしてるなら僕にいって。赤龍帝なんか殺してあげるから」
ルシウスは笑顔でそう私に告げる。
「こ、殺すなんてダメですよ!そんなことさせません!」
私はルシウスの顔をみて言う。
それをみてルシウスはまた笑う。
「ど、どうして笑うんですか!」
「アーシアが可愛すぎてね」
「あうぅ……」
私はルシウスから顔をそらす。
その笑顔で言うの反則ですよぉ。
照れた私はルシウスの顔が見れない。
ルシウスは私の首筋に顔をうずめて。
「久しぶりのアーシアの匂い。……落ち着くなぁ」
私の匂いを嗅いだ。
「に、匂いなんて嗅がないでくださいぃ……っ!」
そういえば昔から私をハグしては私の匂いを嗅いでた気がします。
匂いフェチというやつでしょうか?
嬉しいような嫌なようなよくわからないです。
「……よし!これでもう大丈夫!」
ルシウスが私から離れて言いました。
それに少し残念に感じます。
「何かするんですか?」
私の疑問にルシウスは笑顔で答えました。
「うん。ゴミ処理をね」
ゴミ処理?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
イッセーはいま、とてつもない恐怖を胸に抱いていた。
うしろには殺気を放つルシウス。
前には先ほどまでの出来事を聞いて黙り込んだリアス。横には誰もいず、リアスのななめうしろに控えている朱乃は、うふふ、とイッセーをみて笑っている。
「(こんなときにドS発動しないでください!助けてくださいぃ!)」
イッセーはすがるように朱乃を見るが朱乃は頬を赤くしてこちらに近づこうとしない。
楽しんでいるのだ。
イッセーの反応を。
朱乃は究極のS。
前にはぐれ悪魔を殺さないよう手加減しながら攻撃し続けるほどのSっぷりで、ある意味イッセー級の変態である。
イッセーはそんな朱乃をわかっていながら助けを求めるが、助けてくれない。
イッセーは顔を絶望に染める。
チラリと匙の方を見ると匙もイッセーと同じく正座をし、ソーナに説教を受けていた。
「……なるほどね。祐斗を助けるためにエクスカリバー使いに接触し、協力を申し出たわけね?」
「……はい。木場の復讐を成し遂げれば部長の元に戻ってくると思って」
「私も祐斗には離れて欲しくない。けど相手はコカビエルよ?私たちとは違う、本物の化け物。それを相手にできるの?」
「……俺はコカビエルの強さは知りません。戦えば死ぬというのはわかります。でも、木場にエクスカリバーを破壊して欲しいんです!あいつにはそれをしなければならない理由があります。だから──」
「あなたたちがやろうとしたことによって悪魔の世界に影響を与えるかもしれないのよ?」
リアスはイッセーの言葉にかぶせていう。
「うっ、それは……」
「はぁ、考えてなかったのね。小猫、あなたも同じ?」
「……はい。……祐斗先輩がいなくなるのは嫌です……」
小猫はうつむきながら自噴の思いを口にする。
「……はぁ。これからは何かするとき、私に声をかけてからなさい」
「はい。すみません、部長」
「……ゴメンなさい、部長」
ベシッ!ベシッ!
イッセーは音がなっているほうへ顔を向ける。
そこには匙が会長に知りを叩かれていた。
手には魔力がこもっていてかなり痛そうになっている。
「さて、あなたは一体何者かしら?」
説教を終えたリアスはイッセーのうしろに立っているルシウスを見る。
「うん?僕?」
「えぇ、あなたよ。見た感じ悪魔祓い(エクソシスト)のようだけど」
「違うよ。僕ははぐれ悪魔祓い(エクソシスト)だよ。ここにはちょっとした復讐をしに来たんだ」
リアスははぐれと聞いて疑問に思う。
はぐれならどうしてゼノヴィアたちが交戦していないのだろう、と。
そこで先ほどまでアーシアに抱きついていたのを思い出す。
リアスの脳裏にひとつの悪魔祓いの名前が浮かんだ。
「(……まさか……『聖騎士(パラディン)?)』
「あなた。まさかと思うけど、ルシウス・ランスロット?」
「そうだよ。よく知ってるね。僕はルシウス・ランスロット。よろしく」
先ほどアーシアに見せていた笑みとは違う無表情な顔で名乗るルシウス。
しかしリアスはそんなこと気にしていられない。
ルシウス・ランスロット
その名前から思い出されるのは2つ。
ひとつは彼の噂。
もうひとつは忘れ去りたい過去。
リアスは思う。
どうか覚えてません様に。
「私はリアス・グレモリー。この地を任されているものよ」
ルシウスはリアスの顔をまじまじの見つめる。
「ああ、キミがリアス・グレモリーだったんだ。大きくなったね」
その言葉にリアス以外は驚きを見せる。
悪魔側はリアスとルシウスの間になにかあるとわかったから。
ゼノヴィアとイリナはルシウスがリアスに向けて笑顔を見せたから。
リアスは苦虫を噛み潰したような顔でルシウスを見る。
「……な、なんのことかしら?私はあなたと会ったことなんかないわ」
「そうかな?僕はある気がしたんだけど。紅い髪の悪魔ってグレモリーだけじゃないの?」
それにソーナが答える。
「えぇ。そのとおりです。ところであなたはリアスとどういう関係なのですか?」
「ちょっとソーナ!」
ソーナのストレートな質問にリアスが声を上げる。
「うーん。僕の記憶に間違いがなければ、5年くらい前に1度だけ会ったことがあるくらいだよ」
「5年前?……ちょうどその時期にリアス、人間界に行きましたよね?」
「え、えぇ。行ったわ。でもこの人に会った覚えはないわ」
「私はそのときあなたに自慢されたのを覚えています。人間界でカッコいい男の子がいたと。その男の子に助けられたと」
「ゔっ。そ、それは……」
リアスは言葉を詰まられる。
ソーナはルシウスに向いて頭を下げる。
「リアスを助けていただいてありがとうございました」
「別にいいよ。S級はぐれ悪魔くらい、雑魚だしね」
ルシウスがあっさりと返したが、S級とは悪魔の上級クラス。
つまりいまのリアスやソーナと同じレベル。
それを当時12歳のルシウスがたおし、なおかつ雑魚扱いしたことに悪魔たちは驚愕する。
「でも、あのときの悪魔がここまで大きくなるなんて。あのとき──」
「ダ、ダメーーーー!!」
ルシウスの言葉にかぶせ、リアスが顔を真っ赤にしながら叫ぶ。
「怖くておもらし(・・・・)してた女の子が町を任されるなんて」
ルシウスの言葉に。
リアスは羞恥心で涙を流し、ほかの者は呆然とする。
「あれ?言っちゃいけないことだった?」
その中でルシウスただひとり首を傾げていた。