八咫の聖人〜最強のはぐれ悪魔祓い〜   作:赤嶺

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第七話

はぐれ7

 

ファミレスの前の道中に学生服を着た悪魔たち9人とここ日本では浮いてしまうだろう司祭服を着た青年、白いローブを着た2人の少女がいた。

 

紅い髪をした女性が座り込んで涙を流し、周りのものたちはその原因となった青年を睨む。

 

原因となった青年──ルシウスはというと困った顔をして頭を掻いていた。

 

「あぁ〜、その、ごめんね。悪気があったわけじゃないけど、どうしてもさ、そのときの印象が大きくて」

 

「あのときのことは忘れてくれるっていったじゃない!」

 

涙を流す女性──リアスはルシウスを涙目で睨みつける。

 

だが、泣いているため全くといっていいほど怖くはなく、むしろとても可愛らしい。

 

その場にいるほとんどの者はそんなリアスに頬を緩ませる。

 

イッセーもリアスをみて顔を赤くして見惚れていた。

 

「いやー、さっきまでは忘れてたんだけど、キミの顔とその紅い髪をみたら思い出しちゃって」

 

「うぅ……」

 

「そんなに気にしなくていいと思うよ?誰でも最初はああなるって。しかも初めて対峙はぐれ悪魔が上級クラスなら尚更だよ」

 

「……そういうあなたも、したの?……その、お漏らし……?」

 

リアスはルシウスの慰めを聞き恥ずかしそうに問う。

 

「いいや、まったく」

 

ルシウスはあっさりと答える。

 

その答えを聞いてリアスはさらに沈んでいき、他のものたちはさっきの返答に再びルシウスを睨んだ。

 

そこは嘘でも同じといっとけよ、と。

 

「まあ、それは昔のことだしいまはキミも立派に町の管理者してるんだ。そんなお漏らしのことは気にせず頑張りなよ、リアス・グレモリー」

 

その言葉に「お前がいったからこうなったんだろうが!」と声が全員の喉元まででかかった。

 

しかし、言えない。

 

言ったら、ルシウスがさらにリアスを辱める発言をするかもしれないから。

 

場が静かになって数分。

 

ようやくリアスが復活し、ルシウスを見る。

 

若干頬が赤らんでいるのだが。

 

「それで、さっきここには復讐をしに来たと言っていたわね。それはどういうことかしら?」

 

「え?それって言ったほうがいいの?僕は必要性を感じないんだけど?」

 

「ここは私が任されてる町よ。そこで何かが起こるのなら黙っているわけにはいかない。それにこのタイミングでなんて……」

 

「バルパー・ガリレイ……ですか?」

 

アーシアはルシウスの復讐の相手であろう男の名を口にする。

 

それに聞いたルシウス以外の全員が表情を変えた。

 

バルパー・ガリレイ

 

ついさっき出てきた名前だ。

 

それを聞いたイッセーは木場を見る。

 

何かつながりがあるかもしれないと思って。

 

それは当たっていた。

 

他の皆は驚いたり、首を傾げているのに対し、木場だけはまるで昔の知り合いに会えたような、懐かしそうな表情をしていた。

 

それを見たイッセーはルシウスと木場の間に何かあると確信する。

 

そしてそれはイッセーと同じく木場を見ていたリアス、朱乃、ソーナも同じく確信した。

 

「あれ?どうして知ってるの?言ったっけ?僕?」

 

ルシウスはアーシアの口からバルパーの名前が出て来たことに意外で驚く。

 

「はい。まだルシウスが『神の使徒(ヘヴン・アポストロ)』に所属する前に話してくれました」

 

「あぁ〜、なにとなく言った気がする。じゃあいっか。なんでか知らないけど皆バルパーの名前知ってるみたいだし」

 

リアス、朱乃、ソーナ、椿姫の4人は知らないようで小猫が教えた。

 

「確かに僕は復讐しにバルパーがいると情報を耳にしたこの地に来た。ずっと探してたからね。最後のひとり(・・・・・・)を」

 

「どうしてあなたがバルパーに復讐したがるの?祐斗とは違って聖剣計画の被験者ではないはずよね?それに最後の1人って?」

 

リアスの問いにルシウスの瞳に憎悪の炎が宿る。

 

「祐斗ってのが誰かは知らないしキミの言うとおり僕は被験者でもない。でも、アイツはルシアと兄さんの仇なんだ。だから探し出して殺す。最後の1人ってのはあの計画の関係者が残すとこバルパーだけってこと」

 

関係者を殺して来たといったルシウスにアーシアは悲しそうな顔をする。

 

「……やっぱり。ルシウス君なんだね?覚えてないかい?僕を」

 

ルシウスの答えに木場は声をかける。

 

「ん〜」

 

ルシウスは木場の顔をじっと見る。

 

それから何か思い出したのか、左の手のひらを右手の拳でポンッとたたく。

 

「思い出した。キミはアレだね。兄さんの後ろに張り付いていた……ゲイ……だっけ?」

 

「違うよ!ほら、一緒にエリーザさんから剣を教えてもらったじゃないか!」

 

不名誉な名前に思わず木場は大声をあげて否定する。

 

それも当然だろう。

 

自分の名前をゲイとされ、あの男色家たちの同類にされかけたのだから。

 

「一緒に?うーん、もしかして……エル?」

 

聞いたことのない名前にイッセーたちは首を傾げた。

 

しかし木場は嬉しそうにうなずく。

 

「そうだよ!よかった、まだ昔の知り合いが生きててくれて……」

 

「僕としてもよかったよ。あの実験の生存者はいないと思ってたから。でも──」

 

しかし、ルシウスの口から紡がれた言葉は木場の心に亀裂をいれる。

 

「まだ、エリーザのことを信じてるの?」

 

「……どういう意味かな?彼女は僕とキミ、そしてルシアちゃんやルシエルさん、他の皆の剣の師だ。信頼しないはずがないよ」

 

ルシウスは木場の顔を悲しそうに見た。

 

──キミはなにも知らないんだね、エル

 

ルシウスは口だけ動かし声には出さなかった。

 

「なんでもないよ。まあリアス・グレモリー、そういうことだから。この町はちょっとだけ、荒れるよ」

 

それだけいって立ち去ろうとするルシウスをリアスは止める。

 

「待ちなさい。荒れるってなにするつもり?この町に被害を出すようならここで消すわよ?」

 

それを聞いたルシウスはリアスをバカにするように笑った。

 

「消す?キミが?僕を?」

 

「そうよ」

 

リアスの返事にルシウスは顔から表情を消した。

 

その顔を見てゼノヴィアとイリナが息を飲む。

 

「リアス・グレモリー。あまりルシウスを刺激しないほうがいい。いまのルシウスは危険だ」

 

「危険?どういうことかしら?」

 

危険と聞きリアスは聞き返す。

 

「ルシウスのあの顔は、敵を殺すときの顔よ。私たちも何度か見たことある。どれだけ敵が泣き叫ぼうが許しを乞おうがなんのためらいもなく殺す。そのときの顔。だから刺激しないで。下手したら私たちも殺されちゃう」

 

「ねえ、リアス(・・・)?」

 

「な、なに?」

 

ルシウスの表情のことを聞いたリアスはルシウスの声に思わずうわずった声をあげた。

 

「相手の力量をしっかり測ったほうがいいよ。もしそれを言われたのが僕じゃなかったらきっとキミは殺されてるよ?」

 

ルシウスは口を閉じるとともに殺気を放った。

 

イッセーに浴びせたものよりもずっと濃厚な、それこそ死を錯覚させるほどの殺気を。

 

殺気を浴びたリアスは顔を青ざめ、体を震わせガチガチと歯がなる。

 

直接浴びたわけでもないものたちもその場に立ってはいられず、地面に崩れ、呼吸ができなくなる。

 

「そうだ、えぇっと、イッセー……だったかな?次、アーシアに手ぇ出したら殺すよ?」

 

ルシウスはそれだけいって去ろうとしたが途中で立ち止まり、リアスたち、というよりゼノヴィアとイリナを見た。

 

「そうだった。コカビエルと戦うときは僕を呼びなよ。助けてあげるから」

 

そう言うと今度こそ、ルシウスが立ち去った。

 

 

 

「ひ、久々に受けたな。あの殺気」

 

「そうね。本当あれで自分に向けられてないなんて恐ろしいわ。リアスさん大丈夫かしら?」

 

ゼノヴィアとイリナはルシウスがいなくなったことで口を開くが、他のものはまだルシウスの殺気に飲まれているのか声を上げない。

 

それから最初に立ち直ったのはソーナだった。

 

「……あれが、『緋髪王子(スカーレットプリンス)』ですか……」

 

「……会長。念のために魔王様方に連絡しておいたほうがよろしいのでは?」

 

ソーナは少し考えるように俯くがすぐに顔を上げる。

 

「そうね、正直したくないけどコカビエルに『緋髪王子(スカーレットプリンス)』までとなるとしたほうがいいでしょう。……リアス、あなたも連絡をとっておいたほうがいいですよ」

 

ソーナはリアスのほうを向くとリアスはいまだに震えがとまっておらず、顔も青ざめたままだ。

 

「……あ、あれは、違う。あのときのあの子じゃ……。さっきのは、まるで……」

 

「悪魔のようだ、ですか?」

 

リアスのうわごとのような声に朱乃がつなげた。

 

「大丈夫ですわ。私が、イッセー君たちが一緒にいますわ。だから、落ち着いてリアス」

 

リアスを前から抱きしめる。

 

「そ、そうですよ!こ、今度部長に何かしたらあの野郎は俺がぶん殴ってやりますから!」

 

「……部長、私たちがついてます」

 

「ぶ、部長さん!私がちゃんと怒ってきますから。元気だしてください!ルシウスは私の言うことだけは聞いてくれますし、今度謝らせますから」

 

リアスにイッセーたちが声をかけていく中木場だけは声をかけない。

 

イッセーは木場にもリアスに声をかけろと木場のいるほうに顔を向けると、そこには誰もいなかった。

 

「あれ?木場はどこいったんだ?」

 

「キミたちの騎士ならルシウスを追いかけていったよ」

 

イッセーの疑問に答えたのはゼノヴィアだった。

 

「なんだって⁉︎木場の奴部長に声もかけないでなにやってんだ!」

 

イッセーは木場に対し怒りを感じるた。

 

「さて、私たちもそろそろ行くよ。だいぶこの場にとどまってしまった」

 

「それじゃあね、イッセーくん」

 

イリナはイッセーに軽く手を振りゼノヴィアとともに去っていく。

 

ソーナたちもリアスに声を掛けたあと魔方陣で生徒会室に帰っていった。

 

イッセーもとりあえずここからどこうとリアスたちの元に戻り、イッセーの家に帰った。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「殺さなくてよかったの?」

 

ルシウスのうしろから突然声が聞こえた。

 

「黒姉。別にいいよ。忠告はしたし、何より彼は『赤龍帝』だ。ここで手を出すといつ覚醒するかわからないから。いまはアーシアを預けておくよ。少なくともバルパーを殺すまではね。それよりそっちもよかったの?妹ちゃんと話すいい機会だったんじゃないの?」

 

「別にいいにゃん。まだ機会はあるし、いまはルシウスの復讐のほうが大事だから」

 

「そっか。ありがと」

 

「にゃははー、私はルシウスのお姉ちゃんだから気にすることないにゃん♪」

 

「うん、そうだね。でもありがとう」

 

ルシウスと黒歌がホテルに向かって歩いていると、うしろから声がした。

 

「待ってくれ!僕も、僕も君の復讐に協力したい!」

 

ルシウスと黒歌が振り返るとそこには木場が立っていた。

 

くるしそうな顔で。

 

悲しそうな顔で。

 

憎悪に満ちた顔で。

 

ルシウスはその顔を見たことがあった。

 

それは、毎日毎日に見た鏡に映った自分の顔。

 

それで悟る。

 

彼も僕と同じで復讐者なのだと。

 

だから聞く。

 

あえて。

 

その思いを聞きたくて。

 

「それは、どうして?」

 

『エル』は叫び声に憎悪を乗せて言った。

 

「僕が、僕の同志たちを殺した奴らを、エクスカリバーを、バルパーを壊したいから!あいつらのせいで僕よりもずっと生きたかった子が死んだ!僕よりも夢を持った子が死んだ!許せるわけがない!!だから、壊す!全てを!そのためにはルシウス(・・・・)!キミの力が必要だ!だから──」

 

そこまで聞いてルシウスは木場の言葉を止めた。

 

ここまで聞いたらわかったから。

 

エルの思いが。

 

僕と同じくらいに大きいことが。

 

だから

 

「いいよ」

 

手を差し出す。

 

「着いて来なよ」

 

笑顔で。

 

「僕たち(・・)の復讐をはじめよう」

 

そう言った。

 

それを聞いた木場は涙を流して。

 

「ありがとう」

 

手を取った。

 

 

 

 

 

 

 

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