Fragment memory  一話 「あの日」   作:影山兵長

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第1話

…もしも、当たり前の日常がある日突然 変わってしまったとしたならどうするだろうか?

 

目の前にあった幸せが一瞬で消えてしまったなら、耐えられるだろうか…?

 

こんなことを疑問に思う俺にも当たり前の日常がある。

否、あったと言ったほうが正確だろうか。

 

少なくとも俺は幸せだった。

 

あの日が来るまでは……

 

 

 

 

ピピピピピピピ…

 

「ん…もう朝か…。」

いつもと変わらない朝が始まり、部屋に目覚まし時計のアラームが鳴り響く。

 

俺は目覚まし時計のアラームを止めるとベッドから体を起こす。

 

リビングに移動すると既に両親は会社で家を出た後だった。

 

テーブルの上には

「仕事に行ってくる。 朝ごはん置いておいたからちゃんと食べなさいね。」

という母からの置き手紙と朝食が置いてあった。

 

いつもと変わらない朝食風景

普段から俺が起きる時間にはもう両親は会社へ行っていることが多い

 

今日の朝食は、ごはんに味噌汁、魚とサラダだった。

 

朝食を済ませて歯を磨いていると

 

~ブーブー~

という携帯のバイブ音が鳴った。

 

「ん、メールか…。」

メールが届いたようだ。

 

メールの文章は見慣れた文だった

「おはよう! 今日はデートの日だね♪ 昨日からずっと楽しみにしてたんだ(*´∀`*)

それじゃあ、10時に待ち合わせ場所で!」

 

この文は間違いなく彼女からのものだった。

 

そう、こんな俺にも彼女が出来た

5ヶ月前、俺がずっと好きだった彼女に告白をしたところ、成功し付き合うことになったのだ。

 

彼女は可愛くて、性格も良く、学校でも評判のいい子だ。

正直それと真逆な俺がその子と付き合えたのは奇跡に等しいものだった。

 

彼女の名は春宮 恋華(はるみや れんか)。

 

俺と同い年の高校二年生だ。

あ、言い忘れていたが俺の名は鷹山 勇太(たかやま ゆうた)。

 

まぁ、他の説明は不要だろう…。

 

話が変わったが、今日はその彼女とのデートの日だった。

現在時刻は9時05分。

 

待ち合わせ時刻まで55分。

 

待ち合わせ場所までに到着するまでの時間は、約20分

 

まだ少し余裕があるが、やはり彼氏たるもの彼女よりも早く到着するべきだと思い、俺は少し早いが余裕を持って家を出ることにした。

 

 

~20分後~

俺は目的地に到着し、彼女を待っていた。

集合場所は最近建設が完全に完了したシーツリー(別名 海の塔)の前にある公園だ。

 

しばらく待っていると、見覚えのある人物が俺の前方から走ってきた。

 

「お待たせ~! 待った~?」

その人物は俺の彼女、春宮 恋華だ。

 

腕時計を見ると9時47分 待ち合わせ時刻より13分早かった。

 

「ん、いや? 俺も今来たとこ…」

 

それを聞いて彼女は

「本当? それならいいんだけど…。」

と言った。

 

さすがに

「お前より先にここに来て、ずっと待ってたんたぜ?」

なんてこと言えないだろう…。

 

「じ、じゃあ行こうか…」

俺がそう言うと

 

「う、うん!」

と彼女は笑いながら俺の手を握った。

 

少し照れくさかったが、俺と彼女は二人で公園をあとにした。

 

その後、俺たちはショッピングモールや、映画館、ゲームセンターといったデートの王道の場所に行き、一日を満喫した。

 

なんだかんだで、楽しかった一日も終わり夕方になった。

あたりも薄暗くなり、街の街灯も明かりがつき始める。

 

「今日は楽しかったね!」

と彼女は満足げに微笑んだ。

 

「そ、そっか…! それは良かった! 俺も楽しかったよ!」

俺はそう返した。

 

今日のデートは実に充実したものだった。

彼女も満足げに笑ってくれたので良かったと思う。

 

「じゃあ、そろそろ帰ろっか。」

彼女は言った。

 

「そうだな。家まで送るよ。」

夜遅くに女の子ひとりで出歩くのは危ないので俺はそう言った。

 

「けど、勇太の家から遠くなっちゃうよ?」

 

確かに、彼女と俺の家は少しばかり離れてはいたが、帰っても親は帰宅していないだろうから帰りが遅くなるということはどうということはなかった。

 

「大丈夫だよ! 一人じゃ危ないから、送るよ!」

 

俺がそう言うと彼女は

「そ、そう? じゃあ…お願いしようかな!」

と言った。

 

こうして、俺は彼女を家まで送った。

 

彼女の家に着き、彼女は

「今日はありがとうね! 楽しかった。 また、行こうね!」

と言った。

 

「おう、また行こう!」

俺はそう返した。

 

彼女は手を振ると家の中へと入っていった。

 

「さて、俺も帰るか……。」

俺は彼女の家から自宅へと戻っていった。

 

 

 

 

~翌日~

いつもと変わらないで部屋で俺は目を覚ました。

時間を見ると午前11時。

「しまった…。 こんな時間まで寝ちまってたのか…」

いつもかけているはずの目覚まし時計のアラームをかけ忘れていたようだ。

 

いつもと同じようにベッドから体を起こすとそれとほぼ同時に

ブーブーと、携帯のバイブ音が鳴った。

 

「ん、誰だ?」

携帯を開くと、クラスメイトの女子からの着信だった。

 

ピッ

電話に出ると

 

「あ、鷹宮くん!? 大変なの!」

という慌てた様子のクラスメイトの女子が大声で話しかけた来た。

 

「なんだよ…? そんなに慌てて…。」

 

そう問うと、クラスメイトの女子は必死に口調を落ち着かせてこう続けてきた。

 

「鷹宮くん、落ち着いて聞いて…。 春宮さんが…。」

 

「ん? 恋華がどうかしたのか?」

 

俺が問うと、こう答えた

 

「今朝、歩道橋から転落して、病院に運ばれたの。」

 

「え…?」

俺は耳を疑った。

昨日まで一緒にいた彼女が病院に…?

 

「待ってろ! 今行くから! どこの病院だ!?」

クラスメイトの女子から情報を聞いた後、俺はすぐさま病院へと向かった。

 

自転車をどれくらい漕ぎ続けただろうか…

時間などわからなくなるくらい無我夢中で自転車を漕いで言われた病院へと到着した。

 

受付の看護婦に恋華のいる病室の部屋番号を教えてもらい、その病室へと急いだ。

 

「ハァハァ…」

頭の中が真っ白になるくらい疲れていたが、そんなことも気にならないくらい俺は焦っていた。

 

受付の看護婦に教えてもらった病室の前に行くと、先程俺に連絡をよこしたクラスメイトの女子と恋華の母親が立っていた。

 

「あ、来た来た! 鷹宮くん! ここだよ!」

クラスメイトの女子はすぐさま俺に気づいたらしく、俺に必死の表情で手招きしている。

 

クラスメイトの女子が立っている場所へと行くと、そこには恋華がいた。

 

聞いた話によるとどうやら、意識はあるようで、会話もできるようだ。

 

 

「良かった…無事だったんだな…。」

俺は安心したせいか、ここまで忘れていた疲れが急に襲ってきた。

 

「本当に良かった…。 心配したんだぞ…?」

俺は自然と涙を流しながら恋華にそういった。

 

「そうだ恋華! 何か欲しいものはあるか? なんでも言ってくれ買ってくるからさ!

あ、病院は退屈だろうから漫画でも買ってくるか? 面白い漫画が…」

「あの……。」

 

俺が一人で一方的に話していると恋華は俺の話の途中で小さくそう呟いた。

 

「ん、どうした?」

俺が問うと恋華はこう答えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方、誰ですか……?」

 

考えてみればあの日のあの出来事が、俺当たり前が覆った悲劇の序章だった…。

 

 

 

~続~

 

 

 

 

 

 

 




~あとがき~
どうも! 今回初投稿させていただきました
影山 兵長(かげやま へいちょう)と申します。

小説は趣味程度に中学生の頃書いて以来だったので、内容が急に飛んだり、文章に誤りなどがあるかもしれませんが、そこらへんは温かい目で見ていただけると幸いです!



さて、この作品のタイトルは「Fragment memory」=「記憶の欠片」で、テーマはその名のとおり「記憶」
なのですが、もし、明日自分にとって大切な人の記憶が失くなってしまい、自分の存在を忘れてしまったとしたらどうしますか?

この作品の主人公は充実した生活を送っている(いわゆるリア充な)わけですが、この主人公がその状況に陥ったとき、初めて気づくものは何か、そして、現実とどう向き合っていくのかというのが今後の見所です!

まだ、投稿初心者でお見苦しい点も多々あるかもしれませんが、今後も読んでいただけると幸いです!
それではまた次回お会いしましょう!^^

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