IF‐もしカチューシャが逆行したら‐   作:にゃんちゅ

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初戦闘シーン。
作者が戦車に関しての知識が無さすぎて苦労した。おかしいところがあったら容赦なく指摘お願いします。


3話

「急な話ではあるが、来週に練習試合が行われることになった。相手はプラウダ高校」

 

 その突然の知らせに、知らない者は急な練習試合の知らせに驚き、また知っている者はその対戦相手の高校に驚愕した。

 

 

 

 場所は県立大洗女子学園。今年になって戦車道が復活した高校である。当然、今の段階では訓練不足、実戦経験不足というのもありただの弱小校である。

 

 

 

「どうしたの?」

 

「プラウダ高校とは……昨年の優勝校です。それまで九連覇をしていた黒森峰を阻止し、当然今年も優勝候補に名を連ねる文句なしの強豪校ですよ!」

 

「優勝校!?」

 

 何故ここまでざわざわしているのかわかっていなかった武部沙織が疑問を発し、それに対し知識が豊富であった秋山優花里が答え、まさか優勝校だとは思ってもいなかった五十鈴華が思わず声を上げて驚く。

 他のメンバーも、それぞれが色々と困惑し、声を上げている者が多かった。

 

 

 

「……」

 

「……あっ! 申し訳ありません西住殿!」

 

「ううん、いいの。秋山さん、その事は心配しなくても私は大丈夫だから」

 

 ある事を察した優花里であるが、他のメンバーには何の事だかわからない。今の段階で、西住みほの過去の話が分かっている人物はここにはほぼいないのだから。

 そのプラウダに負けた時の黒森峰のフラッグ車の車長がみほであり、その事から優花里が申し訳なさを感じたということだ。

 

 

 

(それにしてもプラウダ高校かあ……いきなりそんな強豪と試合しても大丈夫なのかな? 何かをきっかけに自信をつけさせたいのかもしれないけど、これじゃあ逆効果になっちゃうんじゃ……)

 

 みほは冷静に分析する。ようやく戦車の操作に慣れてきた程度のこの大洗のメンバーで、果たしてプラウダ相手にどうにかすることが出来るのであろうかと。

 

 

 

「対戦方法は殲滅戦だ。こちらが五両だと言ったら、向こうもそれに合わせて五両にしてくると言っていたらしい」

 

(五両対五両の殲滅戦……それならまだチャンスはあるかも。相手は油断している可能性も十分あるだろうし、作戦次第ではどうにかできる可能性も無いわけではない……かな? 流石に厳しいとは思うけど)

 

 これがもし、相手が多数の戦車を使用してきたのなら勝ち目はその分減っていく一方だったのだが、大洗の戦車数にプラウダが合わせてくれた事により、可能性がわずかではあるが上昇したとみほは感じた。

 勿論数の上では互角とはいえそこまで甘い世界ではないことはみほもわかっている。戦車の性能であったり、そもそも優勝するくらいのチームなら乗員も優れていることは明らかな事なのだから。

 

 だが、それでも勝ち目がゼロと思っていないのがみほなのだ。みほの凄いところというべきか、そもそもみほ自体が戦車道において凄い人物なのだが。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「本日は急な申し込みにもかかわらず試合を受けていただき感謝する」

 

 大洗から代表して、河嶋桃がプラウダのメンバーに対し挨拶を行った。

 

 

 

「本当よ! 遠路遥々こんな所までやってきたんだからふかーく感謝しなさい! というか、結局ロシア語補習だったじゃない! どうしてくれるのよ!」

 

「同志カチューシャ、それは大洗の方々に全く関係も無ければ非もありません。というより、そんな事を言ったら貴方が恥ずかしいだけなのでは?」

 

「……はっ! まあいいわ、そんな事より今日はよろし……ってアンタ達笑いすぎなのよ! ぶっ飛ばすわよ!」

 

 かかなくてもよかった恥をかいてしまったプラウダの三年生のメンバーは、それを見て後ろの方で爆笑していた。

 それどころか、後輩である二年生や一年生も必死に笑いを堪えている者もいれば、少し声に出してしまっている者もいた。

 

 

 

 一方、大洗のメンバーは色々な意味で驚愕していた。

 自分達の初の練習試合の相手が去年の優勝校なのだ。どんな相手がくるのだろうと一年生に至ってはガチガチ、他のメンバーも当然緊張しており、生徒会メンバーですら顔に緊張感が漂っていた。

 

 それなのに、どんな相手が来るかと思えば背が高い人物の上に肩車してもらっている小学生くらいの身長の人物。しかも、開始早々やらかす。

 笑ってはいけないと思いつつも、大洗のメンバーも少しではあるが笑っていた。しかしこれが、いい意味で緊張感をほぐしていた。

 

 

 

「と!に!か!く! 新しく戦車道を始めたばかりだか何だか知らないけど、カチューシャ達はどんな相手でも全力よ! グロリアーナみたいな英国貴族ぶったような戦い方もサンダースみたいなバカな戦い方もしない、プラウダは真正面から力で殲滅してやるんだから! 力を出す前に負けた、とか無様なことにならないよう、最初から全力で来ることね!」

 

 そのカチューシャからの言葉が終わると同時に、審判団から声がかかってくる。最初の挨拶、そして試合準備の指令。

 それぞれが最初のポジションに戦車を動かし、各々が様々な気持ちを持ちながら、試合に臨むのであった。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

(おかしいわね……)

 

 今、プラウダの車両は全車両をかけて相手の戦車一両だけを追っている。みほの乗っている、Ⅳ号戦車だ。

 だが、それを追っているカチューシャはある違和感を覚えていた。

 

 

 

(恐らくこれは誘われてるわね、まあ無難な策ではある。だけどそれは大きなミスよ。確かに無難な策は格下相手に行うのならば定石にもなる。でも大洗の戦車でプラウダの戦車相手にそれを行うのは愚策でしかないわ!)

 

 カチューシャは相手を追いながら、そんな事を考えていた。

 現在大洗が取っているであろう策は、相手をおびき寄せて集中砲火で叩く、という誰にでも考えることの出来る単純な策だ。だがそれは、大洗がプラウダ相手にやっていい策ではないとカチューシャは分析した。

 

 

 

「恐らく相手はこの先で待ち伏せていると思われます。まだ追いますか?」

 

「当たり前よ! むしろごり押すのが今のこっちにとって最善の策よ。一気に叩き潰すわよ!」

 

 別車両であるT-34/85に乗っていたノンナから連絡を受け、指示を出すカチューシャ。ちなみに、カチューシャの乗っている戦車はKV-2である。

 

 

 

(ミホーシャにしては随分とつまらない作戦で来たわね。それとも、実はまだ更に何かあるのかしら? 何にせよ、このままだとこっちが余裕で押しつぶしちゃうのは事実。負けるつもりも気を抜くつもりも到底ないけど、このまま終わるとつまらないわよ。あまりカチューシャをがっかりさせないでよね!)

 

 実はこの作戦自体はみほが考えたわけではない。そこら辺の経緯に至っては省くが、みほ自体はこの作戦に関してはやや否定的ではあった。

 プラウダにこの策が通用するとは思っていなかったし、かえって危険なことになるのではないかと内心薄々感じていたのであった。

 

 

 

 そして、大洗側の策通りプラウダの車両をおびき寄せることが出来た。ここまでは良かった。

 だが、まだスキルの低い大洗のメンバーでは遠距離からではまともにとらえることは出来なかった。そしてプラウダ側の戦車の装甲が厚いというのもあってか、少し掠めた程度ではビクともしないのだ。

 

 それどころか、左右両側から戦車に挟まれてしまう。しかも、一年生チームは逃げ出してしまう異例の事態。大洗側からすれば、まさに万事休す。

 

 

 

「さあ、追い詰めたわよ! 観念なさい! 撃てー!!」

 

 プラウダ側からの集中砲火。乗員がいなくなった一年生チームの戦車は当然撃破され、生徒会が乗っていた車両の履帯も攻撃を受けた影響で外れてしまう。

 

 

 

「ここで撤退!? 一気に追い詰め……いや、ここで二手に分かれるわよ! 二両はさっき履帯を切っていた戦車の撃破、三両は逃げた三両を追うわよ!」

 

 一気に撤退した大洗を追うのに、カチューシャは戦力を分担することに決めた。

 履帯が切れたからといって撃破したわけではないのだ。今ならすぐにでも潰せる、と確実に撃破する方法を選んだ。

 

 

 

「ノンナ、そっちは任せたわよ! すぐに潰して、すぐにこっちに合流しなさい!」

 

「了解」

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「市街地とは面倒ね……他の車両! よく聞きなさい、こっちが三両で来ていることは相手に見られている。向こうは恐らく隠れつつも、攻めるなら今がチャンスと攻撃の機を伺っているに違いないわ。ここからは一層、気を引き締めなさい!」

 

 既に、大洗からは三両でしか追われていないということは知られている。大洗からすれば、今が数少ないチャンスなのだ。五両対三両よりも、三両対三両の方が当たり前ではあるが、攻めやすい。

 

 

 

「こちら撃破しました。すぐに合流致します」

 

「了解、さっさと来なさい!」

 

 ノンナから一両撃破の知らせが届く。先ほど履帯が切れていた、生徒会の乗っていた戦車だ。

 

 

 

(正直市街地での戦いはプラウダはそこまで得意ではないし、逆に向こうの小回りの利くような戦車の方がここでは戦いやすいかもしれない。フィールドの狭さという事もあり狭い路地ならば三両という戦力をさらに分散せざるを得ない。さあ、こっからどうしようかしらね)

 

 プラウダの車両は重戦車の割合が多く、小回りの利く戦い方はそこまで得意ではない。広い場所で複数の車両で一気に追い詰めるのが得意なスタイルだ。

 カチューシャは考える。ここからどうする事が、正しいのだろうか。

 

 

 

「……ここからは分散して攻めるわよ! 各自がそれぞれで叩き潰しに行くわ!」

 

「あの、お言葉ですがもう二両を待ってから攻めた方が確実なのでは?」

 

「それはその通りよ。ええ、先に言っておく。これは油断とも慢心ともとられるかもしれない行為かもしれないわね」

 

「……えっ?」

 

 他のメンバーはカチューシャの言った言葉に対しかなり驚いた。

 自分達の知っている人物の中で、最も油断や慢心といった言葉が似合わない人でもあるカチューシャが、自らそんな事を言ったのだから。

 

 勿論、当たり前であるがカチューシャにも考えがあってこその発言である。というより、本当に油断や慢心がある人物はそんな事をわざわざ口に出して言ったりはしない。

 

 

 

「だったら何故……?」

 

「正直、なめた考えとも思われるかもしれないけどね。これはあくまで練習試合……こんな言い方はしたくはなかったのだけれど。何が言いたいかっていうと、アンタ達にも一対一のタイマンでぶっ潰してきてほしいのよ!」

 

 このカチューシャが言っている意味というのは、二つある。

 

 一つ目は、練習試合だからこそ色々な事を試す機会でもあるという事。本当の試合ならば使えないような策も、試すことが出来なくはない。

 他のメンバーも言うように、これがもし公式戦ならば他の二両が来るのを待つためにその場で待機、という事もしたかもしれない。

 

 二つ目は、個の力を試す、更に言えば個の力を上げる、という事だ。仮に今後一対一になるような場面があっても、負けることなく打ち勝ってほしい。

 カチューシャは今のこの状況は、それを試すチャンスではないかと考えたということだ。

 

 

 

「……わかりました、任せてください!」

 

「隊長が油断している、なんて相手に思われないよう、こっちが結果を出して相手をねじ伏せてきますよ!」

 

「アンタ達……言うじゃない、任せたわよ!」

 

 プラウダのメンバーは、ここに来てモチベーションを上げていた。

 その大きな理由としては、隊長であるカチューシャに自分たちは期待されていると考えたからだ。

 

 これにはカチューシャという人物の人柄も大きくかかわってくる部分である。

 普段から油断しているような人物がこれを言っても何も起きないが、それとは真逆の位置にいる人物であるカチューシャがあえてこのようなことを口にしたのだ。それは、他のメンバーも色々と思うところが出てくるであろう。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「こちら○地点にて相手車両撃破!」

 

「こちらも撃破しました!」

 

 少し時間がたった後に、それは結果として出た。

 元々スキルが高い上に、集中力がかなり増しているプラウダのメンバーは、被害もなく相手を撃破。例え路地裏に隠れて攻撃の機を伺っていようが、車庫を利用したトリッキーな戦術を用いようが、彼女達には通用しなかった。

 

 

 

「やるじゃない! これで相手の車両は残り一両ね!」

 

 そして素直に、この結果はカチューシャにとっては嬉しかった部分だ。まだ個のスキルがそこまで高くは無いとはいえ、みほ率いるチームにここまでうまく立ち回れているのだから。

 しかも、課題としていた個の力の部分で結果を出しているのは彼女にとって、いやプラウダにとって大きなことであった。

 

 

 

「こっからは最後の一両を見つけ次第連絡よ! そこから全車両で一気に畳みかけ……って、見つけたわ! △地点よ!」

 

 最後の一両を一番最初に見つけたのはカチューシャの乗っている車両であった。しかも相手は、みほの乗車しているⅣ号である。

 

 

 

「どうやらここまでみたいね! 市街地に来るまでは悪くなかったけれど、残念ながらうちには通用しないわよ! このまま完封勝ちしてやるんだから!」

 

 KV-2が一発撃つが辛うじてⅣ号がそれを避け、別の場所へと逃げ込もうとする。

 

 

 

「追え追えー!」

 

 勿論それを黙ってみているわけがない。相手が角を曲がったらそれを追うように曲がり、そしてまたけん制しつつ追いかけっこが始まる。

 

 

 

「ッ!! 一回止まりなさい!!」

 

 そこで、天性の勘が働いたとでもいうか。カチューシャは突然、曲がり角の寸前で車両を急停止させる。その時は、他の乗員はカチューシャが何故止めたのかが理解できていなかった。だが、すぐに理解することになる。

 ほんのわずかではあるが車体が曲がり角の向こうから見えたせいもあってか、みほは砲撃を命令した。そのまま車両が出てくると考えていたからだ。だが、カチューシャが寸前の所で止めたおかげでそれは空振りすることとなった。

 

 もし、ここで止まらなかったら装甲を破られたかどうかは別として、至近距離からまともな一撃を喰らっていたのは間違いないだろう。

 

 

 

「今がチャンスよ! 追いなさい!」

 

「我々ももうすぐそちらに到着します」

 

「了解! 待ってるわよ!」

 

 ノンナからの連絡も来て、返答しつつ相手を追い詰めるように動く。二両は現在、大きな通りへと出た。

 

 

 

「ん? ……ッ!?」

 

 ここでカチューシャは決して油断していたわけではないが、虚を突かれてしまった。

 なんと、いきなり回り込んできたかと思えば右の方に戦車がドリフトしながら回り込んできたのだ。

 

 はっきり言って、これは異常な行動だ。フラッグ車同士の対決であったり、殲滅戦で相手が残り一両となっていたならまだその行動も分からなくはない。だが、殲滅戦でしかもまだ五両残っているにも関わらず、この特攻だ。

 いつものカチューシャならば、まだ相打ちに取るなり出来たかもしれない。だが、反応が一歩遅れたため相打ちに持っていくには難しい場面。

 

 

 

「……少しでもいいから前進ッ!!」

 

 指示通りほんのわずかではあるが、前進した。だが、まともに被弾したKV-2は、戦闘不能になる。

 

 

 

「やりましたよ、西住殿! しかも相手隊長車であるKV-2を撃破、ここから風向きが変わるかもしれませんね!」

 

「うん、頑張ればまだ何とかなるかも。とにかくここから早く離れて――――」

 

 優花里とみほがそんな会話をしていたその時、KV-2の奥の方から弾が飛んできた。それは、KV-2が前進したために出来たわずかな隙間を超えてⅣ号にまともに命中。

 

 

 

「相手車両、これで全て撃破です」

 

「流石ね、ノンナ」

 

「貴方が撃破のために隙間を作ってくれたおかげですよ」

 

「本来ならばカチューシャが潰さなきゃいけない相手だったのに……!」

 

「おや、泣いているんですか?」

 

「泣いてないっ!!」

 

 

 

 撃破された戦車の中で泣きながら通信しているカチューシャと、最後に討ち取った戦車の中で連絡しているノンナであった。

 

 

 

 無事、練習試合は終了した。プラウダ対大洗の練習試合は、プラウダが四両を残しての勝利で幕を閉じた。




いやー、戦車での戦いとか文章にすると難しすぎる。というより、戦車の知識自体が……ね。
前書きにもあるのですが、気になる点があったらご指摘お願いします。勿論、普通の感想や評価等も頂けたらそれはそれで幸いです。

書きたかったのは西住ドリフトの場面。
ダージリンは真っ向から打ち勝ち、まほは真っ向から打ち負けた。カチューシャはどうさせようと考えた結果、こうなりました。
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