ということで、少し短いですがサンダース戦序盤です。
あと、何でこんなにお気に入り数やアクセス数が突然伸びているのかびっくりしてたんですが、どうやら日間ランキングに載っていたみたいですね。
ヒヤッホォォォウ!最高だぜぇぇぇぇ!!
皆様ありがとうございます。今後もこの作品をよろしくお願いします。
ついに迎えた戦車道全国大会一回戦の日。
一度に全てのチームが対戦をするわけではない。今日は半分のチームが試合をする日であった。
その中でも今日の目玉はプラウダ高校対サンダース大学付属高校。試合の無い大洗のメンバーは、観戦に来ていた。
その理由としては、逆ブロックなので決勝まで行かないと当たることはないので、偵察という意味も含まれるがどちらかと言えば、純粋に参考にしに来ているという意味合いの方が強い。
「西住殿、この試合ずばりどちらが勝つと思われますか?」
「うーん……プラウダもサンダースもどちらも強豪だから何とも言えないかな。前評判ではプラウダの方がやや優勢だけど、大きな差があるわけでもないと思うし」
「私は知っている顔もいるしプラウダに勝ってほしいかな、ねーみぽりん?」
「あはは……そうだね」
そんな会話が大洗のあんこうチームの中ではあったとか。
ちなみに、みほとしては個人的には勝ってほしいのは親交のあるプラウダなのだが、勝ち上がって欲しくないのもまたプラウダである。これはただ好意を持つ個人的な面と、一度戦っているので不意を突く策を投じにくいというチームとしての面を考えた、矛盾である。
故に、みほは沙織の意見に対し、やや苦笑いの表情を浮かべてしまった。
「でも、サンダースってそこまで強いのでしょうか? 確かにプラウダは前回の練習試合で凄い強さを感じたのですが、サンダースはどのようなチームなのでしょう?」
「イメージとしては……どっちも力押しな部分は似てるんだけど、プラウダは高い統率力で細かい戦術にも対応できるのに対し、サンダースはとにかく大味かな。不意を突かれたら崩れやすいのもサンダースだけど、勢いに乗らせると怖いのもサンダースかな?」
華の疑問に、みほがざっくりと答えた。
戦車道において、案外勢いというものは馬鹿にできないものである。
士気の上昇、相手の虚を突く、または戦車道における流れを上手くつかむ。大味な戦い方というのは、時と場合によっては戦車道において最強の戦術となり得ることもある。
(この試合、かなり読めないなあ……プラウダはどんな相手にも立ち回れる強さがあるけど、サンダースの勢いがそれを上回ったらどうなるかわからないし。序盤の流れを取ったチームがかなり優位に立つかな?)
プラウダは安定感のあるチームである。自分より弱いチームにはほぼ、負けるようなことはない。
逆にサンダースは大味な分、意外なチームに苦戦することもたまにあったりするとか。だが、流れをつかんだ時のサンダースの強さはそれこそ最強クラス。だからこその優勝候補の一角なのだが。
―――
試合開始まで残り二時間程度となっている現在。もう既に、プラウダもサンダースもある程度の準備は終えていた。
(……本当にこれでよかったのかしら)
カチューシャは考える。昨日既にチーム全体に報告したある程度の最初の大まかな作戦について。
「同志カチューシャ、こんな所にいましたか。探しましたよ」
「……」
「……カチューシャ?」
「わっ!? って、ノンナじゃないの。いきなりでびっくりしたわよ」
「何回か呼んだのですが、そちらが気づかなかったので。……何か、考え事でも?」
「……ま、そんな所ね。ちょっと今回の最初の動き、無難すぎるんじゃないかと思って考えていたのよ」
ノンナが数回呼ぶまで気付かない程度には、カチューシャは頭を働かせていた。
自分の用いる策が、無難すぎるのではないかと気になっていたからだ。
「確かに無難ではありますが、これはこれでいいのでは? 少なくとも、間違った戦術ではないと思いますよ」
「うーん、だったらいいんだけど」
今回、カチューシャは至って普通の作戦に出ることにした。その内容は、偵察車を数両出して、敵をおびき寄せて叩くというもの。
相手側はそれをわかった上で、物量で攻めてくるであろうと予想していた。サンダースの事だから、あえて挑発に乗ってこっちを潰しに来るのではないかとカチューシャは思っていた。そしてそれをしっかりとした連携の下、相手の勢いに負けずにしっかり叩き、早めに数の上で優位に立ちたいと考えているのだ。
カチューシャの理想は、早めに潰して短期決戦に持ち込みたいと今回は考えていた。調子に乗らせると後々面倒だからである。
だが試合直前になって、果たしてこの戦術でいいのかと悩んでいた。
「ヘイ、カチューシャ!」
そんな事を考えていたら、カチューシャの見知った顔が元気よく呼びながら近寄って来た。
サンダースの隊長、ケイである。副隊長のアリサとナオミも近くにいた。
「あら、ケイじゃないの。今日はよろしく、まあどうせカチューシャが勝つんだけどね!」
「それは楽しみね! 正々堂々、今日は戦いましょ! それより、試合前の交流も兼ねて食事でもどうかしら?」
「別にチームとしては構わないけど、カチューシャは嫌よ! あんなファストフードばかり、どんな添加物が入ってるか……これ以上カチューシャの身長を縮ませるつもり!?」
「同志カチューシャ、流石にそれは暴論すぎます。別にハンバーガーやフライドポテトを食べても貴方の身長はこれ以上縮むことはありません。あ、ケイさん。うちのチームは結構ファストフード好きも多いので食事の交流会は歓迎です」
「そう? だったらこれから交流会ね! あ、カチューシャ。うちの子達みんなファストフードばかり食べてる事が多いけど、みんなカチューシャよりも背が高いわよ?」
「うっさいわね! ノンナもケイも、カチューシャの事バカにしてんの!? そんなふざけた交流会ぶっ潰して……あ、でもシェイクは飲みたいかも……」
サンダース主催のプラウダのサンダースの簡易的な交流会は、どちらのチームのメンバーも緊張感をいい意味でほぐす素晴らしい機会となった。
ちなみに、カチューシャはバニラシェイクをおいしそうに飲んでいたとか。
―――
「いい? まずは指示通りに各自動くのよ! 戦車前進っ!!」
いよいよ始まった戦車道一回戦。プラウダ高校のメンバーはカチューシャの指示に従ってそれぞれ動き出す。
まず、フラッグ車。これは今回カチューシャが乗るKV-2が担当する。それに一両護衛として配置、こちらは二両での行動。
そしてノンナが乗るT-34/85を中心とした、六両での集団行動。これはおびき寄せた車両を叩くための布陣だ。更には、偵察車として二両が別行動、合計十両での行動だ。
時間は数十分が経過したところ。お互い、まだ遭遇は無しだ。だが、時間的にはそろそろどこかで出会ってもおかしくない時間帯。故に、メンバーには緊張感が高まってくる。
「ノンナ! そっちの状況は!?」
「こちらはまだ敵戦車との遭遇はありません」
「偵察車は? まだ敵は見えない?」
「はい、ずっと○地点の森から張ってますが……あっ! 見えました、敵戦車三両、まだこちらは見つかっておりません!」
一番最初に相手を見つけたのはプラウダ側の偵察車であった。まだ相手には見つかっていない、つまり先手を取ることが出来た。
「よーし! よくやったわね。そこからしっかり距離を取ってから、あえて見つかって牽制しつつ逃げておびき寄せるのよ。こっちから当てる必要はまだないから、しっかり距離を取りなさい!」
「了解!」
偵察車の目的は敵を撃破することではない。故に不意を突いて撃破する必要はないし、無理をする必要もない。
相手に見つかりながらも、自分達はやられない事が重要なのだ。
だが、おびき寄せるという戦術をする前に、思わぬ落とし穴が待っていた。
「ッ!? 別の方角から更に二両!? まずいです! こちらの二両、敵戦車計五両に囲まれつつあります!」
「いきなり森に五両とかやってくれるじゃないの!? どうにかしてこらえるのよ! ノンナ、そっちから救援に行くことは出来る!?」
「了解しまし……申し訳ありません、カチューシャ。こちらも四両と遭遇。数の上では有利ですが、場所が悪く今すぐ森へと向かおうとするのならばこちらも何両かが犠牲になる可能性が非常に高いです」
「ッ……!」
カチューシャは思わぬ展開に、怒りと悔しさが混じったような、複雑な表情を浮かべた。
偵察車は現在、五両に追われている。このままではやられるのも時間の問題である。偵察車の近くにいたのは三両だけではなく、まるでそこに偵察車が潜んでいたのを知っていたかのように、別の方向から二両が出現したのだ。
そして別の場所にいたノンナ達から救援を送ろうとしたが、それを邪魔するかのように森へと向かう道には相手戦車四両が待ち伏せていた。数の上では有利なのでゆっくりと時間をかければ撃破することは可能かもしれないが、今すぐ森に向かおうとするならば話は変わってくる。むしろこちらが返り討ちになる可能性の方が高くなる。
「すみません、カチューシャ隊長! やられてしまいました!」
流石に、敵戦車に挟まれた状態で逃げ切るのはいくらプラウダのメンバーのスキルが高くとも、不可能であった。
そしてノンナ達の動きを止めていたサンダース側の四両は、森へと逃げていった。これで十両対八両だ。
「追いますか?」
「……いや、ここは一度立て直すわ。向こうに合流されて九両対六両の戦いになったら、流石に厳しいわ」
「了解です」
カチューシャは深追いはせず、一度立て直すことを考えた。追って合流される前に四両を潰せればそれに越したことはないのだが、それすらも罠な気がすると彼女の勘が告げていた。
(用意周到ってレベルじゃないわ。いくら何でもフラッグ車に護衛も付けずに、九両がベストなポジションに配置することが可能なのかしら?)
カチューシャは仲間の犠牲に怒りながらも、頭の中は冷静であった。
これが彼女の隊長としての、車長としてのスキルの高さだ。仲間を倒した相手を今すぐにでもぶちのめしたいと心では思っていても、頭ではしっかりとどうしたらここからいい方向に持ち込めるかを考えていた。そうでなければ勝てなくなり、今やられた仲間の犠牲も無駄になってしまうからだ。
ちなみに、十両中九両を動かすといった作戦は、普通ならば無謀と呼ばれるべき作戦だ。九両を動かすということはつまり、フラッグ車の護衛はいないのだから。
プラウダの八両ですら、結構大胆な部類であると言えるくらいだ。
(森への進行を防ぐベストなポジショニング。あれならば防衛するという目的だけならば、四両でも六両に対し互角以上の戦いが出来る。やっぱり……どうも都合が良すぎるのよ、これは)
考えれば考えるほどサンダースは無駄のない完璧な動き方をしていたと言える。
例えるならば、じゃんけんをするけど相手はグーを出すことがわかっている、だからパーを出して勝った、と言えるくらい無駄がなかった。
その考えられないほどの無駄のなさが――――カチューシャには逆に、違和感を覚える形となった。
(まるでこっちの動きが……はっ!? もしかして)
急にカチューシャは戦車から顔を出し、空を見上げた。そしてそこには、答えがあった。
それを見たカチューシャは――――怒りを通り越して、物凄く悪い笑みを浮かべていた。
とりあえず、例のアレによりサンダースが序盤は優位に立ちました。
書いていて面白いのが、十両対十両で戦えるところですよね。これは大洗には出来なかった事ですから。