ガルパン短篇集   作:はるたか㌠

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友人から元ネタをいただいた後、試行錯誤したらこうなりました。


新戦力です!

「ヒャッホォォォウ! 最高だぜぇぇぇ!」

「ゆかりん、ハイテンションだね」

「うん。いつものパンツァー・ハイ……かな?」

 

 みほと沙織、顔を見合わせ苦笑する。

 

「さて、それじゃ見て回ろうか」

「はい!」

 

 ナカジマと梓を加えた一行は、会場へと足を踏み入れた。

 

 

 

 数日前。

 

「やあやあ西住ちゃん!」

 

 生徒会室に呼びだされたみほは、不安を隠さずにいた。

 既に蟠りは解けているとは言っても、一人生徒会室というのはやはり初めの頃が脳裏に浮かんでしまうようだ。

 

「そんなに硬くならなくていいのよ? とりあえず、座って」

「は、はい」

 

 柚子に勧められるまま、みほはソファーに腰掛けた。

 その対面に、どっかりと腰を下ろす杏。

 

「実はさ、西住ちゃんに頼みたい事があるんだよね」

「わ、私にですか?」

「そ。小山」

「はい」

 

 柚子は、一枚のチラシをみほの前に置いた。

 それを手に取り、目を通すみほ。

 

「戦車がらくた市……ですか?」

「そう。まぁ、戦車のフリマってトコかな?」

「はぁ……。それで、これと私がどう関係するんでしょう?」

 

 困惑するみほ。

 

「西住さん。新学期になってから、戦車道の履修希望が殺到しているのは知っている?」

「え、そうなんですか?」

 

 廃校の危機を免れた大洗女子学園。

 その救世主とも言えるみほは、本人が予想もしなかったような大スター扱いとなってしまった。

 ファンレターは殺到し、いつの間にかファンクラブまで出来ている始末。

 そんなみほが隊長を務める戦車道チームに、参加を望む生徒が続出するのは想像に難くない。

 

「まぁ、最初にいろいろぶち上げちゃったのもあるからねぇ。かと言って今更撤回もできないし」

「そうですね。ただ、それは関係なしにとにかく収拾がつかない状態なのは確かなの」

 

 そう言って、溜息をつく柚子。

 

「でも、うちは戦車は全部で八両しかありませんし」

「そうそう、そこなんだよ西住ちゃん」

 

 干し芋を食べながら、大きく頷く杏。

 

「やっぱり、履修するからには戦車に乗れないと意味がないと思うの」

「でもさぁ、うちの学校は予算もあまりないかんねぇ。戦車の叩き売りなんてなさそうだし」

「……それで、このがらくた市で探すって事ですか?」

「ご名答。やっぱさ、そうなると西住ちゃんが頼りなんだよね~」

「今週末、大洗に寄港するからその時に行ってきて欲しいの」

「そ、それなら優花里さんとか沙織さんの方が……。それとか、自動車部の皆さんとか」

 

 そんなみほに、杏はずいっと顔を近づける。

 

「もちろん、西住ちゃんが何人か連れて行ってもいいよ。でも、選ぶのは西住ちゃんがやってね」

「ど、どうしてですか?」

「……西住さん。今の戦車道チーム、このまま活動を続けられると思う?」

「え?」

 

 柚子は、少し寂しげに笑みを浮かべる。

 

「会長や私、桃ちゃん。他にも風紀委員や自動車部とか」

「……あ」

 

 ハッとなるみほ。

 

「私らさ、三年生なんだよね。進学にしろ就職にしろ、もう戦車道にばかり時間をかけてられなくなってくる訳」

「だから、メンバーを入れ替えるいい機会でもあるの。でも、そうは言っても戦車の数が足りないのは変わらないから」

「…………」

「黒森峰とかプラウダみたいに二十両揃えるのは無理でもさ、せめて十両はあった方がいいと思わない?」

 

 杏の言葉に、みほは首肯かざるを得ない。

 戦車道の全国大会では、二回戦までのレギュレーションは十両。

 今年の大会は急造チームという制約があったが、来年以降も同じ条件で戦えるとは限らない。

 ましてや大洗女子学園は優勝校。

 当然、対戦相手も全力で向かってくる筈。

 

「……西住ちゃんにばかり負担かけちゃって悪いって思ってるけど。でも、うちは他に方法がないんだよね」

「本当にごめんね」

 

 二人の言葉に、頭を振るみほ。

 

「……いえ。確かにお二人の仰る通りだと思います」

「……うん。ありがとね」

 

 

 

 そして。

 みほは沙織と優花里、ナカジマ、それに梓を伴って会場に来ていた。

 

「みぽりん。でも私で役に立つの?」

「沙織さん、戦車の事すっごく勉強してるし。そうだよね、優花里さん」

「はい! 初対面の時、パンツァー・フォーを聞き違えたのと同一人物とは思えませんよ」

「もう、その話はやめてってばぁ」

 

 赤くなる沙織。

 

「武部先輩、どう聞き違えたんですか?」

「も、もう! そういう事は聞かないの、梓ちゃん!」

 

 そんなやり取りを微笑ましく見ながら、みほとナカジマは品定めをしていく。

 

「これ、33式150mmですね」

「Ⅲ号に積めるね。でも、ちょっと状態が良くないかな?」

「西住殿! あれを見て下さい!」

 

 優花里が指差す先に、緑色に塗られた戦車があった。

 

「これ……T-40?」

「流石武部殿! 水陸両用戦車で、足が速いのが特徴なんですよねぇ」

 

 目を輝かせる優花里。

 

「でも、秋山先輩。武装が機銃だけですよね、この戦車」

「うん。偵察に特化するならともかく、戦車道だとちょっと辛いかな……?」

「……ですよねぇ」

 

 落ち込んだ優花里だが、次の商品を見てはまたテンションを上げている。

 

「こ、これはオデッサ戦車!」

「……ゆかりん。それ、装甲車じゃない」

「お! あ、あれは……バレンタイン!」

「秋山先輩。また自走砲増やす気ですか……?」

 

 沙織や梓のツッコミもどこへやら、テンションの上がりまくった優花里は完全に居並ぶ車両に夢中になってしまっていた。

 

「あはは……。優花里さん、好きに見てていいから」

 みほも、半ばあきらめ顔。

 

 

 

「うん。これ、ちょっと工夫すればいけるかも知れませんよ」

 

 ナカジマが見つけてきたのは、試製三十七粍戦車砲。

 八九式中戦車の改造案として検討された主砲で、長砲身なので威力もそれなり。

 

「アヒルさんチーム、火力がもっと欲しいっていつも言ってるもんね」

「佐々木先輩の腕にこの砲が加われば、鬼に金棒ですね」

 

 沙織と梓も賛成のようだ。

「じゃあ、これにしよっか。あとは……」

「90mm高角砲がありますね。これ、ちょっと手を加えてルノーB1に積んでみますか?」

「え? な、ナカジマさん、それだとARL-44になっちゃいますよ……?」

 

 慌てるみほだが、ナカジマは何処吹く風。

 

「いいんじゃない? それを言ったらⅣ号だってH型っぽくしてるだけだし」

「……自動車部が言うと、出来そうで怖いかも」

「……私も武部先輩と同意見です」

「あ、あはは……。パーツは結構見つかったけど……車体は難しいね」

 

 みほの呟きに反応した沙織が、カバンからノートを取り出す。

 お手製の戦車図鑑だが、そのわかりやすさは戦車道チーム内でも評判だったりする。

 

「確かに難しいよねぇ。他のチームが使っている車両は選べないし」

「大洗女子の車両って、個性豊かで好きですけどね」

 

 梓だけでなく、それは大洗戦車道チームメンバーが思っている事。

 

「でも、秋山さんはあの調子だし。地道に見て回るしかなさそうですね」

「……はい」

 

 ナカジマにそう言われた当の本人は、レアもの戦車を見ては歓声を上げていた。

 

「こ、これは幻のブラックプリンス! たった六両しか試作されなかった超レア車ですよ!」

「……重戦車なんだね、これ」

「流石だね、沙織さん。……でも、これは聖グロにもあるって聞いてるし」

「それに、重戦車はやっぱり高いですね」

 

 梓の言葉に、一同は溜息をつく。

 値札は、生徒会の用意した予算では手の届かない金額がつけられていた。

 他校が云々以前に、彼女達には縁がないとしか言えない。

 

「重装甲に強力な主砲。それだけで戦車道では有利ですからね」

「大学選抜チームなんて狡いよ。あんなに沢山パーシング持ってるんだもん」

 

 優花里と沙織が肩を竦める。

 

「でも、私は重戦車を集めるよりもバランスとチームワークかな。身の丈にあった戦いをすればいい、澤さんもそうだったよね」

「はい。それが、大洗女子学園の戦車道だと思います」

「整備も大変だし、足回りも弱いから私達としても重戦車はあんまり増えて欲しくないかな?」

 

 ナカジマの言葉に、一同頷いた。

 

「燃費もありますから、やっぱり軽戦車か中戦車かな?」

「あの、西住殿……。これなんかどうでしょう?」

 

 優花里が足を止めた場所。

 

「T-26軽戦車?」

「はい。装甲は薄いですが、世界最多の生産両数を誇るソ連の代表戦車の一つですし」

 

 沙織はパラパラとお手製図鑑を捲り、

 

「いろんな派生型もあるんだね」

「確かに悪くないかも。ナカジマさん、どうですか?」

 

 みほとナカジマは、車体を隅々まで覗き込んで確かめる。

 

「きっちりメンテすれば行けそうですよ。装甲もしっかりしてますし」

「そうですね。価格も手頃ですし」

「じゃあ、これにしましょうか。あと、もう一両ぐらいあるといいかな」

 

 T-26を仮押さえして、一行は他を見て回る。

 

「KV-1もあるんだね」

「でも、継続高校が使ってるね」

「おおっ、M6重戦車です!」

「確か、サンダース大附属にあったよね?」

 

 沙織と優花里は、顔を見合わせる。

 

「西住先輩、どうしてご存知なんですか?」

「澤さん。大会はどんな車両が出てくるかわからないから、保有車両は一通り覚えてるの」

「す、凄いです。流石は西住先輩……」

 

 梓が、尊敬の眼差しでみほを見る。

 

「私は、凄くなんてないよ。でも、私がしっかりしないとみんなが不安になっちゃうから」

「でも、西住さんのお陰でみんなこうして一緒にいられるんだし。私達自動車部も、解散せずに済んだんですから」

「そうですよ西住殿。もっと自信を持って下さい」

「え、ええと……あ、あの……」

 

 挙動不審になったみほの肩を、沙織がポンポンと叩く。

 

「いつものみぽりんだよね。らしくていいけどね」

 

 

 

 その後も会場を一周りした一行。

 

「あまり目ぼしい物はなかったね」

「結局、車体はT-26だけでしたね。パーツはいくつか買えたから、帰ったら取り付けてみますね」

 

 みほとナカジマが相談するのを他所に、優花里が何やら思案に暮れている。

 

「秋山先輩。どうかなさったんですか?」

「あ、ちょっと心当たりがあるんです。電話してみますね」

 

 携帯を取り出し、優花里はどこかにかけ始めた。

 

「……はい。え、宜しいのでありますか?」

 

 そう言うと、優花里は振り向いた。

 

「皆さん、この後お時間は?」

「私は大丈夫かな」

「はい、私も大丈夫です」

 

 沙織と梓が応え、みほとナカジマも頷く。

 

「皆さん大丈夫みたいです。……はい、了解であります!」

「ねえ、ゆかりん。誰と話してたの?」

「すぐにわかりますよ、武部殿。ではいざ、パンツァー・フォー!」

 

 訳がわからないまま、一同は顔を見合わせた。

 

 

 

 数時間後。

 一行は遥々長崎へとやって来た。

 

「ヘイ、みほ! オッドボール!」

「ケイさん、態々迎えに来ていただいてありがとうございます」

「突然連絡して済みません」

「いいの、いいの。二人ならいつでもウェルカムよ!」

 

 いつもながらテンションの高いケイ。

 一方、沙織と梓はフラフラ。

 

「まさか、いきなりV-22に乗せられるとは思わなかったよぉ」

「西住先輩と秋山先輩……流石ですよね」

 

 最後に出てきたナカジマは二人と違い、上気した表情だった。

 

「普段触ってるのがレトロな子ばっかりだから、最新機も新鮮でいいですね」

「我がサンダース大付属でも一機しかないから、私も滅多に操縦する機会がない。でも、気に入って貰えて嬉しい」

 

 操縦席から降りてきたナオミは、ナカジマ相手にあれやこれやと説明を始めた。

 

「ポルシェティーガーの車長だっけ、彼女? あのナオミと打ち解けるなんて、なんか凄いわね」

「そうなんですか?」

「意外と気難しいところあるのよ、あの子。もっとフランクになれ、っていつも言ってるんだけどね」

 

 みほ相手に肩を竦めるケイ。

 

「ラビットの車長も久しぶりね。そっちの彼女はⅣ号の通信手だったわね」

「はい。澤梓です」

「私、武部沙織です!」

「オーケーオーケー。みんな、大歓迎よ!」

「ところでケイ殿。早速で申し訳ないのですが」

「そうね。それじゃ、レッツゴー!」

 

 

 

 そして。

 

「で、これを貰ってきたのね」

「はい! ジャンクで置いてあるだけと伺いまして、西住殿とナカジマ殿に状態を確かめていただいたのであります!」

 

 ケイの好意で、帰りも学園艦まで送って貰った一行。

 迎えに出た生徒会の面々の前には、一両の戦車があった。

 M7中戦車。

 ……の残骸同然という姿ではあったが。

 柚子は呆れ顔で、杏は悪戯っぽい笑顔でそれを眺めている。

 

「しかし、中戦車とは言っても元々は軽戦車じゃないか」

「確かにそうですね。でも、75ミリ砲搭載ですし、戦力にはなると思いますよ」

「西住がそう言うのならいいが。だが、ちゃんと直せるのか? サンダースでもレストアを諦めたような車両なんだろう?」

 

 桃はカンカンと装甲を叩く。

 

「それも大丈夫だと思いますよ。時間かけてじっくり修理さえすれば」

 

 ナカジマに呼ばれたのか、自動車部の面々が車体のチェックに入っている。

 そのM7中戦車の隣には、運ばれてきたばかりのT-26もあった。

 

「これで10両ですね」

「問題は乗員だね。それでね、澤さん」

「はい、西住隊長」

 

 姿勢を正した梓に、みほは微笑む。

 

「副隊長をお願いしたいの。受けてくれる?」

「え? ……ええっ、わ、私がですか?」

 

 慌てて他の面々を見回す梓。

 だが、誰も驚いていない事に気づいた。

 

「で、ですが私はまだ一年ですよ? 副隊長と言うなら、秋山先輩とか磯辺先輩の方が……」

「澤殿。私は戦車の知識と装填手としての自信はありますが、それだけです」

「磯辺さんやエルヴィンさん達にも聞いたの。皆さん、澤さんの指揮でなら戦えるって」

「…………」

「折角廃校がなくなったこの大洗女子学園……澤さんになら任せられると思うの」

「私が……。でも、まだ自分のチームだけでも精一杯ですよ?」

「それは、おいおい身につけていけばいいよ。どうかな?」

 

 躊躇う梓の前に、杏が立った。

 

「私も、西住ちゃんの意見に賛成かな。澤ちゃんなら大丈夫だって!」

「会長……」

 

 俯いていた梓は、拳をぐっと握り締めた。

 

「梓、やりなよ」

「うんうん。梓なら大丈夫」

「あゆみ、優季。みんなも」

 

 ウサギさんチームの面々も集まっていた。

 

「私達も、頑張るからさ!」

「うんうん! 紗希も賛成だって!」

 

 梓は、みほに目を向けた。

 

「……わかりました。私で良ければ、一生懸命やらせていただきます」

「うん、ありがとう。頑張ろうね」

「はい!」

 

 

 

 こうして、大洗女子学園戦車道チームは新たな一歩を踏み出した。

 この後も、戦車道大会で数々の伝説を残していく事となる。




短編にしましたが、続きのネタも考えています。
そのうちに公開できるかも知れませんので、その際はどうぞよろしくお願いします。
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