ガルパン短篇集   作:はるたか㌠

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タイトル通り、大学選抜チーム三人組の話です。
ドラマCDを聴いてからずっと書こうと思っていたのですが、難産で随分と時間がかかってしまいました。
ベタですが、あのキャラも登場します。

ちょっと三人組が暴走気味ですので悪しからず。


バミューダアタック!

「ルミ、そっちはどう?」

「こりゃ駄目だわ。アズミは?」

「ちょっと厳しいわね……。メグミも無理みたいね」

 

 三人は顔を見合わせ、ガックリと肩を落とす。

 

「まさか、三人ともここまで女子力がないなんて」

「メグミや私はともかく、アズミまで駄目だとは思わなかったわ」

「仕方ないじゃない、ずっと戦車道一筋だったんだから」

「そうよねぇ……」

「参った参った」

「でも、本当にどうする? このままじゃ、隊長との約束破る事になっちゃう」

 

 戦車道大学選抜チームではエースとして鳴らし、その実力は誰もが認めるところ。

 そんな彼女らに欠点などない……そう思われていても当然だろう。

 が。

 

「料理ってこんなに難しいのね」

「小中学校の家庭科で調理実習とかはやったけど、忘れちゃったわ」

「興味がなかったし、なくても困らなかったものね」

 

 そんな三人の目の前には、炭と化した物体が山積みになっている。

 形も大きさも不揃いだが、とにかく真っ黒。

 試しにフォークを突き立ててみたところ、硬すぎて弾かれてしまうレベル。

 そして、キッチンにはタマネギの皮や肉のトレイ、卵の殻などが散乱していた。

 

「ハンバーグなんて、材料混ぜて丸めて焼くだけって言わなかった?」

「私に言わないでよメグミ。ねえ?」

「ルミの言う通りよ。やっぱり、温めるだけでいい奴にしない?」

「それじゃ意味ないし、隊長がっかりするわよ?」

「そりゃそうなんだけど……でも、これじゃなぁ」

「メグミが言い出したんだから、何とかなさいよ。サンダース大付属出身なら、ハンバーガーよく食べてたんでしょ?」

「ちょっと、ルミもアズミも私にばっかり言わないでよ。そりゃ、確かにあの頃はハンバーガーとかハンバーグステーキとか食べる機会は多かったけど……」

「けど、何だよ?」

 

 メグミはふう、と息を吐いた。

 

「サンダース大付属は、食堂が充実してるの。だから自炊なんてする娘はほとんどいなかったし、たまに隊員の娘が作ってくれたりはしたけど」

「……まぁ、それもそっか。うちはもうちょっと自炊してたけど、それもやる娘が率先してたしなぁ」

「それを言われると、私のところも同じね。……でもメグミ、頼れそうなのはあなたのところぐらいじゃない?」

 

 二人に詰め寄られ、タジタジとなるメグミ。

 

「……後輩達に頼んでみてもいいけど。あまり期待しないでね?」

「それでも、ないよりはいい!」

「そうね。時間もあまりないし、可能性に賭けましょう」

 

 

 

 翌日。

 一機のヘリが、学園艦に着陸した。

 降り立ったメグミら三人を、不機嫌さを隠そうともしない人物が出迎えた。

 

「ようこそ、黒森峰女学園へ。隊長の逸見エリカです」

「突然ごめんなさいね。大学選抜チーム中隊長のメグミです。それにアズミとルミ、宜しくね」

「……宜しくお願いします。それで、ご用件は?」

 

 盛大に溜息をつきながら、エリカは三人を代表して前に出たメグミを見る。

 まほから戦車道チーム隊長の座を受け継いだエリカは、日々多忙だった。

 強豪チームの隊長として優勝一回、準優勝二回の実績を誇るまほ。

 その後任であるエリカにかかるプレッシャーは尋常ならざるものがあり、エリカもまた必死にそれに応えようとしていた。

 ……そんな中。

 サンダース大附属前隊長から、まほを通して三人がエリカに面会の申し入れがあった。

 断る事も出来た筈だが、エリカはそうしなかった。

 敬愛するまほからの頼みという事もあったが、黒森峰隊長としての自覚からだった。

 とはいえ接点が特にある訳でもなく、スケジュールを割いての事だけに不機嫌が顔に出てしまっていた。

 

「逸見さんは、ハンバーグが好きって聞いたのだけれど本当?」

「? ええ、まぁ」

 

 怪訝な顔をするエリカ。

 それはそうだろう、ほとんど初対面同然の相手にいきなり食べ物の話を切り出されたのだから。

 が、メグミは意に介する素振りも見せずに続けた。

 

「それなら、作るのも得意よね?」

「得意と言うか……嫌いではないですけど」

「じ、じゃあ! 目玉焼きハンバーグとかも?」

 

 ルミが身を乗り出す。

 

「目玉焼き……? ハンバーグはハンバーグでは?」

「それじゃダメなのよ!」

 

 アズミがエリカに迫る。

 思わず後ずさりしてしまうエリカ。

 

「ちょ、ちょっと! 一体何なんですか」

「……実は」

 

 メグミは、事情を語り始めた。

 

 

 

「……そういう事でしたか。でも、それなら私じゃなくたって誰か他にいるでしょうに」

「でも、それじゃ隊長に喜んで貰えないかも知れないって」

「どうせなら、美味しいハンバーグをご馳走してあげたいし」

「私達、隊長の喜ぶ顔が見たくって」

 

 三人の言葉に、エリカは考えこむ。

 

「隊長のために、ですか」

「ええ。私達、隊長を心から尊敬してるの」

「あなた達との試合には負けてしまったけど、愛里寿隊長の指揮は本当に凄いからね」

「そんな隊長のために何か出来る事はないかって思ったの」

「……事情はわかりました。ですが、料理というならもっと上手い娘がいると思いますよ。例えばⅣ号の通信手とか」

 

 エリカがそう言うと、三人は頭を振った。

 

「武部沙織さんでしょう? それは調べたわ」

「でも、ねぇ……」

「彼女には頼めないの」

「どうしてですか?」

「隊長とね、大洗の隊長は仲良しじゃない? そんなところに行ったら隊長に知られちゃうから」

「……料理ができるって事にしてるからね、私達」

「隊長にウソついてました、なんて今更言えないのよ」

「全く……。最初から素直にそう言えばこんな事にはならなかったんじゃないですか?」

 

 シュンとなる三人。

 

「……でも、隊長のためにって言葉にウソはないようですね」

「え?」

「じゃあ……」

「協力してくれる?」

「仕方ないでしょう。断ったら何をしでかすかわからないという顔をしているんですもの」

「ありがとう!」

「やりぃ!」

「やったわ!」

 

 三人は、一斉にエリカに抱きついた。

 

「ちょ、ちょっと! 誰か助けなさいよ!」

 

 周囲にいる黒森峰の隊員たちは、暖かい目で遠巻きにエリカ達を見るばかりだった。

 

 

 

「いきなりフライパンに油を敷かないで!」

「え? そうなの?」

「そっちは卵をもっと綺麗に割って! 殻が混じってるわよ」

「難しいなぁ……」

「玉ねぎはみじん切りって言ったでしょ、もっと細かく!」

 

 黒森峰女学園の家庭科室を借りての、エリカの料理教室。

 基本からなっていない三人に、エリカの容赦無い指導が始まった。

 メグミらがそう望んだ事であり、最初は戸惑っていたエリカもあまりの体たらくに鬼軍曹と化していった。

 

「ハァ……。本当に料理全くやった事ないのね」

「サンダース大付属では必要がなかったから」

「継続高校も同じく。まぁ、やる娘はやってたけど」

「BC学園もね。黒森峰女学園は違うのかしら?」

「……ま、ウチもやらない娘はやらないわね」

 

 エリカは、脳裏を過ぎったまほのイメージを慌てて振り払った。

 

「だいたい、作り方なんて今時ネットや本がいくらでも出てるでしょう?」

「そうなんだけど……もっと簡単かと思って」

「継続じゃ味付けはシンプルが一番って感じだったし」

「材料さえ揃えれば、後は特訓すればいけると思ったのよ」

「いくら何でも行き当たりばったり過ぎよそれは。ああ、火が強すぎる!」

 

 エリカの悪戦苦闘は、続いた。

 

 

 

 そして。

 

「うわぁ……」

「これは……」

「目玉焼きハンバーグ!」

 

 失敗を重ねながらも、漸く彼女達が目標とする物が完成。

 げっそりしながら、エリカもやっと合格点を出した。

 ソースを作るところまでは諦め、最初から出来合いのテリヤキソースを使う事で妥協。

 付け合せの野菜も、カット済みの物を使う事に。

 流石にハンバーグそのものと目玉焼きは完全自作。

 それでも、短時間に形になっただけに三人の喜びもひとしお。

 

「ね? 試食してみない?」

「賛成!」

「いいわね」

 

 そんな三人に呆れながら、エリカはナイフとフォークを用意した。

 

「まさか、これは使えるんでしょうね?」

「それは大丈夫。じゃ、いただきます!」

 

 メグミが先陣を切り、ハンバーグにナイフを入れた。

 程良い硬さのハンバーグは、軽い弾力があった。

 

「ちょっと硬いかしら?」

「隊長の好み、聞いておけば良かったなぁ」

「それよりも、ちゃんと火は通ってる? 生焼けとかダメよ?」

 

 やいのやいの言いながら、メグミが切り分けたハンバーグを口に運ぶ三人。

 そして、顔を見合わせた。

 

「これ……」

「旨い……よな?」

「美味しいわ!」

 

 エリカも少し切り分け、フォークで口に運んだ。

 ゆっくりと咀嚼し、飲み込む。

 

「確かに硬いわね、少し焼き過ぎたようね。でも、最初から見ればだいぶマシじゃないかしら?」

「じゃあ逸見さん、ベストには程遠いという事かしら?」

「これで合格点なんて出すのは私のプライドが許さないわよ、アズミさん」

「あちゃー。やっぱ鬼教官は厳しいね」

「でも、そのぐらいじゃないとダメかも知れないわね。逸見さん、もう一度作ってみたいの。いい?」

「いいわよ、ダメと言っても食い下がりそうな顔してるもの。……でも、嫌いじゃないわアンタ達のそういうところは」

 

 エリカの言葉に、三人はパッと顔を輝かせる。

 

「ありがとう! 嬉しいわ」

 

 そう言って、アズミはエリカを抱き締めた。

 身長差のせいもあり、その見事な胸部装甲に顔を埋めるような格好になるエリカ。

 

「ち、ちょっと!」

「アズミばかり狡いぞ! 私も頬擦りしちゃう」

「抜け駆けは許さないわよ、ルミ!」

「い、いい加減にしなさい!」

 

 揉みくちゃにされてしまうエリカ。

 ……その後、三人が正座で説教されたのは言うまでもない。

 

 

 

 数日後。

 

「……何よ、コレ?」

 

 エリカの部屋に、大量の荷物が届けられた。

 赤ワインにオレンジピール、シナモン。

 そして、アイスバイン。

 ハンバーグばかりが好物と勘違いされる事もあるエリカだが、どうやら送り主はそれ以外の好物を把握しているらしい。

 

「そりゃ、確かにグリューワインとアイスバインは好きよ。でも、もうちょっと量を考えてほしいわよね全く」

 

 荷物に添えられた手紙の封を切りながら、エリカは溜息をつく。

 差出人は、メグミらだった。

 御礼の言葉と共に、数枚の写真が同封されていた。

 彼女らの隊長、愛里寿が笑顔でハンバーグを食べる姿。

 三人が愛里寿を囲んでVサインを決めている写真もあった。

 

「上手く行ったようね。まぁ、そうでなかったら私が苦労した甲斐がないけど」

「エリカさん、どうかしたの? 何か嬉しそう」

「いっ?」

 

 慌ててエリカが顔を上げると、小梅が入口で首を傾げていた。

 

「あ、アンタ! いつからそこにいたの?」

「ついさっきだけど。ちょっと、エリカさんに報告があったんだけど……後にした方が良さそうね。じゃあ、また」

「ちょ、ちょっと待ちなさいって!」

 

 慌てて後を追うエリカ。

 その手に、しっかりと手紙を握り締めながら。




秋山殿の話も修正してありますので、宜しければ。
澤ちゃんの方はもう暫しお待ちを。

追伸
日野屋商店さんでお会いした方、大変お待たせしました。
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