本編の開始前から劇場版アフターまでの流れとなります。
ちょっと書き方を変えています。
なお、劇場版のネタバレ全開です。
未視聴の方はご注意下さい。
なお、セリフは若干変えてある箇所があります。
学園艦。
文字通り、学校を中心とした巨大艦である。
そのサイズは桁違いで、比較的小型とされる大洗女子学園のそれですら嘗ての巨大戦艦『大和』を軽く凌駕してしまう程。
それ故に建造費も維持費も莫大。
毎年の予算案作成時にも、その金食い虫ぶりは予算削減に血道を上げる財務省や政府批判を第一とする政治家から必ず槍玉に挙げられる。
所管する文部科学省でもそれは議論の対象となり、結果実績が乏しく艦齢も長い大洗女子学園は格好の的にされてしまった。
文科省としても税金の無駄遣い削減に協力しているという格好のアピールにもなり、浮いた予算で他の事業を進めたいという目論見もあった。
学園艦教育局長、辻廉太。
エリート揃いの文科省にあってひたすら学園艦教育局一筋に勤め上げ、その敏腕ぶりで出世街道をひた走ってきた。
まだ若い彼が局長としてその椅子に座っている事に、嫉妬はあっても異論を唱える者はいない。
彼は更なる高みを目指し、改革と称して学園艦の統廃合という歴代の局長が誰も着手しなかった案件に目をつけた。
幸い、トップである大臣は交代したばかり。
しかも、嘗てのような族議員ではなく教育行政には全くの素人。
辻のみならず、局長クラスにそっぽを向かれては組織を運営する事すら覚束ない人物だった。
百戦錬磨の官僚らしく、辻は周到な根回しと膨大な資料を武器として大臣に大洗女子学園の廃校を迫り首を縦に振らせる事に成功。
学園艦には生徒を含めて約三万人が居住しているが、廃艦後の割り振りについては総務省にいる同期に協力を要請。
縦割りと批判を受けがちな中央省庁にあって、辻は異質とも言える調整の達人でもあった。
そして全ての準備が整った後、彼は大洗女子学園生徒会長を呼び出した。
大洗女子学園は学校であり最高責任者は本来学園長である。
だが、病気を理由に学園長は生徒会長である杏を代理に指名。
辻も小娘の方が手玉に取りやすいと見て、それを認めた。
呼び出したのは杏だけであったが、何故か副会長の柚子と広報の桃が一緒にやって来た。
一人が三人でも変わりはないだろう、と辻は三人を局長室に通した。
そして、用意した資料を手渡し話を始めた。
近年、大洗女子学園は目立った活動実績がない事。
生徒数も年々減少傾向にある事。
学園艦自体の老朽化が進み、艦の維持運用が難しくなってきている事。
全てが事実であり、疑念を抱かせるような隙は見せなかった。
辻としてはそれを突きつけた上で、廃校に向けた準備をするよう仕向けるつもりであった。
……が。
計算し尽くしていた辻に対し、思わぬ誤算が生じた。
「一つ、宜しいでしょうか?」
「はい、伺いましょう」
「活動実績が乏しいから、と局長は仰せになりました。では何らかの活動で実績を残せば別という事でしょうか?」
杏がそこで食い下がったのだ。
文科省が戦車道世界大会誘致に全力を挙げていて、その為に全国の学校に対して戦車道の奨励を行っているのは周知の事実。
杏曰く、その奨励に従い戦車道を取り入れるなら実績として認められるのかと。
辻にしてみれば想定外の反撃とも言えたが、彼とて高級官僚。
動じる素振りも見せず、それ自体は良い事だと答える。
が、それだけで自分の押し進めるプロジェクトを取り止めるつもりは毛頭ない。
そこで、彼は条件を設けた。
戦車道を始めるだけでは廃校撤回は認められないが、今年度開催の高校戦車道大会で優勝すれば別……と。
戦車道自体数十年前に途絶えてしまっている学校にはあまりにも無茶な条件であり、これで泣き寝入りだろうと辻はほくそ笑んだ。
「それで構いません。もし優勝したら、廃校は撤回されるのですね?」
「……もし、本当に優勝できたのなら前向きに検討すると申し上げておきます」
戦車すら碌に持たない素人集団があっさり勝ち進める程戦車道は甘くない。
いや、初戦敗退の方が圧倒的に確率が高いと言えよう。
そう思い直し、辻は三人を見送った。
……よもや、彼の計算を覆すイレギュラーな存在が大洗女子学園に加わるなどとは微塵も思わずに。
新年度になり、辻は杏との口約束など御構い無しに着々と準備を進めていた。
巨大な学園艦ともなれば、解体するだけでもかなりの大仕事。
作業を請け負える業者も如何に造船大国の日本とは言え数は少なく、また長期に渡る作業となる為に工程の打ち合わせも欠かせない。
学園の生徒もただ転校させれば済む問題でもなく、各地の学校に分散させる必要がある。
意図的に散らばらせるというより、いくら生徒数減少傾向の大洗女子学園とは言え人数は数十人という訳ではない。
一度にそんな人数を受け入れられる学校など見つかる筈もなく、カリキュラムなどの違いから受け入れ自体を渋られたりもする。
いくら優秀な辻でも、全てを思い通りに動かせる訳もない。
兎に角、全てが順調に運んだとしても完了までには相応の時間がかかる案件である。
それらの調整を行ううちに、彼は今年度末での廃校ではスケジュール的に無理という部下の報告を受けた。
学園艦の解体が予想以上に困難で、引き受ける業者によると遅くとも9月には着手しなければ無理との事。
となれば、全てを前倒しで進めねばならない。
学園艦教育局は、文字通り修羅場モードとなった。
辻も毎日深夜まで残業し、通常業務と合わせて膨大な書類と格闘する羽目となってしまう。
その書類の中に、大洗女子学園が高校戦車道連盟に参加したという通知が混じっていた。
だが、彼は一枚の書類を呑気に眺めるだけの余裕などなかった。
軽く目を通しただけで、記憶の片隅にすら留めなかった。
初夏になり、辻は漸く一息つける状態になっていた。
そんなある日。
彼は局長室で茶を啜りながら、新聞を広げていた。
政治資金絡みで外務大臣が引責辞任に追い込まれたというニュースが紙面に踊っていた。
幸い、今の上司である文部科学大臣はスキャンダルとは無縁。
省内が無駄に混乱せずに済む上、基本官僚の言いなりである為に辻に取っては願ったり叶ったりの状態だった。
内閣総辞職ともなれば別だが、今のところその気配はない。
彼が紙面をめくると、スポーツ欄に小さな記事を見つけた。
高校戦車道全国大会の組み合わせが決まったという内容だった。
その中に、大洗女子学園の名前もあった。
そして、トーナメント表を見た辻は思わずニヤリとしてしまう。
対戦相手は、強豪のサンダース大付属高校。
日本一裕福な学校で、戦車の保有台数と隊員数も日本一。
一回戦のレギュレーションは十両までという制約は、物量で押せ押せのサンダース大付属には足枷になるかも知れない。
が、対する大洗女子学園の戦車はたったの五両。
それも、嘗て戦車道を止める際に引き取り手のなかった残り物をかき集めただけの雑多な戦車隊。
バランスは取れているが、装甲は薄く主砲の威力も今ひとつのⅣ号戦車。
中戦車とは名ばかりの威力のない主砲と紙装甲の八九式中戦車。
そもそもが対戦車戦を考慮しての設計ではない軽戦車、38(t)。
75ミリ長砲身は脅威だが、所詮は自走砲でしかないⅢ号突撃砲。
主砲は二門あるが車高が高く、中途半端な性能のM3中戦車。
一方のサンダース大付属は第二次大戦のアメリカ軍を代表するM4シャーマンがずらり。
それに17ポンド砲を搭載したファイアフライが加わる。
辻は戦車道の専門家ではないが、素人が見ても大洗女子学園の勝率は限りなく低いとしか思えないだろう。
つまり、その時点で廃校は確定となる。
時期が繰り上がる事で多少揉めるかも知れないが、そこは根回し済み。
辻は、これまでの苦労が実る事を微塵も疑わなかった。
戦車道大会は順調に日程が消化され、ベスト4が出揃った。
黒森峰女学園、プラウダ高校、聖グロリアーナ女学院。
そして、大洗女子学園。
辻は軽い驚きでその知らせを受け取った。
あくまでも軽く、ではあるが。
大洗以外の三高はいずれも優勝か、準優勝経験のある強豪揃い。
まぐれにしてもよほどの強運か、と辻はパソコンで大洗女子学園戦車道チームの情報を調べてみる事にした。
そして、思わず呟いてしまう。
「西住……? 西住と言えば、あの西住流か?」
大洗女子学園戦車道チームの隊長、西住みほ。
その苗字が気になった彼は、みほについてインターネットで検索。
元黒森峰女学園で戦車道チーム副隊長を務め、その後大洗女子学園に転校したとあった。
黒森峰女学園の隊長が西住まほである事は流石に辻も知っている。
そして、この二人が実の姉妹である事もすぐに判明。
それで、大洗女子学園の快進撃について得心が行った辻。
姉ほどの知名度はないが、あの西住流の血を引く以上は優秀なのであろう。
この短期間で、少なくとも準決勝まで残れるチームに仕上げたのだから。
「だが、戦車道は個人だけの力では勝てない。ツキもこれまでという事でしょう」
戦車道関係者からすれば大いなる番狂わせかも知れないが、それも此処まで。
準決勝の相手は、昨年の優勝校であるプラウダ高校。
まともにぶつかれば万に一つも大洗に勝機はない。
となれば奇策を取るより他にないだろう。
「最も、奇策が通じる相手ならば……ですけどね」
辻は含み笑いをすると、パソコンの前を離れた
更に数週間後。
高校戦車道全国大会は、幕を閉じた。
大洗女子学園優勝という、前代未聞の快挙と共に。
マイナーな武芸でしかなかった戦車道はこのニュースで大いに盛り上がり、世界大会誘致を目指す文科省内でもその話題で持ちきりとなった。
「局長。……如何なさいますか?」
号外を握りしめた部下が、顔面蒼白になって辻の前にやって来た。
「如何、とはどういう意味かな?」
「ですから、これです!」
部下は新聞を叩きつけた。
「局長は、大洗女子学園の生徒会長と約束したと伺いました。優勝すれば廃校は撤回すると」
「落ち着き給え、君」
「これが落ち着いていられますか! もしそうなれば今までの苦労が全部水の泡です!」
「確かに、廃校を撤回すればそうなる。だが、私が約束したという証拠が何処にある?」
冷徹に言い放つ辻に、部下はギョッとなる。
「口約束ならした。優勝すれば、廃校の撤回について前向きに検討する……と」
「き、局長……。しかし、それでは」
「君も官僚ならばわかるでしょう。検討するイコール決定ではないという事ぐらい」
「…………」
「戦車道が盛り上がる、大いに結構。だがそれとこれとは話が別だ、大洗の廃校は予定通り進める」
そう言って、辻は席を立つ。
「ど、何方へ?」
「来週は出張に出る。その為の打ち合わせだ、少し外すから電話は取り次ぐな」
それだけを言い残し、辻は局長室を出た。
そして、呟いた。
「全く、何を狼狽えているのだ。全てはスケジュールで進めているのだ、今更何も変えられんよ」
八月末。
大洗の町は、大賑わいを見せていた。
大洗女子学園・知波単学園連合対聖グロリアーナ女学院・プラウダ高校連合の、戦車道高校大会記念エキシビションマッチが開催され全国から大勢のファンが詰めかけていた。
そんな中、喧騒を他所に辻は大洗港に降り立つ。
停泊する学園艦を見上げ、そしてタラップへと向かった。
「あ、此処は立ち入り禁止です」
白いセーラーを来た女子生徒が、辻の行く手を遮る。
大洗女子学園船舶科の生徒だった。
辻は無表情にポケットに手をやり、身分証を取り出す。
「文部科学省学園艦教育局局長、辻だ。学園長に話がある、通らせて貰う」
「え……?」
気圧される生徒を押しのけ、辻と同行するスタッフはタラップを登り始めた。
そして、夕刻。
「何よこれ!」
大洗女子学園の校門前に、戦車道チームが戻ってきた。
封鎖された校門を見て、全員が混乱し騒いでいた。
「君達。勝手に入っては困るよ」
背後から、声をかける辻。
生徒だから中に入れろという声を受け流し、
「君達はもう生徒ではない。後の事は君から説明しておき給え」
先に呼び出し決定事項を伝えておいた杏にそう告げた。
そのまま、立ち去る辻。
「漸く、終わったな……。長かった、此処まで」
そう独りごちながら。
だが、事態は彼の予想しない方向へと進んでいく。
数日後。
杏は戦車道連盟会長、蝶野強化委員、更には高校戦車道連盟責任者まで引き連れ文科省に乗り込んできた。
その前にも一度抗弁に訪れていたが、口約束を盾に廃校撤回を迫る杏を軽くあしらった辻。
杏一人でまたやって来たのなら追い返す事も出来たが、流石にこの面子を門前払いは出来なかった。
特に厄介なのが、高校戦車道連盟責任者である西住しほ。
大洗女子学園チーム隊長西住みほの母親である事は当然、辻も承知している。
娘可愛さのあまりやって来ただけならば、彼も応じようがあった。
が、しほは正論でぶつかってきた。
「優勝する程実力のある学校を廃校にするのは、若手育成を目指す文科省の理念に反するのではありませんか?」
「しかし、先生。まぐれで優勝した学校ですし……」
辻は返答に窮してそう言ったが、それが却ってしほの怒りを買ってしまう。
戦車道にまぐれなし、あるのは実力のみ。
それが理解できないのなら、プロリーグ設置委員会の委員長を辞退するとまで。
流石の辻も、そこを突かれては黙らざるを得ない。
どうすれば認められるのか、と迫られた彼は思わず、
「まぁ……大学強化チームに勝ちでもすれば……」
と口走ってしまった。
すると、待ってましたとばかり杏が誓約書を書けと言い出し他の三人も頷く始末。
辻は謀られたと気づいたが、後の祭り。
その場で覚書を作らされ、しほと戦車道連盟会長が署名。
辻は大学戦車道連盟の同意も必要だと逃げを打ったが、責任者の島田千代がしほの説得にあっさりと同意。
結果、自身も連署させられる事になってしまう。
それだけでは安心できなかったのか、大臣の同意も得るように強く迫られてしまい辻は全面降伏の格好となってしまった。
が、彼はやられっぱなしで済ますような性分ではなく。
そもそも、大学選抜チームは三十両。
対する大洗女子学園は八両。
いくらみほの神がかり的な指揮と個々の力量があるとは言え、数の暴力には逆らえない。
ましてや大学選抜の車両はセンチュリオンにパーシング、チャーフィー。
第二次大戦時の車両という条件こそ満たしているものの、戦後も活躍したような車両ばかり。
試合形式も一発逆転があるフラッグ戦ではなく、殲滅戦とする。
世界大会がこの形式だからという事で押し通し、それで進めてしまえばいい。
ここまでやるか、という一方的な条件を整えた。
そして大学選抜の指揮官は天才少女であり島田流家元の娘、愛里寿。
今度こそ、大洗女子学園に勝ち目はない。
「だが、もう一つ手を打っておくか。大洗の諸君、奇跡は二度起きないという事を分からせてやろう」
クククと、辻は不気味に笑った。
いよいよ、試合当日。
辻は試合会場に足を運んでいた。
大洗女子学園に引導を渡す瞬間をこの眼で確かめる為に。
……が。
試合開始直前になり異変が起きた。
みほの姉、まほが黒森峰女学園の戦車四両と共に会場に現れた。
大洗女子学園への短期転校と、試合への参加承認を携えて。
辻は隣りにいた戦車道連盟会長に卑怯だと罵るが、会長は手続きを踏んで私物を持ち込んだだけと柳に風。
そのうちにサンダース大付属やプラウダ高校、聖グロリアーナ女学院などの主力戦車が続々と搭乗。
あっという間に大洗女子学園は三十両を揃えてしまう。
直前での増員はルール違反だと審判長の亜美に抗議する辻だったが、試合相手の愛里寿が受けて立つと即答。
辻の思惑は外れ、試合は始まった。
(まだだ。まだアレがある……いい気になるなよ、大洗女子学園!)
一人ドス黒い執念を燃やす辻だった。
そして。
隠し玉であるカール自走臼砲は序盤で大洗女子学園チームに手痛い打撃を与える事に成功。
途中で発見され撃破されてしまうものの、元々大学選抜に有利だった戦況を更に傾かせた。
その後も愛里寿の的確な指揮で大洗女子学園チームは追い詰められたが、あと一歩のところで状況が変わってしまう。
個々が独自の判断で動くみほ得意の戦況になり、気がつけば大学選抜チームは愛里寿搭乗のセンチュリオンのみ。
大洗女子学園チームもみほのⅣ号とまほのティーガーの二両だけが残っていた。
……激しい戦いの末、みほはまほとのコンビネーションでセンチュリオン撃破に成功。
辛くも、大洗女子学園の勝利という結果に終わった。
歓喜の渦が巻き起こる会場で辻は一人、灰になっていた。
数日後。
辻は、文部科学大臣に呼び出された。
「辻君。何故呼ばれたか、わかっているだろうね?」
「……はい」
「ならば宜しい。新しい辞令だ、引き継ぎはすみやかに行うように」
大洗女子学園の廃校撤回は、それだけで済む問題ではなかった。
学園艦解体の準備はもう進んでいて、業者が受け入れを待つばかりとなっていた。
生徒達の転校についても細部までは決まっていなかったが、その方向で大筋の調整は終わっていた。
その為に当然予算は費やされていたし、それが全て白紙だからそれで終わりとはならない。
キャンセル料の支払いは発生するであろうし、下手をすれば訴訟沙汰になる恐れすらあった。
辻の根回しが、結果として全て裏目に出た格好だった。
マスコミはここぞとばかりにバッシングを始めるだろうし、ネットではもっと辛辣な扱いになる事は目に見えている。
その矛先は、辻本人は勿論の事文部科学大臣と文部科学省全体に向けられるかも知れない。
辻が左遷される事は、決定事項と言えた。
「初等中等教育局でも頑張り給え。下がって宜しい」
「……失礼します」
辻は、十歳は老けたかのような雰囲気を漂わせていた。
そこには、少し前までのキレ者エリート官僚の面影は皆無。
そして、そんな彼に近寄ろうとする者はいない。
嘗ての部下や同僚も。
……彼の妻と子供もまた、家を出て行ってしまう。
閑職に回された辻は、相変わらず灰になったまま。
見かねた上司が休養を勧め、彼があてもなく電車に乗った。
そして、ふと気がつく。
「……私は……どうしてこんな場所に」
茨城県東茨城郡大洗町。
自分の人生を狂わせる事になった、大洗女子学園が所属する町。
何処をどうやって辿り着いたのかわからないまま、彼は駅舎を出た。
港の方を見れば、巨大な学園艦が威容を誇っていた。
彼はふらふらと、港の方へと歩き出す。
そのまま、車道を横切ろうとした。
「危ない!」
急ブレーキと共に、車が停まった。
そして、何人かが降りて彼の方へと駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか!」
「いきなり飛び出したりしたら危ないですよ……あら?」
「……五十鈴殿。この人は、まさか」
「あーっ! あの時の」
「役人か」
奇しくも、市街地を走っていたⅣ号の面々だった。
ふらつきながら車道に出てこようとした男が、あの文科省官僚だった事に気付く。
「まさか、まだ懲りずに廃校を狙ってるの?」
「そうはさせませんわ」
「どうする? 学園に連れていくか」
「冷泉殿。いかに敵とは言え、民間人を捕虜にするのはどうかと」
「待って!」
みほが、仲間達を制した。
そして、辻の手を取って立ち上がらせる。
「約束通り、廃校を撤回していただいたんですよね」
「……え?」
訳もわからず見返す辻に、みほは微笑む。
「辛い戦いでしたけど、お陰で他の学校の方々とも仲良くなれました。これも、大洗女子学園を残す約束を守ってくれたお陰です。本当にありがとうございました」
「…………」
「それでは、私達はこれで。車には気をつけて下さいね」
頭を下げ、みほはⅣ号に戻る。
仲間達も何も言えず、辻を一瞥してみほに続いた。
Ⅳ号はバックして彼を避け、そのまま走り去った。
辻は、俯いた。
「……ありがとう……か。はは、はは……」
空虚な笑いが、青空へと吸い込まれていく。
勢いで書いてしまいましたが、果たして。