ガルパン短篇集   作:はるたか㌠

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ガルパン「もしも」シリーズ第2弾。
優花里がケイに好かれているのは勿論ですが、その出会いが同じ学校の先輩後輩としてだったら?
優花里視点で書いてみました。
なお、優花里がややチート気味かも知れません。

あと、オリキャラが一人だけ登場します。
と言ってもチョイ役ですけど。


もし優花里がサンダース大付属に合格していたら

「イヤッホホホゥ!」

 

 思わず叫びながら、ガッツポーズであります。

 

「優花里、うるさいわよ」

 

 おっといけません、母に怒られてしまいました。

 私は見ていたメールをプリントアウトして、下に降りました。

 

「お母さん、お母さん」

「どうしたの、優花里?」

 

 母はそれでも手を休め、此方に来てくれました。

 

「これ、見て貰える?」

「何かしら……あら?」

 

 母の顔が、驚きに満ちていくのがわかります。

 

「優花里。凄いじゃない!」

「うんっ! やりました!」

 

 お店を掃除していた父が、何事かと振り向きました。

 

「何事だ、一体」

「お父さん。優花里がやったんですよ!」

「優花里が?」

 

 母が、プリントした紙をお父さんに手渡しました。

 

「……こ、こりゃ。本当か?」

「うん!」

「そ、そうか……。おめでとう、優花里」

 

 そう言いながらも、父は少し寂しそうです。

 私は、念願のサンダース大学付属高校に合格しました。

 ですが、これから三年間は長崎で過ごす事になります。

 希望すれば両親も含め、学園艦に引っ越す事も可能です。

 ですが、父がそれを望みませんでした。

 地元であればまだしも、長崎は遠過ぎる……この茨城を離れるつもりはないとの事でした。

 嬉しい事には違いないのでありますが、父のこんな顔を見せられるとそうとばかりも言えません。

 

「お父さん。優花里の前でなんて顔をするんですか」

「け、けどなぁ」

「優花里が努力した結果なんですよ? お祝いしなきゃ」

 

 そう言って、母は私の頭を撫でました。

 母の言う通り、実はサンダース大付属に受かるのは大変でした。

 アメリカ風の学校ですから英語が出来なければ話になりませんが、それ以上に学費が高いのです。

 お金持ちばかりが集まる学校ですから仕方ないのではありますが、うちは残念ながら裕福ではありません。

 勿論、お金がなくても行く方法はあります。

 それは、奨学金制度。

 いくつか条件はありますが、成績が良くなければその資格も満たせなくなります。

 それを知ってからの私は、戦車の本を読んだりグッズを集める時間も惜しんで勉強に励みました。

 母は二つ返事で、そして父はしぶしぶではありましたが……私の決意に賛成してくれました。

 ……そして、見事結果を出す事が出来ました。

 秋山優花里、張り切って参ります!

 

 

 

 そして、四月になりました。

 

「うわぁ……。凄い、凄いです!」

 

 目の前には、巨大な学園艦が停泊しています。

 日本でも最大級、戦車だけで五十両以上を一度に投入出来るという学校だけの事はあります。

 何もかもが大きく、圧倒されてしまいます。

 私達新入生は、学校のあちこちを案内されました。

 ……そして、いよいよ戦車の格納庫へやって来ました。

 

「うわぁ……。凄い凄い! M4シャーマンがズラリと! あ、あっちはM5スチュアートであります!」

「あ、コラ! 勝手に行動するな!」

 

 思わず駆け寄ろうとしてしまい、引率の先輩に怒られてしまいました。

 と、別の先輩がそれを制して私の方を見ています。

 

「いいじゃない。もっと近くで見たら?」

「ふ、副隊長!」

「い、いいんですか!」

「オフコース! 戦車が好きみたいね、あなた?」

「はい! そりゃもう!……ハッ?」

 

 気がつくと、周囲の目が全て私に向いていました。

 

「す、すみません……」

「ノープロブレムよ。あなた、名前は?」

「は、はい! 第六機甲師団所属、オッドボール三等軍曹であります!」

「ホワット? ……プッ! アッハッハ!」

「……あ、ああっ! し、失礼しました!」

 

 その先輩は吹き出し、お腹を抱えて爆笑してしまいました。

 と言うか、あああ何を言ってるんでしょう私は!

 

「す、すいません! その、私はオッドボールではなく、秋山優花里と申します!」

「な、なんでいきなりオッドボールなのよ。あー、ダメ。笑いが止まらない!」

「いい加減にしろ、ケイ。君、新入生にしてはいい度胸だな」

 

 今度は髪をショートにした、顔にソバカスのある先輩が出てきました。

 ……この顔、見覚えがあります。

 

「あの。もしや、ナオミ殿でありますか?」

「ああ。私を知っているのかい?」

「勿論であります! 全国の高校でもナンバーワンの砲手とか!」

「へえ。ナオミも有名になったものね」

 

 爆笑していた方が、やっと収まったようです。

 

「あ、自己紹介が遅れてゴメンね。私はケイ、戦車道チームの副隊長よ。よろしくね」

 

 そう言って、ケイ殿は右手を差し出して来ました。

 恐る恐る握り返すと、ケイ殿は力を込めて来ます。

 

「痛い、痛いですって!」

「そう? でもこれ、ウチじゃ普通よ?」

 

 こんなところまでアメリカ風のようです。

 

「でも、あなたみたいな娘なら大歓迎よ。是非、チームに加わってね?」

「い、いいのでありますか?」

「ウェルカムよ。ね、ナオミ?」

「ああ。良かったら放課後、此処に来るといい。練習を見学させてあげるよ」

「本当でありますか? 是非!」

 

 入学していきなりシャーマン軍団を見られるとは。

 頑張った甲斐がありました!

 

「ちょっとアンタ。感激するのはいいけど、みんな行ってしまったわよ?」

「……え? ああっ!」

 

 我に返ると、本当に誰もいなくなっていました。

 私に声をかけてくれた一人を除いて。

 

「す、すみません。気付きませんでした」

「全く、世話が焼けるわね。ホラ、行くわよ?」

「は、はい。あの、私は……」

「覚えたわよ、オッドボール」

「ええっ? それは違いますって!」

「じゃあね、待ってるわよオッドボール」

「ケイ殿まで!」

 

 私は件の生徒に引きずられながら、ガレージを後にしました。

 ちなみにその後自己紹介されました。

 アリサ殿、だそうです。

 ソバカスと控えめなツインテールが印象的な人です。

 

 

 

 放課後になりました。

 ガレージに行くと、沢山の一年生が集まっています。

 流石強豪校、戦車道の人気も目を見張るものがあるようです。

 

「アリサ殿。凄いですね!」

「本当に戦車が好きなのね、オッドボールは」

「うう……もうそうとしか呼ばれないのでありますか?」

「いいんじゃない? 優花里よりもこの学校らしくって」

「そ、そうかも知れませんが……」

 

 アリサ殿も戦車道を履修するつもりらしく、こうしてご一緒させていただいています。

 一見怖そうな印象ですが、話してみるとなかなかいい方です。

 

「ヘーイ! オッドボール!」

 

 ケイ殿が私を見つけ、手を振っています。

 お陰で一年どころか、戦車道チームのみなさんまで私を見ています。

 ケイ殿とナオミ殿、そして三年生の先輩が私の前へとやって来ました。

 

「ケイ、知り合い?」

「イエス、マム! さっきのオリエンテーションの時に」

「ふーん、そう。私は戦車道隊長のレイコよ、宜しくね」

 

 こちらの方は背が高く、スレンダー美人でありますね。

 

「は、はい。私は秋山優花里であります!」

「あれ? オッドボールじゃないの?」

「い、いやあれはですね……」

「オッドボールでオッケーよ。だってクールじゃない?」

「良くわからないわね。まあ、ケイがそう呼ぶならオッドボールでいいわ」

「え、ええっ?」

「諦めなさい。もう無理っぽいわよ」

「アリサ殿まで……」

「隊長と副隊長、ああなったら言っても無駄だ」

 

 ナオミ殿が、ポンポンと私の肩を叩きました。

 

「さ、じゃあ始めましょうか。ケイ、ナオミ」

「イエス、マム!」

「イエス、マム」

 

 恥ずかしいのでありますが、もう取り消しは効かないようです。

 ……どうやら、三年間はそう呼ばれて過ごす事になりそうです。

 

 

 

 体験という事で、早速シャーマンに搭乗させて貰える事になりました。

 勿論、いきなり操縦や砲撃が出来る訳ではありませんが。

 シャーマンは中が広いので、正規の乗員以外にも乗る事が出来るようであります。

 ヘルメットを渡され、案内されました。

 ……ただ。

 

「あの……」

「どうしたの、オッドボール?」

「いえ。体験搭乗はとても嬉しいのでありますが……どうしてケイ殿が車長の車両なのですか?」

 

 そうです。

 五十両も用意されたシャーマンの中から、私は何故か副隊長車に連れて来られてしまいました。

 

「嫌だった?」

「い、いいえ! 勿論ありがたいのであります!」

「ならいいじゃない。私、オッドボールの事気に入っちゃったし」

「は、はぁ……」

「それより、オッドボールは戦車道未経験だったよね?」

「はい。機会もありませんでしたし」

「そっか。ま、楽しんでみて? ゴーアヘッド!」

 

 ガクンと揺れ、シャーマンが動き出しました。

 あのシャーマンに、今自分は乗っているのであります!

 

「イヤッホゥゥゥ! 最高だぜぃ!」

 

 思わず叫んでしまいました。

 ……あ。

 ケイ殿だけでなく、乗員のみなさんが驚いた顔になっているようです。

 

「オッドボール……人が変わったわよ?」

「……す、すみません」

「タンク・ハイね。アハハ、やっぱりあなた最高よオッドボール!」

 

 バシバシと、ケイ殿に背中を叩かれてしまいました。

 手加減なしなので痛いのですが、ケイ殿は意に介した様子もありません。

 

「副隊長、隊長車から通信です」

「ラジャー」

 

 やれやれ、解放されたようであります。

 ケイ殿には完全に気に入られてしまいましたが、入学早々大丈夫なのでしょうか。

 もっとも、サンダース大付属は車両も隊員数も日本最大。

 なんと三軍まであるぐらいで、ケイ殿からご好意をいただけたとしてもそれだけで試合に出られる訳ではありません。

 練習を重ねて実力を見せ、一軍に定着して初めてそのご期待に添えると言えます。

 その為には並々ならぬ努力が必要でしょうけどね。

 

 

 

「プライベートルームまで隣とはね」

「偶然でありますね」

「……なんか、アンタとは腐れ縁になりそうな気がするわよ」

 

 割り当てられた寮は、アリサ殿と隣同士の部屋になりました。

 寮とは言え広々していて、自宅で使っていた部屋の倍以上。

 戦車グッズはあまり持って来られませんでしたが、これなら本を置くスペースには困らなさそうです。

 なかなか終わらないのを見てか、アリサ殿が手伝って下さっています。

 

「……アンタ、随分本が多いのね。これ全部戦車関連?」

「流石に教科書や参考書もありますが、大半はそうであります」

「趣味なんでしょうけど、これならちょっとした図書館ね」

「そう言えば、アリサ殿は機械弄りがお好きでしたよね?」

「そうよ。アマチュア無線の資格も持ってるし、戦車整備の経験もあるわ」

「凄いです! アリサ殿ならきっと一軍に上がれますよ!」

「そ、そう? アンタこそ、それだけ知識があるなら後は実技次第じゃない」

 

 照れ隠しでしょうか、アリサ殿はそっぽを向いてしまいました。

 先程アリサ殿の部屋も見せていただきましたが、見るからに高価そうな無線機がありました。

 その他にも様々な工具や部品をお持ちです。

 私にはメカニカルな知識はありますが、実際に触ったり仕組みを調べたりした経験はありません。

 アリサ殿ならば、優秀な通信手か整備士のどちらかになれるでしょう。

 

 コンコンとドアがノックされました。

 

「はい、どうぞであります」

「ハーイ! あら、アリサも一緒? 仲がいいのね」

 

 ケイ殿でした。

 タンクジャケットを無造作に羽織ったままですが、普段からあの格好なのでしょうか?

 

「わ、私は部屋が隣ですから。それに、荷物が多過ぎて手間取ってるみたいで見てられなくて」

「アハハ、でも仲が悪かったら手伝いなんてしないわよ?」

「ふ、副隊長……」

「それにしても、本当に凄い冊数ねオッドボールは。流石、噂の特待生だけはあるわ」

「え? オッドボール、アンタ特待生だったの?」

「え、ええ……まぁ。一応」

 

 アリサ殿は驚いたようです。

 サンダース大付属の奨学生はなかなか条件が厳しいと知ってから、私は必死に頑張りました。

 合格通知が来た時はそれだけで浮かれてしまい、詳細には気付きませんでしたが……。

 後日郵送されてきた書類を見て、成績優秀につき特待生という扱いになる事を知りました。

 在学中の成績次第では、奨学金の返還義務がなくなるようです。

 家は裕福ではありませんし、サンダース大付属の三年間で必要になる費用は社会人になっても何年で返せるかわからないぐらい高額です。

 ですから、それを知った時は驚きもしましたがそれ以上に喜びがありました。

 天才や秀才とは程遠い私は、兎に角努力するしかありません。

 ですが、結果は結果。

 その事には誇りを持っていますし、自信にもなりました。

 ……ただ、恥ずかしいので自分からひけらかすつもりはありませんけど。

 

「アリサは知らなかったの? 彼女、割と有名なのよ。期待のスーパールーキーとして」

「は、恥ずかしいから止めて下さいよ、ケイ殿」

「なんで? 本当の事だしいいじゃない」

「そ、そうでありますが……」

「だから、最初のオリエンテーションではみんなオッドボールには注目してたのよ? 勿論、私もね」

 

 そうとも知らず、私はシャーマンを目の当たりにしてハイテンションだったようです。

 

「だから、嬉しかったわよ。オッドボールが戦車道チームに来てくれて」

「なによ……。そんな凄い奴なら最初から言いなさいよ」

 

 アリサ殿が呟きました。

 

「すみません。私、今まで友達が出来た事もなくて……」

「ホワイ?」

「そうよね。見た感じ、ガリ勉って感じもしないし」

 

 私の告白に、お二人は意外そうな顔をされています。

 

「戦車にしか興味がなくて、話の合う友達もいませんでしたから」

「それは意外ね。そりゃ戦車道はマイナーな武芸だけど、今までに一人もそっちの知り合いもいなかったの?」

「はい。それに、サンダース大付属に入る為に頑張ったのは確かですが。まさか、特待生として迎えられるとは思っていませんでしたから」

「呆れた。それで控えめにしてても、あんなに戦車を見てはしゃいだら意味ないじゃない」

「……返す言葉もありません」

「そっか。いろいろあるんだ、オッドボールにも」

 

 そう言って、ケイ殿は私に向かって歩いて来ました。

 そして、いきなりハグされてしまいました。

 

「ケ、ケイ殿!」

「なら、私が友達第一号ってのはどう?」

「……え?」

「年上の友達は嫌?」

 

 私はブンブンと首を横に振りました。

 

「い、いえ。ただ、いきなりで何がなんだか」

「そう? 私はオッドボールみたいな娘好きだし、あなたが私を嫌いじゃなければだけど」

「め、滅相もない!……い、いいんですか?」

「オフコースよ。ね、アリサ?」

「わ、私もですか?」

「そ。友達は多い方が楽しいじゃない。あなたもいいわよね?」

「ま、まあ……。オッドボールも、悪い奴じゃなさそうですし……」

「あ、ありがとうございます!」

 

 信じられません。

 いきなり友達が出来ました。

 しかも、二人も。

 ……ですが、感動に浸る間もなかったようです。

 

「はい、決まりね! さ、二人とも行くわよ!」

 

 そう言うと、ケイ殿は私とアリサ殿の手を掴みました。

 

「行くとは、どちらにでありますか?」

「決まってるじゃない。新入生歓迎パーティーよ!」

「……そう言えば、そんな案内が来ていたような」

「アンタね、それ先に言いなさいよ!」

「二人が来ないから迎えに来たのよ。でも、来て良かったわ。じゃ、レッツゴー!」

「わわっ!」

「ひ、引っ張らないで下さいって!」

 

 いやはや、何ともパワフルな先輩に気に入られてしまいました。

 ですが、ケイ殿もアリサ殿もいい方ばかり。

 この学校に来て、良かったのであります!




このまま続けば、アリサの勝利のために手段を選ばない性格は少しは変わったんでしょうか……。

なお、本作に関しては大洗女子学園は廃校騒ぎに巻き込まれずにいる前提になっています。
もっとも、優花里が入学した頃にはそんな話は持ち上がっていませんでしたが。
ですので、みほと優花里が対戦するとすれば黒森峰とサンダース。
……接点ないまま終わりそうですね、どうも。
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