東方暇神録   作:大神 龍

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第十七話

「さて。やっと出発できるぜ」

 

 すでにボロボロの龍。その足元には縛られた文とその頬をつつくフェンリルがいた。

 

「よし。じゃあ探索隊を組もう。まず俺だな。文は撮影係及び肉壁な」

 

「そんなぁ!?一体私が何をしたって言うんですか!」

 

 文が叫ぶが、無視だ。

 

「で、フェンリルは戦闘係で良いな。レイヴンは置いていこう。絶対ケンカを売る。確信できる。で、俺が聞きたいのは、後誰が行くかってことだ」

 

「あ、じゃあ私はここで待ってよう!」

 

 予想外の一言。それはその場にいた全員を凍らせる。

 

「き…清花が…辞退するだと…?」

 

「龍さん…私、明日死ぬんでしょうか…」

 

「そんな…清花さんがこんな面白そうって龍さんが言うことに首を突っ込まないなんて…明日は幻想郷の結界が砕けるんでしょうか…」

 

 世界が終わるかのような発言。それを聞いて清花は、

 

「何よ!まるで私が行かないのが異変みたいに言わないでよ!」

 

「いや、だって…なぁ?」

 

「ですよねぇ?」

 

「全くです」

 

「ぶぅぶぅ!私だって行きたいけど、忘れ事したんだから仕方ないでしょ!?」

 

「ちなみに内容は?」

 

「いやぁ…この前転生させた人の寿命の変更を忘れちゃって…テヘ☆」

 

「バカだ!こいつ本物のバカだ!引っ捕らえろ!縛り上げる!」

 

「ちょちょちょ!一刻を争うレベルだよ!?いくら今は私たちと同じ時間帯で動いてるからって、来週には一気に200年経ってるかもしれないんだよ!?」

 

「メタ発言か!?メタ発言なのか清花!!」

 

「龍!それ以上いけない!」

 

 ハッ!と気付き、思わず行ってはいけないところに行きそうだった龍は正気に戻る。

 

「よし。とりあえず、天変地異レベルのイレギュラーはあったが、他行くのは誰だ?」

 

「あ~…俺も行って良いか?」

 

 そう言って手を上げたのは仁。

 

「おぉ、行くか?」

 

「いやぁ…話を聞いてた限り、知り合いな気がして…こっちに来てから見てないから行ってみようかと」

 

「知り合い…?まぁ、信じて行ってみるか!よし!ゴーゴーだ!で、他には?」

 

 すると、椛と青龍は、

 

「私は見張り(仕事)があるので」

 

「危険なところには行かない主義だから」

 

と、それぞれ断る。

 

「そうか…じゃあ、俺、フェンリル、文、仁の四人か。って、そういえば、ペストは?」

 

 龍の疑問。それはすぐに答えが出る。

 

「ここにいるじゃない」

 

 清花の方を向くと、そこには清花に抱かれたペストがいた。

 

「じゃあペストも置いていこう。じゃ、出発だ」

 

 そういうと、龍は文を引きずりながら玄関に歩いていく。

 

「あやや!い、痛いです!痛いですよ龍さん!」

 

「大丈夫。後で怪我は消してやるから」

 

「つまり慈悲はないんですね!?」

 

「正解」

 

 うぎゃー!と文が叫ぶが、そのまま彼らは出ていった。

 

「ふひゅう。じゃ、帰ろっか」

 

「私に決定権は無いわ」

 

「んもぅ、隙あらば殺しに来ちゃって。かわいいやつめ♪」

 

 ぷにぷにとペストの頬をつつくが、反応はほとんどない。

 

 ちなみに、今の殺しに来て、という発言は、彼女が今もなお黒死病の原因菌を撒き続けているからだ。

 

「迷惑かけるのは私だけにしなさいっていつも言ってるでしょ?」

 

「知らない。聞いてない。聞かない」

 

「そっかぁ…じゃあ仕方ない。デザートは私がもらっておこうか」

 

「!?……それは卑怯よ」

 

 半泣きで睨んでくるペスト。

 

「あぁ~!かわいい~!!って、そうじゃないや。本当に帰らないと不味いんだった。転移転移~っと」

 

 そう言って、彼女たちはその場から姿を消した。

 

「……なんだったんでしょうか、今のやり取り」

 

「いつものことで、慣れちゃいましたよ…」

 

 青龍と椛は、先ほどまでの清花の様子を思い、そう呟いた。

 

 

 * * *

 

 

「という事でやって来ました毒エリア!有毒ガス充満だぜ。死人出るな」

 

「じゃあ浄化してくださいよ…」

 

「出来るのか?」

 

「……出来そう」

 

「出来るから。まぁ、清花より調整難しいけどな」

 

 龍はそう言うと、一度深呼吸し、

 

「『夢を現に。毒浄化せし清らかなる風よ。今、進軍せし我らを常守る結界となれ』」

 

 すると、白い粒子が生まれ、四人を包み込む。

 

「よし。これで大丈夫だ。時間切れまでは安全だぜ」

 

「時間切れ…?」

 

「大体…二時間かな?ちなみに、俺から1㎞くらいか?とりあえず、それくらい離れると消える」

 

「効果範囲広いじゃないですか…」

 

「まぁ、あくまでもそれは最大だ。出来れば半分以下にいてくれると助かる。効果が下がるんだよ」

 

「具体的には?」

 

「毒降りかかって死なす」

 

「死なす!?殺害宣言!?」

 

 仁の突っ込みが走る。

 

「制約破りし者には死、あるのみだぜ」

 

「厳しいな…まぁ、能力判定外に行かれたら困るし、仕方ないのか」

 

 そんなことを話ながら歩いていくと、チラリと人の影が見える。

 

「……あれが文の言ってた人間かな…なら、さっさと捕まえるか」

 

「あや?見つけたのですか?」

 

「一応は。じゃ、捕獲戦だな。フェンリル。行くぞ」

 

「ちょ!速い速い!置いていってる!!」

 

「『夢を現に。輝く風よ。我らを運びたまえ』!」

 

 直後、光輝く風が四人を包み込み、見えた男に向かって飛んでいく――――。




寿命忘れられた残念な転生者…たぶん原作開始何億年か前に老死する可能性があるんですね…かわいそうに。
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