fate/zero 滅びの魔王と騎士の譚   作:ぴよぴよひよこ

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-切望の形-

 

「私は、故国の救済を望む。聖杯の奇跡を以て、ブリテンの滅びの運命を――変える」

 

 

 毅然と放った言葉だったが、セイバーは空気の変容に戸惑いを覚えていた。

 ――これほどまでに分かりやすく、当然のように正しい。そんな願いは他にないというのに。

 しかして他三名の反応は、どうにも歓迎のそれではなかった。

 

「今、運命を変えると言ったか? それは、己で刻んだ過去を変えるという意味か」

 

 征服王は困惑顔で聞き返した。

 正面に座る彼の左右では、怪訝な顔が二つ自分を見ている。だが怯むことはない。この願いこそ、誇るべき王道なのだから。

 

「そうだ。自分で治めていたからこそ、悔しいのだ。変えたいと願ったのだ! 私の責であるがゆえ……」

 

 そこでふいに轟く哄笑がセイバーの言葉を遮った。

 見ればアーチャーが下品なまでに口腔を開いて笑っている。隠すこともなく、侮辱の意味を持って。

 怒気を発露する直前、その反対側から来る視線に気付いて目をやった。魔王として勇者を待ち続ける、自分とは真逆の哀れな女。

 だがいま彼女から向けられている視線もまた、哀れみが込められていると感じた。

 

「なぜ嗤う。なぜ訝る。……なぜ、哀れむ!?」

 

 信じられないとセイバーがテーブルに拳をぶつけ、氷でできたそれは容易く砕けて散ってしまった。足許に散らばる冷気の欠片が滅んだ故国のようで見ていられず、顔を上げた騎士王は魔王の紅い瞳を視線で射抜く。

 

「貴様の王道に口出しはせん。言ったことはそうそう変えぬ」

 

 しかしエリスティンはふいっと眼を逸らしてしまった。端正な横顔が言外に不満を顕していて、セイバーはさらに言い募る。

 

「魔王、言いたいことがあるならはっきり言え!」

 

 怒声でもって詰められたエリスティンは諦めたようにため息を零して、眉根を寄せた少女へ向き直った。

 冷たい空気の中、徐に口を開く。

 

「セイバー、いや、英霊アルトリアよ。貴様の伝承は私も知った。

 だが……だからこそ――その願いは、やめておけ」

 

 静かに、しかしはっきりと。

 魔王はセイバーの願いを否定した。

 

「……理由を、聞かせてもらおう」

 

 言い聞かせるような口ぶりに、セイバーの気勢もやや落ちた。だがこれから述べるだろうその理由が納得のいかないものであったならば、この手が剣を抜く可能性もある。

 落ち着いたようでいて、秘めたる殺意が漏れ出るその姿を見ても、魔王の視線の色は変わらない。

 

「私の世界にもいたよ。神から与えられた力を、聖剣を振るって挑んでくる連中が。自らを勇者だと名乗り、人々の希望だと高らかに謳ってな。

 しかしそういう奴は誰一人として、自分から歩み始めた者はいなかった。我こそはではなく、誰かに、何かに唆されて、その剣を執った。力を与えられて、選ばれし者だと誇った。――そして散っていった」

 

 かつての経験を語り聞かせるように、魔王はゆっくりと先を続ける。

 

「アルトリアよ。貴様もまたそういう輩に似ている」

「何を――」

「聖剣とは、祝福とは……神が与える呪いの鎖のようなものだ。その鎖は天に続いて、死ぬまで踊らせる傀儡人形(マリオネット)の糸。そういう哀れな"勇者擬(ゆうしゃもど)き"を、私は山ほど見てきた。

 英霊とまで呼ばれて、死してなお踊らされている貴様は、いったい何だ?」

 

 そして、ようやくセイバーは黄金のサーヴァントが哄笑した意味を知った。それでもこんな話を笑い話と受け止めるその精神性には疑問が残ったが。

 彼女は、アルトリアは決して唆されて王になったわけではない。より良き国を願って、自らの意志でもってあの剣を引き抜いた。だがその剣こそが教唆だったのなら? 抜いた者こそが王になるというのは、誰が決めたのだ?

 分からない。分かりたくない。セイバーの中で葛藤が生まれて表情が苦悩に歪む。アーチャーはそれを至極愉しそうに見つめていた。

 

「過去を覆すなど、その時代を生きた者全てへの侮辱だ」

 

 追い討ちをかけるように述べた征服王を、セイバーは力なく睨んだ。

 魔王の言い分は分かった。しかし早々諦められるものではない。例え自分が哀れな道化だとしても、滅んでしまった故国は確かにあって、嘆きの内に死んでいった民草が存在したのだから。

 

「滅びを誉れとする武人ならそれも良いだろう。だが民草は違う。彼らは、正しさを望んでいた」

 

 誰もが望んだ王の姿。(みな)の手本となり清廉潔白で在れと。私情を交えず、肖像のように。民が描く、夢物語のように。手を伸ばしても触れられない幻想のように。

 

「そんな生き方はヒトとしてのモノではない」

「そうだとも。王ならば、ヒトの生き方など望めない」

 

 正しき統制、正しき治世。それらを体現し、為し続けることこそが王たる者の務め。そう信じて、剣を振るってきた。そう信じて――滅びを見た。

 かぶりを振って頭からその情景を打ち消す。

 アレは、自分に力が足りなかったからだ。もしもっと力があって、より良い選択をとることができたのなら。そうすれば、もうあの丘で打ちひしがれることもないのだ。そのはず、なんだ。

 

「セイバーよ。その清廉な姿は確かに聖者のようであっただろう。しかしな、聖者では民は導けぬ。理想に殉じるという"正しさ"を見ても、その茨の道には誰も踏み入れぬ」

「なに、を」

 

 ライダーは全身に力を込めて、しかし勢いに任せることなく、強く低い声で言い放つ。

 ――王とは。誰よりも強欲に、誰よりも豪笑し、誰よりも激怒する。

 そういう、ヒトの臨界を極めたる者。

 ゆえにこそ民草は王を羨望し、自らも王たらんとその後に続く。それが民を導くというものだと。

 

「それは、暴君の治世ではないか!」

「然り。余は暴君だからこそ英雄だ。だがな、自らの行いを、その結末を悔やむ王がいたとすればそれは暗君だ。暴君よりなお始末が悪い」

 

 セイバーにとって理解の及ばぬ言論であるが、彼は事実、そうやって生きて、生きて、駆け抜けたのだ。民草の羨望をその身に受けて、臣下の夢を束ねて。誰もが彼に憧れて、イスカンダルという男が在る。

 

 騎士王と征服王。そこには大きな隔たりがある。永遠の平穏を願う者と、繁栄を嘱望し続ける者。根本的に違うそれらは、どちらも正しい。だが、正しいからといって両者ともに認めることはできないのだ。

 だからこそ、ぶつかり合う。

 苛まれる騎士王を、英雄王は陰惨に笑い、征服王は苛烈に睨む。

 

 一人、魔王は静かに瞑目していた。

 ――悩みに揺れる剣に貫かれるわけにはいかない。

 エリスティンにとってセイバーの願いはあまり推奨したくないものではあったが、それでもと吹っ切れるなら別に構わなかった。

 在り方はさておき、願いが間違いだと知ってもなお突き進むのであれば、それは愚直であれど歓迎すべき強さとなる。「やめておけ」という言葉は、単に何かのために戦う者より己のためだけに剣を執る者の方が彼女の好みに近いというだけのこと。そちらの方が、迷いが無い。

 経験から知っているのだ。何かのために魔王に向かってきた"勇者擬き"たちの多くは、その最期に何か(ヽヽ)に対して呪詛を放って死んでいった。そんなことをされては興醒めも甚だしい。魔王を討つ者が、そんな軟弱であって良いはずがない。

 セイバーは"哀れみ"と感じたが、別段そういう気持ちで見ていたつもりではなかった。ただもう少し、我欲を見せて欲しかっただけ。

 つまるところ、エリスティンこそはどうしようもなく強欲で、我儘なのだ。自身が最も望む勇者像に、最も望むシチュエーションを探して人を、村を、国を、星を滅ぼした――まさに魔王。

 

 この場でセイバーが「我が願いこそ至上」と胸を張って言い返せば、恐らくエリスは「ならば良し」と引き下がっただろう。しかして彼女は悩んでしまった。揺れてしまった。信じていた筈の芯を、疑ってしまったのである。

 それは、いけない。例えその剣が魔王を討ったとしても、その先で得た聖杯(結果)を後悔に塗れた手で取られてはたまったものではない。

 エリスとて英霊が何らかの願いがあってこの戦争に臨んでいることは知っている。しかしてライダー、アーチャーという"前例"が彼女に期待を持たせてしまった。あまりにも理想的な彼らの存在が、セイバーにも傲慢なまでの()を押し付けてしまったのだった。

 

「私は――!」

「…………」

 

 ディルムッドはセイバーが言いやられているのを黙って聞いていた。

 彼は従う側の人間だ。王としての在り方など考えたこともない。セイバーも別に間違ってはいないと思うし、ライダーの言う王道も彼には好ましく思える。けれども結局、一度決めた主にさえ尽くせればディルムッド・オディナという英雄は満足するのである。

 ただ国を良くする者という認識だけを持って、それの剣となり、盾となる。そうあれかしと願って騎士となった。

 生前では成し遂げられなかったそれを、今生の主となら、と思っている。だがやはり迷いは生まれるもの。

 もう守るべき国は無い。民も、妻も。いるのは主だけで、あるのは忠誠のみ。しかし彼女が魔王として討たれるのを良しとするのか、魔王として君臨するのを良しとするのか。この聖杯問答を拝聴して彼の中ではいま、己の善性すら捨てて付き従うことさえも選択肢に生まれていた。

 

「……アーチャー、なぜ私を見る」

 

 ふとディルムッドが顔を上げると、セイバーが怒りを爆発させて酒杯を叩きつけていた。

 黄金のサーヴァントが無礼千万な愚弄を言い放ったらしい。

 しかし彼女の怒りに対してではなく、その場の全員の顔が引き締まった。

 

「……これは貴様の差し金か? 金ピカ」

「さてな。雑種の思考など(オレ)が知ったことではない」

「はん、暗殺者の英霊、か」

「アイリスフィール、こちらへ」

 

 闇に浮く髑髏のような仮面。それが周囲一帯を囲んでいた。

 四人の王は突然の襲撃にそれぞれ意味合いが違うが憮然としつつも、誰一人として驚愕はしていなかった。明らかに殺気を放って現れたのがアサシンのサーヴァントであること。そして"現れた"ことがもうすでに彼ら暗殺者の唯一と言っていいアドバンテージを捨てているのである。

 確かに大量に現れて、その物量は危険かもしれない。だがこちらもまた一騎当千の英霊が四騎、しかもさらに異常な強さのマスターもいるのだ。

 各々が共闘など望むべくもない間柄ではあるが、己が狙われれば反撃は当然するだろう。つまりどうあがいたところで、アサシンはこの場で間違いなく死に絶えることが確定していた。

 

「我が主よ」

「アレはなぁ……どうにも、私の好みでは無いよ」

 

 ディルムッドはそういう意味で声をかけたのではないのだが、エリスティンはどこまでも自分勝手であった。四方八方を囲まれてなお、興味もないと視線すら差し向けはしない。

 暗殺者であるならば、暗殺で全力を賭すべき。こうして姿を見せた時点で、アレらはもう、彼女にとって存在価値のないモノなのだ。

 しかしまあ、主にやる気がないのなら自らの槍を以てその脅威をふり払おう。そう誓ってディルムッドは悠長な魔王の背後に陣取った。

 

「おぉい皆の衆。その剣呑な殺気を収めてもらえんか。連れがすっかり縮み上がってしまっておる。客として来たのなら近う寄れ」

 

 だがもっと豪胆なのが征服王だった。慌てるマスターを目線だけで沈めて、アサシンたちへ手を振った。

 

「あんな奴儕(やつばら)までも宴に迎え入れるのか、征服王?」

「くく……どこまでも愉快な奴」

 

 さしものアーチャーですら眉を顰める。エリスは征服王の胆力に喉を鳴らして笑っていた。

 ここまで殺気を振り撒く敵に対して酒を勧めるとは呆れた男だ。だがしかし、ゆえにこそ緒戦で魔王を幕下(ばくか)に加えたいと抜かした言も本気なのだと知れるというもの。この身を欲しがるなど、どこまでも破天荒な男である。

 

「さぁ遠慮はいらぬ。ともに語ろうという者はここへ来て杯を取れ。この酒は貴様らの血とともにある」

 

 無論、すげなくダガーの一閃によってそれは叩き落され、ライダーの肩には葡萄酒の染みが広がった。もう既に確定事項なアサシンの消滅だが、これがもし英雄王の酒であったなら、彼らはさらに早く消え去ることになっていただろう。それが幸運か不運かは分からないが。

 

 魔王にとっては、幸運だった。

 

「この酒は貴様らの血と言った筈。そうか、敢えて地べたにぶち撒けたいというならば、是非もない……」

 

 ライダーがやおら立ち上がり、強風が吹き荒れたかと思うと、その姿はいつか見た戦闘装束に変わっていた。

 そして問う。

 

「今宵語らった王たちよ、これが宴の最後の問いだ。そも――王とは孤高なるや否や?」

「王たらば……孤高であるしか、ない」

 

 セイバー以外は答えぬ問いであったが、無言の肯定も察した彼は豪笑して首を振る。

 

「全く以て解っておらんな! そんな貴様らには、やはり余自らが王のなんたるかを知らしめてやらねばなるまいて!」

 

 嘯いたライダーに合わせるように風が一層強くなり、眩い光が辺りを覆い尽くした。彼の心の内に在る、条理から外れた景色が現実を侵食し、埋め尽くす。冷たい冬の夜を熱波のような砂塵が塗りつぶしていく――

 そうして顕現した、彼らの大地(ヽヽヽヽヽ)

 

 ――魔王にとって、夢のような場所。

 

「見よ、我が無双の軍勢を!」

 

 エリスティンの目に澄みわたった蒼穹と果てない砂漠が映る。そして、その果てから現れた者たちも。

 

「肉体は滅び、その魂は英霊として世界に召し上げられて、それでもなお余に忠義する伝説の勇者たち! 彼らとの絆こそ我が至宝、我が王道!

 イスカンダルたる余が誇る最強宝具、『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』なり!」

 

 独立サーヴァントの連続召喚。ランクにしてEXの対軍宝具。だがそんな性能の話など、魔王にとってはどうでもよかった。

 

 視界の端から端までを埋め尽くす無双の軍勢(サーヴァント)。一人一人が歴史に名を刻んでいるだろう英雄豪傑。なんだ、コレは。一人をとっても迷いなく、力強く前を見据えて夢へひた走る(つわもの)たち。イスカンダルを目印に、どこまでもどこまでも真っ直ぐに突っ走る大莫迦者(おおばかもの)たち。なんだ、ソレは。なんて突飛で、なんて豪快で、なんて馬鹿げていてなんて素晴らしい! なんだ! これは! この一瞬の夢を凝縮したかのような! ああたまらない嬉しい悦ばしい飛び込みたい殺したい殺されたい!!

 

『ウオオオォォオオオオオオッ!!』

 

 その軍勢がアサシンを蹂躙して消え去っても、魔王の耳朶(じだ)にはいつまでも勝ち鬨の声が響き続けていた。砂漠の熱が、身を焦がし続けていた。

 あれは、あれこそは、自分が求めていたもの、探し続けていたもの。魔王を殺し尽くし、心臓を穿ち、首を刎ねるに足る英雄。率いる猛者!

 今こそエリスティンの目には、征服王イスカンダルの姿が黄金のサーヴァントよりも輝いて見えた。

 

「――幕切れは興ざめであったな」

 

 全てが終わり、ライダーが呟くように言うが、魔王の歓喜はもはや止まらない。

 

「ク――くふふ……ふフフふふふふ、ふフハァはははハはは! アッハッハハハハハハ――――!!」

 

 とめどなく零れる哄笑を、どうやって止めることができようか。ようやく見つけた、(もや)のようだった己の願い。それが確たる姿(カタチ)をして現れた。どうして歓ばずにいられようか。今すぐにでも殺したい。殺し合いたい。殺されたい。

 

「――素晴らしいッ! 素晴らしいぞ征服王! 貴様のその宝具、この魔王を討つに相応しい!」

 

 ぎらつく紅い瞳でイスカンダルを刺し貫く。英雄を束ねた王は臣下を誇って胸を張った。

 

「そりゃ光栄だ。余はまだ貴様を翼下に加えるつもりでおるから、覚悟しておけ」

「ふふふフフ……殺されずに叩きのめされたのならばそれも良い。だがこの魔王はそのように手加減できるほど甘くはないぞ?」

「望むところよ」

 

 殺り合うことをしっかりと約束して、エリスティンとイスカンダルは凄惨な笑みを向け合った。

 魔王は恋のような胸の高鳴りを、生まれて初めて感じた。誰かを愛したことなど無かったが、今ならあの岩のような男に口づけだってしてやれそうだ。それだけ愉しみで愉しみで仕方がない。

 だがそれに水を差す者がいた。

 

「決めたぞ。ライダー、貴様は(オレ)が手ずから殺す」

 

 アーチャーが不機嫌そうに、彼の死を決定した。

 ライダーはさもありなんと笑っていたが、エリスティンにとって見過ごせるはずもない言葉だった。

 やっと見つけた願いのカタチ。切望の具現。例えこの世の王とて譲る気はない。

 

「待ちおれ王よ。それは私が貰う」

「聞こえなかったか? (オレ)は決めたと言った。王の決定は絶対だ」

 

 これまでになかったほどに殺意が漲り、魔王から零れだした魔力が庭園のあちこちで稲光のように迸って氷の杭を打ち立てた。しかし視線だけで物理的に穴が開きそうな睥睨を受けてなお、王の中の王は一寸たりとも怯むことはない。

 

「ではまず先に貴様を処断してやろう。わざわざ死体にまでなって征服王に蹂躙されに行くのなら止めぬがな」

「それは重畳。(まばゆ)い王のその威光、星の欠片のように寸断してくれる」

 

 激しく舌戦を繰り広げる二人に、さしものイスカンダルをして苦笑せざるを得なかった。男にも(ヽヽヽ)女にも困ったことはなかったが、こんな物騒極まりないモテ方をするのは久方ぶりだ。

 

「ともあれ、今宵はお開きとするか。お互い、言いたいところは言い尽くしたよな」

「まてライダー、私はまだ……っ!」

「貴様はもう黙っとけ」

 

 セイバーは不服を唱えたが、ライダーにはすげなく一蹴されてしまった。言い縋る少女をあしらって、キュプリオトの剣で戦車を呼び出す。

 悔しそうに歯噛みをするセイバー。しかしもう魔王にとってそんなことは些事である。夢醒めやらぬと獰猛に歯を剥き、戦車で飛び征くイスカンダルをじっと見つめていた。

 

「私も失礼するとしよう。馳走の礼は戦場で必ず」

 

 静謐さを取り戻した庭園の中、そう嘯いてコートを翻す。

 決殺を誓った黄金の王も然りと頷いて見送った。最後に残った彼がセイバーと何か話すのか知らないが、かの王もまた晴れて殲滅対象の上位に食い込んだ。征服王と相対するならまず立ちはだかるこの世界の主を抹殺せねばならない。もともとそうしようと思っていたことではあるが、やる気も殺る気も段違いだ。

 デザートを待ちきれない子どものように爛々と目を輝かせて、エリスティンは騎士とともに闇夜に消え去った。

 

 

 

 

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