幻物語   作:K66提督

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初投稿です。
つたない文章やご都合設定など、ご容赦いただけると幸いです。
「初心者君?へぇどれどれ、いっちょアドバイスでもしてやるか。」
という方はぜひ読んで感想をいただけると狂喜乱舞します。
よろしくお願いいたします。


幻物語 壱

001

 

―幻。現実には存在しないのに、あたかも存在したかのように記録されるもの。

また、実際にあった、起こったはずなのに、その存在を二度と確認できないもの。

 

僕が経験した最後の物語、それは実際にはなにもなかったのかもしれない。

なにも起きなかったのかもしれない。

 

それでも僕は語り継いでゆく。

僕の最後の終わりと始まりを、自分自身が忘れないために。

 

002

 

人の寿命というものは、なんとはかないものなのだろうか。

 

阿良々木暦92歳の誕生日。

 

それは愛する妻の、そして僕を知っている最後の人間の最後の日であった。

 

「あなた。いえ、暦。そこにいるのかしら」

 

「あぁいるよ。ひたぎ。」

 

「悔しいわね……また一つ暦に勝てなかったものができてしまったわ」

 

「ボウリングもカラオケも結局はひたぎの方がうまくなったじゃないか。

全国一位様に勝者顔するほど僕は負けず嫌いじゃないさ。」

 

「私にとって一度の敗北は一生の敗北よ」

 

どれだけストイックなんだ…

 

「それにね、暦。今回の敗北はもう覆すことはできないのよ」

 

「そんなことない、次の人生でも僕は何度だってお前の前に現れて、

 何度だってお前を救ってやる!勝負がつくことすらありえないからな!」

 

「ふふ、最後の最後まで阿良々木君はかっこいいわね。一週間ぶりに惚れ直しちゃったわ」

 

「なに言ってるんだ。お前だって阿良々木だろうが。お前の名前は阿良々木ひたぎ、

そして僕の名は阿良々木暦だ。」

 

というかそれは八九寺の芸風だ。

 

「失礼、かみました。」

 

「違う、わざとだ。」

 

「神は死んだ。」

 

「どこのニーチェだ!八九寺は確かに幽霊から神様になったけど失礼だろ!」

 

みためが只のロリツインテール小学生だったとしても、中身は神なのだ。

どんなに後ろから抱き着きやすいドラム缶体型の愛しい少女だったとしても神様だ。

 

あれでも。

 

「ふふ、そうね。死ぬのは私だったわね。」

 

「笑えねぇよ」

 

「忍さん?いるのかしら。」

 

僕の影から金髪の幼女が顔を覗かせる。

 

「なんじゃい、せっかく別れの時じゃろうからと空気をよんで聞き耳をたてておったのに」

 

そこは聞かないようにしようぜ。

 

「『僕がなんどだって救ってやる!』じゃったかのう。」

 

「やめて!すでに黒歴史になりそうだからやめて!」

 

「忍さん、お願いがあるわ。」

 

「吸血鬼にしてほしい。とかならお断りじゃ。」

 

「ひたぎ、お前!?」

 

「安心して頂戴。それはありえないわ。私からお断りさせて頂くぐらいよ。」

 

「なら……」

 

「忍野忍さん、旧キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードさん。

私を、食べてください。」

 

 

003

 

 

「「は……?」」

 

僕と忍の声が重なった。しかし忍の声にはわずかだが怒りの感情が紛れ込んでいるように聞こえた。

 

「ひたぎ、お前なにを言って……」

 

「暦。私はね、このまま死んで、ただ火に焼かれて煙と塵になるなんてまっぴらごめんなのよ。無駄に死んで、作業のように処分されるなんて絶対に嫌。」

 

死んでも、嫌。とひたぎは死にかけの状態とは思えないほどの力強い声で、目で、

そう訴えた。

 

「断る。儂に自分の主の伴侶を喰らう趣味なんぞないわい。」

 

「忍……」

 

「それなら、」

 

 

――暦。あなたが食べなさい。」

 

「なッ、ひたぎ!?」

 

「……小娘、貴様自分が何を言っておるのかわかっているんじゃろうな。」

 

「ええ、わかっているわ。」

 

「そんなこと僕にできるわけがないだろうが!!!」

 

「暦、あなたはさっき私が何度生まれ変わったとしても助けてくれると。

そう言ったわね。」

 

「そりゃそうだけど……」

 

「阿良々木暦。あなたは半吸血鬼、半人間の曖昧な存在。その寿命が永遠という保証

はどこにもないわ。」

 

「つまりは我が主様に完全な吸血鬼になれと、そう言いたいわけか?」

 

「なッ……!」

 

「そう、それもキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの下僕としてではなく、オリジナルな吸血鬼、阿良々木暦として」

 

「そんな……」

 

「暦、私の人生最後のお願いよ。私を、骨の髄まで残さず、吸血鬼阿良々木暦の最初の

食料として、あなたが生きていく糧として食べて頂戴。」

 

「……忍、少し部屋の外に出ていてくれるか?」

 

「……わかった。」

 

忍は、怒ったような、悲しんでいるような、そんな表情を浮かべ部屋を去ろうとした。

 

「お前様よ、それで、それでいいんじゃな?」

 

「あぁ、これでいい。僕は可愛い女の子のためならなんだってする男だ。」

 

それから数時間の間、部屋には一人の男のうめき声と、肉を裂くような音だけが響いていた。

 

そして。

 

「人間というのは強い生き物なんじゃな……」

 

部屋の外でも、弱く、小さな鬼の泣き声が消えるように広がっていった。

 

 

004

 

 

「のう、我が主様よ。」

 

「忍、そろそろやめないか?その呼び方、実際僕とお前のペアリングは解けちゃったんだしさ」

 

「ペアリングが切れても、主従関係は変わらんよ。お前様。」

 

それとも阿良々木様とでも呼ぼうかのう、と忍。

 

「それで、どうしたものかのう。」

 

「どうしようなぁ……」

 

阿良々木ひたぎの死後から半年後。現在、僕と忍は八九寺宅にいた。

といっても実際の八九寺さんちではなく、例の神社。

北白蛇神社である。

ちなみに神社の主、偉大なる八九寺神様は神無月の宴会とやらで一ヶ月出かけている。

そのため僕たちはここでお留守番(無許可)をしているというわけなのだが……

 

「さすがにこれはまずいのう……」

 

「正直今すぐにでも逃げ出したいのだけどなぁ……」

 

先ほどまで神社でゴロゴロしていた僕らの前に『くらやみ』が現れたのである。

理由はおそらく神無月で神様が不在の神社に無知な参拝者がやってきたことで

僕たちが一時的にでも神様として考えられてしまったからだろう。

ではなぜ僕たちがこんなに悠長なことを言っていられるかと言うと。

 

「今は僕の機転のおかげでなんとか様子見されてるけどなにがきっかけで襲ってくるか

わかったもんじゃないからなぁ。」

 

「いや、機転というよりトンチとか屁理屈とかの次元じゃとおもうぞお前様。まさか

あの『くらやみ』が留守番してるだけだからなんてくだらん言い訳で」

 

そうなのである。

 

「で、どうしよう。のぶえもん。」

 

「ひさびさじゃな、それ。でもやめろ。どうしようもこうしようも、八九寺が

帰ってきたときに『留守番ごくろう』とか言ってもらうしかないじゃろうて」

 

「帰ってきたときって、まだ十月始まったばかりなんですけど。」

 

「どうしようかのう」

 

「どうしようなぁ」

 

こんな感じでかれこれ一時間。

 

「まぁ、でもこのまま特に何もしなければ襲われることもないじゃろ。」

 

と、そのとき。

 

「いやー、私としたことがまさか名刺を忘れてしまうなんて、新人としては先輩の方々に早く認められたいですしねーっと、あれ?アタタタタタタタ木さん?なんでウチにいるんです?あぁッ!さては私がいないうちにここを占拠しようとしてたんですね!?そうはさせませんよ!」

 

「色々ツッコミたいのは山々だが八九寺!お前は今最も言ってはいけないことをいっt、」

 

とたんに『くらやみ』が待ってましたと言わんばかりに襲い掛かってきた!

 

「お前様ヤバイ!にげるぞ!」

 

「ぎやあああああああああああ!?」

 

「あ、阿良々木さん!?なんであれがここに!?」

 

「話はまたあったときだ!とにかく今は逃げる!お邪魔しました!」

 

「あ、阿良々木さーーーん!?」

 

とにかく今は八九寺とお話してる暇はない!

一刻も早くアレから逃げないと!

でもそもそもどこに!?というか逃げ切れられるものなのか!?

 

「くっ、ダメだ!追いつかれる!」

 

「お前様!」

 

「忍!」

 

『くらやみ』が僕らを呑み込もうとしたそのとき。

『くらやみ』もまた、なにかに呑まれようとしていた。

 

「ごきげんよう。さようなら。」

 

『くらやみ』を呑み込んだ『スキマ』の向こうで全盛期のキスショットに負けず劣らずの美女が僕らに微笑みかけ、出会いと別れを告げた。

 

 

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