幻物語   作:K66提督

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お久しぶりです!K66提督です!!
授業やらバイトやらの合間を縫ってやっと書き上げることができました!
待っていてくださっていた方がいらっしゃいましたら、この場で御礼申し上げます!!

最近暑くなって、溶けそうな毎日ですが、皆さんは大丈夫ですか?
夏バテや熱中症にはくれぐれもお気を付けください!

それでは『幻物語 拾ㇳ参』お楽しみください!


幻物語 拾ㇳ参

051

 

幻想郷迷いの竹林。

竹の成長が通常よりもさらに早いため、毎時間ごとに姿が変わる自然の作り出した大迷宮である。

ここを迷うことなく進むことができる者は数少なく、一度迷い込めばそう簡単には戻ってこられないだろう。

 

そんな森を縦横無尽に駆け回る影が二つあった。

 

「ハァ、ハァ!姫様!急いでください!てゐのトラップで足止めをしてはいますが、いつまでもつか分かりません!」

 

鈴仙・優曇華院・イナバ。

かつては月の兎戦闘部隊隊長を務めていたが、幻想郷に来てからは、永遠亭診療所で

医者になる修行を積んでいる。

『狂気を操る程度の能力』を有する。

 

「ま、まってよ、私、そんなに走り回れるほど体力ないって……!」

 

蓬莱山輝夜。

月の都の姫君。外の世界においても、『竹取物語』という文献の中で『かぐや姫』として登場する。『永遠と須臾を操る程度の能力』を使うことができ、不老不死である。

現在幻想郷では、永遠亭の主で、職業はニート。

 

「くそっ、なんなのよあいつ……!うちの精鋭部隊全員でかかっても傷一つ付けられないなんて…………!?」

 

竹藪の影から一人の男が姿を現す。

 

「やっと見つけた。僕だって暇じゃないんだから君達にかまってあげられる時間もそんなにあるわけじゃないんだ。だからあんまり逃げないでくれよ。」

 

「っ!それならさっさとどこへでも行けばいいでしょ!!こっちだってあんたなんかに関わりたくないのよ!!!」

 

そう言うと、うどんげは両目を赤く染め、臨戦態勢をとる。

 

「それはできない。『アイツ』の為に、そこのお姫様が持ってる『蓬莱の薬』が必要不可欠なんだ。全く、面倒なことするよね、あのお姉さん。さっさと薬を渡してくれれば痛い思いしないで済んだのに。」

 

「あなた、永琳に何をしたのよ。」

 

息の上がっていた輝夜も、聞き捨てならないと男を睨み付ける。

 

「ちょっとした事だよ、『アイツ』のために妖気と少しの血をもらってんだ。死んではいないと思うよ。多分。あ、でもあのお姉さんも不死なんだっけ?じゃあもうちょっと本気で殺してもよかったかな。」

 

「貴様ァ!!!」

 

うどんげの眼が怒りで赤から紅へと変化し、男へ飛び掛かっていく。

 

「やめなさいうどんげ!!貴女の敵う相手じゃない!!」

 

しかし、怒り狂った彼女を止めれる者はどこにもいなかった。

 

「まぁ、落ち着けって。なにかヤな事でもあったのか?僕でよければ相談にのるよ?大丈夫。君は僕が助けてあげる。ホントだよ?」

 

怒りの対象であるその男を除いて。

 

「殺す!!貴様を殺す!!」

 

「『な~んて、嘘うさ。』ってのがあのいたずら兎ちゃんの口癖っぽかったね。」

 

「痛、アァァァァァア″ア″ア″!!!!!」

 

男がどこからか取り出した刀で、うどんげの眼と、『力』が切り捨てられる。

 

「うどんげ!!」

 

「殺しはしないよ?僕は優しいからね。でも助けはしない。

『君が自分で勝手に助かるだけさ』なんて無責任で甘っちょろい事も言わない。

僕は誰も助けない。幸せになるのは『アイツ』だけで、他はどうでもいいんだ。」

 

「とても大事な人のようね、その『アイツ』とやらは。」

 

「そうなんだ。『アイツ』のためなら僕は『生きて』やれる。なんだってできる。

だから君の持つ薬は絶対に手に入れる。」

 

「『生きて』やれる、ねぇ……。随分とカッコいいこと言うじゃない?こんな状況じゃなかったら惚れてたかもしれないわね。ありえないけど。」

 

「丁重にお断りさせてもらうね。」

 

「冗談よ、私にとっての『アイツ』」はあなたがここに来るまでにその刀で切り捨ててきた子たちなの。私もあの子たちのためなら何度だって死んであげるし、何度だって生きてあげられる。だから……お前はここで殺す!!!」

 

「そうだよな、誰にでも守りたい物、人、心がある。だからこの世から争いがなくならない。

僕は君と違って『人間』だし、それがよくわかる。だから――――

 

 

――――死ね。」

 

052

 

『ガキィィィンン!!』

 

輝夜の拳と男の刀が鈍い音をあげてぶつかり合う。

 

「おいおい、刀と拳がぶつかり合う音じゃないだろこれ。」

 

「生憎、私の日課は殺し合いの決闘でね、人を殺すことにためらいもないし、殺されることへの恐怖もない!」

 

「野蛮だなぁ、本当にお姫様?」

 

「夢を壊して悪いわね、こんなのでも外の世界の地上人も憧れるかぐや姫様よ。」

 

「うーん、まぁでも金閣を持ち上げたって伝説もあるし、ぜんぜん想定内だよね。」

 

そう言って男が不気味な笑みを浮かべた途端、拮抗していたはずの力が男の方へと傾いた。

 

「とりあえず、一本。」

 

「痛、ああああああああああ!!!!!」

 

刀は輝夜の拳を引き裂き、肩から下、輝夜の右腕を切り落とす。

 

「うへぇ、痛そうだ。僕じゃきっと耐えられないだろうなぁ。」

 

「ぐ、ひ、他人事みたいに、言って、くれるじゃない。」

 

額に玉のような汗を浮かべ、歯を食いしばって痛みを堪える。

 

「みたいっていうか他人事だし。あ、人じゃないのか。」

 

「殺し合いが日課だと、言ったでしょう。腕の一本や二本、私には大したことじゃない。」

 

「言ってたなぁ、ちゃんと聞き流してたよ?でもいくら不死だからって、女の子が自分の身体をそんな風に扱うのはどうかと思うけど。」

 

「ご心配なく。」

 

輝夜が刀をも受け止める拳で自らの心臓を貫く。

 

「さぁ、コンティニューといきましょうか。」

 

「うわ、こんなの何度殺してもキリがないじゃないか。」

 

「その通りよ。だからもう諦めなさい!!」

 

輝夜が再び剛拳を放とうと振りかぶる。

 

 

 

が、そこには拳どころか腕すらも存在していなかった。

 

「腕が……、再生していない……!?」

 

「いやぁ、びっくりした。無い腕で殴ろうとするもんだから、まだ奥の手というか、次の腕というか、何かあるのかと思った。」

 

「そんなっ……!?なぜ……!?」

 

「この刀はとある女性から貰った『妖刀』をすこし改造したものでさ、色んなモノが斬れる優れものなんだ。夢とか希望とか、愛とか絆とか、人とか怪異とか、ね。」

 

「カイ、イ……?」

 

「おっと、こっちでは妖怪だったかな?要するに君たちみたいな人間とは違う次元に存在している、魑魅魍魎達のことを、こちらでは『怪異』と呼ぶ。」

 

「つまり、その妖刀ってやつで斬られたせいで私の腕は再生できなかったってわけね。」

 

「そうそう。理解が早くて助かるよ、僕は『教える』っていうのがどうも苦手なんだ。」

 

「そう…………」

 

「まぁ、気を落とすなよ。すぐに全身バラバラにして腕がどうとか気にならなくしてやるから。」

 

「…………やっと、」

 

「ん?」

 

やっと見つけた……!

己を確実に殺そうとしている妖刀を前に、輝夜は恐怖や焦りではなく、『喜び』を感じていた。

ようやく、ようやく『死ぬ』ことができる。

この忌まわしい『不死』を打ち破り、私を永遠から開放してくれる。

これほど心躍ることはない。

 

「気持ち悪いなぁ、君。何この状況でニヤニヤしてるんだよ。あれ、もしかして『そっち系』だった?」

 

「違うけれど、そうね、不死にとって自分を殺せるかもしれないモノはとても輝いて見える。とだけ言っておきましょうか。」

 

「……あぁ、そういう事。わかるよ、僕も同じようなもんだし。

『アイツ』のことを諦められたらどれだけ楽だろう。

『アイツ』のことを忘れられたらどれだけ救われただろう。

『アイツ』のために死ぬことができていたら、どれだけ満たされていただろう。

そんな事ばかり考えてた時期もあった。」

 

「それができないから辛いのよね。」

 

「そうそう、だからさ、さっさと不死の薬を渡してくれよ。そしたら殺してやるから。

僕は不死の薬を手に入れられるし、君は死ぬことができる。win-winの関係だ。」

 

「嫌よ。どうしても欲しいなら殺して奪い取りなさい。」

 

「はぁ、そんなに僕のこと信用できないかぁ。はいはい、わかったわかった。

じゃあ痛くないよう殺してやるから動かないでくれよ?」

 

やっと念願の『死』が手に入る……!

この世で最も美しい宝が手に……!

 

男が輝夜の首に刀を抜き放つ。

 

「ふっっざ、けんなぁぁぁぁああ!!!!」

 

しかし、刀が輝夜の白い首筋に届く前に、輝夜の身体は業火に包まれ、灰塵と化す。

 

「げほっ、あっつ、ごほっごほっ!ちょっと妹紅!!邪魔しないで頂戴!これで、この刀があれば私達不死でも死ぬことができるのよ!?」

 

灰になった輝夜はしかしすぐに再生し、炎を放った張本人へ文句を垂れる。

 

藤原妹紅。輝夜同様不死の身体をもつ蓬莱人。

輝夜とは複雑な因縁を持ち、日々殺し合いを繰り返している。

 

「死ねるだぁ!!?はっ!!そりゃあ素晴らしい事だなぁ!!?」

 

「妹紅……?」

 

何をそんなに怒っている・・・?

私が死ぬ事は妹紅にとっても好都合なはずだ。

 

「お前が死のうがどうなろうが私が知ったことじゃねぇがな、お前の所の兎達がわざわざ私の所まで来たんだよ、『姫様を助けて』ってなぁ。

頭悪ィよな、毎日殺し合ってる宿敵によりにもよって『助けて』ときたもんだ。自分達だって半分死にかけてるんじゃねーのってぐらいボロボロなのにお前みたいな底辺主様のために竹林を這ってきたんだ。

それでいざ駆けつけてみたら当の本人は何してやがる。

必死になって、自らの命を投げ捨ててまでテメェを助けようとしてくれた部下達の思いを足蹴にして、『やっと死ねる』とかほざきやがった。

ふざけんじゃねぇよ、いいか、お前は私が殺す。どこから来た誰かも知らねえヤツにお前は殺させねぇ。お前の命は私のモンだ。どうしても死にてぇってんなら私が死ぬまでぶっ殺してやる!!」

 

「ふぇっ、え?えええ?」

 

輝夜の顔が真っ赤に染まり、炎のように熱くなる。

 

「おいおい、いきなり現れて愛の告白とかカッコよすぎだろ。一瞬惚れるところだったぜ。」

 

「な、あ、愛とか!!そんなんじゃねぇ!!私はただ輝夜をテメェなんかに殺されてたまるかって事を言いたくてだな!!!」

 

「あー、はいはい、お熱いねぇー。もちろん物理的にも。

竹林が焼け野原になるのもあれだし、そろそろその炎の翼をしまってもらえると嬉しいな。」

 

「ちっ、気安く話しかけんじゃねぇよ、外道が。人の身体のままでとてつもない業を背負いやがって。よくもまぁ正気でいられるもんだ。ん、いや、正気じゃねぇのか。」

 

『業』という単語を妹紅が口にした途端、男の纏う雰囲気が豹変する。

 

「…………それで?不死の薬を手に入れるには二人まとめて跡形もなく切り刻んで殺してやればいいのかな……?」

 

眼は鋭く、声は重く、気は暗く。

輝夜と妹紅の二人はそこに 『闇』を、『夜』を、『影』を、『黒』を見る。

 

「も、妹紅……」

 

「きゅう……血鬼……?」

 

幻想郷に来るまでは妖怪退治を生業としていた妹紅が、かつて対峙し、敗北した大妖怪、怪異の王の名を口にする。

 

「僕をあんな屑みたいな連中と一緒にするんじゃねぇよ。なんども言うが僕は『人間』だ。」

 

人にして人ならざる業を背負う男にもう先ほどまでの貼り付けたような笑みはなく、

ただただ、『殺す』という感情のみが見て取れた。

 

「上等だ。へたに弾幕とかやるより手っ取り早くていい。」

 

妹紅が能力を発動させ、炎を身にまとい、男と対峙する。

 

「あー、もう、降参降参!!はいこれ、欲しがってた不死の薬。これ持って早いとこ何処へでもいってちょうだい。」

 

「なっ、お、おい輝夜!?」

 

「…………。いやぁ!ありがとう!実は僕も二人を同時に相手するのはちょっとしんどいだろうなぁって思ってたんだよ!!じゃあこれもらってくね!ばいばい!」

 

輝夜が不死の薬を放り投げると、男は再び笑顔を貼り付け、何処かへと姿を消した。

 

「輝夜、お前なんで……!?」

 

「もう疲れたわ。永琳や兎達も心配だし、帰りましょ。悪いけど手伝って頂戴。」

 

「でも不死の薬が……」

 

「気にしなくてもあの男の計画が達成されることはないわ。ヤツがこのまま計画を進めようとするなら確実に異変になる。そうなれば後はあの紅白巫女に任せておけば万事解決よ。」

 

「そんなこと言って、あの薬を飲まれたらどうするんだよ!!」

 

「あの薬を飲まれたからってどうなるのよ」

 

あの巫女に不死なんて関係ない。

実体験なのだから間違いないだろう。

 

「ん、まぁ……それもそうか……」

 

「そうよ、だからもう行きましょう、うどんげをお願い。私じゃ無理だし。」

 

「あ、そういえばお前腕が……死んでも再生しなかったし、どうなってんだよ。」

 

「それは後で説明するわ。うーん、どうしようかしらねぇ……永琳治せるかしら。」

 

「その永琳も相当な重傷って話だからな……」

 

「し、師匠の秘蔵の薬に『どんな傷でも即座に回復する豆粒』のサンプルがあったはずです……」

 

「あら、うどんげ。目が覚めたのね。『豆』ねぇ……、え?それって仙豆?DBの?マジ?」

 

「どれだけ研究所しても製造方法がわからなくて、数も少ないので絶対に使うなって言われてますけど……」

 

「状況が状況だし、しょうがないだろ。」

 

「え?……うわぁ!?も、妹紅さん!?どうして!?」

 

「あー、騒ぐな騒ぐな。帰ったらてゐのやつに説明してもらえ、な?」

 

「は、はぁ……」

 

「それよりうどんげ、貴女眼は大丈夫?」

 

「あ、はい……なんとか見えはするんですが能力が……」

 

「使えなくなってるのね。」

 

「はい……」

 

「私も腕が再生しなくなっちゃったし、恐らくあの刀のせいでしょうね……

私は右腕の『不死』と『怪力』をうどんげは『狂気の瞳』をあの刀に切り捨てられた。

『能力を失わせる能力』、ね……今度の異変は霊夢でも難儀かもしれないわね。」

 

「…………。」

 

「妹紅?」

 

「ん、いや、なんでもない。」

 

「まぁ、とにかく、これ以上この件にはかかわらないのが一番でしょうね。」

 

「で、でも姫様の腕が……」

 

「あー、そうねぇ……ま、なんとかなるでしょ。ご飯とかは妹紅に食べさせてもらうわ。」

 

「なっ、はぁぁあ!!?だ、誰がそんな事するか!!もう片方の手で食えばいいだろうが!」

 

「えー、嫌よ。そんなお行儀の悪い、お姫様のすることじゃないわ。」

 

「お前この前私ん家で寝っ転がりながら飯食ってただろが!!」

 

「えっ、姫様たちってそんな仲だったんですか!?いつも殺し合ってるのに!?」

 

「ふふ、なんでも私は妹紅の『モン』らしいわよ?」

 

「だからそれはっ……!」

 

「へぇーー?ほふーーーん?」

 

うどんげが面白いものを見つけたとばかりにニヤニヤし始める

 

「てめ、なんだその目は!?下ろすぞ!」

 

「うふふ、いいえー?なんでもないですよー?」

 

「だからその目をやめろーーーー!!!」

 

053

 

『ケンカというのは、同じレベルの者同士でしか起こらない』と言う話をご存じだろうか。

これは、お互いの言い分をどちらも譲らない、譲るための心の広さを持ち合わせていないので、ケンカが起こる、という話だ。

ではこの場合の『レベル』とは、即ち『心の広さ』ということになる。

だがしかし、一度ケンカが始まってしまえば、『心の広さ』など関係ない。

ケンカは発展し、悪化する。

初めは言葉を武器に、もしくは最初から暴力を伴うケンカかもしれない。

そして、始まりがどのような形であっても終わりがこない限り、悪化は止まらない。

そして、考えを絶対に曲げない者達が起こすケンカは、必ず一つの収束を迎える。

それはすなわち―――

 

 

 

 

 

「戦争じゃああああ!!!貴様ら絶対にぶっ殺してやる!!」

 

「やってみなさいよこの搾りカスのなんちゃって吸血鬼!成れの果ての分際で私達スカーレット姉妹に逆らおうなんて五千年早いのよ!!」

 

「やっひゃえもめえひゃん!!」

 

「だからそれは儂の分のドーナツじゃと言っとるじゃろうが!!何食っとんじゃ!!」

 

「お、おい忍やめろって、ドーナツなんかでそんなに怒るなよ」

 

ここで、大吸血鬼戦争in博麗神社が勃発されようとしている経緯を説明しよう。

お昼ご飯を作っている咲夜さんを手伝いながら(今回は咲夜さんもお客さんなので半ば強引にだが、手伝わせてもらえた。)忍のドーナツを揚げてもらっていたのだが、忍が復活する前にフランとレミリアがドーナツをほとんど平らげてしまった。

しかもよりによって最後の一個をフランが手にとった時点で忍が復活。

既に大量のドーナツが食べられてしまった事に気づいた忍の不機嫌ゲージが上昇してゆくのを感じ、咲夜さんに2セット目を頼むも、まさかの材料切れ。

ブチ切れた忍がレミィ達に『かりちゅま(笑)』だの、『キチガイ破壊神』だのと、罵詈雑言。

当然レミィ達も激昂し、後はお察し。売り言葉に買い言葉で現在に至る。

 

「なんか……?ドーナツ『なんか』じゃと……?」

 

あ、やばい。飛び火する。

 

「お前様よ……自分の言っておる事が理解できておるのか……?こともあろうかドーナツに向かって『なんか』じゃと……?」

 

「わ、悪い!失言だった!!すまん!!」

 

「ふん!暦の言う通りよ!『たかが』ドーナツ『如き』にそこまでムキになれるだなんて、『元』伝説の吸血鬼様は随分と器が小さいのねえ!?」

 

「レミィも頼むからガソリンスタンドにガスバーナー投げ込むレベルの煽り入れるのやめて!!?」

 

火に油どころでは無いのだ。

爆発力が計り知れない。幻想郷に来た時から忍は相当の妖力を溜め込んでいるはずだ。

 

「……あんたら、いい加減にしないと全員まとめて封印するわよ。今は昼食の時間。ケンカするならこの後外でやりなさい。」

 

霊夢様の静かな怒りは食卓の空気を一瞬で張りつめさせた。

 

「ご、ごめんなさい霊夢……」

 

あのレミィが速攻で謝った……

以前「霊夢をおこらせるな」って言ってたし、よほど恐ろしい思いをしたのだろう……

 

「ほ、ほら、忍も謝れって……」

 

「儂は…………」

 

「何よ、何か文句でもあるのかしら……?ん?」

 

ヤバイヤバイヤバイ!

何か出てる!霊夢から禍々しい何かが出てる!!

 

「し、忍!」

 

頼むっ、とりあえず謝っといてくれ……!

 

「儂悪くないもん!!めっちゃ頑張って貴様らの服作って、それで疲れて寝てただけなのに!!ご褒美にもらえるはずだったドーナツ食べられて!それで怒ったらなんか謝れとか言われて!!儂何にも悪い事してないのに!頑張ったのにィィィ!!うわああああぁぁ!!!アアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」

 

な、泣いたぁぁぁ!!?

 

「ちょ、何泣いてんのよあんた!?暦!あんたのパートナーでしょ、泣き止ませなさいよ!!」

 

「僕かよ!?泣かせたのは霊夢だろ!?」

 

「誇り高き吸血鬼ともあろうものがこれくらいで涙を流すなn(モガッ)ん!?んんんん!!んーー!!」

 

「申し訳ございませんお嬢様。しばらく黙っていて下さい。」

 

「あ、あわわわわ、し、忍さん?大丈夫ですよ!みんな怒ってないですよ!?」

 

「うあああああああ!!!」

 

「針妙丸!このタイミングでその慰めはNGだ、……ここは僕に任せてくれ。」

 

そう言って僕は泣き叫ぶ忍をそっと抱きしめる。

 

「う、あ?」

 

「ごめんな、忍。気づいてやれなかった。僕もお前もまだここに来て一週間も経ってないもんな。慣れない土地でまだ落ち着けてないのに事あるごとにお前に頼っちゃったな、僕の悪い癖だ。ごめん、ありがとう。」

 

忍を抱きしめ、そう囁きながら頭を撫でてやる。

 

「あ……忍のやつ、頭撫でてもらって……」

 

「いいなぁ……」

 

レミィとフランが羨ましそうな目で忍と僕を見つめる。

吸血鬼にとって『頭を撫でる』という行為は非常に特別な意味合いをもつ。

親愛、敬慕、服従……

その二人の関係の誓いの儀式のような行為、僕は忍への様々な想いをその行為に込める。

 

「ん……お前様、もうよい。」

 

「おう、落ち着いたか?」

 

「べ、別に、元々取り乱したりしとらんし?」

 

嘘つけ。忍は顔を真っ赤にしてそそくさと僕の影に潜っていった。

 

「へぇ、上手い事するのね。」

 

「お嬢様にも効くかしら」

 

「いいなぁ……」

 

「「え?」」

 

「あ、いや、何でもないぜ!!?」

 

「ん?魔理沙も頭撫でて欲しいの?」

 

「じょ、冗談じゃない!変態の菌がうつる!!」

 

「やめて!若干トラウマだから!!」

 

やめろ!やめてくれぇぇ……!

 

『うわっ!阿良々木菌だ!!気持ち悪ぃ~www!!』

『きったね!!おいこっちくんなってwww』

『はいバーリアー!バリアしたから俺には効きませーんwww』

 

「やめて……僕は……あぁぁぁ……」

 

「はぁ、今度はこっちか……」

 

至極面倒な吸血鬼コンビだった。

 

054

 

食後のお茶を終え、咲夜さん、レミィ、魔理沙達が帰っていって縁側で萃香とゴロゴロしていると、 (フランは謎の毛玉を追いかけまわしている。) 霊夢に呼び出された。

 

「修行?」

 

「そう、さっきもそうだったけどアンタ達はメンタルが弱すぎる。そんなんじゃ自分の術に呑まれて即暴走よ。」

 

「う……」

 

心当たりがある分、何も反論できない……

 

「さ、それじゃあさっさと始めるわよ。忍、だったかしら?あれも引っ張り出しなさい。」

 

「え、忍もやるのか?」

 

「当たり前でしょ、『あの』状態は確かに強いけど、その分危険も多い。いつ力に呑まれるかわかったもんじゃないわ。」

 

「呑まれるって言ってもなぁ……」

 

元々『アレ』は忍の……

 

「望むところじゃ、腋巫女。貴様は少々儂をなめすぎじゃ。ここらで儂の怖さを思い出させてやる必要があるかの。」

 

「ギャンギャン泣き喚いた後に頭撫でてもらって慰められてた幼女に怖さなんて……ねぇ?」

 

霊夢様煽る煽る。

 

「か、かかっ、そう言っていられるのも今のうちだけじゃ。」

 

お、言い返した。よかった、今はカリスマモードみたいだ。

 

「それで、修行っていっても何やるんだよ?まさか瞑想とか言わないよな?」

 

文字で表現するには少し地味すぎるぜ

 

「まぁ別にそれでもいいんだけどね、効率も悪いし、今回はありがちな方法で修行してもらうわ。」

 

「ありがちな方法?」

 

「自身の深層心理との戦闘をして意識の取り合いをしてもらう。」

 

「深層心理?」

 

僕の頭にふと扇ちゃんの姿が浮かぶ。

 

「ま、お前様の場合はあの真っ黒娘、儂の場合は……まぁ『アレ』じゃろうな。」

 

「だよな……大丈夫なのか?」

 

「かかっ、まぁ負けても『春休み』の再来になるだけじゃし、その時はお前様に何とかしてもらおうかの。」

 

「ここで『春休み』みたいな事になったら確実に異変扱いで即霊夢に消されるよ!!」

 

「まぁ、儂は負けんよ。『アレ』と違って儂にはお前様がおるからの。この居場所は誰にも譲るつもりはないわ。」

 

「忍……」

 

「じゃあそろそろ始めさせてもらおうかしらね。

えっと、まずこのお札を使ってあんた達を昏睡状態にする。んでこの時にあんた達の自意識と無意識がごちゃ混ぜになるから、それをあんた達の心の中で『自分』って勘に従って『自分』を組みなおしてくること。深層心理と戦闘になるとしたらここでしょうから、フィーリングで何とかしなさい、以上。」

 

「えっ、」

 

肝心の部分が凄い曖昧だったんだけど!?

 

「なるほど。わかった。」

 

「ホントにわかったのか!?話聞いてたか!?」

 

「お前様こそ、話聞いてなかったんじゃないのか?要するにその深層心理として出てきたヤツをぶっ飛ばしてやればいいんじゃろ?」

 

「ま、そういうことよ。」

 

「そういうことなんだ……」

 

「はいはい、じゃあさっさと覚悟を決めて頂戴。」

 

「儂はいつでもいいぞ。」

「僕もまぁ、大丈夫、かな?」

 

「そ、じゃあせいぜい頑張ってきなさい。」

 

『霊符・夢想封印(弱)』!!

 

「そんなコタツのつまみみたいな―――」

 

夢想封印に被弾した瞬間、僕の中の『自分』がバラバラに砕けてしまったかのような錯覚に襲われる。

百年を超える阿良々木暦の記憶を舞台にした自分探しならぬ、自分作りの旅が、始まる。

 

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