幻物語   作:K66提督

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お久しぶりです。K66提督です。

あまりに久しぶりすぎて「遂に逃げやがったなアイツ」と
思われた方も少なからずいらっしゃると思います。
生きてました。ごめんなさい。

私は何度でも蘇るさ、不死鳥のように!(一度死んだ)

それでは、長々と前書きを伸ばしてしまっても仕方がないので、
今回も『幻物語 弐拾ㇳ漆』をお楽しみ下さい!


※今回ご都合設定があります。
お気を付けください。


幻物語 弐拾ㇳ漆

107

 

 

魔力や霊力が最も高まる時間。丑三つ時。

月の光が雲に隠され、完全な闇となった地上で一人の男が不満そうな表情を浮かべている。

 

「はーぁ……『蓬莱の薬』に『賢者の石』、それと儀式の発動に必要な魔力。材料自体はもう全部揃ったのに肝心の儀式を行う『場所』がないとは……使えねーなぁ、幻想郷」

 

阿良々木暦、人の身体のまま人の理から外れた存在。

アレを上手く利用してやれば私の計画も一気に実現できるものになるだろう。

 

「どうしよっかなー、のんびりしてるとどうせまたアイツ等が来るんだろうしなぁ」

 

まずは『お友達』になろう。『親友』になろう。

友達ってのはいいものだ。騙して言い包めて巻き込んで、用が済んだら友情も人情も、全部ひっくり返して捨てればいいんだから。

そうと決まれば友達になる第一歩。元気な挨拶と自己紹介だ。

 

「ずるいよなぁ、タダでさえ力のある化物達が徒党を組んでひ弱な人間を殺しにかかってくるんだから。あーあ、弱者は辛いねー。」

 

『そうだそうだ! 全くもって君の言う通りだ! 』

 

「……誰だよ」

 

『君と同じ弱者。この幻想郷に常に命を狙われている可哀想な女の子さ』

 

「女の子……ねぇ、ならその可愛い顔を是非見てみたいな?」

 

『おっと、これは失礼。自己紹介どころかまだ自分の姿すら明かしてなかったね』

 

なんて、『失礼』なんて思っていないのに私は口から出まかせを吐く。

さて、そろそろ姿を見せてあげよう。

私は雲の隙間からさした月のスポットライトの下に立つ。

 

『初めまして、阿良々木暦君。私は鬼人正邪っていうんだ、よろしくね』

 

さぁ、始めよう。陥善超悪の物語、演じ切って見せようじゃあないか。

 

 

108

 

 

アリスさんと魔理沙にパチュリーを誘拐された後、患者がいないのに病院にいるのもおかしいので、僕達は一旦紅魔館に移動した。

 

「えっと……今更なんだけど、その、魔界って大丈夫なの?魔王とかに食われたりしない?」

 

「うーん……まぁその辺は大丈夫だと思うわよ?他でもないアリスの母親が魔王、ていうか魔界の神様だし?」

 

「ま、魔界の神……」

 

噛み様に現人神に祟り神に山神に魔界神……

 

「なんか神様の連続登場で驚きも薄くなってきたよ」

 

「まぁ、八百万の神といいますし。今どき神様なんて特に珍しくないですよ、阿良々木さん」

 

「神様の口からそんな事聞きたくなかったなぁー……」

 

「とりあえずパチュリーは連絡くるのを待ちましょうか。それよりもあの男よ。

ちょっと全員集合!咲夜、お茶はあとでいいから。忍も出てきなさいって」

 

「ちっ、……何時から儂に命令できる身分になったんじゃ?レミリア」

 

レミィが裏暦攻略会議を始めようと全員を部屋のテーブルへと集める。

 

「まぁまぁ忍。今はそんな事でケンカしてる場合じゃないんだからさ」

 

「ふん」

 

「そ、それじゃあ始めようかしら。今回、私達は奇襲だったとはいえ奴に全くと言っていいほど歯が立たなかった。相手にもされてなかったぐらいにね」

 

「僕達が戦ってた、というか戦っていると思わされていたのはアイツが作った幻だったんだよな。あれは鈴仙ちゃんの能力って話だけど……」

 

「『狂気を操る程度の能力』と『波長を操る程度の能力』。それらを同時に使うことによって

全員に共通の幻を見せた。他者の能力をあれ程上手く使いこなしているとなると、正面からの戦闘はあまり避けたいところですが……」

 

「そうね……もしフランや咲夜の能力が奴に奪われたとしたら……」

 

「……時間操作の能力、破壊の能力を奴が手に入れるわけか、笑えんの」

 

「忍、あの刀って……」

 

「心渡……に似てはいるがあれには斬った怪異を吸収する力なんて無いはずじゃ」

 

「奴とまともに戦うにはまずあの刀を奪うか壊さないといけないわけね」

 

「奪う、にはやっぱり近づかないといけないよな……」

 

「…………武器」

 

「え?」

 

「武器が必要じゃな。長物を使ってくる相手に素手で挑もうなど無理にもほどがあるじゃろ」

 

「そりゃあそうだけど……お前には心渡があるだろうに」

 

「残念じゃが、アレ――『真名解放』を使ってしまったからには儂が奴と戦うわけにはいかんのじゃ」

 

「……?そりゃまたなんで?」

 

「あれは儂がこの地に来てから徐々に、周囲に悪い影響を与えない程度に少しずつ

妖力的なエネルギーを溜め込んだから出来たことじゃ。またしばらくは使えん。」

 

「てことは……」

 

「奴と戦うのはお前様ということじゃ。『自分殺し』とはまた、今回も愉快な結末になりそうじゃのう」

 

「マジかよ……」

 

「じゃあ暦が忍の刀で戦うってこと?」

 

レミィが『忍』と呼ぶ度にいちいちピクリ、と反応する忍さん。

呼べって言ったのはお前だろうに。

 

「それでもいいんじゃが……よくよく考えてみたら人間(自称)相手に怪異が怪異殺しの刀を使ったところで……な?」

 

「つまりは暦さんの為の武器、またはそれになり得るような魔道具を用意しなければ

ならないということですね」

 

「魔道具……となるとあそこかしら?」

 

「あそこですかね」

 

レミィがニヤニヤするのに対して、咲夜さんは困ったように苦笑いを浮かべ肯定する。

 

「えっと……どこですか?」

 

「胡散臭いことで有名な店主が経営している古道具屋、『香霖堂』よ」

 

 

109

 

 

「やぁいらっしゃい阿良々木君。また随分と遅かったねぇ、待ちくたびれたよ」

 

どこぞのアロハ野郎を思い出す懐かしいフレーズで香霖堂店主、森近霖之助さんは

向かい入れてくれた

 

「あの、なぜ僕の名前を……」

 

「あぁ、すまないすまない。『この姿の僕』とは初めましてだったね、阿良々木君」

 

そう言うと白髪の男は煙草をくわえ、机の上に足を組んで。

 

「はっはー、初めまして。そして久しぶり阿良々木君。元気にやってたみたいだねぇ」

 

見透かしたように、そう宣った。

 

「お、お前!?」

 

「おっと、そこまでだ。ごめんよ阿良々木君。前の名前を呼ぶのは止めてくれ、存在がブレてしまうからね。まぁどうしてもっていうなら森近霖之助の方で頼むよ」

 

「お……森近。なんでお前がこんな所に……とっくに死んでるものだと思ってたんだけど」

 

「ひどいな阿良々木君は。いや、実は仕事でちょっとミスっちゃってさ、不死の呪いを受けちゃってさぁ。その影響か何なのか知らないけど髪が真っ白になっちゃうし。踏んだり蹴ったりだよ」

 

「不死の……」

 

「まぁ、阿良々木君とは違って病気みたいなものだし、解呪の方法を探しながらここで古道具屋なんてのをやってるわけさ」

 

「ふーん……」

 

「それで?阿良々木君。君は何をお望みかな?骨董品からえっちな本まで、ウチの品ぞろえに抜かりはないぜ?」

 

「この状況でなんで僕がえっちな本を買いに来たと思ったんだよ。」

 

「ん?……はっはー、阿良々木君。君は相変わらず会う度に違う女の子を連れているね

どうも、十六夜さん。今日もお嬢様のお使いかい?」

 

「い、いえ……今日は暦さんの付き添いで来たのですが……お二人はお知り合いだったのですか……?」

 

「まぁねー、僕と阿良々木君は一言じゃ言い表せない只ならぬ関係だから」

 

「なっ!!?」

 

咲夜さんが口を覆い隠してフラフラと後退してゆく。

 

「さ~くやぁ~、いつまで店の入り口で突っ立って……って咲夜!?どうしたのよ!?」

 

「お前……特に理由もなく僕の人間関係をかき回すような事を言うな!!」

 

「いやぁー、はっはっはー」

 

「笑い事じゃねぇ!!」

 

閑話休題。

 

 

「武器……ねぇ、そりゃまた物騒な物をお求めだ。全く阿良々木君は元気いいなぁ、何か良い事でもあったのかい?」

 

「良い事続きだよ、生憎と。それよりも森近、今回は怪異じゃなくて人間が相手なんだ。

まぁ人間と言っても怪異の専門家で、大分人間離れしている感じなんだけど……」

 

「ふーん……いいよ。オーケー、阿良々木君。最高の武器を用意しようじゃないか。

来るべき決戦に相応しい、そんな武器をね」

 

「……お前にしてはやけに物分かりがいいな、以前までならここで皮肉の一つや二つ言ってただろうに」

 

「まぁ今の僕はバランサーってわけじゃない、ただの売れない古道具屋店主だからね。

お客様のご希望を叶えるのが今の僕の仕事だ」

 

「僕もお前も、お互いあの頃とは随分変わったなぁ」

 

そんなものだよ、阿良々木君。

と、やっぱりわかったような事をこの男は口にするのだった。

 

 

110

 

 

「はい、これ」

 

しばらく待っていろと言った森近が店の奥、倉庫の方から

一振りの刀を持ち出してきた。

 

「えっと……僕の素人目じゃ何の変哲もない刀なんだけど……

これも霊験あらたかな不思議な刀だったりするのか?」

 

「いや?阿良々木君の言う通り、何の変哲もない刀。骨董品だ。」

 

「はぁ!?ちょっと香霖堂!!私達はこの戦いに相応しい最高の武器を探しに来てるのよ!?何でこんな玩具みたいなのを持ってくるのよ!!」

 

「まぁまぁ。落ち着けよ、お嬢様。元気いいなぁ、何かいいことでもあったのかい?

阿良々木君達の話を聞くに、どうも敵さんの能力は怪異性を奪い、操る能力みたいだからね。

下手に特殊な伝説、能力を持ってる武器を使うよりもこっちの方がいいのさ」

 

「それで、普通の刀か……銘とかはあるのか?この刀」

 

「無いよ。無い。無銘の刀。せっかくだし、阿良々木君がつけてあげるってのもいいんじゃない?」

 

「僕が?」

 

「『名は体を現す』という言葉があるように名前っていうのは存在を証明するのに

重要な要素の一つだからね」

 

「名前、ねぇ……」

 

「思いつかないなら私が付けてあげてもいいわよ!?」

 

「あ、いえ。結構です。」

 

「遠慮なんてしなくていいわよ。暦の刀だから……そうね!『コヨミソード』、『アララギ剣』っていうのもいいわね……」

 

「勘弁してください。」

 

「なんでよ!!」

 

「かか、わからぬのか阿呆め。うぬのネーミングセンスはそれだけでこの刀を台無しにすような壊滅的なものなんじゃから引っ込んでおれ。」

 

「な、何ですってぇぇ!!?」

 

「ちょ、やめ、やめろ、このポンコツ吸血鬼!!残念お嬢様!!」

 

隙あらばケンカしてるな、コイツら……

 

「それで?阿良々木君。名前は決まったかい?」

 

「『宿木』……てのはどうかな」

 

「ヤドリギ?なにそれ。ヤドカリの親戚か何か?」

 

被子植物真正双子葉類ビャクダン目ビャクダン科ヤドリギ属、ヤドリギ。

寄生型の植物で、鳥の糞などで宿主とる樹に張り付きそこから発芽。

樹皮に根を下ろし寄生を始める。

国によっては神聖なものとされており、宿り木信仰なんてものまである。

 

「へぇ、宿り木ね。いいんじゃないかい?阿良々木君の生き様っぽくて」

 

「誰が寄生型だ。」

 

他人に頼らなければ、誰かの助けがなければ何もできない。

そんな僕にはぴったしの刀。ぴったしの名前。

 

『劇刀・宿木』。

 

僕の声に応え、刃に蒼色の根のような光が走った。

 

 

……ような気がした。

 




久々の後書きです。

初投稿から何気に1年が経ちました。
始めの頃から読んでくださっている方にも、一気読みをして下さった方にも
深く感謝を申しあげます。

だらだらと続いている物語ですが、もう少しだけお付き合いいただけると幸いです。
それでは次回もお楽しみに!
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