八月、うだるような暑さのなかこれまた暑苦しい背広のスーツを着こんだ長身の男が胡散臭いカタコトの日本語で俺に話しかけてくる。
「へーい、みすたーナミカ」
今俺たちがいる場所は鋼鉄の城アインクラッド、そうここは最近話題のゲーム『ソードアートオンライン』の中にいるのである!
……今「は?こいつ頭おかしくね?」とか思っただろ。ところがマジなのである、大マジなのである!(大事なことなので二回言いました)
「どうした、ジェントル?」
俺は安っぽい味のパスタを口に運びつつ目の前にいるギルド仲間に返事をする。
俺に話しかけてきたギルド仲間……ジェントルは被っていたシルクハットをその場におきながら言う。
「マタぱすたデスカ?」
グラスに入った水を一口飲んでから答える。
「いや、ここのパスタは全然ダメだな、魚介類の磯っぽい味が残ってるうえに新鮮なトマト特有の酸味も少ないやっぱりトマトソース系のパスタなら十四層のレストランのものが一番だな、あ、魚介類と言え「コホン」
わざとらしく咳払いをしたジェントルは苦笑いをしながら「ぱすたニツイテハ今度ユックリカタリアイマショウ」と言っている。
なんだよこいつ、いつもは話を聞いてくれるくせに今日に限って話を遮りやがって……よし次に語るときは長々と三時間ぐらい話を聞かしてやろう。そう決心しながら周りをみると店のほとんどの客がこちらに注目していた。
「ほらお前がそんなに目立つ格好をしているせいでめっちゃ見られてんじゃん」
「メダッテルノハアナタガイキナリ大声デ語リダシタセイダト思ウノデスガ……」
いや確かに途中からどんどんヒートアップしていった気はしないこともないけどそんなに声を出してはいないはず(たぶん)
「で、本題は?」
俺がそう促すと彼は突然真剣な顔になり声を潜めて言った。
「新シイたーげっとガ決マリマシタ」
やっぱりか……俺は思わず生唾をごくりとのみこみ聞き返した。
「ターゲットの名前と所属ギルドは?」
「『風林火山』ニ所属シテイル、『ストレイド』トイウぷれいやーです」
『風林火山』か……確か攻略組のギルドな、おそらく相当の実力を持っているのだろう。
「みっしょんノ決行日ハ明日デス」
「明日!?いくらなんでも急すぎだろっ!」
基本的にミッションの決行までには少ない時でも三日ぐらいの猶予があるっていうのに一体どういうことだ?
「オソラク『サイダー』ノ正体ガバレマシタ、マダ誰ニモ言ッテマセンガ明日ノ攻略会議で言ウツモリデショウ」
つまりそれまでに口を封じろってことか、確かに俺的も正体をばらす訳にはいかないしな。
『サイダー』は俺たちの仲間でβテスターでもある、高い実力を持っているがその分頭が悪くすぐにボロをだしてしまう。全く困った仲間だぜ。
「ソレデハ、明日ノ攻略会議、予定ヨリ二時間ホド早ク会場にキテクダサイ、ソコニ彼ヲ呼ビ出シマス」
そう言い残した後机の上においたシルクハットをかぶり爽やかに一礼をして帰っていった。
その後俺は油だけが残ったパスタの皿を見つめながら考える。もうすぐ半年になるのか、こんなことをはじめてから。
俺は一年前とある人物に命令されこのゲームに入った。俺の目的とはクリアまでの時間をできるだけ引き延ばすこと、そして俺達は……『レッドギルド』である。