遊戯王GXR   作:女神

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第七話 闇のデュエル(後編)

第7話 闇のデュエル(後半)~シンクロ召還

 

俺の指差す方から黒いスライムの様な顔の付いた何かが俺たちの方へ向ってくる。すると十代のデッキから羽の生えたクリボーが出てきた。

 

<<クリクリ!>>

 

「相棒!」

 

「はっハネクリボー!!どうして!?」

 

<<クリクリ!>>

 

途端、自分の腰あたりからクリボーの声が聞こえる。って言うか何か腰の当たりにいる。視線を落とし自分の腰を見ると、デッキケースの隙間からクリボーが一生懸命這い出てくる。出てきたクリボーは、そのまま俺の顔の前まで飛んでて来てハネクリボーと共に俺と十代を一瞥すると俺たちの回りにいた黒いスライムの様な奴らを威嚇している。

すると回りにいた黒いスライム状の何かは、俺と十代から離れて行く。

 

「コイツら、ハネクリボーたちが怖いのか?」

 

「いや、分からん」

 

十代の問いに答えられる程、知識を持っている訳ではないので分からんとしか答えられん。

そう思っていたら不意にタイタンは、どうなっただろうと思いタイタンに眼を向けるとタイタンは、すでに黒いスライムの様なものに身体を纏われ付かれ、身動きが取れない状況であった。

 

「くっ!まさか本当に闇のゲームが存在したというのかぁ!!」

 

タイタンがそう言うとスライム状の何かは、タイタンの口の中へと入って行く。

気持ち悪いなぁ・・・

 

「おい!大丈夫か、お前?」

 

十代は、タイタンの身を案じてそう問う。だがタイタンは、何も答えずムクッと立ち上がり十代と遊を見る。

その眼は仮面の上なのに赤く光っている。

その異様な様子に遊と十代は、自然に身構える。

 

「すでに闇のデュエルは、始まっている。デュエルが終わるまでこの場所から出る事は出来ない」

 

「なっ、コイツまだ闇のデュエルとか言ってんのかよ!」

 

「気を付けろ!十代。ここからは、本当に闇のデュエルだ!」

 

「その通り。このデュエルでは、負けたものは闇の世界に閉じ込められる。そして二度と元の世界に帰る事は出来ない」

 

「要は、お前に勝てばいいんだな」

 

「勝てればの話だ。そして貴様にもデュエルしてもらう」

 

タイタンは、遊の方を指差しながらそう言う。つまり

 

「タッグデュエルってことか」

 

「その通り」

 

「だがお前のパートナーは、どうする?」

 

タッグデュエルである以上タイタンにもパートナーが必要だがこの空間には、俺と十代とタイタンの他には、あの気味の悪いスライムの様なものとクリボーとハネクリボーしかいない。これではタッグデュエルが成立しない。

 

「ふふふ。心配するな私のパートナーはコイツだ」

 

タイタンがそう言った後、タイタンの回りにいた黒い何かが集まって行き人の様なものになった後タイタンと同じ姿になったのだ。

俺と十代が驚いて見ているともう一人のタイタンがルールを説明する

 

「ルールは、先ほどのデュエルの続きで最初のターンはお互いに攻撃出来ない。ライフは別、フィールドも別、異存はあるか?」

 

「いいや、ない」

 

「俺もだ」

 

「では、先ほどのターンの続きをしてもらう」

 

「あぁ」

 

遊         LP4000 手札5 場0

十代        LP2700 手札2 場2

タイタンA     LP3500 手札2 場2

タイタンB      LP4000 手札5 場0

 

「俺は、ターンエンド」

 

十代は何もせずにターンエンドした

 

十代  LP2700 手札2 場2

 

「エンドフェイズに私のデーモンの騎兵は破壊される。そしてデーモンの騎兵の効果発動!墓地より蘇れ[戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン]!!」

 

戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン A3500/D2000

 

「そして私のターン、ドロー。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

タイタンA LP3500 手札2 場3

 

 

どうしたものか。このデッキは、戦士族でもドラゴン族でもないデッキ。このデッキは、この世界に存在しないカード。シンクロを主軸としたデッキ。

さっきのデュエルを見ていて大体相手のデッキは分かった。恐らくこのデッキなら何の問題もなく勝てるだろう。

しかしそれは、あくまでシンクロ召還したらの場合でシンクロ召還せずに戦うとなると基礎戦闘力で劣る俺のモンスターでは、デーモンの高攻撃力には太刀打ち出来ないだろう。

まじでまずい状況だ。デュエルを受けなければここから出られず、受ければこのデッキで戦わざるをえない。それは、自分の正体が露見する可能性を高める事になる。

そんな事になれば、皆が俺から離れるかもしれない。

どうする・・・どうすればいい。

 

「遊?」

 

「!?」

 

「大丈夫か?」

 

十代は、俺がターンを進めない事に疑問を感じ、俺を心配してくれていた。

この闇のデュエルの状況で俺の心配をしてくれる十代は、本当にいい奴だ。まぁまだ闇のデュエルを信じていないと言う事もあるだろうが、それでも自分の事を心配してくれる十代の気持ちは、本当に嬉しい。反面十代に隠し事をしている事に酷く罪悪感を感じる。

嘘をついている俺を十代は受け入れてくれるだろうか、仲間だと思ってくれるだろうか。そんな事が頭をよぎる。

 

「遊。無理すんなよ」

 

「十代」

 

「ん?」

 

「・・・もし俺が十代に嘘付いてたとしたら十代はどうする?」

 

「何だよこんな時?」

 

「・・・」

 

自分でも何を聞いているのだろうと思う。だけどどうしても知りたいと思っている自分がいる。安心したいと思っている自分がいる。

弱いな俺は・・・

 

「いや、やっぱりいいや」

 

「・・・」

 

その遊の表情は、どこか悲しいような辛い様なものだった。

十代には、それを放っておく事は出来なかった。ちゃんと答えなければと思った。遊の眼は、寂しいと感じている眼だ。十代には、分かる。

なぜなら十代も昔、そんな眼をしていたから

 

「俺は、遊が俺に嘘付いてたらちょっと悲しいし寂しいかな」

 

「十代・・・」

 

「別に嘘が駄目だって訳じゃない。嘘にだって色々あるだろ?人を傷つける嘘、人を貶める嘘、人を苦しめる嘘だけじゃない・・・嘘には、人を喜ばす嘘、誰かを安心させる嘘、自分を守る嘘。こう考えると、遊が『どんな』嘘を付いたのかより『どうして』嘘を付いたのかって言う方が俺は気になるし知りたい」

 

「・・・」

 

「俺は、遊が俺を騙すためや傷つけるために嘘を付いたとは思えない。遊は、俺の友達で仲間だから。だからこそ教えてほしかったし信用してほしかったって思うかな」

 

「十代・・・」

 

十代は最後、遊に優しく笑いかける。その笑みは、遊を安心させるのに十分すぎるものであった。

 

「ありがとう。十代」

 

十代は何も答えなかった。ただ先ほどの笑みを絶やさずに遊を見ている。

 

我ながら本当に臆病だ。

十代に安心させてもらいようやく戦う気力が出てくるのだから。

ただ十代が友達と言ってくれた、仲間だと言ってくれた、その言葉が今の俺にはとても心地の良い響きであり、心から嬉しいと感じた。

十代の為に仲間のために戦おう。

 

「ふぅ」

 

俺は、大きく深呼吸をしてからタイタンを見る。

 

「ようやくやる気になった様だな」

 

どうやらタイタンは、俺がやる気になるのを待っていたらしい。なんと律義な男だ。本当に闇のデュエリスとなのかと思ってしまう。

 

「あぁ!待たせたな、行くぜ!!俺のターンドロー!!」

 

このデッキは、元の世界で頻繁に使用していた愛用デッキの一つだ。この世界に来てから一度もデュエルはしていないが、それでも毎日調整は怠らなかった。

それがまさかこんな状況で使う事になるとは

いやこんな状況でなければ使わないか。

 

「俺は、魔法カード[ワン・フォー・ワン]を発動。手札一枚を墓地に送りデッキからレベル1のモンスター一体を特殊召還する!来い!レベル1チューナーモンスター[グローアップバルブ]!!」

 

「「「チューナーモンスター!?」」」

 

十代とタイタンは、聞いた事のない種類のモンスターに驚いている。

 

「初め見るモンスターだぜ!遊!!」

 

「十代、あとで全部ちゃんと説明するから今は力を貸してほしい」

 

「・・・おぅ!!まかしとけ相棒!!」

 

<< <<クリクリ!>> >>

 

十代は、遊の顔をしっかりと見てそれでいてニカッと笑う。回りにいたクリボーとハネクリボーも嬉しそうに鳴いていた。

再びタイタンの方に顔を向け構える

 

「行くぞ!タイタン!!墓地の[ボルトヘッジホック]の効果発動!このカードは、自分フィールドにチューナーが存在している時、墓地から特殊召還出来る。そしてレベル2[ボルトヘッジホック]にレベル1[グローアップバルブ]をチューニング!!」

 

ボルトヘッジホックはゲームから除外される。

 

「チューニング!?」

 

「シンクロ召還!レベル3[ゴヨウ・ディフェンダー]!!」

 

「シンクロ召還だとぉ!?」

 

「すげぇ!?初めて見たぜ!!」

 

「まだだ![ゴヨウディフェンダー]の効果発動!自分のフィールド上に地属性、戦士族、シンクロ(S)モンスターのみの場合、エクストラデッキから[ゴヨウディフェンダー]を一体特殊召還する。さらにディフェンダーの効果でもう一体特殊召還する!」

 

ゴヨウディフェンダー A1000 /D1000 ☆3

ゴヨウディフェンダー A1000 /D1000 ☆3

ゴヨウディフェンダー A1000 /D1000 ☆3

 

「いっきに三体のモンスターを」

 

「さらに手札からチューナーモンスター[ゾンビキャリア]を召還。レベル3[ゴヨウディフェンダー]にレベル2[ゾンビキャリア]をチューニング!シンクロ召還レベル5[TGハイパーライブラリアン]!!」

 

ゴヨウディフェンダー A1000 /D1000 ☆3

ゴヨウディフェンダー A1000 /D1000 ☆3

TGハイパーライブラリアン A2400 /D1800 ☆5

 

「うぉお!またシンクロ召還!!」

 

「まだまだ行くぜ!墓地の[ゾンビキャリア]の効果を発動!手札一枚をデッキの上に戻す事でこのカードを墓地から特殊召還する!さらに墓地の[グローアップバルブ]は、デッキの一番の上にカード墓地に送る事で一度だけ墓地から特殊召還出来る。レベル3[ゴヨウディフェンダー]二体にレベル2[ゾンビキャリア]をチューニング!シンクロ召還!飛翔せよ!!レベル8[スターダストドラゴン]!!」

 

ゾンビキャリア、ゲームから除外される。

 

「なぁに!?」

 

「すげぇえ!?綺麗だなぁ」

 

遊のフィールド上に現れた白い竜は咆哮を上げながら遊を守りかの様にタイタンと遊の間に現れる。

 

「そしてこの瞬間、ハイパーライブラリアンの効果発動!シンクロ召還に成功した時デッキからカードを一枚ドローする」

 

「おのれぇえ・・・」

 

「さっきデッキの上から墓地に行った[レベルスティーラー]の効果、自分フィールドのレベル5以上のモンスター一体のレベルを一つ下げこのカードを墓地から特殊召還する。レベル8のスターダストのレベルを一つ下げ[レベルスティーラー]を特殊召還。レベル5[ TG ハイパーライブラリアン]とレベル1[レベルスティーラー]にレベル1[グローアップバルブ]をチューニング!シンクロ召還!レベル7[クリアウィング・シンクロドラゴン]!!」

 

二体目の白い竜が遊の場に現れるとタイタンと十代は、もう何が起きているのか分からないっと言った表情で遊の事を見ていた。

 

スターダストドラゴン A2500/D2000 ☆7

クリアウィング・シンクロドラゴン A2500/D2000 ☆7

 

「くっ、だが攻撃力2500では、我がデーモンたちの敵ではない!」

 

「俺は、カードを一枚伏せターンエンド」

 

遊 LP4000 手札2 場3

 

「私のターンドロー、私は魔法カード[愚かな埋葬]発動。デッキよりジェネシスデーモンを墓地に送る。そして私は、手札から[デーモンの騎兵]を攻撃表示で召還。さらに手札から[デーモンの将星]を特殊召還。その後自分フィールド上のデーモンと名の付いたカード一枚を選択し破壊する。私は、[デーモンの騎兵]を選択!!」

 

「最初と同じコンボか!」

 

「[デーモンの騎兵]騎兵の効果により墓地より[戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン]を特殊召還!!」

 

「マジかよ!?」

 

「まだだ、伏魔殿の効果!私はデーモンの将星をゲームから除外しデッキからジェネシス・デーモンと同じレベルの[ヘル・エンプレス・デーモン]を特殊召還する!さらに魔法カード[異次元からの埋葬]を発動。ゲームから除外されているモンスターを三枚まで墓地に戻す事が出来る」

 

デーモンの将星 2体

デーモンソルジャー 1体

 

戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン A3500

ヘル・エンプレス・デーモン A3400

 

「行くぞ!小僧!!ジェネシス・デーモンの効果!墓地の[デーモンの騎兵]をゲームから除外し[スターダスト・ドラゴン]を破壊する!」

 

「甘い!スターダストの効果、『フィールド上のカードを破壊する効果』をもつ魔法罠効果モンスターの効果が発動した時、このカードを生け贄にする事で発動を無効にし破壊する!!」

 

「なぁにぃ!!?ならばヘル・エンプレス・デーモンの効果!墓地の[デーモンの将星]をゲームから除外し破壊の変わりとする!!」

 

「ならば[クリアウィング・シンクロドラゴン]の効果!レベル5以上のモンスターが効果を発動した時にその効果を無効に破壊する!!」

 

「なぁに!?」

 

「さらに破壊したモンスターの元々の攻撃力分だけこのカードの攻撃力をエンドフェイズまでアップさせる!」

 

クリアウィング・シンクロドラゴン A5400/D2000

 

「おのれぇ!!」

 

「すげぇぜ遊!!」

 

遊と十代は、顔を見合わせお互いに親指を立てる

 

「私はカードを一枚伏せターンエンドだ」

 

タイタンB LP4000 手札2 場1

 

「この瞬間[クリアウィング・シンクロドラゴン]の攻撃力は、元に戻る。そして、スターダストが効果により帰還する」

 

クリアウィング・シンクロドラゴン A2500/D2000

スターダスト・ドラゴン A2500/D2000

 

「なっ再生効果まで併せ持つのか、そのモンスターは!?」

 

「つぇえなスターダスト・ドラゴン、何かワクワクしてくるぜ!!俺のターン!遊が魅せたんだから俺も魅せてやるぜ!俺は、手札から[E・HEROキャプテン・ゴールド]を墓地に送りデッキからフィールド魔法[摩天楼ースカイスクレイパー]を手札に加える」

 

「そしてスカイスクレイパーを発動!」

 

十代が新たに発動したフィールド魔法によってタイタンが発動していた伏魔殿が消滅していく。

そしてその後超高層ビル群によってフィールドが囲まれる。

 

「なっわっ私の、私のフィールドが消えて行く!?」

 

「ここが俺のヒーローたちが戦う舞台だ!さらに俺は、魔法カード[ミラクルフュージョン]を発動!」

 

「ミラクルフュージョン!?」

 

「フィールドと墓地から融合素材モンスターをゲームから除外する事で融合召還出来るE・HERO専用カード!俺は、墓地のフェザーマンとバーストレディーをゲームから除外して[E・HEROグレイト・トルネード]を融合召還!!」

 

E・HEROグレイト・トルネード A2800/D2200

 

「また新しいヒーローか!?」

 

「そうだ!そしてこのカードの召還に成功した時相手フィールドのモンスターすべての攻撃力・守備力を半分にする!」

 

「なぁに!?」

 

戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン A3500/D2000 →A1750/D1000

 

「おのれぇ、小癪なぁ」

 

「行くぜ!バトル!!ワイルドマンでジェネシス・デーモンを攻撃!!」

 

E・HEROワイルドマン A1500 →A2500

戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン A1750

 

ワイルドマンの斬撃によりタイタンAのジェネシス・デーモンは真っ二つに切り裂かれ爆散する。

 

タイタンA LP2750

 

「くっ!?」

 

「まだだ!グレイト・トルネードでダイレクトアタック!」

 

「甘い!罠発動![聖なるバリアーミラーフォース]!!」

 

「そのカードの発動に対してスターダストの効果を発動!!ミラーフォースの発動を無効にし破壊する!」

 

「ならばカウンター罠発動![神の宣告]!」

 

タイタンB LP2000

 

俺のスターダストドラゴンの効果に対してカウンターを行ったのは、タイタンB。

しかしそんな事は予想がついている

 

「その[神の宣告]に対してカウンター罠[神の宣告]を発動!」

 

遊 LP2000

 

「おのれぇ!」

 

「サンキュー、遊!!」

 

「おう!」

 

「行け!グレイト・トルネード!!」

 

十代の指示に従い、グレイト・トルネードがタイタンAに向かい攻撃を仕掛ける。

その攻撃を受けタイタンAのライフは0となり、その場に膝を屈する。

これにより十代の次は、俺となる。

 

「俺はこれでターンエンド」

 

十代 LP2700 手札1 場4

 

十代のエンドフェイズにスターダストドラゴンが帰還する

 

「俺のターン、」

 

俺がドローすると残ったもう一人のタイタンはいま忌々しそうにこちらを見る。すでに相手のフィールドには、モンスターはなく伏せカードもない。

 

「俺は、スターダストドラゴンでダイレクトアタック!シューティングソニック!!」

 

スターダストの口から放たれる光のブレスがタイタンに直撃しタイタンは自身の後ろへと吹き飛ばされる。

 

「よっしゃー!勝ったぜ遊!」

 

「あぁあ!十代!!」

 

俺と十代は、互いに手を挙げ手を合わせる。その直後、デュエル中回りにいた得体の知れない何かは、タイタンの方に群がりそのままタイタンを飲み込んでしまう。

かなりグロッキーな絵柄だ。

 

<<クリクリ!>>

 

「ハネクリボー、あれが出口だな!?」

 

「早く行こう十代!」

 

「おう!」

 

俺と十代は空間に出来た裂け目に飛び込む。するとそこは、最初にタイタンとデュエルしていた地下空間であった。

 

「アニキ!遊君!」

 

「無事だったんだな!?」

 

翔と隼人が駆け寄ってくる。すると先ほどまで居たであろう黒い球体は、回りの空気を吸い込みながら小さくなっていき最終的には、破裂した。

その際、吸い込まれそうになった気絶している明日香を十代が支えているのが見えた。

十代は、本当に格好いい奴だ。

 

「まぁそんな事より早くここから出よう」

 

俺がそう言うと全員が納得しここから出ようと動き始める

明日香は、十代が背負い連れ出した。

 

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外に出て暫くすると気絶していた明日香が眼を覚ます。

それに気付いて十代たちが駆け寄る。

 

「大丈夫か明日香?」

 

「じゅ・・う・だい?」

 

明日香に話しかける十代。

 

「明日香を誘拐した奴なら俺らが追い払ったぜ!」

 

「あっあなたたちが助けてくれたの?」

 

「おう!俺と遊だぜ」

 

「俺何もしてないけど」

 

「えっ?まぁ気にすんな。それより明日香、これ」

 

十代は、明日香のデッキのカードと寮内で見つけた写真を明日香に手渡す。

 

「これ!?兄さんの!!」

 

「ごめんな、これぐらいしか見つからなくて。もう少し役に立てるかと思ったんだけど」

 

「あなた、そのために!?」

 

「十代、そうだったの!?」

 

明日香と俺は、十代の行動の理由を知り驚く。

 

「あれ?何驚いてんだよ遊」

 

「・・・いや何でもない」

 

「ふーん。まぁ明日香、あんまり役に立てなくて悪かった」

 

ちゅっちゅっチュと小鳥がさえずり始める。すでに日が昇り始めている。

 

「やっべ!皆が起き始める前に帰らないと!じゃっじゃあな遊!明日香!!」

 

十代は、走って行く。その後に翔と隼人が急いで付いて行く。

そんな十代たちを見送りながら明日香がボソッと呟いた

 

「お節介な人ね」

 

「それがまたいい所だと思うぜ」

 

その表情は、とても穏やかで優しいものであった。

ちなみに後で十代が明日香を背負って連れ出した事を伝えると、明日香は顔を真っ赤にして驚いていた。

 

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廃寮地下デュエル場

 

オベリスクブルーの制服を着た生徒が中央で膝を付き手を地面に付けている

 

「そこで何をしている」

 

生徒に後ろから声を掛けた人物がいた。その人物は、眼鏡を掛け長い髪を後ろで結んでいる。

生徒が体勢を保ちつつ目線だけそちらの人物に向ける。

 

「そのお言葉、そのままお返ししますよ。先生」

 

先生と言われた人物は、何も言わない

 

「今日は随分雰囲気が違いますね」

 

「お互い様だ」

 

生徒はうっすらと笑みを見せると、生徒の右腕に紫色に光る痣が浮かび上がる。

さらに足下から紫色の炎が吹き出す

 

「私はこれで失礼します」

 

生徒は、そう言うと炎に包まれ姿が消える。その場に残された先生は、その後薄ら笑みを浮かべていた。

 

 

 




次話「派閥争い」

読んで下さいました方々誠にありがとうございます。
次話もなにとぞよろしくお願いいたします。

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