クズマとウィズがあの終わた世界から来るそうですよ? 作:そ?
〝ノーネーム〟の指針
渇いた風が、砂埃を巻き上げ三人の肌を撫でる。顔を手で各々庇いながら眼前の光景に目を向けた。
黒ウサギ曰く、そこは嘗て〝ノーネーム〟がまだ名と旗印を有していた頃の居住区に当たる所らしい。東区画最大手のコミュニティ、その領地はとても広大なもので、それは一つの町とも揶揄出来るものだ。―――――但し、人の営みが確認出来たらの話だが。
〝サウザンドアイズ〟を後にした飛鳥達は、黒ウサギに連れられ漸く〝ノーネーム〟の居住区の門前に辿り着いていた。そして、何やら暗い表情を浮かべる黒ウサギに続いて趣のある門を潜った。……先に見えたものは惨憺の一言に尽きた。舗装されていただろう白石畳の通りは大量の砂埃にまみれ、且つ割れたり抉れたりした箇所が目立つ。その脇に並んでいただろう並木は不規則に点在し、その全てがミイラの様に朽ち果ててしまっている。また、周囲にある家屋の全てもほぼ全壊状態。
総じて、風化しきった廃墟街と言った方が的を射ているだろう。……が、問題はそれだけではない。
「ねェ黒ウサギ。一応聞いておくけど、貴女のコミュニティが壊滅したのって……何百年前の話かしら」
「僅か、三年前でございます」
「……これが、三年前の?」
「どうやら噂の魔王さんは想像以上に支離滅裂な方々のようですね。こんなの、普通たった三年で作れるものじゃないですし。」
「因みにウィズはこれと同じように出来るか?」
その一言でウィズに視線が集まる。
仮にも魔法使いでリッチー。
「出来なくは無いですね。ですが時間は掛かりますし、私ならここら一帯を全て消すことも可能なので後者をとるかと。」
その一言で皆は押し黙る。
こんな天然でもここらを消すことが出来るからだ。
飛鳥は近くのテラスにあったテーブルから空のティーカップを手に取った……瞬間に、そのカップは呆気なく砕けてしまった。一方で十六夜は朽ちた街路樹、そこから無人の通りへと視線を送る。
(土地は完全に死んでいる。)
「魔王とのゲームは完全に未知の戦い。為す術もなく……この有り様です。土地を奪われなかった事は幸いでしたが、あくまで他のコミュニティへの見せしめの為。彼らは遊び心で数多の同士達を捩じ伏せ、僅か残った者達の心すら折れ……やがてはコミュニティを去っていきました」
悲痛の籠った黒ウサギの独白に三人は沈黙のまま災厄の爪痕を見つめていた。
その後、一行は廃墟と化した居住区を抜け枯れ果てた貯水区へとやってきた。ここに来たのは、十六夜が手に入れた水樹の苗を設置する為である。それのお陰で、わざわじ遠方に水を汲みに行く今までの手法を取らずに済み、浴場を使用する事も出来るらしい。初めに水の中へ叩き込まれた三人にとって、特に女性陣にとっては有難かった。
貯水区には、もう夜も更けってきたというのにそれなりの数の子供の姿があった。よく見てみれば、少し前に別れたジンの姿も見える。その手には、水を張ったバケツやブラシ、箒等々の掃除用具を持っており、丁度掃除中だったのだと窺わせた。
「あ、みなさん! 水路と貯水池の準備は調ってます!」「ご苦労様ですジン坊っちゃん♪ 皆も、ちゃんと掃除を手伝っていましたか?」
すると、子供達はコミュニティの困窮をまったく感じさせない程の明るい賑やかさで黒ウサギの元に集まってきた。これに対して三人の反応はそれぞれで、
「おっ、元気なガキどもだな!」
「……猫、狐、犬……人以外の子も沢山居るみたいですね」
「カズマさん、喜ぶでしょうね」
「カズマ君、子供もが好きなの?」
「えぇ、良く仲良くしてるのを見ますし」
といった感じだった。
そして、黒ウサギが直ぐに4人を紹介した時も、
「「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」
「本当に元気な子達ね。フフ、此方こそよろしくね」
「改めて、春日部耀です。至らぬ点はあるでしょうが、これからお世話になります」
こんな感じだった。十六夜がこの調子なら問題ない。に飛鳥と耀は特に問題なくやっていけそうであった。
「さてさて、自己紹介も終わりましたし早速水樹を植えましょう! 設置は黒ウサギがやりますので耀さん、ギフトカードから出して頂けますか?」
「はい」
耀は何度も出し入れをしたお陰か小慣れた手付きで苗木を取り出し、黒ウサギへと渡した。
〝ノーネーム〟の所有する貯水池並びに水路はかなり広大なもので、流石に全域を苗木のみで満たすのは厳しいらしい。なので、今回は本拠へと続く水門のみを開けるようだ。
「それでは苗の根を張りますので、十六夜さん! 水門を開けてください!」
「あいよ!」
十六夜は水路へと降り立つとやや乱暴ながらも鍵を門を外し押し開ける。と、並行して設置の終わった苗木が膨大な量の水を吐き出すのはほぼ同時だった。当然、あっという間に生成された奔流は十六夜を……正確には水路の通る水門を目掛けて押し寄せる。
「おい、待...」
水流に呑まれる前に急いで通路へと跳躍した。そのまま降り立ったのは、苗木を合図もなしに置き終えた黒ウサギの正面。彼の右手は迷いなく頭の上に伸びるウサ耳へと向かった。
「あ、ちょ! いた、痛たたたたぁ!? い、十六夜さん! ぬ、抜けます! 引っこ抜けちゃいますぅ!? 黒ウサギの自慢のウサ耳がああああああああ!!?」
「安心しろ、抜きはしない。抜きはな」
「余計に質が悪いです!?」
悲鳴を挙げる黒ウサギが得た今日の教訓は『自業自得』だろう、と思いながら飛鳥は、もうすっかりと満たされた水路を感動的に見詰める子供達、ジンを見やった。
「凄い! これなら生活以外にも水を使えるかも……!」
「あら、農業辺りでもするの?」
「近いですね。例えば水仙卵華などの水面に自生する花のギフトを繁殖させれば、ギフトゲームに参加せずともコミュニティの収入になります。これなら皆にも出来るし……」
「ん?水で商売でもするのか?」
「なんだ、農作業でもするのか?」
「農作業に近いです。例えば水仙卵花などの水面に自生する花のギフトを繁殖させれば、ギフトゲームに参加せずともコミュニティの収入になります。これならみんなにも出来るし…………」
「ふぅん?で、水仙卵花ってなんだ御チビ」
十六夜が嘲笑と尊敬の混ぜた言い方でジンを呼ぶことにジンは驚く
「す、水仙卵花は別名アクアフランと呼ばれ浄水効能のある亜麻色の花の事です薬湯に使われることもあり、観賞用にも取引されています。確か噴水広場にもあったはずで
「お姉ちゃん行こう。」
「ウィズお姉ちゃん此方だよ❗」
子供達に言われるまま、ウィズは本拠へ向かった
あの後、ひたすら子供達の相手をしたウィズは、疲れを感じることもなく一区切りついたところで別館からこっそり抜け出してきた
外から話し声が聞こえてくる
ウィズは他の皆より先に移動して遊んでいたため、他の皆は後から到着したのである
「遠目から見てもかなり大きいけど…………近ずくと一層大きいね。何処に泊まればいい?」
「コミュニティの伝統では、ギフトゲームに参加できる者には順列を与え、上位から最上階に住むことになっております………………けど、今は好きなところを使っていただいて結構でございますよ。移動も不便でしょうし」
飛鳥が屋敷のすぐ近くにある別館を指さす
「そう。そこにある別館は使っていいの?」
「あれ、子供達の館だぞ。まあ、いくつか空き部屋があったから泊まろうには泊まれるけど、ジンにかけ……………」
「遠慮します。」
「それより今はお風呂に入りたいわ」
「私も」
「分かりました!少々お待ちを」
黒ウサギはそう言うと大浴場へと向かった
しかし、大浴場を見た黒ウサギは唖然とする
長い間使っていなかった大浴場は汚れに汚れまくっていた
「一刻程お待ちください!すぐにきれいにいまたしますから!」
その待ち時間に俺達は宛がわれた部屋を物色のち来客用の貴賓室に集まった
『お嬢………………ワシも風呂に入らなアカンか?』
「駄目だよ。ちゃんと三毛猫もお風呂に入らないと」
「三毛猫さんもお風呂に入らないと」
「……………ふぅん?聞いてはいたけど、オマエらは本当に猫の言葉が分かるんだな」
「うん」
「そうですね。」
『オイワレ、お嬢をオマエ呼ばわりとはどういうことや!調子に乗るとオマエの寝床を毛玉だらけにするぞコラ!』
「駄目だよ、そんなこといっちゃ」
飛鳥が聞きにくそうに耀に問う
「出すぎたことを聞くけど…………………春日部さんに友達ができなかったのはもしかして」
「友達は沢山いたよ。ただ人間じゃなかっただけ」
拒否の意思がこもった声で耀は言った
その空気を壊すように黒ウサギが登場する
「ゆ、湯殿の用意ができました!女性様方からどうぞ!」
『や、やっぱりイヤやー!』
そう三毛猫は叫ぶと耀の腕の中から脱獄のち逃走を開始する
「こら、三毛猫」
そう言うと耀は三毛猫を追いかけだした
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風呂騒動からもとい湯殿から出たウィズ達は、飛鳥達はネグリジェを着込み、黒ウサギの部屋まで来ていた。
「せっかくこんな素敵な世界に来たのだもの。相応の衣装を普段着に使っても問題はないでしょう?」
「それは勿論でございます。しかし、黒ウサギの衣装棚に飛鳥さんの気に入るようなものがあるかどうか………」
ゴソゴソ。
「あ!そういえばあのクローゼットには、審判時に着用を求められた衣装が………!―――飛鳥さんの好みはワンピース?ツーピース?」
「どちらかといえば、ワンピースの方ね」
「そうですよねー♪黒ウサギもワンピースの方が好きです。スカートは?」
「特に拘りはないけど………黒ウサギのスカートの丈は、少し恥ずかしいわ」
「うう、そうですよね。黒ウサギもロングスカートの方が好みなのです………ウィズさんもロングスカートですか。」
「まぁ、そうですね。」
ゴソゴソ。
「あ、これなんてどうですか!?」
「………。これを普段着に?」
「あら、素敵じゃない?私はこういう衣装も好きよ」
「へえ?飛鳥ってこういう衣装がお好きなんですね」
ワンピースのロングスカート―――というよりは、完全にドレススカートそのものの真紅の衣装。
一方、飛鳥はネグリジェを脱ぎ捨て早速真紅ドレスに着替える。
「この衣装は審判用に白夜叉様から戴いたものです。ウサギ達はご依頼があれば審判と共に進行役としてゲームを盛り上げる仕事もありますから」
「そうなの?」
「YES。ですのでこの衣装には、身を守る為の加護が付属されていて、明日のギフトゲームの際に着ていくのもいいかもしれません」
「あら?性能付きなのね、素敵じゃない」
飛鳥が真紅ドレスを着たまま一歩、二歩とステップを踏む。
足元まで伸びる美麗なレースの布地は彼女のステップに合わせて舞い踊り、着ることで逆に身軽さを感じた錯覚を起こす。
「………驚いたわ。こんなに凄く動きやすいスカートは初めてよ!」
「ふふ、当然なのです!なんといってもこの衣装は、」
「―――けど、胸が余るわ」
「へ?―――あやや、こ、これは………!え、えーとですね!こ、今晩のうちに服のサイズを飛鳥さんに合わせときますので!明日のゲームには―――その、間に合うかと………!」
「………そうね。お願いするわ」