黒森峰副隊長代行 逸見エリカ   作:秀吉組

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第1話

第62回全国高校生戦車道大会決勝開始前

 

 

「これに勝てば大会10連覇の快挙か。……いよいよね」

 

 

「そ、そうだね。 頑張らないと……」

 

 

10連覇という快挙を目の前にして周りが騒がしくなる中、緊張した面持ちで次の対戦相手を見る人物がいた

 

 

「うん? どうかした? みほ」

 

 

「う、うん。 大丈夫、心配しないでエリカさん」

 

 

その人物は西住みほ。 私の友人であり、私達黒森峰の隊長、西住まほ隊長の妹でもある

 

 

一年生でありながら異例の副隊長就任。その為周りからはまほ隊長の妹だからそれだけで副隊長になれたのでは?という声が多かった。実際私もその一人だった、練習試合で彼女と戦うまでは……

 

 

練習試合後は私は考えを改め、まほ隊長と同じ自分が目指すべき目標の一人と思っている

 

 

そんな彼女が抱えている姉と比べられるプレッシャー、 一年生でありながら上級生を差し置いて副隊長になったことへの不満と戸惑い、それらがストレスとなりみほの負担となっていた

 

 

まほ隊長になぜみほを副隊長に任命したのか尋ねてみた事があった

 

 

「みほは私や黒森峰に無いものを持っている。 それが副隊長に選んだ理由よ」

 

 

それが隊長の返答だった。 それが何なのかは今の私には分からなかったが隊長にはそれが何なのか見えているようだった

 

 

「アンタ大丈夫なの? 顔色悪く見えるけど…」

 

 

「う、うん、大丈夫。 絶対勝たなきゃ、負けたらすべて終わりだもんね……」

 

 

副隊長に任命されてからこの子の口癖になってしまった「負けたらすべて終わり」

 

 

勝利至上主義、それが黒森峰、西住流を学ぶ者にとって鉄の教えのようなモノだ。確かに勝利に拘る姿勢は大切だがだからと言って負ければすべてが終わりとは私は思わない。 負けて初めて気付く事、理解できる事がある筈だ。 昔の私がそうであったように

 

 

「な~に一人で全部背負おうとしてんのよアンタは」

 

 

そう言いながらと軽くみほの頭を叩いた

 

 

「ふぇ? え、エリカさん?」

 

 

「……アンタは私が、小梅が、そして隊長達が守ってみせる」

 

 

「エリカさん……」

 

 

「だからアンタは周りの雑音なんか気にせずやるべきことをやりなさい」

 

 

「……うん! ありがとう、エリカさん」

 

 

こうして決勝が始まった。黒森峰の誰もが自分達の勝利を疑わなかった。

 

 

だが……

 

 

現実は違っていた。 残酷なほどに……

 

 

私達は敗れた。10連覇という偉業は叶えられなかった。 チームの皆がまるで抜け殻のようになっていた

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、私は今、雨が激しく振る中、隊長と共に西住邸の前に立っていた

 

 

 

「隊長、みほがこの数日学園に来てませんが何かあったんですか?」

 

 

「………………」

 

 

あの日、私達が敗北した日からみほは学園に来なくなった。 来ない事に私や小梅、みほと親しいチームメイト達が心配になっている中、師範から呼び出されることになった

 

 

みほが来ない事について私がそう尋ねても隊長は只俯いているだけだった。 どんな状況になっても決して顔に出さない隊長がこんな表情を見せているのだから何かあったのは明白だった

 

 

「ようこそおいで下さいました逸見様。 どうぞ、奥様がお待ちです」

 

 

家政婦の菊代さんが出迎えてくれ師範のいる部屋まで案内してくれた。 部屋に入ると厳しい表情でこちらを見る人物、 西住しほ師範がそこにいた

 

 

西住流戦車道の師範であり、また黒森峰、陸上自衛隊にも師範として活動している人物だ

 

 

「いきなりの呼び出し御免なさいね逸見さん。 座って頂戴」

 

 

「は、はい……。 それで今日、私を呼んだのは?」

 

 

「ええ、今日呼んだのは貴方に黒森峰の副隊長に就いて貰うために来てもらったわ」

 

 

師範にこう言われた時、私は頭が真っ白になった。 何を言っているんだ、と

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください!! 副隊長はみほのはずじゃ……」

 

 

「あの子はもう副隊長ではありません、そして西住流の者でもありません」

 

 

「ど、どういう意味ですか?」

 

 

「あの子に破門を言い渡しました。 ……どうしてそんな事をしたのかって顔ね。 そうなった原因はあの決勝に参加していた貴方なら分かるはず」

 

 

決勝戦のあの日。 前の日から雨が続き地面がぬかるんでいた

 

 

そんな中で行われた決勝戦。 みほの乗るフラッグ車と共に川沿いの道を進んでいた私達はプラウダの奇襲を受けた。 奇襲受けた際、フラッグ車の前衛を務めていた小梅の乗る三号が体勢を崩しぬかるんでいる地面に足を取られ濁流している川の中に落ちてしまった

 

 

三号が川に落ちようとしている時、私はただそれを歯を食いしばりながら見るしかなった。 いかなる犠牲を出そうとも勝利することを重んじるのが西住流と教えられていたから。 その場にいたものがそれに囚われ動けなかった

 

 

でもそんな中、みほだけは違った。 戦列を離れ川に落ちた三号の乗員を助けに向かった。 フラッグ車の後衛にいた私は車長を失い行動不能に陥ったフラッグ車の盾になるべく前に出ようとしたが狭い道幅にぬかるむ地面と上手く進まず結局盾になることなくフラッグ車は撃たれてしまった

 

 

「……確かにあれが直接的な敗因なのかもしれません。 ですが! あの決勝の責任をあの子一人に押し付けるのはおかしいです!! 責任を問われるというのであればあの時フラッグ車を守れなかった私に!!」

 

 

「どんな事情があろうとあの子が副隊長の責務を放棄したことに変わりは無い」

 

 

「っ!? み、みほはそれで納得してるんですか? 隊長、みほは今何処に?」

 

 

「……みほはもう此処にはいない」

 

 

「い、いないって……。 どういうことですか!?」

 

 

「あの子は黒森峰を去り、ほかの高校に転校しました。 あの子は逃げたのです」

 

 

師範がまだ何か話していたが私の頭に入ってこなかった

 

 

あのバカ!! こっちに一言も言わずにまた自分ひとりで抱え込んで勝手に決めて……。 私はね……アンタのそういう所が大ッ嫌いなのよ!!

 

 

「……逸見さん? 話を聞いているかしら?」

 

 

「…はい。 副隊長の件ですが私は隊長を支える事が出来るのはあの子しかいないと思っています。 ……悔しいですが私には隊長やあの子のような才はありません。 そんな自分があの子がいなくなったからといっておいそれと就くわけにはいきません。 あくまで私は代行として就きます」

 

 

「……。 好きになさい」

 

 

もうこれで話は終わりだと言わんばかりに師範は部屋を出て行った




他に書いている作品で煮詰まっているときに気分転換で書いているものですのであまり出来が悪かったらすみません・w・;
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