ダブルクロスThe 3rd EDITION リプレイ 朱き黄昏のカノン 作:久那月
PC①③オープニング
虎杖 つぐみ 侵食率上昇
42%→43%
深い深い森の中、一体の獣が駆け抜ける。
その日は、靄がかかるほど湿気が多い雨の日だった。
不快な湿気と雨水が汗と混ざって鼻先を伝う。
獣は、逃げていた。
長い帽子のようなものを頭に被っているのが印象的な、喋る猿から。
「小煩い猿が……。この朱鷺沢の森は神聖な地、貴様らが立ち入るべき場所ではない!」
「黙れ、物怪風情が!村々を襲い、穢れを齎す物怪は、御仏に代わってこの検怪違使が成敗してくれる!」
ケガイシ……?
まぁ、いい。
この猿はどうしても自分に害を為すつもりのようだ。ならば、ここで迎え撃つのも選択の一つ。幸い敵は一人、我は雷の司。
雷獣『鵺』
「行人般若波羅蜜……!!」
猿が何やら呪文のようなものを唱えると、大地が抉れ、その破片が槍となって襲い来る。
鵺は回避を試みようとするも、身体に重石を載せたかのように地面に縫いとめられ、上手く動かない。
だが……動く必要も無いと獣の勘で捉えた鵺は、身体の内側で吸い込んだ空気を反響させ、攻撃用の音波を生成、そして逆立った毛には、バチバチと紫色の雷が迸る。
光る雷鳴、爆音の槌。
それが検怪違使の男を襲う。
『_____ッッ!!!!』
ゴロゴロゴロドッシャアァァァンッ!!!!
「ひゃぁっ!?」
「あら、おはよう。大丈夫?いきなり飛び起きて。悪い夢でも見たの?」
「ん……ふぁ……ぁぁ……。あ、いや、大丈夫。心配してくれてありがとう、由里香さん」
「そう?それなら良いのだけれど……」
わたし、虎杖つぐみは、ただいま新生活を行う街、朱鷺沢市に移動中です。
隣に座っているのは、姫宮 由里香さん。
身寄りの無いわたしの保護者代わりをしてくれている、素敵なお姉さんです。
「姫宮さん、あと5分程で到着致します」
「そう。……つぐみちゃん、貴女がいなくなると思うと寂しいわ。貴女より可愛らしいレネゲイドビーイングなんていないもの」
「わたしも、由里香さんと離れると思うと、寂しいです。身寄りも無い、記憶も無い、おまけに人間ですらないわたしに、ここまで良くしてくれたのは、由里香さんですから」
「つぐみちゃん!」
「由里香さん!」
ひしっ、と互いに抱き合う。
そういえば、今は卒業式のシーズンらしい。
わたしも、巣立ちの時が来たのです。
名残惜しいけれど、いつまでも由里香さんにお世話になりっぱなしという訳にもいかないのです。
「お盆とお正月には帰ってきます。由里香さんも、お仕事頑張ってくださいね」
「つぐみちゃんも、身体にだけは気をつけなさいね?エージェントの仕事は、死と隣り合わせなんだから」
別れの挨拶をしている間に、目的地の場所
『氏家診療所』を掲げる建物の前に到着した。
今日からわたしは、ここでお仕事を頑張るのです!
「よぉ、嬢ちゃん。ウチに何の用だね?」
「」(ガクガクブルブル)
あ、ありのまま起こった事を話します!
診療所の中に入ったと思ったら、お顔が濃くて恐そうなおじさまに応接室のような部屋に案内されて、慣れた手付きでお茶とお菓子を出されてもてなされています!
事案発生とか、熟練してるとかそんな感じで、もっとすごいものの片鱗を味わいました!
みたらしだんご美味しいです!
「あー……顔が恐くてすまんな、嬢ちゃん。そのみたらしだんごに免じて許してくれや」
「許します!」
「……嬢ちゃん、紅夜の客だろう?もうしばらくしたら帰ってくるから、少し待っててくれ」
「帰ったぞ、氏家」
「おお、噂をすれば」
紅夜・ブラッドレイ 侵食率上昇
32%→40%
紅夜と呼ばれた金髪赤眼で、少し痩せ気味の男の人は、まずわたしに軽く会釈をするとおじさまに、着替えて来る、と言って部屋から出て行きました。
見れば、元々白であったであろう上物のシャツは、鉄の臭いと赤黒いシミが付着していました。もしかしなくても、血です。
「あの……氏家、さん?あの人は……?」
「ああ、あいつがここUGN朱鷺沢支部の支部長、紅夜・ブラッドレイだ」
「えっ!?あの人が、ですか!?」
「なんだ、顔写真くらいは資料にあると思っていたんだが……。……いや、ああ、そうか、なるほど。奴なら顔写真が無くても仕方がない」
氏家さんは自分で納得すると、もう一人分のお茶の支度を始めました。
「ああ、待たせてすまなかった。虎杖つぐみ、ようこそ、UGN朱鷺沢支部へ。聞いたとは思うが、俺はここの支部長を務めている紅夜・ブラッドレイだ。以後、よろしく頼むよ」
「改めまして、本日から配属される運びとなりました、虎杖つぐみです。不束者ですが、よろしくお願いします!」
同じテーブルで向き合うように座って、互いに挨拶を交わす。
支部長さんは微笑を一切崩さないまま、熱いお茶を啜っています。
「……ああ、美味い。元気があってよろしい。若者はそうでなくちゃ。さて……待ちに待った、新入りのエージェントだ。まずはしっかり、歓迎してやりたいところなんだが……生憎、今はそれに割く時間はない。どうしてだか、わかるね?」
「……さっきの、服に着いてた血、アレは、どうしたんですか?」
「ああ、いいね。勘のいい子は嫌いじゃない。……氏家、お茶、おかわり」
支部長さんは湯呑みをテーブルに置くと、懐から取り出した眼鏡をかける。
あ、眼鏡が良く似合ってます。
実はちょっとだけ、ドキッとしました。
「事の起こりは一週間ほど前だ。突如としてこの町に、『紅い影』が人を襲う、なんて噂が流れ始めた」
「紅い、影?」
「うむ。一般人からすれば、なんてこともない唯の噂話。実際の被害も出なきゃそのうち消える他愛のない怪談さ。……こちらとしても、噂話で留まっていて欲しかったんだがね……」
「そうは問屋は降ろさない。火のない所に煙は立たぬ、って言うだろう?紅夜、入ったぞ」
「どーも。……ちょっと調べただけで、その紅い影はわんさか確認できた。さっきはそいつが事を起こす前に駆除してきたのさ。血は……必要経費と返り血さ」
「血が必要経費なら、そのシャツを着るのをやめてほしいんだが。一々シミ抜きする身にもなれ」
「へーへー」
どうやら、この街は事件に巻き込まれているようです。
紅い影は実物を見たことがないのでよくわかりませんが、これはUGNの仕事ということはよくわかりました。
「わかりました!一般の方の被害を抑えた上で、この事件の解決を目指す、それがわたしの初任務ってことですね!不肖、虎杖つぐみ、一兵卒の身ですが、やーってやりますよ!」
「……そうか。なら、俺は支部長として、一兵卒が使えるかどうか見極める必要があるな。氏家」
「オーダーをくれ、支部長」
「今をもって、紅い影に対し攻勢に出る。支部所属のエージェント並び近隣のUGNイリーガルに招集をかけろ。そして、高レネゲイド反応を確認し次第、随時連絡を寄越せ。何があってもいいように、ホワイトハンドの準備は怠るな」
「了解」
「虎杖は俺と共に情報収集と、報告が入り次第、紅い影の討伐に向かう。配属して早々だが、しっかり働いてもらうぞ」
「イエス!サー!」
支部長の流れるような指示で、すぐに準備が進められていく。
生まれ持った指揮官の素質のようなものがあるのだろうか、痩せっぽちの身体でも、その姿は堂に入っていた。
「さぁ、ネズミ狩りの時間だ。一匹たりとも逃すなよ」
キャラクター設定
虎杖つぐみ(15歳♀)
とある研究施設で被験体となっていたレネゲイドビーイング。
その施設にいたこと以外の記憶は失くしてしまっていた。
そして、3年前に理由も分からぬまま研究施設は閉鎖、行き場を失くしていたところをUGNのレネゲイド研究班、アールラボに保護された。
でも、結局は場所が変わっただけ、と投げやりになっていたが、彼女を被験体とする実験の責任者であった姫宮由里香が、彼女と目と目が合った瞬間にティンッと来たようで、妹のように可愛がられて現在のような明るい性格を取り戻した。
黒髪紫眼で典型的な日本人体型。
長い髪で結ったツーテールが気分によってピコピコ動く。
最近、やたらと雷に縁がある夢を見るようだが……。