ダブルクロスThe 3rd EDITION リプレイ 朱き黄昏のカノン 作:久那月
シーンプレイヤー:古月 愛
古月 愛 侵食率上昇
36%→44%
ズッ…
裏路地の人気が無い場所で虚空に手をかざし、別の場所へと繋がるゲートを作り出す。
行き先はここから徒歩30分程の氏家診療所だ。
「よい、しょっ……!」
きちんと診療所の玄関に繋がったのを確認して、跨いで移動する。
……本当に、急いでいるときはバロール能力者でよかった、って思うよ。
「こんにちは」
「おお、愛か。市街地からわざわざすまないな」
「いえ、ディメンジョンゲート使えばすぐですから」
浸食率
44%→46%
午後2時半を少し回ったころ、リーダーから支部に出頭を命じられた。
どうせ家もここから歩いて3分もかからないので、顔を出すつもりだったのだけれど……。
リーダーから受けたメールを読み込んでから、変な汗が止まらない。
葦原 雪弥という学生がFHと接触をしていた。
……ああ、強心臓な僕でも、心臓が早鐘を打っているのがわかる。
「氏家さん、支部の設備借りますね」
「ああ。……愛、顔が強張ってるぞ。……焦るな」
分かってます、と返して支部のPCルームに入り、情報収集を始める。
頼む……人違いであってくれ……!
情報③葦原雪弥について
判定:目標値8
技能: 情報:UGN
古月愛〔社会判定〕
エフェクト〔マイナー〕
無し
エフェクト〔メジャー〕
無し
〔C値10〕3D+3→12
達成値12 成功!
「……!……っ、クソ……!」
情報③
難易度8
葦原 雪弥についての調査資料書
ブラム=ストーカー/ウロボロスのクロスブリード。
コードネームは
UGNにもFHにも所属していないフリーのオーヴァード。
朱鷺沢市内の高校に籍を置く学生である。
レネゲイドウィルスとの適合率は極めて高く、従者を操る才能に長けている。
5年前にFHセル『12使徒の聖宮』に実験体として所属していたが、UGNの精鋭部隊によるセルの壊滅により解放された12人のオーヴァードの一人である。
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情報5 『12使徒の聖宮』について 難易度30
一瞬、頭が真っ白になる。
嫌だ。信じたくない。
雪弥が、親友が、この事件の中心にいるなんて、考えたくはなかった。
すぐさま携帯電話に手を伸ばし、雪弥の番号にコールする。
すると、幸いにもいつもの間の抜けた声で通話に応じた。
『もしもし、どうした、愛?』
「雪弥!今どこにいるんだ!」
『え?ちょ、どうしたよ……?え、駅前のコンビニだけど』
質問の言葉が出てこない。
聞きたいことはたくさんあるのに、焦りと、言葉にできない何かで、声に出すことができない。
「なんで、なんで……FHと関わってるんだよ……!」
だから、余裕も何もなく、ストレートに聞いてしまったんだ。
『……調べたのか?俺が元FHだって』
「……どうして」
『どうして、フリーの俺が今更FHと接触していたか、って聞きたいのか?』
雪弥は、いつものおちゃらけた態度は影も無く、怒っても笑ってもいない声で聞き返す。
その声に僕は無言で肯定してしまう。
『……安心しろよ、別にFHに復帰するとかそんなんじゃない。……俺は頭悪いし、こういう時なんて言っていいかよくわかんねぇけど……。あぁ、過去の清算、って奴か。うん、きっとそうだ』
「過去の、清算?」
『っ!また……!愛、また今度な!』
「待っ……!?」
また今度、そう言い残して雪弥は一方的に通話を切る。
雪弥の携帯の位置を逆探知して、すぐにディメンジョンゲートを開こうとするも、向こうのレネゲイドが不安定なのか、ゲートを開くことができない。
「クソッ……!」
苛立ちをぶつけるように、拳を机に叩きつける。
そんなことをしたって意味なんてないって分かっているのに、苛立ちと焦りをぶつけずにはいられなかった。
「どうして、どうして僕はいつも……!」
大切な人の異変に、気づくことができないのだろう。
妹の身体の異変も、症状が進行してからようやく気付いた。
今回の事だって……。
……いや、気づくことが出来たのだろうか?
…………このまま、もし、UGNの仕事が進んでしまったら?
雪弥の身に、大きな悪意が降り注いでいるとしたら?
……ああ、そうだ……。
「今、雪弥を助けられるのは、僕なんだ」
雪弥が無理をしてジャームに落ちてしまうのは見たくない。
ジャームに落ちてしまったら、その『処理』をするのはリーダーかハムタロさんだ。
僕は、僕の大事な人達を恨むことにはなりたくない。
それこそが、今の自分の
「……あのチャラ男、ちゃんと詫びさせてやる」
雪弥を助けた後、ちゃんと腹を割って話しあうんだ。
だから……僕が、雪弥を救ってみせる。
過去の清算なんて、あいつには似合わない。頭が悪い馬鹿話が分相応だ。
「待ってろよ、雪弥」