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とある森の中。意識を失い倒れていた者は、慣れない土の匂いに目を覚ます。
倒れていた辺りはまるで避けられているように木々が無く、薄暗いはずの森の中でも日差しの暖かな広場になっている。しかも天気は快晴だ。暖かいはずの日差しは、かなりの眩しさと凶悪さをもって、太陽を直視してしまった目を射抜いた。
「ふおっ…!まっ、おあ、眩しっ!?」
ばっ、と、勢いよく起き上がったのは、白銀の色をした腰までもある長い髪、切れ長な青い瞳に…耳だ。普通の人間と同じはずのその者の頭に、生えているのだ、狼と同じ耳、そして尾てい骨のあたりからは同じ色の、ふさふさとしている尻尾
が。そんな姿をした、一見男と見間違えるような少女だった。もちろん胸のあたりにあるはずの膨らみがないのも見間違える一端である。
そんな彼女が起き上がったのを機に、彼女の周りで同じように倒れていた二人の少女も目が覚めたようで、小さくうめき声をあげながら、けだるそうに体を起こし始めた。
「んん…うあ。ふあぁ…おはようございます…?」
桜色よりもまだあわい淡いピンク色の髪をした少女が起きる。彼女には、耳の後ろから生える一対の深く紅い角、また、その左足は少ししか見えていないが、深紅の鱗で覆われていた。先ほどの銀髪の者と同じように、彼女にも尾てい骨の辺りからは、尻尾らしきものが生えている。こちらは、毛で覆われているようなものではなく、左足と同じように鱗で覆われていた。
「おはよう…て、あんたら誰!?ここ何処!?」
やっとこの状況に疑問を持つ人物が現れた。彼女ももちろん、普通の人間の姿はしていない。この三人の中で唯一ポニーテールに結わえられている赤い髪に、明るい緑色の瞳。そして彼女の腰辺りからは…黒い、真っ黒な翼が一対、まるであって当然のように佇んでいた。
辺りにいるらしき人間(?)はこの三人だけだろう、そう三人とも結論付けたようで、とりあえず輪を作るように座り込み、改めて全員で向き直った。
「ん?て、あれ?その姿」
「は?え、まさか?」
「えええ、何、ほんとに?マジで?」
向き直ってから、すぐに互いに気が付いた。
自分は、この相手の姿を見たことがある、と。
「和玖に、黎々!?」
「黎々、釧夜かな?」
「釧夜と、和玖なの…!?」
そう、彼女らは、先ほど魔法陣へと吸い込まれた女子高生だ。しかも、それぞれがやっていたゲームのアバターの姿をしていたのだ。まずこう驚くだけで済んでいる方が驚きの展開なのだ。
謎の魔法陣に吸い込まれ、知らない森の中に転移させられており、しかも自分たちの姿は慣れ親しんだ普通の人間の姿ではない。ここで発狂したところで、誰からもお咎めはないであろう事態に陥っているのにも関わらず、三人は至って冷静であった。
…いや、発狂と比べては、であって、完全に冷静ではない。ただただ、
「マジ!?俺、釧夜なの!?うおーっ!イケメンじゃん!女だけど!!」
「五月蝿い釧夜!!はしゃぐのも無理ないけどね!?」
「こ、これが俗に言う、異世界トリップものか…ふふ、これでやっと、ウチの子に会えるんじゃない…!?」
大興奮しているだけだった。
随分と余裕な三人である。
それもそのはず、自分自身の体でなくとも、それと同じくらいに慣れ親しみ、その上自分の理想、趣味、その他諸々全てを詰め込んだのが、このゲームのアバターなのだから。
その姿で人と会話し、時には共闘し、守り、守られ、モンスターを狩ったり、宝物を手に入れたり。そうすることにずっと時間を費やしてきたのだ、飽きもせず。
ずっと憧れ、恋焦がれてきたそれを、自分が出来る。今まで楽しんできたことが、自分自身で出来る。そう考えただけで、三人とも、気分が高揚していくのを感じていた。