「はあ、はあ」
結構走った、ざっと10分ぐらいひたすらに走った。
ここどこ? 路地裏なのはわかるけど、それのどこら辺だ?
困った、彼女を助けた余り現在位置を特定ができなくなってしまった。
城から南に行っとけば城門は見えるはずなんだけど、肝心の城も今はなぜか見えない。
……万事休す?
「えっと、城はわかる?」
俺はこの街にはパンを買いに来る時しかこないし、直ぐ帰っちゃうで街の構造なんて知ったこっちゃっない。
その分彼女はこの街の事は少なからず知っているはずだ、多分運命全書によって彼女は長くここにいるはずだから。
「それが、私にもわからなくて。あちらの方にお城があったのはわかるんですよ? でも何分外に出るのは久しぶりで」
「なるほど……」
最後あたりは聞こえなかったが要するに、本当に万事休すという事だ。
出来るのなら直ぐにでも彼女と離れたいところだが、まず考えないといけないのは彼女の保身だ。
ここが路地裏である以上幾ら王都と言えど危険性が0というわけではない。
「取り敢えず、パンでも食べる?」
「パンですか?」
「そう、走って疲れたでしょ?」
片手に持っているパンの入った袋から一つとって自分の口に、もう一つは少女に差し出す。
「ん」
遠慮がちに受け取った彼女はジロジロと数秒パンを見た後、小さくかぶりついた。
「美味しい」
「でしょ?」
俺が作ったわけじゃないけども、こう答えておく。
更にもう一口食べて、彼女は不思議そうな顔をする。
「パンが甘めです、ジャムは苺ジャムでしょうか、少し酸味が効きすぎている気もしますが、パンの甘さでうまい加減になっているんですね」
「パンが甘め?」
「はい、ミルクパンでしょうか? とても美味しいです」
それって普通にあるミルクパンに苺ジャムを入れただけなんじゃ……
いやいやいや、あの店主さんの事だからきっと他にも色々あるんだよきっと、そうに違いない。
というか。
「それが今日のサービスだったのか」
「サービス?」
「店主さんがサービスしてくれた新作パン」
「ええ!? す、すみません! 私が食べたばっかりに!」
「いや全然全く俺は気にしてないから、君が気にすることでもないと思うけど」
後パン二つあるし、一つ減ったぐらいじゃ然程変わりはしない。
それに感想を言ってもらえたのもありがたい、毎回店主さんに言われるたびにどう答えるか少し迷ってしまうところがあったのでこれはこれでありだ。
「そう言ってもらえると嬉しいのですが……」
「うん……あ、聞くの忘れてた。名前は?」
「私の名前ですか?」
首を傾げてそう尋ねる少女に、俺は頷いてみせる。
自分の頬に指を当て、数秒考えたのち、彼女は自らの名前を口にした。
「レイス・マキナ・ヴァートラシア。レイアとお呼びください」
微笑みながら言われたもので、つい俺も微笑んでしまいながら、俺も名前を言った。
「オリムラ・カイです。よろしくね?」
これが、彼女と俺の出会いだ。
「そうなのですか?」
あれから話し合った結果、俺たちは路地裏を抜ける為に道を思い出しながら歩いていた。
彼女が思い出して言うにはこの路地裏には魔法が掛けられているらしく、王城が見えなくなっているらしい。
昔、この路地裏を使い城に攻め入る人間が居たらしく、それを防ぐため、魔法をかけ、複雑な構造にしたんだとか。
それにしてもこれだけ大規模な魔法となると相当な実力者を必要とするはずなのだが、一体どのような魔法使いだったのだろう。
魔法を使うには自らの運命全書を解読する必要がある。
過去から未来にそって魔法の力は増大し、この規模なら3年後の未来ぐらいまでは読み取れる人間であったと推測できる。
因みに俺は真っ白なので魔法適性0、とことん理不尽な空白者である。
とまあそれは置いておき、今俺と彼女は俗に言う世間話をしている。
今はどこで寝ているかと聞かれたので木の上と答えたら上の言葉が出てきたわけだ。
「この国とその周辺は基本いつでも暖かいからね。別に寒いというわけでもないから普通に寝れる」
「てっきりこの国の住民なのだとばかり」
「まあいろいろあるんだよ、うん」
流石に空白者だからなんて言えないので誤魔化しとく。
空白者ってバレると色々めんどくさいし、特に今バレるとめんどくさい事になること間違いなしだから。
それにしてもこの路地裏広すぎる、一体どれくらいの大きさなんだ? 10分位走っただけなのになんで迷子になんか……
というかもう外暗いんだけど、どうすんのこれ。
「どうしましょうか」
「どうしよう」
俺と彼女の迷子冒険譚は、まだ続きそうである。