目が覚めると俺は真っ暗な空間に漂っていた。まだ時間が早い...にしては「漂う」という事が説明出来ない。うん、これは夢だな。夢と知覚できること自体が初めてだけど。まあいい、夢かどうか判断できるいい方法がある。
頬をつねる。何で頬なんだろうな?どうでもいいけど。つねるために左手を挙げると妙な感覚があった、リアルな夢だな。実際につねってみる、割と本気で。
超痛い。
...は?
「いやいや痛いってなんだよ⁈これは夢じゃないってことだよな?じゃあこの状況は何だよ⁈俺は自分の部屋で寝てたはずだぞ?何かあったとしたら普通音とかで気付くだろ!!ここどこだよ⁈」
などと言っていると突然頭の中に言葉が浮かんだ。
[深度80]
...ok、少し落ち着こう。この時点で突っ込みたい所があるが、まずは情報を整理しよう。
まず何かが起きた。これは分かりきっている。
次に頭に浮かんだ言葉、深度80。...うん、何だろうな?
「深度80」という事は深さ80mという事だよな?、知覚できるのがおかしいが...。今は良いか、とすると地面か液体の中かな?、まあ、腕が挙がるという事は地中説は却下だな、とすると液体の中かな?...この深さなら湖か海だよな...。
ふう...。
何で呼吸が出来るんだ⁈、さっき声も出たぞ?くそぅ、ますますよくわからんな。
まずはこの液体(おそらく水)の中で呼吸が出来るというおかしな状況になってるうちにここから上に出る方法を考えよう。
がしかし、
ここでやばい事に気付く
泳ぎがヘタ
インドアだったから運動苦手だし、80mも泳ぐのはだるい。呼吸が出来る状況もいつまで続くか分からないし...。
どうしようかと悩んでいるとまた頭に言葉が浮かぶ。
[メインタンク ブロー]
はあ⁈何だよこれ⁈
混乱していると背中の方から空気の泡が弾けるような音がして自分の身体がだんだんと浮上しているのが「知覚」できた。
「浮いてきてる...。」
よっしゃ、これで楽に浮きあがれるぞー。ってそんな訳あるかい!!、いや、俺は何者だよ⁈、これじゃあまるで「潜水艦」みてぇじゃねえか!!!!
動揺してると頭に言葉が「響いた」
『貴方はSS501「そうりゅう」です。』
...what?
落ち着け俺、クールになるんだ。
って落ち着けるかい!!!!
『落ち着いて下さい、ですから貴方は潜水艦です』
なるほど〜そうかぁ〜だから深度も知覚出来るしメインタンクブローで浮きあがれるのか〜っとその前に聞きたい事が1つある。
「あんた誰だよ⁈」
いきなり『お前は潜水艦』なんて言われても理解できねぇよ⁈
『私は貴方の艤装の妖精です、貴方はSS501です。』
突っ込みたいが我慢する。
「で、俺は潜水艦になってて、あんたは俺に憑いてる妖精って認識で良いのか?」
『その認識で構いません、我々は総員で65名ほどいます。あと声に出さなくても構いません、思考を読み取りますので。』
もう諦める。
まあ声に出さなくてもいいっていうのはありがたいな、他の人(いればの話だが)から見れば変な独り言を呟くヤバい奴になるからな。
俺は潜水艦、それも海自の「そうりゅう」になったらしい
もうこれは事実として受け入れる事にする。納得いかないが...。
と、ここで気がつくと既に深度50程になっていたらしい。
ゆっくり浮上してたんだな。
あれ?そう言えば俺は潜水艦なんだよな?そんなに安易に浮上して良いんだろうか?浮上直後に船に衝突とか笑えない。
潜水艦になってるならあれ出来るよな?
(懸吊)
そう念じると現在の深度で浮上が止まった。
よし、いけた。もろ潜水艦じゃん...。ま、しょうがない
妖精さん妖精さん、応答せよ。
『何でしょう?』
周囲の状況が分からんと困るんだけどさ、「パッシブソナー」みたいなのってある?
『有りますよ、入れますか?』
いや、ソナーって常時使用しとくもんじゃないのか?
『あの時入れてたらもっと混乱してたと思います。』
ま、それもそうか、じゃあ入れてくれ。
頼んだ直後に耳から音が聞こえ出し、周囲の状況が手に取るように分かってきた。
1番近い反応は左舷(ひだりげん)45度、距離約5000。
海流の音に混じって聞こえる8つのキャビテーション ノイズ(スクリュー音)
くぐもって聞こえる爆発音と思われる何か
そして何かがひしゃげる音がして、スクリュー音が7つになる。
これがスクリュー音か、初めて聞いたな...って
海戦の真っ最中じゃねえか!!!!
あぶねぇ、ソナー入れて良かった...死ぬとこだった。
詳しく聞いてみると反応は3隻のグループと4隻のグループに分かれており4隻の方は1隻やられたものの速力変わらず、3隻の方が押されてる感じだった。
うーん、敵味方の区別がつかん...妖精さんなんか分かるか?
『まだ音紋記録してないので何とも...』
まあ仕方ないか、スクリュー音で敵味方の区別付けられれば良かったんだけどなぁ...
よし、潜望鏡深度(だいたい10mくらい)に浮上しよう。水上艦艇が潜望鏡を発見出来るのは2kmぐらいからだって言うし、見つかりはしないだろう。メインタンク ブロー。
懸吊状態から深さ40m、35、30...と徐々に浮き上がってゆく。
そして潜望鏡深度になり、海上の様子を見てみると、そこには大破し、今にも深海棲艦に止めを刺されそうになっている嫁...もとい艦娘の長門がいた。
次回戦闘回になる予定です。