目が覚めたらSS501   作:にわかミリヲタ三等兵

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A(nti)S(ubmarine)W(arfare)
お待たせしました。ガトー級、伊号潜水艦、ⅩⅩⅠ型以前のUボートのアクティブソナー事情が気になりすぎて丸2日調べ物に費やした馬鹿がお送り致します。資料が無いの。誰か助けて。
なおこれ以降
潜水カ級→ガトー級
潜水ヨ級→バラオ級
潜水ソ級→テンチ級
の設定で行きます(自己満足)


それぞれの戦い4〜艦娘達のASW〜

艦娘達による大攻勢が始まって以来、インドネシア各地の深海棲艦は物量とバ火力に物を言わせた艦娘達に連日連夜タコ殴りにされている。

そんなある日の午後の事である。

緩やかに波の立つ南太平洋の一角に一隻の深海棲艦が浮上してきた。

疲れ果て、息も絶え絶えな彼女の名前は潜水ソ級elite。30時間ぶりに輝く太陽を拝むことができた彼女は塩気を帯びた新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込みながら対空対水上用SJレーダーを起動し、枯渇しかけているバッテリーに再び喝を入れてやるべくエンジンに火を入れた。

ソ級は4、5日前にこの海域で突如として始まった、昼夜問わずに飛び回る飛行機と低速、ジグザグ航行に徹して油断せずに海中へと聞き耳を立てる高練度の駆逐艦が組み合わさったなんとも嫌らしい広範囲にわたる対潜哨戒の影響で、まともに浮上充電を行えずにいた。

昨日に至っては飛行機に気付くのが30秒程遅れたばかりに潜航途中に目一杯20mm弾を浴び、更には駆けつけた駆逐艦にこれでもかと丸一日アクティブソナーで追い立てられ、ありったけの爆雷を頭上に落とされ続けた。

休む間も無く送り届けられる、くぐもった爆発音と甲高いソプラノ音の不協和音に精神を蝕まれながら、それでも僅かな電力をやりくりして粛々と逃げに徹した。

諦めた駆逐艦が去った後も念の為、酸素不足で気を失いそうになるのをなんとか堪えながら6時間ほど潜り続け、やっと難を逃れたのである。とても生きた心地はしなかった。

他の艦船との砲弾による殴り合いなど一切想定されておらず、当たりどころによっては12.7mmはおろか、7.7mm機銃弾でさえも致命傷になりかねない潜水艦は飛行機が怖い。

特にろくなシュノーケルすら装備されていないこの当時の通常動力艦は特に飛行機が嫌いである。運良く先の爆雷攻撃を受けても損傷せず、元気に頭上でクルクル回っている最新鋭のSJレーダーが最大探知距離で敵機を探知したとしても僅か1分後には自艦の上空へと敵機が到達しているのだから恐ろしい。

ソ級は今すぐにでも艤装にもたれかかって海上で惰眠を貪りたいという衝動に駆られながら、極度の疲労を感じる頭の隅に残された理性を総動員していまだに2割ほどしか回復していない充電残量を気にしながら、来ないでくれ来ないでくれと祈りつつレーダーのスコープを睨み付けていた。

ソ級に装備されている潜水艦用レーダーは艦娘が使っているそれよりも圧倒的に優秀であり、表示装置を観測のしやすいPPI方式にした事によって飛来する航空機の発見が容易となった。たまに波などが反応してそこに何かが居るかのように写ってしまう事があるが、今日のような穏やかな天候ではそのような事もない。

 

だからたった今、画面の端に現れた輝点は波の偽反射ではなく、こちらに向かってくる何か、速度的に航空機である事は疑いようもない事実で、

 

空気の補充こそ完了したものの、ろくに充電の進まなかったソ級は心が折れそうになりながら、それでも自分自身に喝を入れて再び海面下へと潜っていった。

 

僅かに遅れて、先程までソ級がぐったりしていた付近へと到達したゲタ履き...愛知航空機製E16Aこと瑞雲は、上空をゆっくりと旋回しながら、味方艦隊へ『航跡ミユ』の電報を発し、後の『処理』を対潜哨戒中の駆逐艦に任せて飛び去っていった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

ー日向ー

 

 暖機運転を終えた発動機がスロットルを開かれ、更に唸り声を大きくする。

 推力に従い飛び出さんとする機体は固定具によって押し留められ、その間もプロペラの回転数は増してゆく。

 発動機の出力が上限に達した瞬間、我慢に我慢を重ねた機体はカタパルトによって「そらいけ!」とばかりに打ち出され、

 駐機していた最後の、22機目の瑞雲が飛び立ってゆく...

 

 

 

 

 油を抜かれ、迷彩と称して緑色のペンキを塗りたくられ、水兵達が心血注いで磨き上げてきた自慢の甲板へ無造作に草木を放り込まれて見るも無残な浮き砲台へと変わり果てたあの日か、

 雲霞の如く押し寄せる敵機になす術もなく袋叩きにされたあの日か、

 雇い主兼海の親の海軍が解体されたのち、身体を徐々に分解されていったあの時期か、

明確に船として死んだのがいつなのかも判断できぬままゆるりゆるりとこの世から消えて...。

 

 

 

 そんな私が70余年の時を経て、再びこの世で戦艦としての役割を与えられて、

五番砲塔が吹っ飛んだわけでもないのに同じ改造を受けると聞いた時は正直少し不安だった。

『また』あの時のように、だだっ広い飛行甲板に25mm単装機銃をずらりと敷き詰めて、

配備されることのない機体を待ち続けることになるのでは、と。

今でも空っぽになった飛行甲板を見るたびに脳裏によぎるのだ。

...あんな思いは二度とごめんだ。

 

まあ実際は全くの杞憂であったのだが。

 今この海域は私が放った20機を超える艦載機が縦横無尽に飛び回っている。

...ああ、やはり瑞雲はいい。

 

私は瑞雲が好きだ。

 

私は空戦、偵察、弾着観測、急降下爆撃までこなすハイパーマルチロールなこの水上機が大好きだ。

想いの報われなかった過去の反動もあるのだろう。もはや好きを通り越して執着の域に達している事は薄々分かっているつもりだが、

それでも。

それでも嬉しくて仕方がないのだ!

出番を待つ艦載機がずらりと並べられているというこの至上の喜びを理解できるのは伊勢ぐらいなものだろう。

飛行甲板は使ってこその物、盾では無いのだ!

そんな航空戦艦の特性上、瑞雲が好きで、瑞雲が可愛くて仕方がない。

もっともっと活躍させたくて、暇さえあれば改造を施してしまうぐらいには。

 

 

 瑞雲12型に搭載された金星62型発動機をいじって出力を向上させ、機体強度を上げて五十番を載せられるようにした瑞雲改二、

 

 工廠の妖精さん達と連日に渡る話し合いの末、カウル形状のみならず機体そのものにも手を加えた上に1600馬力の火星を載せた瑞雲改三、

 

同二重反転ペラ採用の改三甲、

 

 更に機体形状を変更、誉1860馬力を載せた瑞雲改四、

 

現在22機が大空へと舞い上がっている現用モデルの瑞雲改五。

 発動機を離昇2100馬力のハ43に変更するために再び機体の設計を見直し、翼桁等の主要構造物は長門がサラトガ繋がりでアメリカから技術を持ってきてくれた7075合金を使用。エンジン変更により増大した機体重量は、工廠の妖精さんと官民問わずありとあらゆる技術系企業を駆け回った結果採用が実現したCFRP(炭素繊維強化プラスチック)により解決。改三甲の二重反転ペラもそのまま受け継ぎ、ゲタ履き機でありながら最高速力307ノット(569km/h)を叩き出したモンスターマシンで、更に機銃もベルトリンク式の99式20ミリ2号機銃5型に載せ替えている。

 

 更に今回の作戦に合わせて、金剛の伝手を頼りイギリスからシベリア鉄道経由で持ってきた、航行中の潜水艦を捜索できるマイクロ波レーダー、ASV MkⅡを搭載した開発秘匿名称ZXASW1及び、

爆装ができなくなる代わりに改良型のASV MkⅢを胴体下部に装備した開発秘匿名称ZXASW2を開発、試験飛行の段階まで漕ぎ着けたが残念ながら出撃には間に合わなかった。

今後は地上襲撃用に脚部に37mm自動砲を搭載した型なども計画中である。

 

ここまで来ると完全なる道楽であるが、決して提督には迷惑をかけてはいないつもりで、

現に私が瑞雲に誉発動機を搭載したかったがために妖精さん達と開発に尽力した結果、今回の作戦までに十分な数の、それもちゃんと稼働する烈風が赤城達へ配備されている。

私がやたらと瑞雲を魔改造、複雑なエンジンや過給機を積みまくった結果、それを整備する妖精さん達も熟練揃いだ。

 

戦況は逼迫しておらず、余裕のある環境でこういう事ができる日々にとても満足している。毎日が楽しくてしょうがない。

これからも着々とゲタ履き機戦力の拡充、質を向上させていく所存である。

ゆくゆくは航空戦艦が水上戦力の主流を担う時代を到来させるというちょっとした野望を抱いていたり...ふふ。

 

瑞雲に栄光あれ!

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

ー響ー

 

昨日の対潜攻撃で相当数の爆雷を消費し、今はスクリーンシップとして艦隊前方をぐるぐると周っている叢雲、

『艦載機を放って突撃...これだ』と微笑みながら独り言を呟いている日向さん、

前を航行している日向さんが不気味なのか、艦隊右翼で水中聴音機に聞き耳を立てている私にしきりに話しかけてくる飲み友の隼鷹、

左翼で私と同じく警戒航行中の綾波、

殿艦を務める五十鈴さん。

そんな輪形陣を組んで航行していると、周辺海域を精査していた日向さん謹製魔改造瑞雲のうちの一機が、昨日叢雲が猛攻撃をかけた場所から40kmほど離れた海上に潜水艦のものと思しき航跡を見つけたという連絡が入った。

十中八九昨日取り逃した潜水艦に違いなく、今度こそ息の根を止めてやるわ!と気勢を上げたのも束の間、昨日の時点で爆雷をほとんど使い果たした事を思い出し渋々諦めた叢雲に代わり、いい加減隼鷹の相手をするのに疲れてきた私が、陣形を離れて件の潜水艦の捜索、攻撃を行うことになった。

前進一杯、一路目標へ。

 

航跡は南東に続いていた、という追加情報を信じて、35分ほどで目標海域に到着した後は進路を変更、

前進微速でゆっくりとジグザグに進みながら93式水中聴音機に耳を傾ける。

的速は3〜8kt程、さほど遠くにはいっていないはずだからね...

ほら、いた。

距離はどのくらいだろう。速さは...ピッチ的に6ktぐらいかな?駆逐艦が来る前にさっさと逃げようとしたみたいだけど逆効果みたいだね。減速して息を潜めていればポンコツの93式では聞き取れなかったかもしれないのに。

どうやら私に背を向けて潜航していて、自分のスクリュー音で私に気づかないらしく、減速したり転舵したりする様子は無い。

Очень хорошо!!(素晴らしい!)我ながらいい位置に着いたものだ、こんな楽な仕事はそうそうあるものじゃない。

即座に3式水中探信儀を海中に下ろして起動、跳ね返ってきた音波を解析する限り距離は2000m、深さは50m程。

...近い、3式の探知距離は6kmはあるというのにこれでは性能を活かしきれない。やっぱり93式は駄目だね、帰ったら司令官になんとかしてもらおう。せっかく対潜装備をなんとかして充実させたというのに、またそうりゅうにどやされる。

彼が私達の仲間に加わってからどのくらい経った頃だったか?

敵潜との距離をじわりじわりと詰めながら思い返す。

甘味処「間宮」で六駆のみんなでアイスを堪能していた時、一枚の写真を持った彼が現れて、私達に見せた。

母港近海で4人で対潜哨戒に就く私達の後ろ姿を撮った写真だった。

望遠レンズで拡大された様な荒さは無く、仲睦まじい4人の姿がしっかりと写っていた。

アングルも調整され、実にいい写真に仕上がっているソレに雷と暁の2人はワイワイとはしゃいでいたが、異常さの理解できた私と電は固まっていた。

何がおかしいかって?

対潜哨戒中の駆逐艦が通過した後だよ?

そこには当然潜水艦なんて居ない筈なのさ。

なのに駆逐艦の後ろ姿が撮られている。

「あなた達の警戒はザルですよ」と言われているのも同然というわけで。

彼は、スペックに70年の開きがあるから探知できないのは当然の事だと前置きをしてから、それでも君達の対潜哨戒には問題点がある。各艦の間隔はもっと開ける事、潜水艦を探す時はもっとゆっくり動くこと、直進をしない事などを心掛けないといつか深海棲艦の潜水艦を見逃してしまうかもしれない。そうアドバイスを残して去っていった。

それ以来私は司令官に言われて漠然とこなしていた対潜哨戒、戦闘のこなし方の勉強に力を入れた。金剛さんが伝手を辿って持ってきてくれた船団護衛についての資料などは英語が分からなかったが、司令官に頼んで仕事の合間に翻訳して貰ったりもした。

おかげでだいぶ理論づいた動きができるようになってきたと思う。

新しく配備された3式探信儀や3式爆雷を優先的に回してもらってもいる。

だからこそ水中聴音機の陳腐化がつらいんだ。

...そうだ、最近対潜界隈で話が出てる4式水中聴音機なんてどうだろう。あれもドイツから来たなかなかの新機軸らしいし、あー...どうせなら爆雷ももっと使いやすいのが欲しいな、最近15cm9連装対潜噴進砲なんてのが試作されてるみたいだし、本家イギリスのHedgehogとかSquidも気になるし...そういえば日向さんがこの前対潜水艦用の特殊なレーダー?みたいなのを取り寄せてたね...

そんな事を頭の隅で考えているうちにだいぶ敵艦との距離が縮まって来た。

もう1000m程だ。敵潜も流石に接近に気づいたのか更に深くへ潜航したらしく、現在の深度は75m。一定深度に留まって私に位置を掴ませ、爆雷を投下する直前のタイミングで潜航をかけて狙いを外させる腹積りだろうね。

残念な事にこの爆雷、信管は着発では無く水圧感応式、いったん調定した後深度を変えられると再調定するのに手間がかかる、が、まあ対処はするさ。なんとしてでも生き残りたい向こうの思惑もよく理解できるけど、これは戦争。電みたいに甘い事を言うつもりは無い。

今回の調停深度は、

敵潜の現在の深度、爆雷投下から到達までに敵潜が潜航しうる深度の2パターン。

発火深度は五段階調整なので80、120mにしようか。

こうすれば敵がさらに潜航しようがなんとかなるというわけさ。

最短探知距離の150mまで近づいたら3式探信儀を収納。爆雷の爆発で発生した水圧やら衝撃やらで壊れちゃうからね。

最後は聴音機を使いながら接近、真上にたどり着いた事を確認したら聴音機も切って爆雷を躊躇わずに投射する。

頭部を重くし、尾翼を取り付けた結果毎秒5mの沈降速度を誇る三式爆雷が次々と海中に放り込まれる。従来型の爆雷より沈降速度が早いから相手も大変だね。何せ猶予が15秒しか無い。

海面から真っ白な水柱が次々と上がってゆくのを後ろに眺めながら離脱、爆発の残響がおさまった頃を見計らって再び聴音機に耳を傾けると、スクリューペラが水を切る音の代わりに、気泡のぶつぶつと潰れる音や鋼材の軋み音などが聞こえて来た。ここらの水深は1000mを超えているから着底も不可能...撃沈だね。

「...спокойной ночи (おやすみ)」

叢雲、爆雷はこうやって使うのさ。

 




頑張れソ級!叢雲の対潜攻撃を躱し続けたお前ならできる!例え3式爆雷の加害半径が50mあったとしても諦めるな!これを凌げばゆっくりと充電出来るかもしれないんだから!
次回:ソ級 死す
...そうりゅうが出る話より文字数書いてんじゃねえのかこれ?
ASWの描写が楽しすぎるんだよなぁ
日向はオーパーツを作り、響は装備面に堕ちました。今後響(もしくはверный)はHF-DF、マイクロ波レーダーを装備した対潜職人となりそうです。どうしてこうなった。
今回登場させた3式爆雷(投射機に非ず)は艦これ未登場です。何故だ。
とりあえずこれからも未実装兵器はバシバシ登場させていくと思うのであしからず
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