数日前。シャルル、ラウラが転校して来る前の夜。アルトリアと簪は隣町まで出かけていた。
「だいぶ遅くなってしまいましたね」
「そうだね」
アルトリアと簪はバイクで山道沿いを猛スピードーで走っていた。
簪の買い物の付き合いで同行していたアルトリアは自身の騎乗スキルをフルに活用する。
その時だった。
「!」
「どうしたの?」
アルトリアは急に止まったのだ。
簪もそれに気になったが、すぐにその理由が分かった。
「お迎えに上がりました。聖処女よ」
明らかに異様な者がそこにいたのだ。
簪ですらもすぐにそいつがサーヴァントだと分かる。
「あなたの知り合い?」
「見覚えはありませんが……」
アルトリアは自分から離れるなと言って二人はバイクから降りる。
「おおお、御無体な! この顔をお忘れになったと仰せですか?」
「知るも何も、貴公とは初対面だ。人違いではないのか?」
「あわわわわわ……私です! ジル・ド・レェにて御座います! 貴女の復活だけを祈願しいまいちど巡り会う奇跡だけを待ち望み、こうして時の果てにまで馳せ参じてきたのですぞ。ジャンヌ!」
アルトリアがそんなの知らん、ジャンヌって誰ぞ? という感じの事を言うとジルはアルトリアが生前の自分を忘れてしまっていると嘆き出す。
ジルが真名を名乗ってきたのでアルトリアも真名を名乗る事にする。
「貴公が自ら名乗りを上げた以上は、私もまた騎士の礼に則って真名を告げよう。我が名はアルトリア。ウーサ・ペンドラゴンの嫡子たるブリテンの王だ。此度はセイバーのクラスを得て限界した」
このアルトリアの名乗りを聞いて、ジルもっと錯乱する。
「オオオオオッ!! なんと痛ましい! なんと嘆かわしい! 記憶を失い、あげく錯乱してしまうとは おのれ…おのれぇぇッ! 我が麗しの乙女に、神はどこまで残酷な仕打ちを!」
ジルはご乱心状態でアスファルトを殴りつける。ジルは聖杯戦争はすでに自分の唯一の願望、聖処女ジャンヌ・ダルクの復活がここに果たされているので、聖杯は自分を選んだと豪語してくる。
アルトリアは甲冑に換装して、ジルに脅しの一撃みたいな感じで剣をふるう、すると、ジルはまだ、アルトリアの言うことは信じず……。
ジャンヌが心を閉ざしているなら、それなりの荒療治が必要、次ぎは相応の準備を整えてまいりましょうと言って
その場から消えていった。
「会話の成立しない相手って疲れるわよね」
「そうですね……」
アルトリアは甲冑か私服へと替え、二人はバイクに乗り、その場を後にした。
◇
戻って、生徒会室。楯無がここ数日のサーヴァントの情報を一夏に提示していた。
一夏はジルとアルトリアの会話には正直言って限度を超えるぐらい呆れる。
「そいつ、本当のバカだろう?」
「そうね。最初に聞いた時は呆れたわ」
楯無が魔術師であることは妹も知っているため、アルトリアがサーヴァントであることを隠す必要はなかった。
「で、ジル・ド・レェについて調べてけど、結構逝かれた野郎だったわ」
そう言って、一夏にジルに関する資料を渡す。
一夏もその資料を見るうちに気分が悪くなり、途中で止めてしまった。
「相当、逝かれた野郎だな」
「ええ。協会側からも討伐指令が下ったもの」
「協会?」
一夏は楯無の言った、協会に疑問を持つ。
なぜ、聖杯戦争に協会が関わっていることに、疑問を感じたのだ。
「ああ。そっか、一夏くんって正式な魔術師じゃなかったんだっけ」
楯無は一夏の経歴を調べていたため、その疑問にはすぐに分かった。
聖杯戦争に関する歴史を楯無は一夏に教え、一夏もようやくその理由が分かる。
「話を戻すけど、そのジルのマスターがもっとやばい奴でね……今を世間を騒がしている殺人魔なのよ」
「はぁ? まさか、あの殺人魔ですか!?」
「そうよ……よって、協会側も聖杯戦争を滅茶苦茶する訳にはいかないと、キャスターとそのマスターを討伐すること決定したのよ。報酬として令呪を一つプレゼントするってね」
「はぁ……」
「まあ、これが第一。次にこの学園で起っている奇怪な事件よ」
「奇怪な事件?」
「そう。生徒の衰弱事件よ」
そう言って、一枚の名簿を見せる。
一夏はそれを見て、納得した。
そこに書かれていた生徒の名前に自分のクラスも含まれており、数日前から休んでいる生徒がいたのだ。
「時期からして、ちょうど一夏くんのクラスに転校生が入ってきた時だね」
楯無は一夏のクラスに入って来た転校生。シャルルとラウラに目を付けていたのだ。
しかし、一夏はそれを否定した。
「まあ、これはあくまで予想よ。他の者が濡れ衣を付けるためにやった可能性もあるから」
シャルルとラウラの転校をいい気に動き出したと考えられる。
つまり、一夏と楯無を除く、二人のマスターがこの学園にいることになった。
「流石にここまで分かると、私も手に負えないから……」
そう言って、楯無は立ち上り、一夏の前に手を伸ばした。
「同盟を結ばないかって訳さ」
一夏も楯無から同盟の件はありがたかった。
迷うことなく、一夏はその手を取る。
ここに一夏と楯無との同盟が結ばれた。