Fate/Infinite Stratos   作:ぬっく~

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第29話

一夏は深い闇の中にいた。

光もない真っ暗な所にぽつんと立っている。

 

「ここは……」

 

だけど、一夏は何故かここを懐かしく感じていた。

一夏の知る限り、こんな所は一度も来た事はなかったはずだが、何故か知っている。

 

「ここは、聖杯の中」

 

不意に後ろから声が聞こえ、一夏は振り向くと誰かがいた。

姿が見えないが、声の高さからして女性だとわかる。

 

「この世界から出る方法を知っているのか?」

 

「愚問ね。でもこのまま、この世界から出てもあなたの寿命は持って数分程度だけど、この世界から出る?」

 

「なら、どうすればいい」

 

女性は何故かその時、笑っていた。

 

「なに、あたしと契約すればいいのよ。そうすれば、寿命と言う概念など必要なくなるわ」

 

そう言って、女性はコツコツと足を音を鳴らしながらこっちに歩いて来る。

一夏に近づくにつれて、その姿があらわになる。漆黒の鎧、真っ白に伸びた地面すれすれの長髪、旗を持った女性だった。

 

「うふふふ……」

 

その姿を見た瞬間。

一夏の意識は、急に電源を落とすようにぷっつりと途絶えた。

 

 

    ◇

 

 

「これは!?」

 

真耶は福音の監視の為にレーダーを常時監視していた。

そして、福音から300メートル前後のところに突如、正体不明の物体が現れたことに気付いたのだ。

 

「織斑先生! 大変です」

 

「何っ!」

 

そして、それと同時に福音に向かうIS反応を感知したのだ。

 

「まさか、あの子たちも!?」

 

流石に予想外の事態が重なり、事態が悪化するのだった。

 

 

    ◇

 

 

福音は胎児のようにうずくまっていると、不意に顔を上げる。

次の瞬間、超音速で砲弾が福音の頭部に直撃し、大爆発を起こした。

 

「初弾命中! 続けて砲撃を行う!!」

 

セシリアの狙撃、シャルロットの『高速切替』で福音に一切の隙を与えない。

 

「行ったよ!」

 

福音はその場から逃れようと無理矢理、セシリアとシャルロットの狙撃を振り切るが、その先に鈴が待ち構えていた。

 

「逃がすかああああああ!!」

 

しかし、ここに来て思いがけない邪魔が入る。

 

「! 一旦、後退しろ!!」

 

ラウラがいち早く気付き、全員その場から後退する。

後退宣言をした瞬間、タコの足のような巨大な何かが出現したのだ。

 

「何よ! あれ!!」

 

突如の出現に福音もその場に止まり、様子を窺う。

すると、前方からその生物の本体が姿を現した。

 

「……………」

 

専用機持ちは声が出なかった。

濃い霧に包まれたそれは、あまりにも想像を超えた存在であり、全員がこう着状態になる。

 

騎英の手綱(ベルレフォーン)!!」

 

一筋の光がその生物を撃ち抜く。

それがきっかけで、専用機持ちは自我を取り戻す。

 

「何をやっているのよ! あなた達!!」

 

専用機持ちを見つけたのはアーチャーだった。

 

「楯無さん!? あれは一体……」

 

「説明は後よ! あなた達は避難……」

 

アーチャーが言いかけたところで、爆発光弾が降り注いでくる。

 

「!? 福音!?」

 

しかし、福音は専用機持ちを狙わず、大海魔の方を攻撃していた。

 

「どうやら、福音の敵として認識してしまったようね」

 

しかし、福音の爆発光弾を受けた大海魔の触手はすぐに再生する。

それを見た専用機持ちは息を飲んだ。

 

「楯無さん……」

 

「これは超機密事項にあたるから詳しくは言えないけど、人類の敵よ」

 

専用機持ちは何も言えなかった。

アーチャーも申し訳ないと心のそこから思い、その場から離れる。

 

「陸に上がる前に片付けるわよ」

 

そう言って、可能限りの宝具を投影する。

 

 

    ◇

 

 

そこには、狂笑を続ける一人の狂人がいた。

 

「ははははははははははははっはははあはははははははははははは!! 凄ェよ!! 旦那、アンタ本当にクールだよ! こんな凄ェもんがあるなんて俺、全然知らなかった! 何故か観客が全然いないのがさびしいけど、そんなこと大したことじゃない! 日常とか退屈なんか糞喰らえだ! 旦那のクールが、こっからは世界に漸く伝わるんだ!」

 

常人には理解できぬことを、両手をあげて吼える狂人。

しかし―――

 

ドゥキュウウウン……

 

銃声が鳴り響き、龍之介はその場に倒れる。

 

「なんだ……?」

 

腹に違和感を感じ、触れると真っ赤な血がついていた。

血は徐々に広がる。

 

「あははは……」

 

そして、2発目の銃声が鳴り、龍之介の頭が飛ぶ。

 

 

    ◇

 

 

アーチャーたちが相手していた大海魔がいきなり止まりだす。

 

「止まった……?」

 

その場にいた全員がそのことに驚くが、大海魔は再び動き出す。

しかも、先程より早く。

 

「ダメ……このままじゃ……」

 

岸はもうそこまで来ていた。

このまま、大海魔が上陸し、捕食を開始し始めてしまったら、彼女たちには何も残されていない。

 

「(ごめんなさい……一夏くん!!)」

 

アーチャーは何も出来なかった自分を悔やむ。

しかし、その彼女の背中を叩く者がいた。

 

「何諦めてんだよ。そんなお前を俺は見たくねぇよ」

 

「!? あ……あ、あっ……」

 

じわじわと目尻に涙が浮かぶ。

アーチャーのわずかに潤んだ視界に見えるのは、白式を纏った一夏だった。

 

 

    ◇

 

 

「キャスターのマスターらしき人物を始末したところだけど、どうやら当たりだったようだ」

 

切嗣は煙草に火を点し、一服する。

彼の横に狙撃に使われた銃があった。

 

「このまま、他のマスターも」

 

切嗣の横で待機していた舞弥が他のマスターの始末を推奨する。

 

「そうしたいのは山々だが、あの大海魔を先に処理しないと話にはならないね」

 

「しかし、あれ程の大きさになると……」

 

しかし、切嗣はこの大海魔がどうも邪魔であり、他のマスターの処理を後回しにした。

 

「対人、対軍宝具ではダメだ。一撃で消し飛ばせる対城宝具が必要になる。だが、運のいいことに、セイバーにはそれがある」

 

切嗣は煙草を海に捨て、大海魔を眺める。

 

 

    ◇

 

 

「い、一夏……くん」

 

ぐしぐしと目元をぬぐうアーチャーに、一夏は優しく頭を撫でてやる。

 

「心配かけたな。もう大丈夫だ」

 

一夏はアーチャーの手を握る。

 

「手を貸してくれるか?」

 

「う、うん!」

 

アーチャーは一夏の回答に頷く。

それを聞いた一夏はセイバーに呼びかける。

 

「セイバー!」

 

「一夏!? なぜ、そなたがそこに居られる!?」

 

流石のセイバーも一夏がここにいることには驚きを隠せなかった。

 

「説明は後だ。今はこいつを止めるぞ!」

 

「! 了解したが……」

 

「俺たちが時間を稼ぐから宝具の準備を!」

 

「!? わかった!」

 

セイバーは一夏の指示に従い、宝具の魔力を流す。

 

「さて、そんじゃあ、俺たちもやるか」

 

「お姉さんはいつでも準備万端よ!」

 

一夏とアーチャーはお互いにしっかりと手を繋ぎ。

 

(からだ)(つるぎ)出来(でき)ている」

 

I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)

 

血潮(ちしお)(てつ)で、(こころ)硝子(がらす)

 

Steel is my body, and fire is my blood.(血潮は鉄で、心は硝子)

 

(いく)たびの戦場(せんじょう)()えて不敗(ふはい)

I have created over a thousand blades.(幾たびの戦場を越えて不敗)

 

「ただ一度(いちど)敗走(はいそう)もなく、ただ一度(いちど)勝利(しょうり)もなし」

Unknown to Death.(ただの一度も敗走はなく、)Nor known to Life.(ただの一度も理解されない)

 

(にな)()はここに(ひと)(つるぎ)(おか)(てつ)()つ」

Have withstood pain to create many weapons.(彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う)

 

「ならば()生涯(しょうがい)意味(いみ)不要(いら)ず」

Yet, those hands will never hold anything.(故に、その生涯に意味はなく)

 

「この(からだ)は―――」

So as I pray,(その体は―――)

 

「「UNLIMITED BLADE WORKS.(無限の剣で出来ていた)」」

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