一夏「いま、心の底から彼女が味方である事に感謝した。あれを受ける敵サーヴァント……男性限定……には同情を禁じ得ない」
アーチャー「よし、一夫多妻去勢拳、完成です! ハーレム展開なんて、神が許してもこの私が許しません!」
一夏「待て。それは誰に使う事を、想定したものですか?」
一夏とアーチャーの詠昌が終わるが特に変わったところが無かった。
しかし、箒たちはこの後、思いもよらない光景を目にする。
「
一夏の呼び声に反応するかのように一本の剣が投影され、それが大海魔に向けて放たれる。
放たれた剣は大海魔の肉の壁を貫通させ、アーチャーも一夏の後に続いて、宝具を投影した。
「行きなさい!!」
アーチャーの剣、大剣、黄金の斧が大海魔の肉を削ぎ落としていく。
しかし、大海魔の再生速度は尋常に早く、すぐに元通りになってしまう。
だが、一夏とアーチャーは笑っていた。
「「
大海魔に目掛けて、無数の鎖が纏わり付く。
ほんの僅かでいい。
大海魔の動きを止めれば良かったのだ。
その時、一夏は見た。その身一つで大海魔と相対するセイバーを中心に爆発的突風が吹き荒れるところを。
風の結界が解け、そこから現れたのは星の光を束ねし黄金の聖剣。
人の心を奪い憧憬の念を抱かずにはいられない眩い黄金の光。人の望みによって造られながら、人の意思に影響されず生まれるもの。
騎士達の描きし夢。人々の幻想が星によって鍛えられた神造兵装。
―――この光景を見た誰もが、セイバーの真名を知った。
聖剣というカテゴリーにあって最上位に位置する星の聖剣の担い手。
それは過去・現在・未来において唯の一人しか有り得ない。
「おっと、福音はこっちだ」
一夏は大海魔の周りをうろちょろする福音に目掛けて天の鎖を放ち、そのまま海上へと放りこむ。
「―――
ブリテンの赤き竜、誰よりも気高き聖剣の王。
彼の者の名こそがアーサー・ペンドラゴン。円卓の騎士を束ねし“騎士王”である。
「
黄金が炸裂した。
星の光を集めし究極の斬撃が閃光となって刀身より放たれる。尊き光は究極の斬撃となって大海魔を一刀のもとに消滅させていく。
◇
「お、おおおおおお……この光は……」
ふと大海魔の中で、キャスターもその輝きを見た。
この地上のなによりも美しい光が、キャスターの心にかかっていた霧を払っていく。
「間違いない……」
見間違えるはずもない。その光はキャスターが……在りし日のジル・ド・レェが憧れ、共に抱いた理想のものだった。ジル・ド・レェが神以上に敬愛したジャンヌ・ダルクの死は無残なものだった。人々の幸せを望んだ少女に、世界は屈辱と苦痛を味合わわされた末の死をもって報いた。余りにも救いようのない結末が受け入られず、ジル・ド・レェは神を憎み神を否定し、救国の英雄から悪魔となった。
だが、そんなことに手を染める必要などなかったのだ。
例え終わりが無残だったとしても、ジル・ド・レェの心に残るジャンヌの姿。
誰かを助けるために共に駆け抜けた日々は、誰も貶めることのできない本物だったのだから。
「この光は、ジャンヌと共に歓喜の祝福を浴びた輝き……」
だからこそ、ジル・ド・レェは涙した。
悪魔は悪魔故に悪徳を悪徳と認識せずにいることができる。しかし悪魔が人間となれば、自らの犯してきた悪徳は自分を苦しめる罪と化すのだ。
もはや贖えぬほどに積み重ねてきた悪徳。己がゆくは地獄のみ。決してジャンヌのいる天国へは行けぬだろう。
だが、それで良い。
ジャンヌと共に駆け抜けた日々が本物であったことが分かったのならば、もうジル・ド・レェに思い残すことはなかった。
「私は、一体……」
静かに目を瞑る。
黄金の輝きは大海魔諸共、ジル・ド・レェの身体を焼き払った。
◇
セイバーの『約束された勝利の剣』の輝きは一夏ちがいる空の上からは実に良く見えた。
天にも届くほどの巨体をもち、無限の再生を続けていた大海魔―――一夏とアーチャーの宝具ですら、倒し切れないような相手がただの一撃で跡形もなく消滅した。
伝説に聞く星の聖剣。神造兵装の名は虚飾など一切ない本物のものだった。
「!! どうやら、あちらも怒らせてしまったようね」
アーチャーの視線の先の海面が強烈な光の珠によって吹き飛ばされる。
球状に蒸発した海は、未だにへこんだままだった。その中心に青い雷を纏った『
「『
ラウラが叫んだ瞬間、その声に反応して福音が顔を向ける。
無機質なバイザーに覆われた顔からは何の表情も読み取れない。だが、そこには確かな殺意を感じた。