楯無の大型ランス《蒼流旋》と一夏の聖剣《エクスカリバー》がぶつかり合う。
攻防一体の戦いは全ての者が声を失った。
水のナノマシンを纏った大型ランスと黄金の輝きを放つ剣。
二つの武器を扱う楯無と一夏。
「貫きなさい!! 《蒼流旋》」
「薙ぎ払え!! 《エクスカリバー》」
魔力で身体能力を強化された二人の技は従来の数倍に匹敵していた。
お互いの一撃は相殺され、また振り出しに戻る。
「本当に強くなったわね」
「アーチャーには感謝していますからね」
一夏はISに触れてまだ一年も経っていない。
そんな素人同然の彼が最強の称号を持つ楯無に対等に渡り合えるのは、アーチャーの存在が大きかった。
同じ属性を持つ一夏にアーチャーは己が持つ全てのレシピを一夏に叩き込ませたのだ。
「そっか。なら……私もとっておきのを見せてあげようかしら」
そう言って楯無は持っていた大型ランスを手放した。
両手を合わせ、一つの呪いを唱える。
「
その一言に一夏は驚きを隠せなかった。
「何を驚いているのかしら? アーチャーができるなら私にも可能なのよ」
楯無の言っていることは、まさにその通りだった。
アーチャーは未来の楯無。
なら、アーチャーの魔術が使えたって不思議ではない。
「こりゃ……本気でやばいな」
「まあ、正直なところ。アーチャーほどの宝具を投影することはできないけど」
楯無は一本の紅い槍を投影する。
「行くわよ、一夏くん」
「来い!」
一夏は聖剣を両手で持ち、楯無の一撃に対して構える。
「刺し穿ち、突き穿つ!」
楯無は寸前の所でもう一本の紅い槍を投影する。
その時、一夏の中でその槍が非常に危険だと感知するが既に遅かった。
「
投げられた2つの槍が交差し、紅き閃光となり一夏の心臓目掛けて飛び出す。一夏は防ごうと聖剣を盾にするが、決められた因果がそれを許さない。投げられた2つの槍はジグザグに不規則な動きを作り上げ、一夏のガードを躱して、心臓のある位置に来る。だが、ISの絶対防御により寸前のところで槍は止まる。
「うおおお!!」
穿たれ一瞬怯んでいる一夏を他所に本命である槍を楯無は放った。紅き閃光を帯びそれは一夏の心臓を確実に貫き通そうとするが一夏は聖剣にありったけの魔力を流す。
「
黄金のエネルギーが槍を呑み込む。
しかし、贋作である聖剣は一夏の魔力に耐え切れるばずがなく砕け散る。
聖剣の一撃も楯無に届く前に消滅してしまう。
「本物にはまだ程遠いか……」
いくらアーチャーが作った聖剣といえど、本物には程遠かった。
魔力で強化した程度の聖剣はIS装備程度の強度しかない。
「やっぱり、馴染んだ……」
一夏はそこで言葉を切る。
楯無も一夏と同じで何かに気付いたのだ。
お互いにその場所を目視する。
舞台の影……そこに揺らぐ黒い影。殺意の塊がそこにあった。
「■■■■■■!!」
紅の光と闇に覆われたそれは一夏は忘れるはずもなかった。
「バーサーカー!?」
突然のバーサーカーの乱入に会場にざわめきが生じる。
「虚ちゃん! 至急、観客の避難を」
楯無もバーサーカーの登場は予想外だったが、すぐさま会場にいる観客の避難を伝える。
そして、会場から緊急事態を伝えるサイレンが鳴り響く。
「バーサーカーがいると言うことは、あいつも……」
バーサーカーは一夏に考えさせる時間など与えない。
地面が抉れる勢いでバーサーカーは一夏に近づく。
「っ!?」
流石に英霊相手では一夏には分が悪いと判断し、一夏は干将・莫耶を投影する。
「■■■■■■!!」
「ぐっ!!」
間一髪でだが一夏はバーサーカーの一撃を止める。
しかし、英霊とISでは差があり過ぎた。
バーサーカーの一撃を受け止めた一夏は地面に陥没する勢いで下に沈む。
「
その一言にバーサーカーが反応し上を向き、後退した。
それと同時に一夏の上空から無数の剣が振ってくる。
「マスター! 後退を」
「ああ」
舞台のセットの上に戦闘服状態のアーチャーが漆黒の弓を構えていた。
「
一本の剣がバーサーカー目掛けて放たれ、バーサーカーは持っていた鉄柱で振り払おうとする。
「
鉄柱と当たる同時にアーチャーが放った剣が爆発する。
その衝撃は強烈な物であり、鉄柱は跡形もなく消滅し、その余波でバーサーカーは吹き飛ばされた。
だが、その程度では終わることはなく。
「A―――urrrrrrッ!!」
更に怒り狂う。
背後から無数の帯が出現し、相当ヤバいとアーチャーは判断した。
「アーチャー!! 加勢に来ました」
丁度いい所にセイバーが加勢に来る。
アーチャーもセイバーの加勢は嬉しかった。
流石にあのバーサーカーを一人で相手するのは非常に不味く、二体一ならばいけると……しかし、その選択は間違いだった。
「……Ar……thur……」
セイバーを見た瞬間、バーサーカーが静かになる。
しかし、数秒後……バーサーカーの殺意が爆発した。
「Arrrrrrthurrrrrrrrr!!!!」
「くっ!? ―――停止解凍。全投影連続層写……!!」
アーチャーは複数の剣を投影し飛ばす。
一本目の剣がバーサーカーに当たる瞬間、バーサーカーはそれを避け、剣の柄を掴み、残りの剣を叩き落とした。
「なっ!?」
バーサーカーの異常な攻撃にアーチャーは驚くも、再び剣を投影し、射出する。
「Arrrrrrthurrrrrrrrr!!!!」
いくら射出しようとバーサーカーは全て叩き落とし、一気に距離を詰める。
「はぁあああ!!」
セイバーもアーチャーの攻撃が通じないことを悟り、バーサーカーの元へと突っ込む。
不可視の剣を持つセイバーとアーチャーが投影した宝具を持つバーサーカーの衝突は凄まじい衝撃を生んだ。
両者のいる地面に亀裂が入り、陥没する。
「A―――urrrrrrッ!!」
バーサーカーとセイバーの攻防は続く。
両者はどちらも一歩も引かず、ぶつかる。
だが、セイバーのクラススキルで強化された一撃でバーサーカーの剣を弾き飛ばされた。
「はぁあああ!!」
セイバーは上段から剣を振り下ろした。
「な!?」
しかし、その一撃はバーサーカーには届かなかった。
バーサーカーは不可視の剣を真剣白刃取りしたのだ。
(見えている!?)
セイバーは一旦距離をとるために、バーサーカーを蹴り飛ばす。
(この剣の間合を知っている……奴は私にゆかりのある騎士なのか?)
セイバーの不可視の剣のため、本来なら合間はわからない。
しかし、バーサーカーはそんな剣を受け止めたのだ。
セイバーはバーサーカーに剣を向け、問った。
「その武練、さぞや名のある騎士と見込んだ上で問わせてもらう。この私をブリテン王、アルトリア・ペンドラゴンと弁えた上で挑むなら、騎士たる者の誇りを以て、その来歴は明かすがいい。素性を伏せたまま挑むかかるのは騙し討ちにも等しいぞ」
バーサーカーは何も答えない。
「貴様」
セイバーは剣を構える。
それと同時にバーサーカーの霧が消えていく。
「そ、そんな……」
バーサーカーを纏っていた黒い霧が晴れ、その姿を現す。
漆黒の騎士。その言葉が最もふさわしい程に黒い全身を包んだ鎧を着たサーヴァントだったが。
「アロンダイト」
バーサーカーの持つ剣はセイバーは知ってた。
「まさか、あなたは」
セイバーは気付いてしまった。
バーサーカーの真名に。
「Arthur……」
バーサーカーの兜が割れ、その素顔を晒した。
「サー・ランスロット」
バーサーカーの正体はセイバーのかつての部下、円卓の騎士の一人。湖の騎士にして裏切りの騎士ランスロットだった。