あの事件から数年が過ぎた。
あの日の出来事は世間には公表することなく、一部の者にしか知らない。
千冬姉はドイツからの情報提供の貸しを返すため、ドイツに残り、俺は日本に戻ることになった。
「一夏も災難だったよな」
俺は今、親友の五反田 弾とその妹の蘭と共に学校近くにあるファミレスで勉強会をやっていた。
「そうですよ。ただ見に行くだけで、
「俺の不注意だけだって……」
一夏の右手には手袋がされている。
あの事件から一夏の右手の甲には紅い3画の紋様が刻まれていた。
検査の結果、特に害はないとのこと。
一夏がまだ学生だったと言うこことで、"右手に大きな傷があるから"と言う理由で、手袋を着用することになった。
「一夏は結局、藍越学園を受けるのか?」
「? ああ。そうだが?」
「一夏さんならもっといいところを受けるべきです」
「まあ……それもいいと思ったんだが、やっぱりあれだし……」
弾と蘭の意見を聞きながら、一夏は頬を掻く。
一夏の両親は幼い時に突如蒸発してしまい、姉の千冬が養ってくれていた。
そのため、一夏は就職率の高い藍越学園を選んだのだ。
「一夏が決めたことだし、俺は文句は言わねぇよ」
「お兄は甘いですよ」
「その話は終わりだ、終わりだ。さっさとこれを終わらせるぞ」
「お、おう」
ちなみに言い忘れたがこの勉強会は弾の物だ。
こいつ、成績が悪いのに結構上の方の高校を受験するって言い出しやがった。
結局、弾の学力では無理と言うことでこうなった訳だ。
◇
「たく……もう、こんな時間になっちまったか」
時間は既に18時を過ぎており、辺りも暗くなっていた。
弾の勉強会を終え、一夏は帰る途中で自動販売機でホットコーヒーを買う。
「家に何が残っていたかな……」
と、一夏が歩き出したところで、ちょうど自販機の明かりが届かないギリギリのところで人影を見つける。
「ん?」
飲み物を買いに来たにしては離れすぎている。
かと言って、俺の知り合いと言う訳でもない。
そう思って二歩目を踏み出そうとすると、人影が一歩前に出てきた。
「……………」
人影は少女だった。しかも見覚えのある顔をしている。
いや、見覚えがあるんてものじゃない。
「ち、千冬姉……?」
15、6ほどの少女。しかし、今千冬姉は行方がわからない。週に1、2度帰ってくるだけで、今なにをやっているか、さっぱりわからない。
だが、今。そこにいるのは昔の千冬姉に異常に似た少女だった。
「いや」
少女が口を開く。その顔にはうすら笑みを浮かべていた。
「
「な、なに……?」
一歩、一夏へと近づく少女。
「そして私の名前は―――」
「
織斑……マドカ? 聞いたことのない名前だった。
「私が私たるために……お前の命をもらう」
すっと差し出した右手の甲には、
「殺せ……バーサーカー」
その時、歯車と歯車が繋がった。