「ごきげんよう……セイバーのマスターさん」
「ジャンヌ・ダルク」
ジャンヌは相変わらず不気味な程の笑みを浮かべる。
その異質な気配に楯無の脳内は警告のアラームが鳴りぱなしだった。
勝てない。
その一言がその場で最も適任だった。
「それで、こんな孤島に何の用なのかしら?」
「あらあら? 聖杯戦争の参加者ならもう分かっているのでは?」
「そう……セイバー!!」
楯無はサーヴァントの名前を叫ぶ。
それを聞いたセイバーは不可侵の剣を構え、楯無の前に出る。
だが、先に仕掛けたのはセイバーでもジャンヌではなかった。
「ジャァァァンヌゥゥゥ!!!!」
白と黒の双剣がジャンヌを襲う。
紅の外装が猛犬の様に気迫迫る勢いで。
「躾がなっていないですね」
ジャンヌは旗と腰に付けている剣でアーチャーの剣撃を容易く止める。
壊れれば、また複製するアーチャー。
地獄の業火を振りまくアヴェンジャー。
二つのサーヴァントがぶつかる。
「マスターを何処にやったぁぁぁ!!」
「ああ、あの子? あの子には別の任務をやらせているわ」
その言葉には途轍もなく違和感を覚えた。
それを分かってのか、ジャンヌがある一言でアーチャーのリミッターが外れる。
「あの子は今、私のマスターよ」
その言葉でアーチャーの中にあった何かが壊れた。
「ジャンヌゥゥゥ!!!! 貴様!! 一夏くんに何をしたァァァ!!!!」
怒りに身を任せたアーチャーの一撃を先程より重く、ジャンヌは少し後ろへと押し戻された。
「いいわ! いいわ! その怒り、憎しみ、悲しみ!!」
ジャンヌは笑いながらアーチャーの剣撃を捌く。
しかし、怒りで我を失っているアーチャーは判断力を失っている為、ジャンヌの蹴りを避けることは出来ず、もろに受けてしまった。
「ぐッ!!」
「その程度ですか? とっ、セイバーはそのまま見ているつもりなのですか?」
「っ!」
先程からセイバーはジャンヌたちの戦闘に介入しない。
いや、できないのだ。
二人の領域が次元レベルで違うからだ。
「まあ、この領域にまで入ってしまってはどうすることもできないでしょうね」
そう言って、ジャンヌは剣を納める。
その行動にその場にいた全員が驚く。
「なめているのかしら……ジャンヌ!!」
「なめてはいないわ。目的を果たしただけよ」
「目的?」
アーチャーの怒りが混じった問にジャンヌはすらっと答える。
「次に会う時はもっと楽しいことが起こっているわ」
「ま、待ちなさい!!」
アーチャーは呼び止めようとするが、ジャンヌは霧となって消えてしまった。
「逃げられた……」
アーチャーは床に拳を叩きつける。
「生徒の確認をするわ」
楯無はすぐさま生徒の現状確認及び奴らの目的を調べに入った。
そして、その目的はすぐに分かり、同時に楯無は机に拳を叩きつけた。
生徒が一人消えていたのだ。
その生徒の名前は。
更識 簪
更識楯無の妹であり、セイバーの本当のマスター。