感想とかお気軽にどうぞ。
「■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!!」
一夏がその姿を見た時には既に遅く、黒い霧に包まれたそれは、鉄柱を振りかざしていた。
トン
「!?」
一夏はいきなり後ろから誰かに押され、その場に倒される。
凄まじい衝撃が起こり、一夏が後ろを振り向く。
そこには、鉄柱を双剣で抑える紅い外装の少女がいた。
「ッ!」
「A―――urrrrrrッ!!」
黒い霧に包まれたそいつは、無造作に鉄柱を振るう。
少女は両手に持った白と黒の双剣を巧みに使いこなしながらそれらを弾く。
一夏はその戦いに目を奪われていた。
誰もがこの戦いを見たなら、全員が口を揃えて言うだろう。
“強い”と。
しかし、その戦いも長くは続かなかった。
遠くからサイレンの音が聞こえる。
先程の音で近所の住人が警察に通報したのだろう。
「ちっ! 引き上げるぞ、バーサーカーッ!!」
マドカと名乗る少女は夜の闇へと姿を消していく。
「待て!」
一夏が呼び止めようとするが、突如に現れた襲撃者は、完全にその姿を闇にうずめたのだった。
黒い霧を纏った奴もその場から消えてしまう。
「行くわよ……」
「うわぁ!?」
紅い外装の少女は一夏を抱え、その場から離れる。
◇
サイレンの音は徐々に聞こえてこなくなり、大分遠くまで来たようだ。
「……………」
一夏は今、お姫様抱っこ状態にある。
目の前には狐の面をした少女がいる。風に靡く水色の髪に一夏は見惚れていた。
そして、突如その少女が止まる。
「君は一体……」
何処かのビルの屋上で一夏は降ろされた。
一夏は一番気になっていた質問を問いかける。
「あの時言えなかったら、ここで改めて言わせてもらうわ」
そう言って、少女は咳払いをして
「サーヴァントアーチャー。召喚に応じ参上したわ」
狐の面をした少女はアーチャーと名乗る。
「サーヴァント? アーチャー?」
「そうよ。聖杯戦争ってわかる?」
「いや……」
一夏はアーチャーの言っている意味がわからなかった。
聖杯戦争って一体……そして、サーヴァントとは何なのか。
「では、簡単に説明するわ」
一夏はアーチャーの話を聞く。
「結論から言うとね、あなたはマスターに選ばれたのよ。身体のどこかに聖痕が刻まれてない?」
「聖痕?」
唐突なその言葉に困惑した声を漏らす。いくら一夏とはいえ、聖痕が何かくらいは何なのかは知っていた。
たしか、神の子が磔刑の際に受けた刺傷に類似する傷のことだろう。
「もしかして、これのことか?」
一夏は右手に着けていた手袋を外す。
「はい。それです」
一夏の右手の甲に刻まれている紅い3画の跡。
「それは令呪といって、あなたが私を律する為の魔術刻印であると同時に、聖杯戦争の参加資格でもあります」
「その、聖杯戦争というのは……」
「私たちサーヴァントと、そのマスター同士の殺し合いです」
「……ッ。じゃあ……あの少女も」
「はい。あの少女も聖杯戦争の参加者です」
アーチャーは一夏の質問に素直に答える。
一夏は何故か胸が苦しかった。
あの時、あの子は俺を殺しそうとしていた。もし、アーチャーが助けてくれなかったら、あそこで死んでいただろう。
しかし、一夏は実感が湧かなかった。
俺みたいな、素人がこんなのに参加していいのだろうか。
「多少、戸惑っているかもしれませんが……」
アーチャーは一夏のことを心配しながら、話を進める。
そして、アーチャーの口から何故、聖杯戦争が行なわれる理由が説明された。
「聖杯を手にすることが出来る者はただ一人だけです。そのためマスター達は無差別に殺し合い、奪い合います」
「俺に……殺しを……しろと?」
「いえ、大丈夫です。戦うのはあなたではありません。戦うのは私たち、サーヴァントです」
「そんなこと……」
「私は気にしていません……もう、この手は汚れていますから」
「え?」
一夏はアーチャーの手を見るが、その手は白く綺麗な手にしか見えなかった。
「―――
「え?」
アーチャーは何かを呟いていたが、一夏の耳には届かなかった。
「もう遅いので、自宅の方へと参りましょう」
言って、一夏はアーチャーに掴まり自宅の方へと飛ぶ。