後は、ランサー、キャスター、アサシンが決まっていない。もちろん、マスターも。
私の家系は裏工作を実行する暗部に対する対暗部用暗部の家だった。
そのため、一部の者から恨みを買うことだってよくある。
そして、そんなある日のことだった。
「Aブロックが突破された!!」
お父さんやお姉ちゃんがいないときに襲撃されたのだ。
もちろん、襲撃に備えて警備は万全だったはずなのだが、それでも襲撃を受けてしまった。
そして、襲撃者はどんどんと私のいるところへと進んでくる。
「お久しぶりですな。お嬢様」
「叔父……様……」
襲撃の首謀者は……私の叔父だったのだ。
「なんで……」
「決まっているではないか。次の当主は私が相応しいに決まっているのに、あの現当主はあの小娘に継がせると言い出したのだ」
叔父は次の当主の座を手に入れるためにクーデターを起こしたのだ。
そして、その人質として私を狙った。
「事が済むまで大人しくして頂きましょう」
「い……や……。来ないで……」
小さな私では、大人には勝てない。
そんな時だった。
「お嬢様、こちらへ!」
襲撃者の魔の手を阻み、少女をこちらへと引き込む。
メイドと襲撃者と交戦が始まり、少女を救出した。
「ちっ! 追いかけろ!!」
メイドとの交戦により、後を追うことが出来ない。
叔父は部下に命令し、別ルートから彼女らを追いかける。
少女はメイドに引っ張られ、地下へと逃げ込む。
「お嬢様。ここから出ないください」
「で、でも……」
「大丈夫です。私たちはあなたをお守りすることが使命ですから」
メイドは笑顔でそう言い、扉を閉めた。
◇
後を追って来た叔父は、状況を聞き、把握する。
「手こずらせやがって……」
メイドたちが地下の荷物室を防衛しており、うまく突入できない。
彼女らが地下に逃げ込んだことを聞くと。
(裏ルートには既に人員を配置してある。もう逃げることは不可能だ)
少女の逃げ道は既にもうなく、勝利が目前に迫っていた。
だが、それは……一つの奇跡で崩れ散る。
◇
少女は何も出来なかった。
弱虫な彼女にとって、一人は寂しく、その場から一歩も動けなかったのだ。
扉の先の戦闘音が聞こえなくなると、襲撃者が続々と入ってくる。
「少し予定が狂いましたが……」
「いや……」
叔父は少女の手を掴もうと手を伸ばす。
「いや……来ないでぇ!!」
少女の叫びが奇跡を呼ぶ。
床に刻まれた紋様は何かの術式だった。少女の思いの吐露と共にそれは眩い輝きを放つ、その直後。
「ッ!! なんだ!?」
その光の奔流の中から何者かが飛び出し、手に持った得物で叔父を扉の外へと吹っ飛ばした。
「……ぇ?」
少女はまだ涙を浮かべながらも、その光景に唖然とした。いや、するしかなかった。
そこに居たのは少女を捕まえようとした叔父ではなく、居たのは別の人物だった。
金色の頭髪。透き通るような白い肌。軽く簡素な鎧の上に青色の外套。
「問おう。あなたが私の……マスターか」
至極真面目な表情で、女性はそう少女に尋ねた。
「マス……ター……」
女性の要領を得ない問いに、少女は首を傾げる。きっとそれは大事なことなのだろうとは理解できるが、それが何を指すのか、わからない。
ただ一つ確かなことは、この女性が自分を救ってくれたということだった。
「サーヴァントセイバー。召喚に従い参上した。マスター、指示を。これより我が剣はあなたと共にあり、あなたの運命は私と共にある。ここに契約は完了した」
それが私と彼女の出会いだった。