一夏の前に自己紹介する女性のリボンは一夏と同じ一年だった。
「アルトリア~。アルトリア~どこ~」
少し離れたところから声が聞こえる。
「お嬢様がお呼びなので、これで失礼します」
「あ、ああ。邪魔して悪かったな」
「では……」
そう言って、アルトリアは竹刀を置いて行ってしまった。
「本当にお嬢様学校なんだな……」
一夏は夕暮れの空を眺めながらそう呟く。
そして一夏は寮へと再び足を進める。
◇
「アルトリア! 心配したんだから」
「申し訳ありませんでした。お嬢様」
アルトリアは自身を呼んでいた女性の元に着く。
「二人の時は名前で呼んでって言ったはずだよ」
「しかし……」
「名前」
アルトリアは彼女の気迫に負け、渋々と彼女の名前を言う。
「
「む~。様はいらないのに……」
髪はセミロングで水色の少女。更識簪はまだ納得がいかず、頬を膨らませる。
「そうは、行きません。私とあなた様の関係は
「それは分かってる……」
簪は右の裾を上げる。
そこには
「あなたはサーヴァント。私の従者と言うことはわかっている。だけど……それでも、友達として接したいの」
「……………」
数年前のクーデターの時に偶然にもサーヴァントを召喚してしまった。
それは同時に聖杯戦争へと強制に参加されてしまったことを意味している。
本来はこれはあってはならないことでもあった。
そう……本当はサーヴァントを召喚するのは、家督を受け継いだ
「さあ、戻りましょう。カンザシ」
「……うん」
一瞬、簪は笑顔になり、仲良くアルトリアの手を繋いで寮へと向う。
一方、アルトリアは先程出会った少年。織斑一夏に違和感を覚えていた。
(あの少年からカンザシ様と同じ匂い……まさかね)
その出会いは偶然だったのだろうか?
その答えを知る者は誰一人いなかった。
◇
「痛てて……」
一夏は寮に着いてから災難が続いた。
山田先生から渡された鍵を開けると風呂上りの幼馴染、篠ノ之箒とばったりと出会ってしまったのだ。
そして、竹刀で脳天チョップを受けた。
「? アーチャーか」
「来て……」
箒が寝たタイミングを狙って、アーチャーが現界したのだ。
そして、アーチャーは一言いい、一夏はその後を追う。
月明りで照らされた廊下を進み、屋上に出る。
「なんでこんな時間に……」
「この学園にサーヴァントが混じっている」
「!?」
アーチャーから放たれた言葉に一夏は驚く。
聖杯戦争は秘匿された儀式。一般人の前では話すことは出来ない。
あの部屋だと箒がいたから、アーチャーは誰もいない屋上に場所を移したのだ。
「数は……」
「……二人」
そう言って、アーチャーは屋上の出入り口の上の方に視線を向ける。
「もう気付いていたのかよ」
一夏もすぐに視線をそこに向けると、一人の男性がいた。
「へぇ」
真紅の槍に青い全身タイツの男性。明らかにその場違いの者がそこにいたのだ。
一夏は直感でこの男には勝てないと悟った。
「しっかり捕まっていてください」
「え?」
男性がこちらに下りてくると同時にアーチャーは一夏を抱え、屋上を飛び降りる。
着地と同時に男の真紅の槍が迫ってくるが、アーチャーは黒い剣でそれを弾く。
「いいねぇ。そうこなくちゃ、話の早い奴は嫌いじゃないぜ」
「ランサーのサーヴァントですか」
「いかにも。そう言うお前はセイバーっていう感じではないな……何者だてめぇ」
「……………」
「真っ当に戦う奴ではないな……アーチャーのサーヴァントか」
そう言って、ランサーは槍を地面に刺す。
「そら、弓を出せよ。そんぐらいは待ってやる」
だが、アーチャーは弓を出す気配すらしなかった。
「マスターはそこにいてください。後は……」
爆音と共にアーチャーの姿が消え、それに気づいたランサーはアーチャーの一撃を防ぐ。
「私が片付けます」
この日、この時間、この場所で……聖杯戦争の初戦が始まった。