「はい、注目」
場は美濃、雑賀孫一は自分用の種子島、焙烙を構えて、徳利を射抜こうとしていた。
あの一件から六日経ち、客将の立場として美濃に滞在していた。
「まず種子島は重藤弓より弾は飛ばない、殺傷距離は約四尺(220m)だ
構造は複雑で、火薬を入れて下手に弄りまわすと爆発して死ぬから構造を覚えろ。
いいか、弾が装填されてなくとも、火薬を入れて無くても、普段は人に銃口を向けるな。」
バーン!と高い破裂音が鳴り、徳利は壊れて、ただの破片と化した
「ちなみにオデコちゃん、君だよ」
孫一は、横目で物珍しい武器を見て目を輝かせている明智光秀を見た。
「う、うるさいです!あと良いじゃないですか、振ったり、逆さにしたり、引き金引いたり」
「暴発(ぼうはつ)する要因だし、死ぬよ」
「暴発?」
「簡単に言えば種子島が吹き飛んだ挙句、手が無くなること」
「うえ・・・」
明智は弄くるのを止め、元の通りに戻した。
「よし。さて今回は試し胴を使い、威力と構えを見てもらう」
「ほい!質問でさ、先生」
一人の男の足軽が挙手をする。
「ほい、なんだい?」
「試し胴ってなんだ?」
「よし、『画面の向こうに居る人(読者)』に分かるよう、説明していきたいと思う」
「先生、読者って何のことだぁ?」
「比喩だ、比喩。
試し胴、種子島の試射を胴に撃っては、その威力と性能、射程距離。そして実用性を確認する胴のことだ。」
「ほへぇ・・・便利な物じゃな」
「そんなことは無い」
弾込めを終え、孫一は否定をしつつ、火種と火蓋をきり、試し胴に向ける。
「この胴は主に足軽や兵が使う普通の胴だ。しかし限度がある。胴の耐久性だな。
直すのも良いが、全て直すのは無理だ。厚さは無くなり、薄くなるから不可能な所もあるからね」
引き金を引き、胴に目掛けて撃つと胴に穴が開いた。そして孫一は、その場に線を引いて種子島の弾込めを開始する。その横で足軽や明智は「おぉ!」と声を上げる。
「んじゃ、この線が殺傷範囲だが・・・。良いか、今回はオレが詰めた種子島を撃ってもらうがお前等が持っているのは鉄の棍棒ではない、弾を撃ち込めて、相手を悶え苦しみさせ、殺す道具だ。
そして、それは使い方を間違えれば焙烙玉(ほうろくだま)と化してお前等の命を奪う道具だ。それを覚悟して撃ってもらう」
弾込めを終え、孫一は顔を上げた。
そして、その顔を見た足軽達と明智は身を一つ引いたのだ。その顔は、まるで鬼の面で笑顔を被った冷淡な表情だったのだから・・・
「あぁ、そうそう・・・言い忘れていたがお前等。一週間で使い方とか叩き込むから・・・どうした、なんで泣き顔なんだ?その顔だと怯える子供だぜ?安心しろ。一週間の地獄なんざ、あっ!という間さ」
その後、一週間地獄を受けていた足軽は語る。「先生はあの世から来た鬼だったんや」と