とある軽空母の日記   作:闇谷 紅

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とある軽空母の日記

○月×日

軽空母龍驤や。建造祝いにって妖精さんから日記を貰うたんで、今日から日記をつけてみるで。

うちの配属される鎮守府どんなとこなんやろなー。司令官がイケメンとか贅沢は言わへんから、きっつい職場やないといいなぁ。

 

○月△日

終わった。ここブラックや、ブラック鎮守府や。

つーか、何やねん。あの司令官、自分からここはブラック鎮守府やって言うとか。

そもそも、執務室の前に来た時点で不穏やったわ。

「あの駄艦しくじりやがって、艦娘に沈んで欲しいと思ったのは初めてだ」とかドアの向こうから聞こえたし。

ほんと、何やねん。今まで一隻も轟沈させとらん司令官の鎮守府って聞いとったのに。

とりあえず、挨拶も済ましたし下がって良い言われたから今日はもう寝る。

 

○月□日

司令官がブラックって言うたからビクビクしとったけど、呼び出しも出撃も何も無し。

なんや、腑に落ちへんけど、とりあえずあてがわれた宿舎の自分の部屋で持ってきた荷物の片づけをする。

 

○月○日

今日も任務はなし、おかしい、おかしすぎる。

よく見たら日記の名前の所に「まな板」書いてあった。あの妖精許さへん、轟沈したら化けて出たる。

 

○月◇日

今日も任務はなし。

どういうことやろなぁ?

なんや理由でもあるんやろか?

まぁ、暇ならそれはそれでええわ。

まだ沈みたないし、艦載機の整備でもしてすごすことにする。

 

○月●日

今日も何も無し。なんやこれ?

おかしい、おかしすぎる。

と言うか、むしろ逆にコワイ。

なんや、これ?

うち、まだ何もさせられてへんで?

ほんま、わけわからへん。

 

○月◆日

今日も何も無し。

とは言え、鎮守府が動いていないって訳ではないらしい。

「また東京急行よ、そろそろ休みたいわ」ってぼやいてる軽巡洋艦も見かけたしなぁ。

とは言え怖い答えが返ってきそうで、どうにも他の艦娘に話を聞くのもまだ出来てへん。

このままだったらあかんとは思ってるんやけど。

 

○月◎日

とうとううちにもお声がかかった。

ひょっとして、これはあれやろか。

やることの無かった六日間は身辺整理と覚悟をしておけって意味だったんやろか?

行き先は沖ノ島海域、出発は明日やて。

ふふん、ウチが居るからこれが主力艦隊やね。

壁に向かって言ってみたけど、駄目や、あかん、絶望色の未来しか見えへん?

何、お前も壁やろて?

やかましいわ!

……はぁ。

 

○月☆日

艦載機のみんなのお陰で無事帰ってこれたわ。

と言うか、何やったんやろ、あれは。

一戦して撤退をひたすらやらされたんやけど。

ただ、疲れてしんどくなったと思ったら交代を告げられて、それで今日の出撃はおしまいやった。

あー、確かブラック鎮守府って疲れようが関係なく戦いに駆り出される場所やなかったやろか?

謎や、謎すぎる。

一緒だった他のみんなが何か言いたげな顔しとったけど、緊張しとったこともあってかへろへろなんで今日はもう寝ることにするわ。

話を聞くのは明日や、明日。

 

○月★日

起きて部屋を出て、話を聞こうと人を探したら重巡洋艦と駆逐艦の娘を見つけた。

片方は秘書艦やて紹介された気がするけど、なんやあの組み合わせ。

愛宕と浜風て。

ぐぎぎぎぎぎ、べ、別にうち、悔しくなんてないで?

まぁ、ええわ。今日は巡り合わせが悪そうやし、日を改める。

出撃の疲れをとるよう今日はお休みで良いって通達も来てるしなぁ。

あれ、ブラック鎮守府?

 

○月▲日

今日こそは真相を明らかにすると決めて部屋を出た。

うん、出ることは出たんや。

そしたら、また出撃命令。

海域は前と同じで、やることも同じ。

違いがあるとしたら、うちの方にまだ質問をする気力が残ってたことやけど。

たぶん、聞いた相手が悪かった。

「提督……安心して、あなたの分もきっちり爆撃しておくわ」

帰還後、あの正規空母の娘(ずいかく)、うちの話を最後まで聞かずにそんなこと言って飛び出していって――。

執務室の方から爆音が聞こえたのはその後やった。

やー、流石正規空母やね。

何でもこの鎮守府で一番練度が高いらしいわ。うちの九倍くらい。

二番目が戦艦の武蔵とも聞いたけど、そんなことより……司令官、生きてるやろか。

 

○月■日

今日こそは司令官のブラック鎮守府発言の意図を確認してみせるで!

そう意気込んだものの、執務室に足を運んだら、司令官はおらへんかった。

何でも艦載機に爆撃されて入院中ちゅうこっちゃ。

いやー、流石正規空母や……うん、ごめん。

 

○月α日

司令官はまだ入院中やて。

仕方ないので、他の艦娘から話を聞くことにする。

前回の失敗もあるし、空母の娘に聞くのは避けることにする。

秘書艦も駄目や、となるとどの艦種の娘がいいか。

「あ、龍驤さんじゃないですか」

そんな時、向こうから話しかけてきた娘がおった。

「聞きましたよ、最近司令官のこと聞いて回ってるとか? そんな龍驤さんに丁度よいものがここに。いやー、青葉見ちゃいましてね? ほらほら、遠慮なさらず、どうぞどうぞ」

そんな聞いて回ってると言う程あれこれした訳やなかったんやけど、うちによいものと言う言葉に興味を惹かれて受け取ったのが失敗やったんやと思う。

うちは司令官の入浴姿の写真を手に入れたのやった。

てか、これどないせーちゅうねん?

我に返ったらあの重巡洋艦もう居らへんし。

 

○月β日

不幸や。や、何処かの航空戦艦ちゃうで?

けど、不幸やった。

青葉に貰うたと言うか押しつけられた写真、紛失してもうた。

マズいで、こらマズいで。うちちょっちピンチすぎやー。

あれを落としててそのシーンを誰かに見られてたとしたら……あっかーん。

 

○月θ日

写真のことが気になって集中出来へん。

珍しく演習に駆り出された言うんに。

きっとそのせいやろな。

演習相手が駆逐艦の艦装と制服姿の武蔵だったのは、きっと。

「いなづまのほんきをみせるのです」

って言うとったけど、目か耳かどっちかがおかしくなる程気になってるってことやろ。

わかるで、写真の持ち主がうちやて知られたらいろんな意味で終わりやからな。

 

○月Σ日

日記に一枚のメモが挟んであった。

書き込みは一文。

「青葉見ちゃいました」

あんの重巡洋艦、元はと言えばあんな写真を押しつけてくるから――。

ふふ、ふふふ。

せやね、艦載機のみんな、お仕事や。

練度の差がなんぼのもんや、目に物見せたる。

 

 

【日記はここで終わっている】

 

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