始まり
いきなり鬼怒田さんに本部へ呼び出された。昨日三門市の警戒区域で粉々にされたバムスターの残骸を三輪隊が発見したらしい。そしてこんな事が出来るのはA級位だが攻撃手なら切り刻むならともかく地面にクレーターが出来るのはおかしいとなり、一番出来そうな俺が呼ばれたのだ。
「俺はやってないですよ。履歴みれば分かります」
「分かった。貸してみろ」
鬼怒田さんにバラバラになったバムスターの件を聞かれたが見に覚えがなく、トリガー履歴を出して無実を証明した。ボーダーのトリガーには探知機能があるから何処へ行ってたかが分かるのだ。
「確かに家にいた様だ。念の為に聞くが黒トリガーは使っておらんだろうな?」
「昨日は使ってないですね。というか使ってたらトリオン兵が吸収されちゃうし」
「確かにそうだな。その線も薄いな」
俺の黒トリガーは倒した相手のトリオンを吸収してしまうのでトリオン兵の残骸なんて残らない。
「一体誰がやったのだ…」
「ボーダーの反応が無かったんですよね」
「そうだ。だが他にボーダー以外のトリガー所有者などおらん」
「師匠なら未登録だけど倒したら俺か忍田さんの所に向かうからな。来てないんですよね?」
「そうだ。全く、ボーダーに入らず放浪してるとは…」
「まあまあ、師匠はトリガーなり、軌道衛星マップ持ってきたり貢献してますから」
「そんな事は言われんでも分かっとるわい」
きっと有能だからこそ本部へ置きたいと思ってるのだろう。しかしあの人は猫よりも勝手な人だから組織は向いてない。本当にどうやって旧ボーダーへ入ったのやら。
「以前みたいに夢で見れんのか?」
「世界を跨ぐとなると相当トリオンがヤバイ証ですよ。今日は快眠だったし、引っ掛かったりしませんでしたよ」
俺はサイドエフェクトのせいか夢見で他者の夢を見れる。先日夢見で引っ掛かった奴が来るのが分かってボーダー内で一騒動があった直後だから聞いてきたんだろう。
しかし誰でも見れる訳じゃなく無意識だとかなり強いトリオン持ちになる。
「お前さんが感知出来ないだけかもしれん」
「ハハハ、まさかそれこそサイドエフェクトでステルスでもなきゃ無理ですよ」
「…」
「…」
「あるんだな!ステルス系のサイドエフェクトが!」
「実物を一度だけ見ました……」
そこからは鬼怒田さんとかなり揉めた。「何故知らせない」とか「教えてどう対策を取れば良い?」とか「それを聞きたいのはこちらだ」とか叫びまくった。
「ぜぇ…ぜぇ…とにかくステルスは対策の仕様がなく、それ以外の大物は来てないんだな!」
「ボーダーと仕様の違うバックワームを着てる奴を探せと言ってるのと同じですから無駄に金を浪費するだけです。仮に誰かが来てたとしても迅や俺で対処出来る程度でしょう。天羽は言わなくても分かりますね」
「むしろ被害が増すだろうな……」
敵一人に町一つ潰す様な物だ。誰だってそんな選択はしたくない。こうして俺は何とか無実を証明し終えた。
「どうだった共也」
「やっと終わったよ仙」
扉の前で待ってたらしい仙と合流する。
「やけにぐったりしてるな」
「そりゃあ鬼怒田さんに絞られたからな」
「何かしたのか?」
「いや何もしてない」
キョトンとしている仙。だが一つ分かることがある。
「何かが動いてるんだろうよ」
「分からないのに何ドヤ顔で言ってるんだ」ゲシゲシ
「おい、蹴るな!容赦無くなったなお前」
「何となくムカついたから反省はしてない」
「おい!」
空は晴天だった。
数日後、三門中で突然門が発生してモールモッドが出現したらしい。そしてC級が撃退したようだ。撃退したのは凄いがやられてたら他国に見習いはベイルアウト機能が無いのがばれてたな。まあ撃退したということは勝ったということだろう。直後にイルガーが発生して被害をもたらした。流石に俺も始めてみたな。似たような機能のトリオン兵なら見たことはあるけど……
そして更に数日後、ラッドと呼ばれる小型トリオン兵掃討に全隊員参加で昼夜問わず行われた。そして俺は……
「すぅ~」
「おいおい、サボりか共也」
「あ、迅さん」
昼寝をしてたら迅さんが来ていた。迅 悠一、実力派エリートを名乗るS級隊員である。
「ほら、実力派エリートがサボっちゃ駄目でしょうに」
「それを共也が言うか?」
「俺は既に行かせていますよ」
何時もと違って今日は黒トリガーを使っている。人手が欲しい時に増やせるタイプである俺の黒トリガーはかなり貢献してるだろう。
「既に掃討量はトップです。戦い以外は気が向かないんですよ」
「確かにこれしんどいからな」
「後、五分で終わるし良いんじゃないですか」
「もうそんなに片付いたのか…」
「まあこれだけの隊員が動いてればなぁ」
既にやる気がないので寝転がる。
「ということでお休みなさい」
昼寝の続きをした。
ラッド掃討から数日後、また本部へ呼び出される。今度は何だというのか?心当たりは無いんだが……
そうして行くと本部上層部の城戸さん、鬼怒田さん、根付さん、唐沢さん、に本部長の忍田さんと林道支部長もいる。まさかの派閥勢揃いである。
ボーダーの派閥は3つ、近界民マジぶっ殺す派の城戸派、恨みはないけど襲ってくるなら戦う派の忍田派、近界にも良い奴はいるから仲良くしようぜの林道派の三つである。そして俺は無所属である。派閥組んでる暇があったらボーダー強化しようぜ!というスタンスだからだろう。絶対師匠の仲間割れは面倒くさいが移ってるな……
他にも今回呼び出される原因となったマイネームイズメガネこと三雲君と迅さんがいた。そうして始まるのは三雲君が近界民と接触していた事とそいつが三輪隊を黒トリガーで撃退した事である。黒トリガーには黒トリガーということで迅が断ったら俺に行かせる為に呼んだようだった。
「案の定、近界民が出たではないか共也!」
「いや、黒トリガー位持ってる奴がいてもおかしくないですよ。向こうは『戦争は日常だ』とか言って敵味方問わず殺しまくってますからね」
「むぅ……」
バラバラバムスター事件の件で鬼怒田さんの反論を宥める。極論黒トリガーを作りたいなら追い詰めて人が沢山死ぬ環境を作れば良いのだ。
「それに夢で見ないという事はそういう事でしょう?」
「それは対処出来るという事か?」
「見ないとまだ分からないけど何も出来ない程強いという事はないでしょう。それに基本コピー型は使い勝手が悪い」
コピー型のデメリットを彼らに説明していく。
本来の能力じゃないから燃費が悪かったり、使えても同時使用数に上限があったりである。それに技量まではコピー出来ないケースが多く、仮に同じトリガーで戦った場合、熟練度で劣るのが殆どだ。
「それに使うトリオンは自身で補わないといけないから選択肢は限られてくる。追い詰められると覚えたて程不安が残るから使わなくなるし」
そして一番問題なのは……
「ボーダーのトリガーの利点は誰でも高水準で使える事で同じトリガーで競い合う場合、ランク戦で同じ規格トリガーで戦い合うのに慣れてるボーダー隊員にはむしろ有利になる」
弧月をコピーされた所で剣術は劣るだろうし、スコーピオンは変幻自在だが覚えたてでモールクローやブランチブレードなどの技はすぐ思い付かないだろうから余計弱体化するだけだ。弾丸もコピー出来ても中距離戦術が分かるわけでもないから相手の追い詰め方を知らない可能性が高い。ただ撃てば勝てる程ボーダーランク戦は甘くないのだ。
そして迅さんに行かせようと城戸さんが命令するが林道支部長の命令を通してじゃないと動かないと言ったので林道支部長に命令したらやり方は任せるという大義名分を得てしまった。ここまで迅さんの思惑通りなんだろうな。
「というわけで俺に任せてくれ共也、絶対連れてくるからさ」
「会って確認したんだな?」
「ああ、大丈夫だと俺のサイドエフェクトが言ってる」
「分かったよ」
未来を見れる迅さんが庇うなら危険はなくてこれから先に必要な人材なんだろう。その話が終わった後に唐沢さんが近界民の目的を知ってるか三雲君に尋ねた。そして父親を探している情報しか分からず友人の名前で『空閑 遊真』の苗字で林道支部長、忍田さん、城戸さんが反応した。確か旧ボーダー設立者の一人に『空閑 有吾』がいたと師匠から聞いている。そうして忍田さんから他のメンバーにこの事を伝えて有吾さんの息子なら争う必要はないと擁護する方針の様だ。
そして迅さんと三雲君、林道支部長と忍田さんは退出させて城戸派の面子と俺が残った。
「本当に出る気は無いのか共也!」
「未来を見れる迅さんが大丈夫といったなら危害を加える気はないんでしょう。問題はボーダー内のバランスが崩れる事でしょうね」
つまり最も大きい派閥である城戸派が下剋上されるから彼らは強奪に出ようとしているのだ。
「君が入ってくれれば話は別なのだがな」
「悪いですけど派閥争いには興味ないですのでお断りします。向こうに声をかけられても同じです」
城戸さんの勧誘を断る。何故面倒ごとに首を突っ込まないといけないのだ。そうしてどうするのかを話し合うが本部の全部隊を総動員させる気の鬼怒田さんと三輪隊が撃破されたのにそれより劣る部隊を出しても返り討ちに遭うと考えてる根付さんで揉める。そして城戸さんが唐沢さんに尋ねると条件が整うまでつまり数日後に帰還する遠征部隊にやらせる案を出した。そして三輪隊と合流させて黒トリガーを確保する方針に決まった。
あれ、俺はいらなくない?
「じゃあ俺は必要ないんで帰り……」
「君には黒トリガーの解析を頼もう」
退出の言葉を遮って城戸さんに役割を押し付けられた。断れば間違いなく玉狛に肩入れしてると言われて冷遇されるだろう。
「直接動くのは断りましたし、受けますよ。直接見に行きたいけど未来予知がある迅さんが向こうにいるから阻止されるだろうし戦闘記録で解析してみます」
こうして城戸派の支援をする事になった。
「ふぅ~、でもこれで共也は直接戦闘に動かないな」
「さっきいた人ですよね?」
修は迅に尋ねる。修は遊真と合流地点へ向かいながら派閥の事を聞き、城戸派が黒トリガーを横取りに来ることを教えた直後に迅が共也と敵対しない事に安堵した事を疑問に思って尋ねた。
「そう。俺と同じ黒トリガーを持ってる。本人は何処の派閥にも入ってなくて敵なら容赦しないけど、危害が無ければ基本動かないよ」
「黒トリガー…空閑と同じ位強いんですか?」
「いや、あいつの黒トリガーは別格だ。パワーバランスが崩れる玉狛と遊真が組んで戦ったとしてもあいつなら一人で全滅させられる」
「なっ!?そんなに強いんですか!」
「だから戦わなくて安心したんだよ。それに共也と遊真が戦えば必ず遊真は殺される。相性が悪すぎるんだ」
そこまで圧倒的なのかと青ざめる修。それを払拭する為にポンッ!と頭を撫でる。
「ま、その心配はないさ。派閥争いが面倒だからと関わりを避けてるし今回は動く気はないらしい」
しかし黒トリガーの解析程度なら確実にしてくるだろう。つまり迅が黒トリガー確保にやって来る遠征部隊を止めなければ対策済みの彼らと戦う嵌めになる。
「こりゃあ忙しくなるな」
修に聞こえない程度の声で呟いた。
かなりのハイペースで飛ばしてすみません。理由としては共也がボーダー入隊前の遊真と遭遇した場合、戦闘になると相性の問題で確実に倒してしまうからです。inレプリカさんで多重印使えるし学習するけど共也相手だと
完膚無きまでに叩きのめされる未来しかない程に共也は強いです。