射手の頂点に立つ   作:クロアブースト

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原作時点の高校二年生の出来事です。


【閑話】夢見の巫女

夢見とは人間の記憶から作られる夢とは異なる夢を見る事だ。例えば未来を見たり、他者の過去の出来事を見たり出来る。

 

「だから夢だと分かってるんだ……」

「何を言っているんだ共也?」

 

俺と同じベットに入り込んでいる仙がきょとんとする。念の為に言っておくが俺は仙と付き合ってないし、肉体的な関係なんてなったことなんてない。小さい頃はお泊まりをして一緒に寝たりしてたが思春期になってからはそういうことはしないように自粛してるつもりだ。

 

ところで夢見の利点を話そう。夢見は未来予知とサイコメトリーの過去を読み取る部分の複合版と言って良い。そして良い未来しか見れない予知や変えられない未来を見れた所で意味がない。改変可能かつ不幸な未来を見れて初めて有益になるのだ。俺は仙と出会ってから無意識に仙が持っている夢見のサイドエフェクトに同調してしまい、彼女の不幸な未来を見たから裏で防ぐように暗躍していたのだ。そして夢見の特徴は夢の中で抵抗が出来ない事である。

 

つまり、今の俺は仙にヤられる寸前である。

 

「ああ…やっと共也と一つになれる…」

 

恍惚の表情で俺に這い寄る仙。正直冷や汗が止まらない。動けば壁をぶち壊して逃亡するのに……

 

「いただきます♪」

「いやあああ!ケダモノォォォ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ……!?」

 

ベットから飛び起きて身体が動くことに安堵する。どうやら夢から覚めた様だ。汗でシャツがぐっしょりしていて気持ち悪い。

 

「マジでどうしよう……」

 

悩んで頭を抱えてしまう。仙が嫌いだとか異性として見れないとかいう理由じゃない。寧ろ大好きだし、俺の物にしたいと思っている程である。

しかし近界を旅して死にかけた時に自信の強い独占欲に気付いてしまった。笑顔や優しいところが好きだと思うなら普通だが予知夢の不幸な夢で見た他人に傷つけられて泣いてるところや傷つけられて絶望したところまで好きだと思ってしまった。

他人に仙が傷つけられた事には怒りを覚えるし、俺自身が仙を傷つけたいとは思っちゃいない。問題なのはどんな仙でも受け入れられる狂った愛だ。喜怒哀楽を受け入れるまでは一般的な愛だが仙がどんな目にあってボロボロにされようが、酷い目に合わす原因は嫌悪しても結果で酷くなった仙を愛せてしまう事だ。

おぞましいと感じたのは顔の皮膚を剥がされようが死んで死体になった骸すら愛しいと感じてしまう可能性があるからだ。何でも愛せてしまう愛とは恐ろしいと痛感している。

この狂愛が仙を取り返しのつかない事を引き起こすのでは無いかと思ったからこそ仙と付き合う事は出来ない。仙の好意には気付いてるが告白するつもりはないし受け入れるつもりもない。

 

「一番は離れるべきなんだろうけど……」

 

俺が近界に拉致されて離れ離れになったのは玄界の時間軸では2週間(実際は数年旅したのだが事情があって肉体と経過時間が玄界の時間に合わせられる事があった)程度になるがその間、仙は塞ぎ込んでしまったらしい。

そして俺が戻ってきて狂愛から絶交を持ちかけようと動き始めたら夢見で俺と会えなくなった仙が自殺する悪夢が見えてしまい急遽中止することになった。他にもわざと嫌われる様に振る舞う計画を立てたら今度は心中しようとして成否問わずに仙が自殺する悪夢が見えてこれも中止になった。

正直言うなら仙はかなりの地雷女である。そして原因は狂人だった俺と深く関わったせいだろう。人間離れした奴と関わると良くも悪くも影響を与えてしまうのは白夜の方も同じだがそれは置いておく。こうなった時の解消法はガス抜きである。

 

ピ、ピ、ピ

 

連絡帳から仙の電話先を選んでコールをかける。

 

「ハァ…ハァ…もしもし共也か……」

「朝早くに電話をかけて済まない仙」

「ハァ…私も今…起きたところだ……」

 

やけに息切れしているが声はやけに艶かしい事から大体予想がつくので無視する。そもそも平常ならあんな夢は見ないしな……

 

「明日二人で遊びに行かないか?」

「本当か!?絶対行くぞ!」

「お、おう…」

 

食い付きが速いのに若干引き気味である。

 

「じゃあ明日は遊園地にしようと思ってるが良いか?」

「うん、普段共也は遊園地は行かない方だし私も大丈夫だ」

「なら明日の待ち合わせは……」

 

明日の待ち合わせ場所や時間などの都合を合わせていき、用件が済んだら電話を切る。勿論、日帰りで済むプランである。今までの経験上、未来を変える際には懸念要素を取り除かないと世界の修正力かそちらに向かいやすい傾向がある。つまり帰り道にラブホなどを通ったらジ・エンドである。

 

「最悪責任取るにしてもリードするならともかくされるのはちょっとなぁ………」

 

後は男の意地というかされるがままは納得がいかないのだ。どちらにしても責任を取らないといけないと自覚してるからこれだって現実逃避でしかないが……

今は仙と遊びに行く事を考えとこうと俺は情報収集から準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

「共也からデートの誘いが来るなんて……これはチャンスだ!」

「お姉ちゃん、楽しそうだね。何か良いことあったの?」

「良いことは明日あるんだよ茉莉花。もしかしたらお持ち帰りされるかもしれないな♪」

 

溺愛する妹の茉莉花を抱きしめて明日のデートに張り切る仙。共也の計画は綱渡りだということを彼はまだ知らなかった………




狂愛
…その人の全てを愛せてしまう。生から死までどんな事が起きて面影が無くなる位の非業だろうが愛する人のなら愛しいと感じてしまう。決して愛する人を不幸にしたいわけではなく、愛する人に降りかかる不幸すらも愛せてしまうということである。


人間離れすると感性がおかしくなる可能性があるので共也は狂愛が該当します。まあ歴史の偉人や変人と比べたらまだ平和的なんですけどね。
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