登場人物
『サクラ』=小狼の師匠
…小狼の師匠でカグヤ曰く近界最強の人。外見は亜麻色の長髪をストレートにした感じの二十代のお姉さん。他国からは【亡国の姫君】と呼ばれ恐れられている。自身の運命の人である小狼を見つけて気分は最高潮。ショタコンかつ変態なので小狼の貞操がヤバイ。
『小狼』
…他国に拉致されてた所をサクラに拾われた少年。救われた事には感謝しているが寝込みに夜這いをしかける師匠に身の危険を感じている。
師匠に拾われて数年、小狼は師匠のサクラと共にアフトクラトルに来ていた。
「さあアフトクラトルに拉致された人救出作戦行ってみよ~!」
「何で囮役なのにハイテンションなんですか…」
「それは大好きな小狼くんと一緒だからさ!」
師匠の言葉に思わず赤くなる。こう正面から好きだと言われるのは慣れないのだ。今回俺達はレジスタンスと協力して救出作戦を行う事になった。俺達は陽動で国に潜り込ませた協力者が避難させる手筈になっている。やはり拉致されて不満な奴はいるのだと実感した。
「おやおや、顔を赤らめて誘ってるな!じゃあ今日は宿屋でお楽しみを…「はいはい、そんな暇無いですから行きますよ」あんっ♪」
ふざけてる師匠の背中を押して目的地まで進む。今回攻めるのは四大当主の一つハイレインが治める国家だ。決行は当主の城の爆発らしいが救出作戦なのに割りと過激である。そして町に潜伏して数時間が経過すると城から連続の爆発音が鳴り響いて煙が出ていた。
「さてと、始めるとしますか」
「了解」
俺達はトリオン体に換装して道を歩く。すると国の兵士なのか緋色髪の女性が立ち塞がる。
「止まれ、貴様達!この国の者では無いな。何者だ!」
「ふっふっふっ。近界にこの人ありと言われた茶道の達人!」
歌舞伎の様に見栄を張る動作で女性の視線を釘つける。確かに茶道出来るけど少なくともそんな物がトリガー以上に近界で流行ったりはしてない。
「サクラ様たぁ私の事よ!」
「ふざけるな!」
「うん、今適当に言ったんだよ貧乳」
「なっ!?私は貧乳じゃない!少し慎ましいだけだ!」
これ気にしてるな。流石は百年近く人を煽り続けた人だ。外見は二十代の女性にしか見えないけど……
師匠はコンプレックスとか的確に見抜いて突いてくる迷惑人である。そして師匠は貧乳とは対極の巨乳である。
「大きい胸など邪魔なだけだ!」
「男の子はね、女性に母性を求めるんだよ。需要があるのは一部の貧乳好きだけなんだよ……」
「貴様ァ!」
目を伏せて同情の振りをした事でぶちギレた女性はトリガーを起動する。
「じゃあ小狼くんに任せるね」
「ちょ!?散々煽って怒らせたんだから自分で……」
「フハハハハ!さらばだ絶壁ィ!」
物凄い速度で走り抜けて立ち去ってしまう。
「逃がす……!?」
ヒュン
「外したか」
俺は右手から蒼く発光したブレード生成し、投げて移動を遮った。頼まれた以上は倒す必要がある。
「蝶の楯」
女のトリガー使いから無数の黒い破片が出現する。破片を組み合わせて自身の前に楯を作って俺の弾丸を防ぐつもりのようだ。俺は右手にさっきの蒼光刃を造り、斬りかかる。楯は硬くヒビが入るだけで壊せず、周囲の鋭利な欠片を飛ばしてきたので後退する。追い打ちをかけるように女は飛ばしてくるが蒼光刃を鞭に変形させて周囲を覆う様に振るい欠片の弾丸を弾いていく。弾丸が収まった時を見計らいブレードに戻して刀身だけを伸ばして突きを放ち楯を砕くも接触までのインターバルで余裕で避けられた。
「形状変化自在の剣が貴様の武器か?」
「ああそうだよ」
大量のトリオンを凝縮させ、変幻自在に形を変えて振るうのが蒼光刃だ。伸ばす範囲が大きいほど強度が下がるが極端に伸ばしたりしなければ密度で強度も補っている。しかしこれでは今戦ってる女は倒せないと判断し左手でホルダーから拳銃を取りだし銃口を向けて引き金を引き……
ドッ!
銃口から極太の蒼い粒子砲を放ち、楯ごと使い手を消し飛ばす。これはショットガンじゃなくレーザーキャノンなのだ。動きを止めた時点でただの的だ。
「敵が弱くて助かった」
トリオン体が破壊された女を拳銃のグリップで殴って気絶させて移動した。
先を行ったサクラは城まで走るが途中で殺気を感じて右腰に帯刀している刀を抜刀する。
キキキン!ドサッ!
何かがぶつかり合い落ちた音。サクラは刀を降ろし、奇襲をかけてきた相手に目を向ける。そこには一人の老人がいた。
「国宝オルガノンの使い手のヴィザだね」
「まさかオルガノンを初見で見切るだけではなく、ブレードを切り落とすとは……流石は亡国の姫君ですな」
「さてじゃあ戦おうか貴方達」
サクラはヴィザとは違う方向の建物に刀を振るって高速の斬撃を飛ばすとそこには伏兵として隠れていたノーマルトリガー使いが避ける事も出来ずに切り裂かれる。
「伏兵まで気付くとは……しかし一人で攻め込むのは早計でしたな」
他の建物から十人近くが現れる。しかも四人は黒い角であることから黒トリガーだった。
サクラは刀身を地面に突き刺し沈めると地面から間欠泉の様に周囲から大量の桜の花弁が噴き出す。桜の花弁はサクラの周囲を舞い、桜の濁流の中から花弁の一部だけを刀に変えて持つ。
「さて遊んであげるよ」
濁流が巨大な津波の如く彼らに押し寄せた。
師匠の向かった方向を追いかけてさっきの人と似たトリガー使い達を片付けながら走っていた。
そして屋根から飛び降りて着地すると悪寒が走ったので後退すると地面から黒いブレードが生えてきた。
「あん、生意気にも避けやがったか」
黒い角の男が現れる。確かエネドラとかいう男だと資料の情報を思い出す。俺は銃の引き金を引き、レーザーで上半身を消し飛ばすが下半身から液体が噴き出して再生する。
「ハッ、てめぇごときにやられねえよ!」
「噂通り厄介なトリガーだな」
地面の色が黒くなったので俺は下がると案の定ブレードが発生する。サイドエフェクトでトリオンを色で見分けれなかったら気づかなかっただろう。
「!?」
今度は黒いモヤが俺に向かって飛ばして来たので範囲外に逃れる。
「チィ、外れやがった!」
恐らく身体が液体化してるのとブレードの硬化を考えるとさっきの目視出来ないモヤは気体化の可能性が高い。そして敵の供給器官と伝達能がさっきから体内を高速で流動している。一発では当てられないだろう。銃口をエネドラに向ける。
「無駄だ!確かに威力はあるがそんな攻撃じゃ俺には当たらねぇ!」
「確かに一発じゃ無理だな」
銃口の左右に無数のサークルが発生する。
「全身撃ち抜けば問題ないだろう。無限装填砲」
ガトリング砲の様に銃口とサークルからレーザーを連射して全身を呑み込む。
ドドドドドド!
轟音と共にエネドラへ向けてレーザーで全身を撃ち抜いて破壊する。トリオンを固有の破壊音が聞こえると射線外に転送されたらしいエネドラがへたりこんでいた。
「たいして強くなかったな」
「んだと……ガッ!?」
腹に蹴りを入れて建物に叩き付けて気絶させる。俺は先を行った師匠を追いかけた。
黒トリガー使いを倒し終えたので師匠の元に向かい辿り着くとその光景に唖然とする。
切り裂かれた廃墟が周囲にあり、地面が見えなくなる程の積み重なっているブレードの残骸の上で無傷の師匠と全身に切り傷のあるヴィザが斬り合いをしていた。更に彼らは直接剣を振るうだけではなくヴィザはオルガノンの周囲を円軌道で走る十を超える遠隔ブレードで切り裂こうとし、師匠は周囲に舞う桜の花弁の濁流で防ぐ。そして周囲には倒されたと思われるアフトクラトルのトリガー使い達が気絶させられていた。
傷はヴィザの方が多いが均衡している様に思えたが降り上げた剣を師匠は柄頭で横に弾く事で態勢を崩させ、左足に剣で突きを繰り出して左足を削る。
「まさか、私の攻撃を片手間に防ぎながら他の黒トリガー使いを倒されるとは……」
「中々の腕前だけど剣を振るう年期が違うんだよ」
「流石は生ける伝説である亡国の姫君ですな……」
「ふふん♪じゃあ終わりだよ」
ヴィザの剣を振るうタイミングに合わせて師匠も同じ角度で剣を振るい刃が交差し……
ヴィザの剣だけが弾かれそのまま首を切り裂いた。今のは現代の剣道で言う面きり落としと呼ばれる技だ。正しい姿勢で振るう事で剣の軸がぶれずに相手の剣だけを弾く攻防一体の技である。だがそれは容易に出来る事ではなく、絶え間無い修練を積み重ねた者が出来る技だが少なくとも互角相手には使えない。つまり……
「まだまだだね」
師匠は笑顔で言う。剣術においてもヴィザを師匠は上回っている事になる。そしてトリオン体が破壊されて生身のヴィザが倒れる。
「ここまで圧倒的にやられたのは久しぶりですな。私は貴方が戦った中でどのくらいでしたかな?」
「剣士としてなら五番目位かな?私達が使ってる遠隔斬撃無しで真っ向から斬り合う人は太刀筋が鋭いからね。便利なのに頼って直接斬り合う数が減ると太刀筋が鈍るんだよ。今の貴方みたいに……」
「確かに全盛期と比べて直接斬り合う数が減りましたな。まだ近界には強い剣士がそんなにもいるとはこれだから戦いは止められない……」
確かに師匠は剣の技量ならトップクラスだが近界にはトリガーの能力ではなく間合い・硬度・性質を無視して何でも切り裂く斬撃を使う二刀流の化け物剣士がいた。近界の裏の世界では理屈じゃない化け物がゴロゴロしているのだ。
師匠はオルガノンのトリガーを壊そうと剣を振り上げた途端に鳥の形状の弾丸が飛んできた。それを桜の花弁が遮ると当たった花弁がキューブ化した。
「師匠!」
「あ、小狼くん。どうやら無事に【泥の王】を倒せたみたいだね」
「今のは…」
「どうやら当主様が来たみたいだね」
師匠の指差した方向を見ると周囲を鳥の弾丸が旋回する黒い角がある男、ハイレインがいた。
「まさかヴィザを含めた黒トリガー使いが全滅させられるとはな…」
「申し訳ございません」
「敵はあの亡国の姫君だ。それより下がっておけ」
「承知しました」
背後に黒い門が開いてヴィザが入ると閉じる。どうやら離脱したようだ。
「さて小狼くんにレクチャーするよ。あれはトリオンで出来た物をキューブ化する性質があるよ。そして私達が使う弾丸やシールドと同じで実体がない」
「つまりチェックメイトですね」
ハイレインの背後から二匹の蒼く燃え盛った狼が迫る。それをハイレインは鳥の弾丸を当ててキューブ化させようとするが……
「!?」
俺の造り出す狼は実体の無い物に干渉しない性質を持っているので当たらずすり抜けハイレインの手足に噛み付くと発光して大爆発を引き起こした。
「流石は小狼くんの黒トリガー。干渉不可の追尾爆撃弾なんて完璧な初見殺しだね」
「それより任務は達成しましたし早く撤退しましょう。他の当主が国宝使いを寄越してくるかもしれないですから」
「そうだね。流石にヴィザみたいな使い手が他の各国にもいるし増援で三人同時はキツいかな」
俺は懐から一つの球体を地面に叩きつけて煙幕を張る。師匠は門を開いて俺達は遠征挺直通の門を潜り抜けて脱出した。
「さてさてどうやら無事に救助されたみたいだよ」
遠征挺で寛いでいた師匠の元に通信端末の画面でレジスタンスから成功の通信が送られて来たらしい。
「全く師匠は危ない事ばかり首を突っ込むんですから……」
今回の件だってそうだ。師匠はボランティアで人助けをしているだけで報酬すら受け取っていない。つまり無償で危険な事をやっただけなのだ。
「人助けは私の趣味だからねぇ♪長生きするのに目標が無いと狂っちゃうんだよ」
「長寿とはそういう物なんですか?」
「長寿の大半は肉体だけで心だって摩りきれる事を皆知らない。そして他人の心に触れあわないと時間をかけて削られていく。私が人助けをするのは価値観が狂わない為の予防でしかないんだよ」
「大変なんですね……」
「んもう!他人事みたいに言ってるけど小狼くんだってこれから私と一緒に長生きするんだからね!」
「え?俺はそんなに長生き出来ませんよ」
「チッチッチ、甘いよ!私の一族には永年益寿法の秘術があるから伝授して長生きしてもらうんだよ!」
まさかの長生きさせられるとは思ってなかった。
「そしたらずっと一緒に二人で旅して美味しいものを食べたり、観光地を巡ったりするんだ。一人じゃ寂しくても二人ならもっともっと楽しくなれるよ!」
子供が夢を語るように笑顔で話す師匠。その笑顔が俺は好きだった。
「じゃあ永年益寿法を会得しないといけないですね」
「そして夫婦になって初夜を……」
「変な妄想しない!」
「あんっ♪もっとぉ…」
軽くチョップをしたら悶える師匠。駄目だこの変態、早く何とかしないと俺が喰われる……
前途多難なサクラと小狼の旅は続く。
数年後、小狼はアフトクラトルが遠征をしているタイミングを見計らい訪れていた。かつて幼かった少年は青年となり、右目は蒼い瞳になっていた。アフトクラトル自体に思い入れがあるわけでは無いが二人で一緒に過ごす夢を語る切欠の場所だから彼は訪れたのである。
「どうしたの小狼?」
小狼に声をかけたのはかつての小狼と同じ年頃の幼い少女だった。
「いや、何でもないよ桜」
サクラではなく桜、同じ名前でも彼が込める想いは違う。自分を導いてくれた師匠はもういなくて……
「悲しいの?」
「そうだな。大切な人だったから……」
けれども立ち止まる気は小狼にはない。やるべき事があるからだ。
「桜は先に町へ行っててくれ。俺は少しここで用がある」
「分かった!」
桜を先に行かせて小狼は空を見上げる。
「待っててくれ、師匠。貴方を何時か必ず取り戻す」
小狼は亡き師匠へ向けて誓い、桜の元へ向かった……
【桜】のグランドトリガー使いが小狼です。因みにグランドトリガーは今回出てきたトリガーではなく師匠の形見となった黒トリガーです。サクラが使ってたトリガーは亡国で受け継がれるノーマルトリガーですが性能は黒トリガー並みのオーパーツです。更に使い手も強くて手がつけられないレベルでした。拉致してる大国は彼女によってかなりの被害(救出)が出たので恐れられています。