市街地Aでハウンドとバイパーの雨が飛び交う中でNo.1射手の二宮とNo.2射手の共也が民家を飛び交いながら距離を詰めるべく向かっていた。ハウンドでは誘導曲線を見切られ共也に避けられ、バイパーでは二宮のシールドは破れないからである。お互いが目視圏内に入ったタイミングで
「アステロイド」
「ギムレット」
二宮はアステロイドを、共也はギムレットを詰めとして放ちながら互いにシールドを張る。二宮は前面に大きなシールドで共也は集中させたシールドを張るが共也のシールドは壊されて貫通したアステロイドに撃ち抜かれる。そして二宮のシールドも何とか割って数発向かうがその程度なら余裕とばかりに二宮は身を捻って躱す。そして共也の身体が罅割れベイルアウトしそうになる瞬間
「!?」
二宮の身体を突如左右から現れた弾丸が串刺しにするかの様に各所を撃ち抜く。その一つにトリオン供給器官が破壊されて同じくベイルアウトする。
互いにベイルアウトした事で引き分けになる。
掲示板には5勝4敗1分けで勝者二宮と表示されていた。
「あ~、相変わらず二宮さんに勝ち越せないな」
ベットに落とされた共也は唸る。
『遠距離の撃ち合いの中で仕込んでいたのか』
「上手くいったから良かったといった所ですよ」
通信で届いた二宮さんに答える共也。共也がNo.2射手である理由の一つは弾道を着弾まで消す技術にある。
『粒子分解弾、撃ち合いだと大分不利になるな』
「むしろハウンドであそこまで敵を動かせる方が凄いですよ」
ハウンドは視線誘導と探知誘導の二種類があるが速度が速すぎると誘導が機能しない上に誘導曲線が緩いと見切られる弱点がある。ただハウンドを放つのではなく、数や速度に各弾丸射出のタイミングを計算に入れた上で動きを制限しやすい弾幕を張る必要がある。それをさもシンプルにこなしているからこそ彼は射手の王と呼ばれるのだ。他の隊員がハウンドを使っても誘導曲線から生まれる隙が幾つか生まれてしまい敵を思い通りには動かせないだろう。敵を誘導するだけなら予め設定したバイパーでやった方がよっぽど楽なはずである。
そして粒子分解弾は共也の弾道を着弾まで消す秘技である。トリオンキューブは細かく分解出来る。その特性を生かして目視しにくい粒子レベルまで分解させるのだ。そして粒子分解した弾丸を飛ばしてダメージを与えたい着弾のタイミングで通常の弾丸の大きさに密集させて当てるのだ。ボーダー隊員が弾丸を避けれるのは着弾前の弾道が見えるからだ。それが見えない粒子分解弾は突如自身の周りに出現して打ち抜いて来る魔弾としてランク戦で驚異を振るったのだ。見えて避けれる弾丸と見えないから避けにくい弾丸で撃ち合えば後者がまず勝つのは道理だ。
これにより弾道の見えない弾丸を撃てるわけだが粒子レベルの弾丸数を操作するのは容易では無く現在可能なのは共也のみである。弾バカと言われてる出水や那須のバイパーをリアルタイムで射線を引き続けられる技術以上の難易度なのだ。破壊力のない粒子単位の弾丸ではまともにダメージを与えられないので極端な話密集する前に突っ込めば正面突破されてしまう程に繊細かつ複雑な為に誰もが習得を諦めてしまった程である。
『何故射手トリガーでの個人戦でガントレットを使わない?攻撃手相手には使っているにも関わらず俺に使わない理由は何だ?』
若干怒ってる風に聞こえる。まるで手を抜かれてると思っているのだろう。
「深い理由はないですよ。ただ単純に意地です」
『意地?』
「射手の頂点目指してるのにガントレットは言うなれば邪道です。俺は貴方に正面から勝ちたい」
ガントレットの打撃は反則勝ちした気分になるから使わないのだ。例えば剣道の試合で拳銃持ち出して勝って喜べるかという心境である。やるなら同じ武器で勝ちたい、それが違う技術でも構わないが武器まで変えたら達成感などなく台無しなのだ。
『ふっ……俺に勝ち越してから言うんだな』
納得したのか先程よりも声が柔らかい感じがした。これが実力の伴わない奴ならば別だろうが技術において共也は二宮を上回っていて善戦しているのだ。強がりなどではなく本気で頂点を取りに来ていると分かったからかもしれない。
「絶対勝ち越してみせます!」
『なら全力で頂点を取りに来い』
そう言って通信が切れる。
「(本当に格好良い大人だよな。スーツがコスプレっぽいし、何故か雪だと雪だるま作る天然な人だけど……)」
ジャージ姿が殆どの中にスーツ姿で浮いてる上に趣味でも何でもないのに毎回よく雪だるま作るなぁとランク戦見るたび思った程である。本人が自覚してないだけマシかなと思う共也であった。
「で負け越したと……」
「そうそう、流石は射手の王だよな」
もきゅもきゅとコッペパンを食べる仙に共也は昨日のランク戦であった事を話す。今は昼休みで昼食の時間だ。
「共也は結構二宮さんに挑んでるがポイントは大丈夫なのか?」
「ああ、二宮さんに使って無いメテオラがダントツで高いし遠征部隊で太刀川さんと風間さんがいない今だと攻撃手で勝ち越せない奴もそうそういないし問題無いな」
「村上さんは?」
「レイガスト諸共ぶち抜けるから問題無い。というか殆どランク戦来てないし、影浦先輩と仙以外じゃマジでソロで負ける気がしない」
「暫く攻撃手が地獄を見るな」
近接戦闘バリバリ行ける射手の相手を引いてしまうだろう攻撃手に同情する仙。14000点越えてるメテオラならば心当たり出来そうだが、8000点切った射手系トリガーの名称だけじゃまず判断出来ないだろう。攻撃手にとって射手や銃手はシールドで防ぎながら近づきやすいので基本的にカモである。なのにいざ蓋を開ければ近づけば一発KOをやりかねない射手など罠にかけた悪魔と言える。遠征部隊が帰って来るまでに共也の射手トリガー全種が10000点越えするのが先か、搾り取られて4000点切る攻撃手が出るのが先かは知らずである。
スタイリッシュなのに試合中に雪だるまを態々作る疑問。周りも指摘しないし何の意味がと思ったが天然だからかと取り敢えず納得した作者です。当初は粒子分解弾簡易パッチを共也が射手にばら撒く予定だったけどやったら今後の戦闘で射手相手にした銃手や狙撃手が次々と撃退される構図が生まれるから断念。銃手だと一斉掃射の弾数量から銃手側は無理だし、カメレオンばりの奇襲をバックワーム来てる狙撃手にされたら成すすべなく落とされる可能性が大になるので却下に。
そして弱い奴から点を取ろうとする攻撃手界隈で偶に現れる射手(物理)の共也は一種の凶兆とされている事実。隊務規定違反以外なら色々やらかしちゃってるのが共也なので色々手遅れである。