C級隊員が住民を避難させる中でトリオン兵が進軍している方へ歩く高校生がいた。
『どうやら新型がトリガー使いを捕獲するせいで下手に隊員を分散出来ずに人手が足りないらしい』
「本当に何を考えてるのか?B級隊員はチームが揃うまで出撃禁止だとさ。元A級の二宮隊や影浦隊なら戦力面でも問題ないし俺だって新型程度なら倒せるんだがな」
『お前は出る気が無いだろ。妹と過ごす時間の為に防衛任務を一切やらないんだから。今回も妹が襲われない様に側にいるんだろ?』
「流石にトリオン兵に囲まれて人質になる妹を守りながら戦うよりも囲まれる前に潰した方が楽になる。他の増援が来て切りの良い所で抜けるさ」
市民の安全など気にせず電話の相手と話す高校生は妹を守るべく警戒区域へ向かった。
C級隊員の援護に来た修と木虎は出現したモールモッドとラービットをそれぞれが担当し修がモールモッドを、木虎が右足を切り落とす形になったがラービットを撃退した。だが新たに門が開いて出てきた3体のラービットの内一体に追い詰められた木虎がラービットに身体を鷲掴みされた瞬間、突然ラービットが両断される。
『!?』
その場にいた一同が驚く。
「ったく…余程本部は切羽詰まってるらしいな。この程度の奴しか寄越せないなんて」
崩れ落ちるラービットの背後に立っていたのはB級隊員の黒鋼(くろがね) 白夜(びゃくや)だった。本部はB級以下の隊員はチーム全員が揃うまで戦闘参加禁止の命令が出されており、ソロの白夜は出るつもりは無かったがC級隊員がやられたりトリオン兵が突破したら避難している妹が襲われる可能性があった為に来ていたのだ。勿論、命令無視なのだが白夜は罰則を受けようとも気にしていない。
「ほら、足失って戦力落ちしてるんだから狙われているC級隊員を逃がしながら保護してろ!ここにいる新型は俺が全部片付けとくから」
シッシと腕を振ってさっさと行けという意思表示をする。だがそれに木虎は納得出来なかった。
「ここは私がくい止める!B級なんだから下がって…「今度は1体倒すのに左足を切り落とすつもりか?」…!?」
木虎の言葉に白夜は口を挟む。
「両足失ったら残り2体を今度は両腕落として倒すつもりか知らんが運良く勝てただけで次はやられるだけだ。弱い奴が指図するな」
「っな!?」
驚く木虎に目もくれずラービットの方を向いている白夜。
「勘違いしてる様だがA級はチームとして強いだけで個人で強い奴は少ない。俺はスコーピオンで11456ポイントだがそれを超えてるポイントがあるなら指示に従おう」
「っく…」
白夜は木虎が自分よりポイントが低い事を分かって言っている。強さに興味があるわけでも無いが何時も自分よりポイントの高い奴しか挑んでいない中で木虎の名前を見たことがない。万能手とは複数のトリガーを使うので器用貧乏になりやすく、バランス良くポイントを稼ぐ為にマスタークラスの8000台に行ける奴はいても10000台に行ってる隊員は少ないのだ。正確なポイントは知らなくともスコーピオンを使っておきながら一度も見たことがないだけで上だということはまずないと判断したのだ。そしてプライドの高い木虎がすぐさま言い出さない事が確定させた。
「個人で強い奴はB級だろうがA級だろうが関係ない。ポイントが全てじゃないが論理的な指示じゃ無ければ聞くつもりはない」
拳を降り下ろして来たラービットの懐に潜り込んで背負い投げをして同じく向かってきたもう一体の方に投げ飛ばしながら白夜は言う。
「お前達はC級の援護に来たのが目的であってラービットの相手をするのは手段だろ?だったら任せろ、狙いがC級ならば他にも増援するはずだから守る奴が必要だ。文句や意地があるならC級守りきって証明してみせろ」
「…分かったわ」
木虎はやるべき事を理解し白夜に任せる事にした。口で言うより行動で示すのが彼女にとって最も有効だと理解しているからだ。
「ん、向こうから増援が来たな。どうやら足止めも必要なさそうだ」
やって来たのはボーダー最強部隊である玉狛第一だったからだ。
玉狛第一がやって来た事で戦力的に大分優位に立った。白夜は元々、防衛任務に参加すらする気が無かったのでこのまま任せてしまおうかと思ったが新たに門が開いて二人の人間が出てくる。一人はヒュースという白い角が生えた青年、もう一人は杖を持つ老人だった。どうやらC級の捕獲に来たらしい。
「強力なトリオンの持ち主だという話だ。用心なさいヒュース殿」
「注意します。殺してしまわないように「じゃあ死ね」…!?」
会話の途中で目視される事なく一瞬でヒュースの背後に回った白夜はスコーピオンを振るう。
ガキン!
「中々鋭い攻撃ですな」
「弱い奴から倒すのが戦いだ」
反応出来なかったヒュースが防いだのではなく、ウィザが剣の軌道に杖で割り込んで防いだのだ。暗殺出来なかった白夜は一瞬でレイジ達の元へ戻る。
「勝手に行動するな」
「開始早々武器の性能面で勝ってるからか慢心してるバカの隙を突いただけだ。持久戦は開始1秒のすぐだろうが不眠不休で戦っている3日後だろうが確実にやって来るチャンスで攻めなければ防戦一方に回る事になるから間違ってはいない」
「(明らかに戦いに手慣れている。実体験でもあるのか?)」
注意したレイジだが白夜の経験した者特有の説得力に疑問に思う。確かに持久戦で用心深く慎重になるのは良いが攻めるべきタイミングで逃せば防戦一方に回ってしまうからだ。そしてただのB級なはずの白夜が例えた話は防衛任務で日にちを跨ぐ労働などまずさせないボーダーではまず得られない経験談だ。それこそ軍人や自衛隊ですら滅多に出来ない経験だろう。人はそれほど集中力を切らさずに戦える者など限られるからだ。
「結局仕留められなかったじゃない!」
「爺さんが止めなければ確実に首をはねて敵を減らせていた。今ので得られた物は爺さんが音すら出さない不意打ちすら容易に対応出来る実戦経験豊富な実力者な事ともう一人の奴は隙を見せれば何時でも俺にやられる警戒からより慎重になり、攻撃が消極的になる事だ」
白夜は小南に二つの利点を話す。敵の強さを計りつつ敵の攻撃の停滞をさせる事が出来た事だ。事実ヒュースはウィザが止めなければ退場してたからこそ白夜を警戒している。慎重になる程強力で隙の大きい物は避けるので攻撃の激しさは無くなり、停滞するのだ。つまりより持久戦にしやすくなったということだ。
「連携はそっちの部隊に合わせる。スコーピオンを除けば全トリガー10000超えだから近・中・遠距離の何処でもやれる」
「アンタ、万能手だったの!?しかもレイジさんと同じ全範囲万能手(パーフェクトオールラウンダー)じゃない!」
「暇潰しに全部試しただけだ」
何でも無いように白夜は言うが全範囲万能手はボーダーが設立した今でもレイジ以外にはいないほど希少なのだ。特に万能手は近・中距離は戦えても隠れながら撃つ狙撃手の戦い方は近・中距離の戦い方とがらりと変わるせいで苦戦するからだ。
「射撃トリガーは何を入れている?」
「アステロイドとバイパー、イーグレットがある」
「なら中距離を主体に持久戦をする」
「了解」
白夜は突撃銃を手元に作り出して従う。そしてレイジは残っていたラービット二体を小南に3分で片付ける様に指示を出すが小南は大斧で瞬殺する。
「あれが双月か…共也から聞いてた通り破壊力が凄いな」
「共也の知り合いか?」
「親友だ」
ヒュースが出した黒い破片をエスクードというバリケードで防ぎながら弾丸で牽制している中で話す。そして黒い破片の反射を利用して弾丸をバリケードを避ける様に返してきたので避ける。
「弾丸程度じゃ壊せないか」
飛んできた破片をスコーピオンで切り裂き、斬られた破片が地面に落ちていく。攻撃を防ぐ傘状の盾や散らばった破片を操作して弾丸を跳ね返す精密性から破片を組合わせて攻防を行うタイプなのは確実である。持久戦では一度出した破片を使い続ける以上撃ち合いではトリオンで作った弾丸を飛ばすこっちが先に消耗してしまうのでスコーピオンで壊す事にした。突撃銃を止めて両手からスコーピオンに切り換えて鞭の様にしならせ分散している破片を次々と砕いていく。
「貴様…!?」
「やはりな…」
ヒュースは白夜の狙いが分かり、周囲に展開していた破片を自身の元へ戻してしまう。それにより攻撃は射出させるだけの破片しか来なくなりそれをスコーピオンで砕く。
「破片が奴の操作出来る最少単位だ。つまり壊されると作り直す必要が出てくる」
壊れた破片は動かず操作出来ないと結論する。出したときに無数の破片だった時点で操作できる最少単位が破片台じゃないと駄目なタイプなのだと仮定していた。その理由が細かくし過ぎると分子の繋がりが弱くなり耐久力が下がるからか技術的に無理なのかは知らないが困るのは確実である。
「射撃トリガーじゃなくスコーピオンに変えるぞ。破片を中距離から削っていけば向こうから先に消耗する」
「分かった。お前は破片削りを頼む」
「了解!」
両腕から鞭状のスコーピオンが次々とヒュースの出した破片を砕いていく。勿論、させない為に集めて固めたりすることで防ぐが防戦一方になる。そこへ小南がヒュースへ近付き大斧を降り下ろそうとするがウィザに阻まれる。小南が危険を感じて距離を離した時にヒュースに何かを語りかけると頷いた後にレールガンらしき物を造り出す。白夜は邪魔するべくスコーピオンで切り落とそうとするがウィザが杖で弾いて妨害してくる。問題は小南の攻撃を防ぎながらヒュースのカバーをする技量である。下手するとここにいる奴等の誰よりも戦闘に長けているのではと思う。
チャージし終えたレールガンで俺の胸を貫かれる……が俺の姿が掻き消える。
「残像だ」
ヒュースの懐に潜り込んだのでいち早く欠片から引き剥がすべくスコーピオンを出すのも惜しいと判断してレイジや烏丸の方に蹴飛ばす。ヒュースはぶっ飛びながらも先回りさせた欠片群で烏丸の弧月とレイジのパンチを防ごうとするが薄かったからか弧月が浅く肩を切り裂き、パンチは顔面に受けて白夜が飛ばしたのと別方向の民家にぶっ飛ぶ。しかしスラスターで加速したパンチで頭が砕けなかったのを見る限り、何か威力を減衰させたらしい。そしてレイジが能力の正体を見抜いて磁力だと話した。今の威力を減衰させたのも拳に付いた欠片から反発させる磁力を発生させて削いだらしい。二人をC級から引き離す為にレイジは烏丸と修、木虎に本部へ連れていく様に指示を出し、小南・レイジ・白夜は足止めする事になった。
戦いは拮抗していたがウィザが目の前でトリオン兵に町を襲わせる為に向かわせた為に小南が向かい離脱。
小南がトリオン兵を止める為に離れた事でレイジと白夜は罠を仕掛けて持久戦に持ち込もうとするがウィザが黒トリガー【
ベイルアウトする前に短刀にしたレイガストでウィザの足に投擲して足を削りベイルアウトした。レイジがウィザのオルガノンでやられてしまい、白夜は二人と対峙する。
「そっちの小僧はともかく爺さん相手で一対ニは流石に武が悪いな。大分時間は稼げたし、一旦退くか……」
身体が透明になっていく、そしてトリオン反応すら消失して白夜は戦線離脱した。
白夜が使ったのはカメレオンでもバックワームでもなく、彼のサイドエフェクトによるものです。発動中にトリガー使えない制約も無い完璧なステルスが可能ですがウィザが広範囲瞬間即死斬撃を使った事でステルスだろうが関係なくやられると判断したので逃げに徹しました。危険が半分と妹の避難する時間は充分稼いだので一人で足止めする義理が無いからです。
原作との相違点
・木虎が退場前に白夜が救出したのでC級の保護に木虎が加わる。
・白夜が千佳砲で倒すはずだったラービットを倒しちゃったのでアフトクラトルの千佳が『金の雛鳥』だという事実を知るのが遅れる。本編には書いて無いですが白夜が離れた後に出たラービットを千佳砲と千佳inアステロイドで倒した事で初めて『金の雛鳥』と認識されました。