「共也!勝負しなさい!」
「断る」
「なっ!?何でよ!」
抗議する小南。今日は玉狛支部に来ていた。
「だって負けないし……緊張感無しだとまるで訓練にならん」
「今日こそ勝ってみせるわ!」
「ほう、なら俺の四種混合成弾を受ける覚悟があるんだな」
「な、何よそれ……」
「アステロイド、バイパー、ハウンド、メテオラを四つ組み合わせた合成弾の集大成だ。今度射手と銃手に伝授する予定だ」
「えっ、そうなの鳥丸!?」
「確か出水先輩も話してましたね」
キランと星を作る烏丸。上手く乗ってくれたな。
「とりあえず射手の王の二宮さんに教えたからソロ総合一位の太刀川さんが遠征から帰ってきたら引きずり下ろされるな。もはやレーザー砲だし、両防御なんてしても蒸発するだけだからな」
「そんなの反則じゃない!」
嘆く小南。そんなのを使われれば勝ち目がないと思ってるのだろう。
「まあ嘘だけど」
「……!?」
「合成弾二つしか組み合わせられないのにどうやって四つ混ぜるんだよ」
「なっ、騙したなぁ!?」
ガシガシと噛みつきながら叩いてくる小南。痛みには慣れてるので虚勢を貼って何ともないふりをする。
「なぁ小南」
「何よ……」
「ガムは飲み込んでも爆発しないぞ」
「ウガー!」
病院通った時に泣きながら向かってたのを見かけたので指摘したら顔を真っ赤にして力を込めてきた。出会いはある意味最悪だった。
玉狛にやって来た初日。不機嫌だったのか知らないが
「射手!?ウチの支部に弱い奴なんて入らないわ!」
「ほう、ならやろうぜ」
仙が泣いた件があった直後で気が荒れていたのかもしれないと今では反省している。真面目に戦いじゃなくて蹂躙だったからだ。
二本の手斧【双月】で突っ込んで来る小南。
「アステロイド、バイパー」
右手から出した16分割のアステロイドと左手から出した16分割のバイパーで牽制する。
「無駄無駄ァ!」
手斧で弾きながら向かってくる。流石に弾丸を弾きながら進める辺り手慣れているらしい。
左人差し指を虚空で左にスライドさせる
「!?」
足が交差するタイミングで足元の左から突然現れた16個のバイパーが足を貫通する。バイパーは予め32分割のうち半分を粒子分解弾として使い、撃つタイミングを図ったのだ。
「ギムレット」
今度は火力重視の八つのアステロイドを合成して四つギムレットを作って体勢の崩れた小南に射出し風穴を開ける。恐らく突然現れたバイパーに動揺して反応が遅れたのだろう。こうして一戦目は勝った。
ニ戦目は先程の見えない弾丸を警戒しているらしい。
「メテオラ」
飛んできたメテオラをシールドで防ぐ。下手に避けて地面に炸裂すると攻撃範囲が広くなるから被害を受けやすいので防ぐ。
爆風で射線を切った上で突っ込んで来る足音が聞こえる。どうやら試すつもりらしいな。
「ハウンド」
16分割した誘導弾を放つ。こちらはバイパーと違って目視しなくても当てられるので有効だが案の定弾かれる音がする。
「バイパー」
煙で見えない間に粒子分解させて自身の左前方に仕掛けておく。
煙が晴れて右手斧を降り下ろして来たのを左腕の籠手で受け止める。
「硬いわね!」
「アステロイド」
右手から8分割させたアステロイドを斜め左から射出する。
「そんなの効かないわよ」
それを容易く避けて左手斧も振るうが籠手で防ぎ
「コブラ」
「!?」
虚空に隠してたバイパーが8つ現れ、今放ったアステロイドをぶつけて合成させ弾丸をそのまま往復させて背中から小南を撃ち抜く。アステロイドの軌道をバイパーで上書きするのがコブラだ。交差合成弾と名付けた弾丸を射出後に合成させるテクニックだ。他人の弾丸は合成不可だが同じトリオンである自身のならば可能なパターンを見つけたのだ。勿論簡単ではなく弾丸の大きさが一致しないといけないのと射線を引けるバイパーじゃないと交差させるのが難しいという欠点がある。大きさがずれると相殺してしまうから苦労したのだ。
3戦目はいきなり話し掛けてきた。
「中々やるじゃない!私も本気でやるわ」
そう言って手斧の柄を合わせた。
「接続器ON」
すると連結して一つの大きな斧となった。横凪ぎの斧を避けてビルに当たって切り裂く。問題は斬る時に金属が裂ける音がしない事だ。つまり切れ味がバターを切り裂く様に格段に上昇してるのだろう。
「ハァァ!」
大斧を振り回すがそれを俺は避ける。大振りのせいで挙動が丸わかりだ。それは向こうも分かってるのだろう、持ち手をより刃先の近くに持つ事で小回りを利く様にしてるがそれでは間合いが狭くなるから後方へ避けやすくなるだけだ。
「ちょこまかと!」
「まだ手斧の方が歯応えがあったな」
大斧を避けながら話す。当たれば勝てるの時点で詰んでいる。この程度なら小学4年の頃にゲリラ戦で銃弾を掻い潜る方がまだ大変だった。
宙返りで上空へ跳び、
「トマホーク、サラマンダー」
両手からメテオラの弾丸を出しながら回転し、右と左でバイパーとハウンドをメテオラとぶつけて合成弾を作り小南へぶつける。頭が下になったタイミングで爆撃が降り注いで着地の頃にはベイルアウトしていた。今のはメインのみで合成弾を作れないかという実験の副産物で生み出したテクニックだ。鈍足の弾丸を用意した後に切り替えた速度重視の弾丸を混ぜて飛ばすのだ。まあ宙返りは完全にお遊びだけどな。
そこから先、結果は変わらず俺が勝ち続けた。指先の動きで粒子分解弾の方向を見破ったと語ったのでわざと逆方向に動かすフェイント入れたり、開幕から弾幕作ってその中に粒子分解弾をごく少数混ぜる虚実交える何時ものやり方で封殺したり、わざとトリガー使わず避け続けて動きが鈍った所を仕留めたりして10勝した。訓練室から出て合流したら小南がいじけて体育座りしてたのを宥める事になるはめになったのは良い思い出だ。
最初の頃を思い出して今日の模擬戦を終えて俺は紅茶を飲んでいる。体育座りして落ち込んでる小南を見ながら……
「懲りずにやるよな。凄いと関心するよ」
「小南先輩は負けず嫌いですからね。毎回落ち込むのはもう慣れました」
宇佐美さんが慰めてる中、俺と烏丸は談笑していた。勝った俺が何か言っても勝者の嫌みにしかならないので最初の落ち込み以降は放置である。
「そういえば合成弾の話は本当に嘘だったんですか?」
「四種は真面目にバイパーとハウンドが被ってるから無駄だ。けどアステロイド・メテオラにバイパーかハウンドの三種合成弾は一応完成してる。まだ試作品だけどな」
「相変わらずとんでもない事を平然とやりますね」
「まあな」
結局トリオン消費が膨大だからお蔵入り間違いなしなのだが選択肢が増えるのは良いことだろうと思ってる。
「烏丸も模擬戦するか?」
「いえ、ガイストのスピードシフトでも反応する鳴神先輩だと勝てる気がしないのでいいです」
韋駄天で似たのがあるから案外目が慣れてるせいだなと思う、普通に拳叩き込めたしな……
「じゃあそろそろ帰るわ!お疲れさま」
「あ、共也君じゃあね」
「お疲れさまです」
小南の慰めに回ってた宇佐美と烏丸に帰りの挨拶をする。
「共也!次こそギャフンと言わせてやるわ!」
「ギャフン」
「そんな棒読みで言うなぁ!」
「楽しみにしてる。じゃあな」
「ええ、じゃあね」
からかうのが面白い奴だなと思い玉狛支部を後にした。