ハイスクールD×D ~竜の聖女は決闘者~   作:アバター教信者

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第1話

 夢を見た。

 それは始まりの夢。

 本来存在しない筈の命が、確固たる1つの生命としての雄叫びを上げた瞬間の夢。

 

 

 そいつは、そこら辺を見れば探すまでもなく居る、何処にでも居るような男だった。平日は会社で働き、休日には趣味に没頭する一般的な社会人というヤツで、所謂オタクというヤツでもあった。

 会社が終われば書店で新刊チェックに赴いたり、家に帰ればビール片手にゲームのコントローラーを握ったり、時間があればカードショップに対戦相手を求めたりと、それなりに満足できるオタクらしい生活を送っていた。

 

 

 そんな男に転機が訪れる。

 良くも悪くもテンプレートな流れというヤツだ。

 

 

 ある日、男は出掛けた先でトラックに轢かれた。痛みを意識するまでもなく即死だった。

 そしてネット小説等を読んだ事があるならば誰でも分かるであろう、『神様転生』とやらをする事になった。

 常日頃から『そういうもの』に憧れていた男は子供の様にはしゃぎ、望みを言った。

 

 その望みもまたテンプレ中のテンプレなワケで……。

 

「ハイスクールD×Dの世界に行きたい」

「遊戯王がある世界がいい」

「能力はカードの力を実際に使える能力で」

「あ、赤ん坊からやり直すのは面倒だし、義務教育も受け直したくないから、15歳くらいの年齢から始めたい」

 

 それ以外にも遠慮という言葉を忘れたかのように、次々と要望を言っていく男。

 一度死んだ事で何処かのタガが外れたのだろうか、生前と比べて精神年齢がかなり下がっているように思える。

 しかしどう考えても欲望まるだしな特典の催促に律儀に応えた神様は、転生というより憑依というかたちになるので『特典』を先に送っておく事と、転生後は何千、何万、何億年経とうと絶対に男に干渉しない事を伝え、転生させた。……男は既に転生先で何をするかで頭がいっぱいで聞いてなかったのだが。

 

 そんなこんなで少々……いや、かなり黒い欲望を抱えて憑依先に行こうとしたところで問題が起こる。

 

 神に創造されたとはいえ、約15年間を1人の人間として生きてきた記憶があり、それなりに強い人格があったのだ。

 ある日寝ていると突然、自分を乗っ取ろうと見知らぬ男が心の中に入ってくるのだ。恐怖を抱かない方がおかしいし、抵抗するに決まっている。

 わけも分からず無我夢中で男を拒絶していただけだが、神様製の肉体と精神が精神だけの存在に負ける筈もなく、男の精神は困惑を抱いたまま呆気なく消え去った。

 

 

 

 だが夢はここで終わらない。

 

 

 

 消え去ったのは『男の精神』だけであり、先に送られていた『特典』とやらは残っていたのだ。

 無理矢理憑依しようと迫ってきた男の記憶が少しだけ流れ込んできた事で、男の死から憑依失敗までの大まかな流れと、貰った『特典』がある等という一部の事情は理解出来たが、悪夢とも言える体験をして飛び起きてみると『携帯端末のようなもの』と『赤いバイク』、『カードの束』、そして『サイドポーチ』が部屋のド真ん中に鎮座しているのは、悪夢の直後という事もあって不気味さを感じる。

 とりあえずこれらの処理は片付けてから考えようと『携帯端末のようなもの』を手に取った瞬間、この場にある『特典』について理解出来た。

 

 直後、気絶した。

 

 目が覚める前に男の精神との接触と抵抗。その精神的ショックが抜けきらないまま頭の中に結構な量の情報を叩き込まれれば、気絶するのも無理が無いだろう。

 

 

 

 その意識が薄れていく中で見えたのは、目覚めの咆哮を上げ、燦然と輝くドラゴン達の姿だった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 夢を、見ていた気がする。それほど時が経ったわけではないが、随分と昔のように感じる過去の夢だったと思う。

 

「………さん、…きて……さい」

 

 夢の所為だろうか……。変な感慨に耽っている中、誰かが俺の名前を呼びながら身体を揺すっている。

 

「アキラさん、もうお昼ですから起きてくださーい」

「ん……お昼……」

 

 ゆっくりと覚醒していく意識に合わせてを瞼を開くと、見慣れた天井と綺麗な金色が目に映った。

 寝惚ける頭を回転させる為、今の状況を把握する。

 ここは俺達が長期で借りている酒場兼宿屋の2階の一室で、俺を揺すっているのは……っと。

 

「……おはよう、シア」

「はい、おはようございます!」

 

 起床の挨拶をして名前を呼ぶ。それだけで俺を呼んでいたシアこと『アーシア・アルジェント』は、慈愛に満ち溢れた笑みをその顔いっぱいに浮かべ、挨拶を返してくれた。

 

「あっ、ゆっくりしている場合じゃありません! 時間です、時間! 今日も何件か申し込まれているんですから、早く準備しないと間に合いませんよ!」

「?」

 

 妙にテンションの高いシアに突き動かされるまま、外に出る準備を済ませるが……今日の昼に予定なんかあったっけ?

 

「もうっ、お忘れになられたんですか? 昨日の夜、次の日のお昼にやりたいって申し込まれてたじゃありませんか」

「昨日、お昼…………ああ」

 

 仕方ないなぁ、とでも言いたげな表情で昨日の出来事を教えてくれた辺りで漸く思い出した。

 

「うん、入ってたな。あんまり強そうに見えなかったから、頭からすっぽ抜けてたよ。思い出させてくれてありがとう」

「えへへ……ってそうじゃありません! もう相手の方はお待ちになられてますよ!」

 

 強そうに見えないのは否定しないんだな……と思いながら窓から外を見れば、シアの言った相手であろう男が腕を組んで宿の前に立っていた。

 うーん、見れば見る程微妙な男だ。素材もファッションも悪くないが、いかんせん纏っている下っ端臭溢れる雰囲気のせいで全てを台無しにしている。

 

「マスター、眠気覚ましを頼む」

「あいよ」

 

 1階の酒場に下りて、宿屋のオーナーを兼ねている酒場のマスターに硬貨を投げ渡し、差し出されたジョッキの搾りたてオレンジジュースを一気に飲み干す。

 たかがオレンジジュースと侮るなかれ。注文したその場で新鮮なオレンジを搾った、文字通り果汁100%のジュースなのだ。

 これほど寝起きに効く飲み物は無いだろうと断言できる。

 

「っくはぁ~! ……よしっ、シア」

「いつでもいけます!」

 

 頬を叩いて気合を入れ、ジャケットを羽織る。シアも気合十分で準備も万端みたいだ。

 

「おうおう、今日はここの酒代賭けてんだ! 負けてくれんじゃねぇぞ!」

「まかせろ、しっかり儲けさせてやるよ」

 

 酒場に居る真昼間から酒盛りをしていた数人の男共のからかいを背に扉を潜れば、先程の男がバイクに乗って待ち構えていた。

 

「遅かったじゃねぇか、待ちくたびれたぜ。さあ、早くやろうぜぇ!?」

 

 俺の顔を見た瞬間、待ちきれないと言わんばかりの様子でエンジンを吹かして煽ってくる。

 

「アキラさんのは先に出しておきました!」

「お、ありがとう」

 

 その言葉に感謝しながらシアが準備してくれていた、その男の隣に停めてあるもう1台の赤いバイク――『D・ホイール』――に跨り、タンデムシートの後ろにシアが跨るのを確認してエンジンを掛ける。

 

「おっ、デュ↑エルだ!」

「マジかよ、誰がデュエルするんだ!?」

「あっ、あの2人乗りのD・ホイールってアキラのじゃね?」

 

 並んだ2台のD・ホイールに反応した1人の通行人を皮切りに、俺達の進路を邪魔しないように観戦客が集まっていく。

 それを見た対戦相手の男は満足気に頷き、闘志に燃えた視線をぶつけてきた。

 

「来い」

「っしゃあ! この俺がテメェに黒星を付けてやるぜぇ!?」

 

 この界隈でそれなりに挙げてきた戦績のおかげか、日に数件のデュエルを申し込まれるが、ここまで威勢の良い相手は久しぶりだ。

 

 俺までフィールが高まってくるじゃねぇか……!

 

「「フィールド魔法≪スピード・ワールド-ネオ≫、発動!」」デュエルモードオン、オートパイロット、スタンバイ

 

 デュエルディスクと一体になったバイクである『D・ホイール』に専用魔法カードをセットする事で、デュエルモードに切り替わりデュエルフィールドが展開される。

 

アキラ LP4000

 VS

男   LP4000

 

 

 

 この世界で俺以外にこの事を知る奴は居ないだろうが、この世界は『ハイスクールD×D』と『遊戯王』の世界観が混ざり合った不思議な世界で、基本的に人間はデュエルの存在を知らない。というか『遊戯王』というカードゲームが存在しないのだ。

 逆にD×D世界の主人公達が所属している人外側――悪魔や堕天使、天使等といった存在――の中で『デュエルモンスターズ』というものは存在している。

 『デュエルモンスターズ』についてだが、ルールやカードの殆どが『遊戯王』と変わらないから詳しい説明は省く。

 そして『デュエルモンスターズ』は、人間の知らない裏の世界――主に冥界や天界――では非常に重要なものとして扱われている。要はここも『遊戯王』世界の扱いと同じだ。

 先の酒場での会話のような簡単な賭けから、最悪の場合は生死までもがデュエル1つで決まるのだ。

 

 それならば大本の世界の主なゲームである『レーティングゲーム』はどうなのかと聞かれれば、それも存在していると答えられる。

 そもそも俺は『レーティングゲーム』が何であるか等を知らないから詳しくは分からないが、この世界はどちらのゲームも存在していて程よくバランスが保てているらしい。

 

 決闘(デュエル)に関わる俺からすれば、デュエルが出来ればどっちでもいいってのが正直なところだ。

 

 世界観はここまでにしておいて、次にデュエルディスクとD・ホイールの動力についてだが、主に大気の魔力やら聖なる力やらを取り込みエネルギーに変換する事で、半永久的に動作し続ける事が出来るのだそうだ。

 

 ここら辺の知識は、俺に憑依しようとした男――面倒なので以降は憑依男と略す――から流れてきた記憶と、『特典』に触れた瞬間頭に叩き込まれた情報から知り得た物である。

 

 

 

 説明はここまでにして目の前のデュエルに集中する為、空中に展開された魔力製ソリッドビジョンのモニターに意識を向ける。

 モニターの数字が減っていき、スタートのタイミングが迫る。

 

 3

 

「ハッハー! 叩き潰してやるぜェー!」

 

 2

 

「行くぞ、シア!」

「はい、アキラさん!」

 

 1

 

「「「ライディング・デュエル! アクセラレーション!」」」

 

 カウント0と同時にスロットルを全開にして、文字通り弾かれたように発進するD・ホイールと共に一気に道を駆け抜ける。

 そして1分もしない内に、ライディングデュエル専用コースのハイウェイに上がる坂が見えてきた。

 

「先にコースに入った者がこのデュエルの先攻となる! 分かっているな!?」

「もちろんだ」

 

 変な所まで『遊戯王』の世界の影響が出ているのか、この世界の奴らは何かにつけて説明したがるんだよな……。いや、確かに説明は大事だけどさ。

 

「先攻はもらったァ!」

 

 世界の不思議に意識を向けていたら先攻を取られてしまった。

 

「俺のターン! 先攻はドロー出来ない! 俺は≪ゴゴゴゴーレム≫を召喚! カードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

 巨大な腕のゴーレムが現れ男のD・ホイールに追従し、同時に裏側表示のカードが地面に吸い込まれるようにして消えた。

 

アキラ LP4000

手札5枚

フィールド

 なし

 

男 LP4000

手札3

フィールド

 ≪ゴゴゴゴーレム≫

 レベル4 ATK1800

 リバース1

 

 む、攻撃力1800か。リバースカードをセットしている事からある程度の警戒はしているらしいが……先攻1ターン目にしてはお粗末じゃないか?

 

「クックック……1ターン目から攻撃力1800を目にして、怖気づいたか? あぁん? 噂のアキラも大したことねぇなぁオイ!」

 

 ハァ、レベル4モンスターを攻撃表示で素出ししてる時点で実力が露見しているクセに、好き勝手言いやがってさ。俺の噂を聞いた事あるんなら、この程度の状況なんてどうにでもできる事くらい分かりきってるだろうにな。

 

 前を走りながら挑発してくる男に内心毒づきながら、ターン移行宣言とドローをする。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 これで手札は6枚。なかなか悪くない手札だが、まずは様子を見ようか。

 

「俺は≪スピード・ウォリアー≫を攻撃表示で通常召喚」

 

≪スピード・ウォリアー≫

レベル2 ATK900

 

 名前にスピードと付くだけあって如何にも速そうな細身のスケーターが現れ、俺のD・ホイールと並走し始める。

 

「ハッ、レベル2、しかも攻撃力たった900の雑魚モンスターじゃねぇか! そんなんで俺の≪ゴゴゴゴーレム≫が倒せるかっつーの!」

「そんな言い方、失礼だと思います! アキラさんのモンスターさんたちに、雑魚なんて言わないでください!」

「雑魚を雑魚呼ばわりして何が悪い! いくら並べたところで雑魚は雑魚なんだよ!」

 

 見た目とステータスで雑魚と決めつけ、アホみたい笑う男に対してシアが不機嫌そうに言葉を返すが、それすら意に介さず調子に乗り続ける。

 少し、お灸を据えてやる必要があるみたいだな……!

 

「誰がこれで終わりと言った。まだ俺のメインフェイズは終了していない! 俺は手札のモンスター、≪レベル・スティーラー≫を墓地に送り、≪クイック・シンクロン≫を特殊召喚する!」

 

≪クイック・シンクロン≫

レベル5 ATK700

 

 現れたのはおもちゃのガンマンだ。≪スピード・ウォリアー≫より低い攻撃力に男は高笑いすらし始めるが、無視してターンを続ける。

 

「続いて墓地にあるスティーラーの効果発動! このカードは自分フィールド上にいるレベル5以上のモンスターのレベルを1つ下げ、墓地から特殊召喚できる! ≪クイック・シンクロン≫のレベルを下げ、特殊召喚!」

 

≪クイック・シンクロン≫

レベル5→4

 

≪レベル・スティーラー≫

レベル1 ATK600

 

 背中に1つ星が描かれたてんとう虫が現れ、≪クイック・シンクロン≫の帽子の上にとまる。それを見たシアの機嫌が少し良くなるのを感じて、俺の溜飲も少し下がった。

 

「さて、この場にいる≪クイック・シンクロン≫はチューナーモンスターだ。この意味、分かるな?」

「チューナーに低レベルモンスター……シンクロか!」

 

 御明察……って程の謎掛けなワケないし、召喚法を知らない奴じゃなければ分かるよな。その予想に応えてやろうじゃないか。

 

「レベル1の≪レベル・スティーラー≫に、レベル4の≪クイック・シンクロン≫をチューニング!」

 

 ≪クイック・シンクロン≫が4つの輪に変わり、その中心を潜った≪レベル・スティーラー≫が1つの星に変わる。そして更に眩い光の柱に包まれる。

 

「集いし星が、新たな力を呼び起こす! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 出でよ! ≪ジャンク・ウォリアー≫!」

 

≪ジャンク・ウォリアー≫

レベル5 ATK2300

 

 口上と共に光の柱から、青いボディに白いマフラーを着けたくず鉄の戦士が現れる。

 

「攻撃力2300……!」

 

 力強く拳を突き出す姿には、歴戦の戦士らしい頼もしさを感じる。

 

「まだだ! ≪ジャンク・ウォリアー≫の効果発動! このカードのシンクロ召喚に成功した時、自分フィールド上に存在するレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分アップする! 『パワー・オブ・フェローズ』!」

 

 俺のフィールドにはレベル2の≪スピード・ウォリアー≫がいる為、その攻撃力である900が≪ジャンク・ウォリアー≫の攻撃力に加算される。

 

≪ジャンク・ウォリアー≫

ATK2300→3200

 

「さ、3200……だと……!」

 

 流石に3000超えは予想外だったのか、男の口からは驚愕の声が漏れている。

 

「おいおい、これで終わりだと思うなよ? ≪スピード・ウォリアー≫!」

 

≪スピード・ウォリアー≫

ATK900→1800

 

「んなっ!? こ、攻撃力が倍に!?」

「このモンスターは召喚に成功したターンのバトルステップに、攻撃力を倍にできる効果を持つ。雑魚と侮ったモンスターにやられるといい。バトルだ! ≪ジャンク・ウォリアー≫で≪ゴゴゴゴーレム≫を攻撃だ! 『スクラップ・フィスト』!」

 

 俺の声に応えるように≪ジャンク・ウォリアー≫は背中のブースターを噴かし、回転を加えた拳で見事に≪ゴゴゴゴーレム≫を打ち砕いた。

 

「ぐぅぅぅぅっ!」

 

男 LP4000→2600

 

「追撃だ、≪スピード・ウォリアー≫! 『ソニック・エッジ』!」

「ぬぁぁっ!」

 

男 LP2600→800

 

 男は攻撃の余波でバランスを崩し掛けるも、運転に集中する事でなんとか体勢を立て直したようだ。

 

「バトルフェイズ終了時、≪スピード・ウォリアー≫の攻撃力は元に戻る。俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ」

 

≪スピード・ウォリアー≫

ATK1800→900

 

アキラ LP4000

手札2枚

フィールド

 ≪ジャンク・ウォリアー≫

 レベル5 ATK3200

 ≪スピード・ウォリアー≫

 レベル2 ATK900

 リバース1

 

男 LP800

手札3枚

フィールド

 リバース1

 

 なかなか良い滑り出しといったところだが油断は禁物だ。慢心は負けフラグとおばあちゃんの……じゃなかった、憑依男の知恵袋にあったしな。

 

「よくもやってくれたな……! 俺のターン、ドロー! 俺は手札から≪ゴブリンドバーグ≫を召喚!」

 

≪ゴブリンドバーグ≫

レベル4 ATK1400

 

 お、このモンスターは確か……。

 

「このカードの召喚成功時、効果発動ゥ! 手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚する! 俺は2体目の≪ゴゴゴゴーレム≫を特殊召喚!」

 

≪ゴゴゴゴーレム≫

レベル4 ATK1800

 

 赤いプロペラ機に乗ったゴブリンが、先程破壊したのとは別の≪ゴゴゴゴーレム≫を引き連れて現れた。

 

「≪ゴブリンドバーグ≫の効果を発動した場合、このカードは守備表示となる」

 

≪ゴブリンドバーグ≫

ATK1400→DEF 0

 

「レベル4のモンスターが2体……! 来ますよアキラさん!」

「ごっふっ…………おう」

 

 警戒を高めるのはいいが、止めてくれシア。そのセリフは俺の腹筋に効く……。

 

「俺はレベル4の≪ゴブリンドバーグ≫と≪ゴゴゴゴーレム≫の2体でオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

 銀河の様な渦へ飛び込む2体のモンスター。直後、光の爆発が起こり、その中から純白のモンスターが現れる。

 

「白く輝く(カッテ)ェ拳で、邪魔な奴らをブッ飛ばせ! エクシーズ召喚! ≪ジェムナイト・パール≫!」

 

≪ジェムナイト・パール≫

ランク4 ATK2600

 

 おう、これはまたなかなかのモンスターが出て来たな。だがコイツじゃ俺の≪ジャンク・ウォリアー≫は倒せないが……強気の態度を崩さないところを見る限り、何か手があるんだろう。

 

「さらに、リバースカードオープン! ≪リビングデッドの呼び声≫! コイツの効果で墓地に存在する≪ゴゴゴゴーレム≫を復活! そしてそしてぇ! 俺のフィールドの『ゴゴゴ』と名のついたモンスター1体をリリースッ! 金に輝く自慢の拳で、群がる敵を薙ぎ払え! ≪ゴゴゴゴーレム-GF(ゴールデンフォーム)≫を特殊召喚!!」

 

≪ゴゴゴゴーレム-GF≫

レベル4 ATK ?

 

 全身が金色に輝く巨大なゴーレムが真珠のゴーレムと並び立つ。おそらくこの2体が男のエースモンスターなんだろうが、どうにも成金趣味にしか見えないんだよなぁ……。

 

「このモンスターの攻撃力は、リリースしたモンスターの元々の攻撃力の倍となるッ! つまり……」

「こ、攻撃力……3600……!? アキラさんの≪ジャンク・ウォリアー≫さんよりも……!」

「そのっ通りィ! このモンスターとの戦闘で発生する戦闘ダメージは半分になるが、大した問題じゃねぇなぁ!」

 

≪ゴゴゴゴーレム-GF≫

ATK ?→3600

 

 シアの気持ちも確かに分かるが、まだ大丈夫だ。俺のリバースカードは≪聖なるバリア-ミラーフォース-≫……ハッ! 憑依男の知恵袋が反応している!?

 

「ヒャーハハハハハ!! 速攻魔法発動! ≪サイクロン≫! テメーのリバースを破壊だァ!」

「あぁっ、ミラーフォースが!」

 

 し、しまった……!

 

「バトル! ≪ゴゴゴゴーレム-GF≫で≪ジャンク・ウォリアー≫に攻撃! 『鉄☆拳☆粉☆砕』!」

 

 ≪ゴゴゴゴーレム-GF≫のひときわ巨大な右腕が、≪ジャンク・ウォリアー≫をいとも容易く粉砕してしまった。

 

「チィッ!」

「きゃぁっ!?」

 

アキラ LP4000→3800

 

「≪ジェムナイト・パール≫ッ! アイツの雑魚モンスターをブッ飛ばせ! 『剛☆腕☆粉☆砕』!」

「くっ、≪スピード・ウォリアー≫!」

 

アキラ LP3800→2100

 

 2体のモンスターが破壊された余波が押し寄せるが、上手くバランスをとって何とか切り抜ける。

 

「アァ、スカっとするぜ! ターンエンドだ!」

 

アキラ LP2100

手札2枚

フィールド

 なし

 

男 LP800

手札0枚

フィールド

 ≪ゴゴゴゴーレム-GF≫

 レベル4 ATK3600

 ≪ジェムナイト・パール≫

 ランク4 ATK2600

 ≪リビングデッドの呼び声≫

 対象なし

 

「あ、アキラさん……」

「大丈夫、完全にロックされたワケじゃ無いんだ。まだ逆転の手は残されている!」

 

 俺のフィールドはガラ空きなのに対して、相手フィールドには上級、最上級クラスの攻撃力を持つモンスターが2体もいるから、心配になるのも分かる。

 だが俺がこの程度で負けるワケがない。そう強い意志を籠めてシアを見つめると、ちゃんと伝わったみたいでしっかりと頷き返してくれた。

 

「オイオイ、これ以上何が出来るってんだよ? テメーの手札はドローしてもたった3枚! こうなったら降参(サレンダー)した方が早いんじゃねぇの!? クックック、ハーッハッハッハ!!」

 

 もう勝った気で煽ってくる男を無視して、デッキトップに手を掛ける。

 

「何を言っている。このピンチすらもエンターティイ↑メントの一環だと言うに……。シア、奴に目にモノ見せてやるぞ! 俺と!」

「私の!」

 

 デュエリストのドローは全て必然! いくぞ!!

 

「「ターンッ!!」」

 

 カードを確認し、手札に加え――

 

「俺は手札から≪ジャンク・シンクロン≫を通常召喚する!」

 

≪ジャンク・シンクロン≫

レベル3 ATK1300

 

 オレンジ色のボディと白いマフラーを着けた、もう1体のくず鉄の戦士が満を持して飛び出してくる。

 

「≪ジャンク・シンクロン≫の効果発動! このカードの召喚に成功した時、自分の墓地のレベル2以下のモンスターを守備表示で特殊召喚する!」

「残念だったなぁ! ≪ゴゴゴゴーレム-GF≫の効果発動ゥ! 1ターンに1度、相手フィールド上で効果モンスターの効果が発動した時、このカードの攻撃力を1500下げて、その効果を無効にする!」

 

≪ゴゴゴゴーレム-GF≫

ATK3600→2100

 

 ゴーレムの胸部にある赤いコアらしき部位から放たれた光が≪ジャンク・シンクロン≫に降り注ぎ、モンスターを呼び出そうとしていた動きを止めてしまう。

 

「さあ、諦めてサレンダーしたらどうだ? 今ならテメーのそのキレイな顔をフッ飛ばさずに済むぜ?」

 

 いい加減五月蝿く感じて来たな……。

 

「お喋りが過ぎる!」

「あぁ?」

「手札の数、それは可能性の数でもある!」

 

 この世界ではない別の世界で、デュエルの王と呼ばれた男の言葉だったか。

 

「そうだ! 全ての手段が尽きるまで、俺は諦めない!! 俺は、魔法カード≪調律≫を発動!」

 

 このターンのドローで引いたカード、ここが使い時だ!

 

「デッキから『シンクロン』チューナー1体を手札に加え、自分のデッキの一番上のカードを墓地に送る! 俺は≪クイック・シンクロン≫を手札に加える!」

 

 墓地に送られたカードは……ッ!

 

「手札の≪ドッペル・ウォリアー≫を墓地に送り、≪クイック・シンクロン≫を特殊召喚!」

 

≪クイック・シンクロン≫

レベル5 ATK700

 

「また≪レベル・スティーラー≫とやらで≪ジャンク・ウォリアー≫でも呼ぶつもりかぁ? 無駄無駄! フィールドにはレベル3の≪ジャンク・シンクロン≫だけ、そもそも俺の≪ジェムナイト・パール≫にすら敵わねぇじゃねぇか! 諦めねぇなら次のターン、≪ジャンク・シンクロン≫諸共2体の攻撃で決めてやるぜ!」

「そう思っていられるのも今の内だけだ」

「何だと……?」

 

 逆転の一手、今ここで切らせてもらう!

 

「墓地にいる≪ボルト・ヘッジホッグ≫の効果発動! 自分フィールドにチューナーモンスターが存在する時、このカードを特殊召喚できる! 来い、≪ボルト・ヘッジホッグ≫!」

 

≪ボルト・ヘッジホッグ≫

レベル2 ATK800

 

 現れたのは背中に大量のボルトをくっ付けた小さなネズミだが、今この場において何よりも頼もしい存在だ。

 

「いつの間にそんなモンスターを……ハッ! ≪調律≫で送られていたのか!?」

「そうだ! そして、レベル2の≪ボルト・ヘッジホッグ≫にレベル5の≪クイック・シンクロン≫をチューニング!」

「何っ、レベル7だと……!?」

 

 驚いている男を尻目に、5つの輪になった≪クイック・シンクロン≫と2つの星になった≪ボルト・ヘッジホッグ≫が光の柱に包まれるのを見上げ、高らかに口上を叫ぶ。

 

「集いし思いが、ここに新たな力となる! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 燃え上がれ! ≪ニトロ・ウォリアー≫!」

 

≪ニトロ・ウォリアー≫

レベル7 ATK2800

 

 光の中から現れた屈強そうな緑色の体に雄々しい角を持つニトロの名を冠した戦士は、このデュエルを勝利に導く希望の戦士だ。

 

「ここで墓地の≪レベル・スティーラー≫の効果発動! ≪ニトロ・ウォリアー≫のレベルを1つ下げ、特殊召喚!」

 

≪ニトロ・ウォリアー≫

レベル7→6

 

≪レベル・スティーラー≫

レベル1 ATK600

 

「まだまだぁ! レベル1の≪レベル・スティーラー≫にレベル3の≪ジャンク・シンクロン≫をチューニング!」

「今度はレベル4!?」

「集いし意志が、勝利を掲げる拳となる! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 掴み取れ! ≪アームズ・エイド≫!」

 

≪アームズ・エイド≫

レベル4 ATK1800

 

 次に現れたのは機械の右腕。見た目はそこまで強そうに見えないモンスターだが、その本質は別にある。

 

「攻撃力1800かよ、驚かせやがって!」

「それはどうかな?」

「まだ何かあるのか……!?」

 

 その本質、しっかりと目に焼き付けろ!

 

「≪アームズ・エイド≫の効果発動! このカードは攻撃力1000ポイントアップの装備カード扱いとして、モンスターに装備できる効果を持つ! 俺は≪ニトロ・ウォリアー≫に装備する!」

 

≪ニトロ・ウォリアー≫

ATK2800→3800

 

 ≪ニトロ・ウォリアー≫は巨大な右腕を自身の右腕に装備し、大きな咆哮を上げる。待ってろ、今思いっきり暴れさせてやる!

 

「攻撃力3800だとぉぉぉぉ!?」

「これで全て上回った! さあ、決着の時だ!!」

 

 後ろのシートに座っているシアと目を合わせ、お互いに大きく頷く。

 

「≪アームズ・エイド≫を装備した≪ニトロ・ウォリアー≫で、≪ゴゴゴゴーレム-GF≫を攻撃!」

「「『ダイナマイト・ナックル』!!」です!」

 

 ≪ニトロ・ウォリアー≫は猛烈な勢いで突撃し、≪アームズ・エイド≫を装備した右腕で≪ゴゴゴゴーレム-GF≫を粉砕した。

 

「ぐああぁぁっ!!!」

 

男 LP800→LP 0

 

 LP(ライフポイント)が0になった男のD・ホイールの外装が開き、スモークを勢いよく吐き出しながら停止した。

 俺はその隣に停まり、男に向けて宣言する。

 

「俺達の、勝ちだ!」

「あぁ、負けたぜ。完敗だよ! 俺のエースを真正面からブチ抜くなんて、やるじゃねぇか」

 

 デュエル前、デュエル中とは打って変わって、フッツーに爽やかなイケメンスマイルなんか向けてきて、若干どころじゃなくかなり驚いた。

 

「……悪かったな、お前のモンスターを雑魚呼ばわりしてよ」

「お、おう」

「い、いえ、そう言っていただけるだけで十分ですよ……?」

 

 おい、ホントに誰だコイツ。

 基本的にハッキリと喋るシアですら、あまりの変わり様に若干どもったぞ。

 

 ……あ、そうだ。

 

「怪我とかしてないだろうな? 結構危ないタイミングあっただろ」

「あ、ああ、右腕を少し……」

 

 やっぱりな。立体映像のソリッドビジョンとはいえ魔力製だから多少の怪我もするか。

 

「シア」

「はい! 少しじっとしていてくださいね」

 

 シアの指には指輪が嵌めてあり、それはこの世界で神器(セイクリッド・ギア)と呼ばれる異能の証だ。シアの神器(ソレ)聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)という名で、対象の怪我を治療する効果を持つ。

 この神器とやらの所為で過去に面倒な事はあったが、今は関係ない話だ。

 

 それはともかく、ライディング・デュエルではソリッドビジョンの影響が無くとも怪我をする事が多い。

 故に俺達とデュエルした相手が怪我をした場合に限って、こうしてシアに治療してもらう事にしている。

 

 もちろんシアに嫌が無い奴に限るが、元々怪我人を見れば放っておけない性格なので、今のところは大きな問題にはなっていない。

 

「シアさん、だったか。キミは人間だったのか……!」

「はい、私とアキラさんは、どちらも人間ですよ」

「何っ!?」

 

 ……あぁ、そうか。神器は人間か人間の血が混じっている者にしか宿らないらしいし、元から人間と交わろうとする人外は少ない。

 故にシアが人間だと分かったんだろう。

 だがデュエルの知名度はそこそこあるのに、人間だってのはあんまり知られてないみたいだ。むしろ知られない方が良いかもしれないな。

 

「俺達が人間だっていう事、あんまり言いふらさないでくれよ? 人間だからって舐めて掛かられたらつまんないからな」

「そうか。確かに、こんだけ強けりゃそう思うのも無理ないか」

 

 そろそろこの男の変化にも慣れてきた。

 さて、治療が終わってシアは俺の隣に戻って来たし、男のD・ホイールの排気も終わってるし、酒場に戻るとするか。

 

 ……そうだ、コイツの名前聞いておくか。

 なかなかに楽しめるデュエルだったし、名前を聞いておいて損は無いだろう。

 

「おい、お前名前は?」

「あれ、名乗ってなかったか?」

 

 こいつに名乗られた覚えないんだが……。

 シアに目を向けると首を横に振った。という事は分からない、と。

 

「あー、お前第一印象が下っ端臭溢れてて微妙だったせいで、覚えてないんだよ」

「くっ! 仲間にもそう言われるんだが……そんなにか……?」

 

 無言の肯定(×2)

 

 ……シアは俺と旅をし始めてからスレたというか、ノリが良くなったというか……うーん。

 

「ああもう、今度こそちゃんと覚えとけってんだ! 俺の名前はゲーナンだ! 忘れんなよ!?」

 

 ゲーナン、ゲナン、下男…………。

 

「やっぱり下っ端じゃないか!!」

「うっさいわ!!」

 

 ゲーナンの悲痛()な叫びが冥界の空に響き渡る。

 

 

 

 そう、ここは悪魔や堕天使が跋扈(ばっこ)する『冥界』と呼ばれる、裏側の世界である。

 訳あって表の世界から外れた俺とシアは、冥界の都市や町、村を転々としながら情報を求めてライディング・デュエルをする日々を送っている。

 

 その訳とは……。

 

 

 

「早くお前達の相棒が見つかるといいな」

 

 

 

 俺が持つドラゴンのカード達に相応しいデュエリストを探す事である。

 

 

 

 それに加えて、あの目覚めから早2年……俺は未だに確固たる意志が持てずに迷ったままだ。憑依男の記憶にある、『クリア・マインド』とやらを体得出来ずにいるのが良い証拠だ。

 

 その確固たる意志というモノを見つけるのも、旅の目的の1つだ。

 

 だけど、全て何とかなる気がしている。

 

「アキラさん、何をしていらっしゃるんですか? 戻りましょう?」

「……ああ、そうだな」

 

 隣にはいつもアーシアが居てくれるから、かな。

 

「おうおう、仲の良いこった。噂の美少女2人組みのD・ホイーラーは、ソッチの方もディープな関係のご様子で! クックック!」

 

 ……見直したと思ったらゲスな勘繰りしやがって。

 

「おい、デュエルしろよ。今度は反撃の隙すら与えずに嬲り倒してやんよ……!」

「ハ、ハァ!? それはこっちのセリフだっつーの! いいぜ、かかってこいよ!」

 

 イイ度胸じゃねぇか……!

 

「シア!」

「は、はい! 準備は出来てます!」

「いくぞ!」

 

 幸いここはデュエルが力の象徴の1つになっている世界だ。デュエルをしていれば、全ての答えはいずれわかるさ。……いずれな。

 

 その為にも今は……!

 

「「「ライディング・デュエル! アクセラレーション!」」」

 

 

 

 目の前のふざけた下っ端(プラシド)野郎を叩きのめす!!




Q:なんで≪ゴゴゴゴーレム≫を守備表示で出さなかったの?
A:演出です。

Q:これ積み込みだよね?
A:演出です。

Q:ねぇ、これいつ原作主人公勢と関わるの?
A:いずれわかるさ。……いずれな。

Q:タンデムシートのD・ホイールって何よ?
A:GL1800 gold wing で検索すると幸せになれます。
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