『全審神者に告ぐ。
3日以内にすべての所持刀剣の顕現を解き、現世に帰還すること。』
逆行軍が降伏した。
そんな知らせが届いたのは桜がもうすぐ咲くであろう頃。
何年も続いてきた戦いが
沢山の犠牲を出してきた戦いが
ついに終わったのだ。
3日とはなんて短い時間だろう。
長い長い時を過ごしてきた刀剣はもちろん、
人間にだって3日なんてあっという間だ。
もう明日にはここを離れないといけない。
なのに。
彼らはあまりにも別れに無頓着すぎではないか。
右も左もわからないまま始まったこの生活。
はじめは私と二振。仲間はどんどん増える。
戦いは苦しかった。みんなが傷つくのが怖かった。
早く終われ。早く、早くと何度願っただろう。
でもみんなと過ごす時間は楽しくて愛おしくて。
このまま続けばいいとも思っていた。
それは自分だけだったのだろう。
知らせが届いてから刀剣たちと祝杯をあげ、飲んだり騒いだり。
酒が入って余計にさみしくなったのだろう。
私は彼らに言った。
離れたくない。いっそのこと私を隠して……
後々後悔した。あまりにも軽率な発言だ。
彼らは神様なのだ。その気になればこんな小娘の1人や2人…
だがそんな心配は無用だったらしい。
寂しい。しかし、当然だ。
彼らにとって私など一時の持ち主でしかないのだろう。
そんなことを思いながら最後の眠りについた。
彼らを刀に還す。それは一瞬で終わる。
なにもしなくても政府が決めた時間に顕現は解けるようだ。
私の前にそろって並ぶ刀剣たち。
これでお別れ。何を言っていいのかわからない。
「みんな……今までありがとう……」
そんなことしか言えない。言葉が思いつかない。思わず下を向く。
「主よ、これを。」
目の前にずいと差し出されたのは紙の束。これは…手紙?いつの間に?
問いかけようと顔をあげるが、目の前には刀が並ぶだけだった。
あの後、泣きじゃくって手紙を読むどころではなく、
半ば引きずられるように現世に帰った。心に穴が開いたようだ。
手紙なんてもらうのは一体いつぶりだろう。
子どものころに友達と可愛い紙でやりとりをした程度か。
ようやく読もうという気になった時には新しい生活も始まっていた。
そこに書かれていたのは
忘れもしないあの日々の出来事。
ともに笑い、泣き、戦った日々。
身を持てたことへの喜び、感謝。
全員分だ。私の刀たち全員からの手紙だ。
自然と涙があふれる。
顔と手紙をうんと離して何度も何度も読み返す。絶対に汚すものか。
この手紙は、あの日々は私の宝だ。
私の愛しい刀たち。彼らに出会えて本当に幸せだ。
どんなに辛くても大丈夫。私は一人じゃない、そう思えた。
なぜ手紙を渡したのか。
私個人の解釈ですが、刀剣はモノとしての意識が高い。モノである彼らは、口で言葉を伝えるよりも形でモノを残すことを重要視する。
そう思ってお手紙を書いていただきました。
ちなみに、米/津/玄/師/様/v/i/v/iに触発されて考えたものでした。
お別れは悲しいものだけど、始まりでもある。
彼女を愛していたからこそのお別れであるといいですね。