オリジナルのチーム及び隊員たちが登場します。
物語は、初めて遊真と修が出会った日から始まりますが、まだ二人は出てきません。
よろしくお願いします。
第1話 榊隊①
三門市内に突如開いた、異世界へと通ずる穴“ゲート”。そしてゲートから現れた異次元からの侵略者“ネイバー”。そのネイバーの侵攻を“ボーダー”と名乗る組織が撃退して、四年の月日が流れた。この四年の間、ゲートは依然と開いているものの、僅かな期間で巨大基地を作り上げ、ネイバーに対する防衛体制を整えたボーダーへは、多くの住民が信頼を寄せるようになった。そして今もなお、時折届く爆音や閃光さえ日常のものとなってしまった、これはそんな現在の話。
★
『ゲート発生。ゲート発生。座標誘導、誤差“7.66”。近隣の皆様は、ご注意ください』
突然、鳴り響くアナウンスが、ボーダーが基地周辺に設定した警戒区域内に、誘導されたゲートが開くことを伝える。
『一番近いのはウチだよ! 後れをとるんじゃないよ!』
耳に着けた通信用の小型無線機から聞こえる声に、
「はいはーい!」
「わかってますよ~」
「は、はい!」
三人が三様の答えを返す。
『朋香、返事は一回! そして伸ばすな! 陽平はもっと緊張感を持って! 朝美は逆にリラックス!』
そして「ふー」という嘆息の後、半ば諦めともお約束ともとれるようなやり取りが続いた。
「まあまあ、カナちゃん。あの子たちなら大丈夫だから」
『真由美……。何でアンタはあの三人を見守るお母さん目線なのよ』
「私がお母さんなら、カナちゃんはお父さんね」
『うら若き乙女をオヤジにするな!』
ボーダー本部に所属する部隊のひとつ、榊隊が到着した時、すでに大型ネイバーは木っ端微塵に粉砕されていた。その状況を目の当たりにして、四人は目を丸くする。
「ねえ、カナちゃん。私たちが一番乗りのはずよね?」
この部隊を率いる隊長の榊真由美が、通信を介してそう訊ねる。ぱっちりとした二重瞼と、すっと通った鼻筋が、整った顔立ちを更に印象づける。また、透きとおるような白い肌と、均整のとれた高い背丈が、肩まで伸びた黒髪を無造作にひとつに束ねていても、精悍さを保っていた。
『それは間違いない。私たち以外の部隊がそこに着いた形跡はない』
それに答えたのは、オペレーターの春瀬奏恵。艶やかな黒髪は一本の乱れもなく整えられており、切れ長で大きな瞳とそれを縁どる長い睫毛が、どことなくミステリアスな雰囲気を醸し出している。
本部の作戦室に内設されてある通信室で、奏恵はパソコンと向かい合い、忙しなくキーボードを叩いてみるが、未だ現場では自隊以外のボーダー隊員の存在は確認できなかった。
「っていうかこのネイバー、バラバラじゃん。ボーダーでもマスター・クラスじゃないと、こうはいかないよね? これをやったのがボーダーじゃないってこと? じゃあ、いったい誰が……」
弧月を肩に乗せ、その言葉とは裏腹にニヤリと口角を上げるのは神凪朋香。顔立ちこそ整っているものの、肩上で切り揃えられた髪と、少し大人びた童顔、そして何より、小学生の頃から成長することを忘れてしまったのではないかと思わせるほどの身長が、まだまだ幼い印象を与えていた。
「ボーダー以外で誰が……というよりも、ボーダー以外にこんなことができる人がいるんでしょうか?」
朋香ほどではないが、まだまだ成長の兆しを残した体つきの和堂朝美が、そう言って小首を傾げる。左右に束ねたツインテールと、喜怒哀楽のはっきりとした表情からは、チーム最年少らしい幼さが見えるが、その両脇にはそれぞれ、小柄な体には不釣り合いなほどの大きさのアサルトライフルが携えられていた。
「それにしても、この衝撃は……」
ただひとり、残骸となったネイバーの破片を拾い上げ考え込むのは、朋香の実弟、神凪陽平。背丈こそ姉には似ず恵まれたものの、童顔の顔つきはさすが姉弟というほど似ており、ともすれば中性的にも見える。
「どうしたの? 陽平」
「うん。これなんだけどさ」
そう言って陽平は、拾い上げた破片を朋香へと差し出す。
「これが……?」
「ほら、わかんない? これさ……」
「現着した。大型ネイバーの撃破を確認」
だがしかし、そんな二人の会話を遮るように、新たな声が届く。
「榊隊か。またかなり派手にやったな」
粉々に砕けたネイバーを一瞥し、三輪秀次はそう呟いた。
「すっげー、バッラバラじゃん」
それに続き、米屋陽介が三輪の隣へと並び立つ。槍型の弧月をまるで天秤を担ぐように肩に置き、三輪とは対照的に、その目は榊隊の面々へと向けられていた。
「あ~、違う、違う。これ、あたしらじゃないから」
朋香はわざとらしいほど大仰に、左手を左右に振って見せる。
「はあ? こんな芸当ができるの、どう考えてもA級だろ? なあ、秀次」
「だろうな」
「いや、陽介の意見には激しく同意だけど、本当にあたしらじゃないし」
「じゃあ、誰がやったって言うんだ。ここらはウチとおまえたちの部隊以外いない。そもそもボーダー隊員なら、ネイバーを処理した後は現場保存のために回収班が来るまで最低一人は隊員を現場に残すのが常識だ。この状況で他の部隊が絡んでるとは考えにくいだろ」
「そ~んなこと言われても、あたしだって知らないわよ!」
「またおまえはそんないいかげんなことを……」
「またって何よ、またって」
「またはまただろ! いつもいつも適当でいいかげんなことばかり言ってるやつが!」
「いいかげんなことなんて言ったことないんだけど!」
「じゃあ、無自覚か! なおタチが悪いな」
「何でアンタはそう、いつもいつも上から目線なのよ!」
「俺がいつ上から目線になった!」
「はあ~!? アンタこそ無自覚じゃん! タチわる~」
「何だと!」
「まあまあまあまあ」
「まあまあまあまあ」
お互いヒートアップしていく朋香と三輪のやり取りに、陽平と陽介がそう割って入った。
「けど本当よ。三輪くん。私たちが来た時にはもう、このネイバーはこの状態だったわ」
そう言って、真由美はまた、粉々のネイバーに目を向ける。
十メートル弱はあるそのネイバーは、攻撃力こそ高くはないが、大きな体を纏う装甲はかなり堅い。生身の人間では砕くことはおろか、傷ひとつつけることは難しいだろう。当然、ボーダーのトリガーを使えばそれも不可能ではないが、ほぼ一撃でここまで粉々にするとなると、それだけでそのトリガー使用者の実力はかなり高いと言える。
「えっ!? そんな……。まあ、けど榊さんがそう言うなら」
故に真由美の反論は、その現場を目の当たりにした三輪たちにとっては、俄かには信じ難いものではあるが、真由美の発言であればこそ、三輪もその反論を受け入れるほかなかった。
「ちょっと、三輪! 何であたしの言ったことはハナから疑ってかかるくせに、真由美さんの言ったことは素直に信じるのよ」
だが、言葉の意味としては全く同じことを言ったはずなのに、自分に対してと真由美に対してとで反応が違うことに、朋香はなおも納得できず、三輪に噛みつく。
「普段の言動から推察した言葉の信憑性が全く違うだろ」
「それ、どういう意味よ!」
「はあ~」
「はあ~」
その二人のやり取りに、もはや陽平と陽介は嘆息とともに閉口するしかなかった。
オリジナル・チームの榊隊登場です。女の中に男一人の混成チームですが、ハーレム状態にはなりません。あしからず。