第1話の続きです。
ほぼオリキャラのみです。あしからず。
「とにかく回収班には俺たち三輪隊が立ち会います。榊隊は防衛任務に戻ってください」
ひとしきりの言い合いののち、三輪秀次が榊真由美にそう提案する。
「はあ~!? 何言ってんのよ、三輪! あたしたちが一番乗りだったんだから、あたしたちが残るに決まってんでしょ」
しかしその申し出に、神凪朋香はそう異を唱えた。
「おまえたちはまだ防衛任務の最中だろ。俺たちは今、防衛任務を終えたところだから、ここに残っても何ら問題はない。さっさと防衛任務に戻れ」
「アンタがそんな殊勝なこと言いだしたときは何か怪しいんだよね」
「怪しいって何だ!」
「普段の言動から推察した言葉の信憑性ってやつじゃな~い」
「俺はただ厚意で言ってやってるんだぞ!」
「じゃあ、その厚意いらな~い。べつに全員で残るわけじゃないし、一人残すぶんには問題ないし~」
再び始まった舌戦に、今度は神凪陽平と米屋陽介だけでなく、和堂朝美もやれやれと肩をすくめる。
「はいはい、姉ちゃんも三輪先輩もそこまで」
そして三人に視線を向けられた陽平が、朋香と三輪の間へと入り、宥め役となった。こんなとき決まって陽平はこんな役回りとなる。
「姉ちゃん。ここは三輪先輩の厚意に甘えるよ」
「なっ!? ちょっと、陽平」
「一人残すって、誰を残すつもりなの?」
「そりゃー、アタシが残るわよ」
「ウチのエースを別行動させるわけにはいかないよ。却下!」
「じゃっ、じゃああーちゃんは?」
「へっ!? 私一人でですか~!?」
突然立てられた白羽の矢に、朝美は慌ててかぶりを振る。
「ほら、あーちゃんが困ってるだろ」
「何よ。陽平っていつも、あーちゃんのこと甘やかしすぎなんじゃない?」
「それにこんな堅い装甲のネイバーがまた現れたら、あーちゃんの援護射撃がないとキツいだろ」
「じゃあ、真由美さんは……」
「隊長を置いて行く気?」
「陽平……なら」
「あっそ、俺が残ってもいいんだね?」
「いや、言ってみただけだし。誰も陽平に残れだなんて言ってないし!」
「じゃあ、結論は?」
「…………、わかったわよ! わかりました! 今日のところは引いてあげるわよ! じゃあ、三輪、陽介、後はお願いするわ」
「はい、大変よくできました」
少々不貞腐れたように頬を膨らませる姉の頭を撫でながら、陽平はにこりと笑った。
「話はついたみたいだな」
「はい。じゃあ、後のことは任せます」
そしてそう言うと三輪と陽介に一礼し、陽平はバラバラのネイバーに背を向け、宙へと駆ける。それに続くように朋香はぷいっと顔をそらし、朝美は深々とおじぎをし、真由美は片手を上げ、それぞれ陽平の後に続いた。
★
『いやにあっさりと引き下がったじゃないか、陽平』
元の防衛任務へと戻る陽平の耳に、春瀬奏恵の声が届く。
「何か思惑があったのよね?」
そしてそれに、真由美も言葉を続けた。
「えっ!? 陽平、思惑って?」
「陽平先輩、何か魂胆があったんですか?」
驚いたように視線を向ける朋香と朝美を交互に見やり、
「あーちゃん。思惑ならまだしも、魂胆っていうのはやめてほしいな」
陽平はそう言って口角を上げた。
「はあああ……、ごめんなさい」
「いや、いいよ。それよりカナさん」
『何だ?』
「防衛任務が終わったら、ナルさんのとこに行きたいんだけど」
『ナルさん? やっぱり何かあるんだな?』
「まあ、まだ可能性の範囲だけどね」
『可能性?』
「ああ。あのネイバーについてなんだけどね」
『確かにあの衝撃は、ボーダーのトリガーを使ってもマスター・クラスの腕がないと、ああはならない……』
「いや、たぶんあのネイバーへの攻撃に使われたトリガーは、ボーダーのものじゃないよ」
『えっ!?』
「えっ!?」
「えっ!?」
「えっ!?」
『ちょっと待て、陽平。ボーダーのトリガーじゃないって』
「あのネイバーへの攻撃は、武器ではなく純粋に拳による打撃」
『拳による打撃……。けどそんなトリガー』
「そう。そんなトリガー、ボーダーにはない」
『じゃあ、そのトリガーは……』
「ボーダー以外にトリガーを持っているやつらと言えば」
『まさか……、ネイバー?』
「ネイバー!?」
「ネイバー!?」
「ネイバー!?」
トリガーはもともとネイバー文明を支えてきたテクノロジーであり、それを“ネイバーフッド”から持ち帰り、現在ではボーダーが保管、管理、開発、運用を一手に担っている。つまり、ボーダー以外でトリガーを所有している者がいると仮定するなら、すなわちそれはネイバーが“こちら側の世界”に潜伏していることを意味していた。
『じゃあ、陽平。ネイバーがトリガーを使ってネイバーをやっつけたってことか?』
「だから、まだその可能性があるってだけだよ。ネイバーの破片は持ってきた。だから」
『ナルさん……か』
「そういうこと」
「そういうことならナルさんに解析してもらいましょう」
真由美の言葉に頷く陽平。朋香と朝美はまだ、事の重大さに思考が追いついてはいないようだ。
『けど、そういうことならたぶん、三輪隊のほうが情報が早いだろうな』
「うん。そしてその情報は、俺たちには流れてこない」
『わかった。いかにもナルさんが飛びつきそうなネタだし、私のほうからアポっとく』
「カナさん、よろしく」
もしもあのネイバーを倒したのが他のネイバーであったとしたら……。それは今の陽平たちにとってはまさに荒唐無稽な話だが、一連の物的証拠がその空想を裏づけている。隊服のポケットにしまわれたネイバーの破片を服の上から触り、これから予期せぬ展開が起きるかもしれないと、陽平は少しだけ胸が高鳴る感覚を感じていた。
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