WORST TRICK   作:和久井 誠

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 第1話の続きです。
 ほぼオリキャラのみです。あしからず。


第2話 榊隊➁

 

「とにかく回収班には俺たち三輪隊が立ち会います。榊隊は防衛任務に戻ってください」

 ひとしきりの言い合いののち、三輪秀次が榊真由美にそう提案する。

「はあ~!? 何言ってんのよ、三輪! あたしたちが一番乗りだったんだから、あたしたちが残るに決まってんでしょ」

 しかしその申し出に、神凪朋香はそう異を唱えた。

「おまえたちはまだ防衛任務の最中だろ。俺たちは今、防衛任務を終えたところだから、ここに残っても何ら問題はない。さっさと防衛任務に戻れ」

「アンタがそんな殊勝なこと言いだしたときは何か怪しいんだよね」

「怪しいって何だ!」

「普段の言動から推察した言葉の信憑性ってやつじゃな~い」

「俺はただ厚意で言ってやってるんだぞ!」

「じゃあ、その厚意いらな~い。べつに全員で残るわけじゃないし、一人残すぶんには問題ないし~」

 再び始まった舌戦に、今度は神凪陽平と米屋陽介だけでなく、和堂朝美もやれやれと肩をすくめる。

「はいはい、姉ちゃんも三輪先輩もそこまで」

 そして三人に視線を向けられた陽平が、朋香と三輪の間へと入り、宥め役となった。こんなとき決まって陽平はこんな役回りとなる。

「姉ちゃん。ここは三輪先輩の厚意に甘えるよ」

「なっ!? ちょっと、陽平」

「一人残すって、誰を残すつもりなの?」

「そりゃー、アタシが残るわよ」

「ウチのエースを別行動させるわけにはいかないよ。却下!」

「じゃっ、じゃああーちゃんは?」

「へっ!? 私一人でですか~!?」

 突然立てられた白羽の矢に、朝美は慌ててかぶりを振る。

「ほら、あーちゃんが困ってるだろ」

「何よ。陽平っていつも、あーちゃんのこと甘やかしすぎなんじゃない?」

「それにこんな堅い装甲のネイバーがまた現れたら、あーちゃんの援護射撃がないとキツいだろ」

「じゃあ、真由美さんは……」

「隊長を置いて行く気?」

「陽平……なら」

「あっそ、俺が残ってもいいんだね?」

「いや、言ってみただけだし。誰も陽平に残れだなんて言ってないし!」

「じゃあ、結論は?」

「…………、わかったわよ! わかりました! 今日のところは引いてあげるわよ! じゃあ、三輪、陽介、後はお願いするわ」

「はい、大変よくできました」

 少々不貞腐れたように頬を膨らませる姉の頭を撫でながら、陽平はにこりと笑った。

「話はついたみたいだな」

「はい。じゃあ、後のことは任せます」

 そしてそう言うと三輪と陽介に一礼し、陽平はバラバラのネイバーに背を向け、宙へと駆ける。それに続くように朋香はぷいっと顔をそらし、朝美は深々とおじぎをし、真由美は片手を上げ、それぞれ陽平の後に続いた。

 

 

『いやにあっさりと引き下がったじゃないか、陽平』

 元の防衛任務へと戻る陽平の耳に、春瀬奏恵の声が届く。

「何か思惑があったのよね?」

 そしてそれに、真由美も言葉を続けた。

「えっ!? 陽平、思惑って?」

「陽平先輩、何か魂胆があったんですか?」

 驚いたように視線を向ける朋香と朝美を交互に見やり、

「あーちゃん。思惑ならまだしも、魂胆っていうのはやめてほしいな」

 陽平はそう言って口角を上げた。

「はあああ……、ごめんなさい」

「いや、いいよ。それよりカナさん」

『何だ?』

「防衛任務が終わったら、ナルさんのとこに行きたいんだけど」

『ナルさん? やっぱり何かあるんだな?』

「まあ、まだ可能性の範囲だけどね」

『可能性?』

「ああ。あのネイバーについてなんだけどね」

『確かにあの衝撃は、ボーダーのトリガーを使ってもマスター・クラスの腕がないと、ああはならない……』

「いや、たぶんあのネイバーへの攻撃に使われたトリガーは、ボーダーのものじゃないよ」

 

『えっ!?』

「えっ!?」

「えっ!?」

「えっ!?」

 

『ちょっと待て、陽平。ボーダーのトリガーじゃないって』

「あのネイバーへの攻撃は、武器ではなく純粋に拳による打撃」

『拳による打撃……。けどそんなトリガー』

「そう。そんなトリガー、ボーダーにはない」

『じゃあ、そのトリガーは……』

「ボーダー以外にトリガーを持っているやつらと言えば」

『まさか……、ネイバー?』

 

「ネイバー!?」

「ネイバー!?」

「ネイバー!?」

 

 トリガーはもともとネイバー文明を支えてきたテクノロジーであり、それを“ネイバーフッド”から持ち帰り、現在ではボーダーが保管、管理、開発、運用を一手に担っている。つまり、ボーダー以外でトリガーを所有している者がいると仮定するなら、すなわちそれはネイバーが“こちら側の世界”に潜伏していることを意味していた。

『じゃあ、陽平。ネイバーがトリガーを使ってネイバーをやっつけたってことか?』

「だから、まだその可能性があるってだけだよ。ネイバーの破片は持ってきた。だから」

『ナルさん……か』

「そういうこと」

「そういうことならナルさんに解析してもらいましょう」

 真由美の言葉に頷く陽平。朋香と朝美はまだ、事の重大さに思考が追いついてはいないようだ。

『けど、そういうことならたぶん、三輪隊のほうが情報が早いだろうな』

「うん。そしてその情報は、俺たちには流れてこない」

『わかった。いかにもナルさんが飛びつきそうなネタだし、私のほうからアポっとく』

「カナさん、よろしく」

 もしもあのネイバーを倒したのが他のネイバーであったとしたら……。それは今の陽平たちにとってはまさに荒唐無稽な話だが、一連の物的証拠がその空想を裏づけている。隊服のポケットにしまわれたネイバーの破片を服の上から触り、これから予期せぬ展開が起きるかもしれないと、陽平は少しだけ胸が高鳴る感覚を感じていた。





 読んでくださり、ありがとうございます。
 また次回もよろしくお願いします。
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