別艦隊の指揮をとれますか?:嘘とお酒と艦娘と 作:あおい安室
海孤島鎮守府:夕暮れ
「………やはりいいな。こういう祭りは。準備をしているだけで胸が熱いな」
「へえー………やっぱり長門も楽しみなんだね」
「当たり前じゃないか。みんなでどんちゃん騒ぎをできるのは幸せな事だろ?」
それには同意するかなー。
………彼女は長門。この海孤島鎮守府における最高戦力の一人だ。
そして、これから語るトラブルに最も巻き込まれたとも言える艦娘だ。
………ご愁傷様です。
………ところでさ。
なんでなんだかんだ言って帰りの船に乗ってきたあきつ丸ちゃんはむすーってしてるのさっきから。
「むう………海人殿がきちんと説明しなかった為自分はとてつもない勘違いをしてしまったのであります!」
「僕のせいかそれ!?」
………なんかさっき騙されたぁ!!とか叫んで木曾をボコボコにしてたけど。
さすが陸軍出身の艦娘………
「………連行される海人殿を見送るために休暇をとったつもりがこんなことになるとは………」
なるほど、とりあえず八つ当たりなのはわかった。
というか連行って。何をするつもりなんだったんだ………
そして準備は着々と進んでいき………日がくれた。
パーティーの会場は鎮守府施設の中庭と施設の一部だ。機械担当の艦娘の提案で中庭を囲む施設の二階部分を紐で繋いで提灯を垂らす。
なーんか夏祭りっぽいよね………?
「………海人」
「あ、長門。どうしたの?そろそろ大和が乾杯をとるらしいけど」
「ああそうだな。だがどうしても頼まなければならないことがあってな」
「どうしたの?」
「………私、いや、艦娘達が酒で暴走したら止めてくれ」
………は?
「それがどうもお酒に弱い艦娘がわりと多いんだ。私もその中の一人だが………酔ったら何をするかわからん」
「お、おー。じゃあ飲まなかったらいいんじゃ………」
「その場の雰囲気的に私が断れると思うか?力のある戦艦の艦娘はほとんどお酒に強いんだぞ?無理矢理飲まされるのがオチだ」
そんなにお酒の絡んだ艦娘を信用してないのか………
………ん?そういえば今気づいたんだけど。酒、なーんかやたらと多いような。
会場となる中庭に置かれているテーブルの上にある食材に紛れてビール瓶結構あるし………日本酒もある。
うわ、缶ジュースかと思ったらこれカクテルの奴だ………
………多すぎない?
「………実はな。お酒に弱い奴等で意気投合して鳳翔さんに『お酒の数は考えてくれ』と連絡したんだ………なのに何故かこんなことになってしまったんだ………」
「………『お酒の数は考えてくれ』だけ言ったの?」
「ああ。それを言ったら『わかったわ、しっかり考えておくけど今忙しいから』と言われて切られてしまったんだ」
………多分だけど。鳳翔さんは長門達の考えている『お酒を飲めない人が多いからお酒を減らしてくれ』じゃなくて『お酒を飲める人が多いからお酒を増やしてくれ』って意味でとったんじゃないかと………
「………本当にありがとうございます。それでは、皆さん………」
簡易ステージの上に大和が開会の言葉みたいなのを言っていたけど、そろそろ終わる様だ………
さてと。あとはどうなるかは知りませんがとりあえず………
「「「「「乾杯っ!!!」」」」」
今のことだけ、考えるか。
視点変更:準鷹
「………と、いう訳だから。一緒に回らない?」
「いや、何がという訳なのさ。何もあたしは聞いてないよ?」
「………もうこの人酔ってるんだろうか?」
「いえ、自分は海人殿は何も説明していないと記憶しているあります」
「あれ?そうだっけ?」
………本当に何なのさ。海人。というか、この子誰?
「ごめんごめん。酔っぱらった艦娘が他の子に迷惑をかけないように一緒に軽くパトロールしない?」
「えー?パトロール?うーん………どうしよっかなー?」
あたしはみんなとお酒が飲めたらそれでいいんだけどさ。パトロールっていうのは少ない人数でやるもんでしょ?それってあたしの目的に反してるじゃん。やだよ。
「………準鷹殿。逆に考えるのであります。パトロールとは、色々な所を見回るのでしょう?それならば色々な所へ行って色々な仲間と出会える。それすなわちたくさんの人とお酒を飲むということではないでしょうか?」
「お、言われてみればそうだね。よし、あたしも行くよ!………ところでさ。あんた誰?」
「本土から来たあきつ丸であります。陸上戦闘なら負ける気はしないでありますよ?」
なるほど、鎮圧係ってところなのね。
でも気がしないっていうのはなんか不安なんだけど………実績はないの実績。
それを海人に聞くと苦笑いしながら隅の方を指差す。
そこにはボロボロになった木曾がいた………ええぇ、この子結構強い子?
「自分はとりあえず中庭に待機しているであります」
「え、ついてこないの?」
「自分正直少し疲れているのであります。ですが何かあれば連絡を。すぐに駆けつけるであります」
「ん、了解っ。海人大佐、準鷹とともに警備任務を開始するっ!」
………海人。あんたも酔っぱらってないかい?
移動:中庭→艦娘寮
「艦娘の寮に着いたね。それじゃ、みんなの部屋に突撃する?」
「何物騒な事を言ってるんだ準鷹」
えーダメ?ドッキリみたいで面白くない?
「面白いのと迷惑なのは別ベクトルなんだからね?ひきこもりの艦娘もいるし、多分あの子パーティーに参加せずにこの寮にいるから」
「………初雪を呼びました?」
うわ、噂をしてたら出たよ当事者。
「確かに騒がしいのは苦手だからひきこもる………だけど寮には私以外にも艦娘はいる………」
「そうなの?誰がいるのかわかるかい?」
「えっと………陸奥さんと羽黒さんは少なくとも、いる」
「陸奥………?まさかまた僕のいない間にトラブル起こしたんじゃ………」
「うん………療養中。羽黒さんは付き添ってる」
「やっぱりかー………」
………艦娘には運という能力がある。艦だった頃の生きざまが反映されているらしいけどね?
その、陸奥は散々だったから運がすっごい悪くて………
うちのはそれが酷くてトラブルの中心にはいつも陸奥がいるんだよねー………
「………僕お見舞いに行ってくるよ。中庭から何か適当に食べ物とっていこう?」
「賛成だね。あたしもお酒を………」
「怪我人と酒盛りやるつもり?」
「いや、別にいいじゃんそれくらい」
「ダメ」
「むー。ケチケチウミヒトー!!」
「僕がケチなのは君らがわりと予算とかを浪費するからなんだけど」
………なんかごめん。結局あたしがこっそりお酒を持って行くかもしれないからって中庭行きは中止に。
………あたし信用されてない!?
移動:寮→陸奥のいる部屋
視点変更:海人
「………本当にごめんね?せっかくみんなが頑張ってイベントを開いてくれてたのに参加出来なくて………」
「いや、安全第一だよ。陸奥が無事なら僕はそれでいいかなって思ってる」
「あら、相変わらず優しいわね。お姉さん惚れちゃうぞ~?」
「………羽黒はいらない子ですか………?」
布団から顔を覗かせてる陸奥はなんだか普段と同じ調子に見えた。
だけど実際はどこかの骨がボキっていってて結構痛いらしい。治ってるらしいけど念のため安静にって。
………なんだか普段よりも症状は酷い気がする。何かあったんだろうか?
「というかあたしとしては陸奥と今日こそどっちが酒飲みかの勝負したかったんだけどなぁ………」
「あはは、今度またすればいいじゃない」
………飲んべえの二人組み………陸奥が休んでて良かった。
でなきゃトラブルがもっと大きくなってただろうに………
『………えーこれよりっ!艦娘対抗お酒早飲み大会を開始しまーす!参加したい人はこの青葉に連絡くださーい!!』
「お!早飲みか、いいねぇ。あたしちょっと行ってくるよ!」
「あ、準鷹!………しょうがない。ごめん、陸奥僕ちょっと行っ………て………」
………あれ、おかしいな。
布団の中はもぬけの空になってるなー。おかしいなー………
「む、陸奥さんならさっきこっそりと出ていっちゃいました………」
「羽黒ちゃんちゃんと止めて!?」
もう嫌な予感がするんだけどっ!?
……
尺的にも多分後二話くらいかな。