ARMORED CORE ~NEW GATE~   作:早川兎太

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『キサラギ施設防衛』 前編

依頼名:『レイヴン試験』

依頼者:グローバルコーテックス

作戦領域:エルベ藩王国 ホーイックロックス山中

作戦目標:キサラギ施設防衛

敵戦力:飛行型生物兵器 他

 

 本ミッションはあなたのテストを兼ねています。

 あなたのMT傭兵としてのキャリアから、このミッションが妥当だと判断されました。

 内容は単純です。エルベ藩王国ホーイックロックス山中に建設されたキサラギ社の山岳研究所の防衛です。施設に迫りつつある航空兵力は先住民族の飛行型生物兵器です。現地では『竜騎兵』と呼ばれています。

 本ミッションはキサラギ社から提案された依頼です。それ故、『竜騎兵迎撃』だけで終わることはないでしょう。バイオセンサー付きレーダー搭載と『竜騎兵』以外に対処するため、弾切れのない武器の搭載を推奨します。

 最強のMT傭兵と謳われたあなたにとっては簡単なミッションです。それでは、失礼します。

 

 

 

「ふむ。施設の対空能力で十分対処できる依頼が俺にまわってきたわけか」

 

 そう、一人呟くのは鬼軍曹ことスパルタンだ。

 彼は最強のMT傭兵として名を馳せ、今回クレストの支援によりレイヴン試験実施が決まったのである。そんな彼の愛機テンペストは普通の新人とは異なる実戦仕様である。主にクレスト製重量級パーツを組み合わせたガチタンと呼ばれる戦車型ACであった。

 

 厄介なレイヴン試験になった。

 グローバルコーテックスはキサラギの秘密を知っているが守秘義務で言えず、警告に留めているのだろう。

 

「『竜騎兵』対策にミサイルとライフル……未知の生物兵器にEOコアとブレードってところか」

 

 スパルタンは、整備端末を操作し機体構成(アセン)を組み直す。

 彼の拘りである重量級パーツで組み上げた戦車型ACという点だけは変えられない。ここで問題となるのは、EOコアを製造しているメーカーはミラージュだけということだった。彼はクレスト派であるため、出来る限りミラージュ製品を使いたくない。しかし、他がないのなら仕方ない。

 今回、クレストから提供されたパーツは試作品三品である。それこそは、リニアガン搭載重EOコアCCH-04-EOCと、スナイパーライフルCWG-SRFL-50、そして『索敵能力と防御力を兼ねた実験型』バイオセンサー付き頭部パーツCHD-GLITCHである。提供パーツの御蔭で、ミラージュ製EOコアを使わずに済んだわけである。

 EOとは簡単に言えばコア外付けの自動機銃(タレット)である。EOの長所は何よりも自動で敵を捕捉し攻撃してくれる点と、コアに収納している間に残弾が補充されることである。これはMTの無限弾薬機構と同じものなのだろう。

 さて、あとはキサラギ製射突ブレード(パイルバンカー)KWB-SBR0Xを搭載してと、ミサイルは最初から搭載しているのでそのまま……こんなとこだろうか。

 

 青林檎(アップルボーイ)と比べて提供パーツの数と質が違うのは、新人と古参の扱いの差である。

 

 

 

 

「レイヴン、初めまして。あなたの専属オペレーターを務めるセフィーと申します。本来、レイヴン試験で専属が付くことはありません。今回だけの特例です」

「おう。俺はスパルタンだ。よろしく頼む」

 

 グローバルコーテックス所属AC輸送機(航空機)で運ばれた先は、切り立った断崖絶壁と深い峡谷からなる山岳地帯であった。

 断崖の頂上部は平地になっており、そこかしこにレーダードームや対空砲台が立ち並んでいる。『竜騎兵』如き、これらの対空設備だけで処理できるだろう。それにも関わらず、高額な依頼料を払ってまでレイヴンを呼んだだけの何かがここにあるのだろう。

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか」

 

 断崖の中腹にある施設入口扉を背にして、スパルタンはそう呟いた。

 

 

 蒼い空を背景に、四十匹の飛竜とそれに騎乗した四十人の竜人族が魚鱗の陣を組んで飛行している。その訓練された一糸乱れぬ動きは優美であり壮観であった。大陸中の如何なる勢力も、その姿を見ただけで戦意喪失し逃げ出すことだろう。

 彼らこそ、正神ハーディーの使徒である亜神ジゼルに仕える『竜騎士団』である。連合諸王国軍に参戦していた『竜騎士団』から分派した組織であり、あちらが国に忠誠を誓ったのに対し、こちらはハーディーとその使徒に忠誠を誓っている。

 元の組織同様に、大陸中では無敗を誇る精鋭であり、それが故に今回の任務も一方的に屠る展開になると考えていた。

 

「隊長、あれがネズミ共の巣穴でしょうか?」

「そうだ、恐れ多くも猊下の御身を攫った蛮族共に身の程を教えなければならない。これは天命である」

「「「おーーーー!!!」」」

 

 確かに彼らから見れば、断崖中腹に幾つもの穴を空けたソレは『ネズミの巣穴』と言ってよかった。そこは内部で複雑に絡み合い、モンスターも配置されているキサラギ迷宮(ダンジョン)である。その全長は異界のどの都市よりも広大なのだが上空から見ただけでは分からなくて当然である。

 

 見たところ、全ての穴が金属光沢を持つ()で塞がれている。これは開けるのに手こずりそうだ。飛竜の飛翔速度は最大40km/hで、ここへ来るまでに手持ちの飼料の半分を消費している。この山岳地帯に餌になりそうなものは生えていないし、獲物も見当たらない。速やかに任務を達成し帰還しなければ飛竜を飢えさせてしまうだろう。

 

「隊長、あれは何でしょうか?」

 

 ()で塞がれていない穴を探す彼らの眼に、ひとつの妙な物が映った。

 装甲付き破城槌のような、装甲付き戦弩のような箱の上に重装鎧の上半身が乗っかっている。

 距離を考慮するに、ヒトではなく巨人だろうか? なぜ上半身だけなのだろうか?

 

 皆の頭にクエッションマークが灯る中、巨人は手にした杖を向けてくる。

 

「敵……なのか?」

「ハッ、如何に巨人とて我らに敵うものかっ! 皆の者よ、我に続け! 巨人の首を()ねるのだ」

 

 一騎が躍り出ると先頭に居た十騎ほどが続き、太陽を背に距離を詰めた。

 

 

「レイヴン、十二時の方向に敵航空部隊の接近を確認しました。注意してください」

「了解。一次ロック完了……二次ロック開始」

 

 ACの照準は一部の武器を除いてFireControlSystem(FCS)で制御されています。一次ロックとは、敵の現在位置に対して射撃を行うことです。そして、二次ロックとは、ロックしさえすればFCSが敵の移動速度と弾丸の飛翔速度から適切な位置に射撃してくれるというものです。神懸ったレイヴンだと、敢えてロックなしで必中ということが起こります。

 

「ロック完了。狩らせてもらうぞ!」

 

 左腕スナイパーライフルCWG-SRFL-50から発砲炎が連続で上がった。

 

 

「ん? 杖が光った! あの距離からだと?」

 

 敵の杖が光ったのは確認した。しかし、魔法弾らしきものは見当たらな……。

 

 皆がそう思ったとき、先頭を往く飛竜の頭部から胴体にかけての部位が一瞬で消え去った。後に残ったのは、竜騎兵の頭部と飛竜の二対の翼だけである。それらは血飛沫を上げながら渓谷の底へと落下していく。

 

「な、なんだと? 風属性の魔法攻撃なのか?」

「あの距離からそう当たるものか! 今のは運が良かっ……」

 

 驕った発言をした竜騎兵が同様の末路を辿り、その近くに居る竜騎兵も次から次へと落ちていく。

 

「連射が効くのか……0.55秒ってところか。クソッ」

「散開して距離を詰めるのだ! 敵は一匹、如何に連射できようとも一度に複数を相手にできまい」

 

 確かに、その判断は間違っていない。スナイパーライフルは一度に複数を相手にできる武器ではない。しかし、スパルタンが積んでいる武装はコレだけではない。

 

 

 

「悪くない判断だ……だが、俺にとっては近づかれた方が好都合だ」

 

 スパルタンはミラージュ製肩部武装弾倉型ミサイルMWX-LANZERを起動した。

 クレスト派ではあるが他に類を見ない優秀なパーツならミラージュであっても使う、それがスパルタンである。

 そんな弾倉型ミサイルとはどういった武器かというと、十二連装ミサイルコンテナを射出する武器である。コンテナをロケットのように発射して、そのコンテナから十二発のアクティブホーミングミサイルが敵を自動で捕捉して追尾するものである。それ故に、スパルタンがミサイルの攻撃目標を指定することはできない。実戦では、ミサイルとして使うよりもコンテナ直撃を狙う武器である。

 

 倉の蓋のひとつが開かれ、重々しい音を立てながら弾倉が空中へと射出される。そして、空中を飛翔する弾倉が失速しかけたときに、十二発のミサイルが一斉に発射された。

 

 

 

「棺桶……?」

 

 スパルタンの側面から接近しつつあった竜騎兵がそんなことを呟いた。そして、彼は『棺桶』から白い煙の尾を引いた十二本の『光の矢』を目撃した。そして、その内の一本がこちらへ向かって来ている。

 

 彼は「なかなかの追尾性能、だが回避できない速度でもない」と判断し、飛竜を断崖へと近寄らせた後、元の位置へと戻す。この追尾性能なら、断崖に衝突する筈だと思ったのだが……、『光の矢』は敵に当たらないと悟ると竜騎兵を道連れにすべく自爆する。

 

「ちょ……待てよ! どう避けろと言うんだ!」

 

、竜騎兵達は悲鳴を上げる暇もなく、次々と爆散し(ある)いは火達磨になって落ちていく。

 距離を取って逃げようとした者は見えない魔法弾によって撃ち落とされ、接近すると『光の矢』だ。戦意を失った彼らの眼前に、またひとつ弾倉が射出された。

 

 

 

 当初の予想通り、脅威にもならない戦力だった。初撃~殲滅まで二~三分といったところ。そもそも、彼らは接近した後でどうするつもりだったのだろうか。ACテンペストの装甲を破るどころか傷ひとつ付けられるわけがなかった。

 この戦闘で費やしたのは、弾倉三発とライフル六発である。残弾は弾倉一発、ライフル四十四発と射突ブレード二十発とEOであり、これで次の戦いを乗り越えなければならない。

 

「レイヴン、キサラギより通信が入ってます。施設内で飼育・研究していた生体兵器が暴走しているそうです。これを撃破して欲しいそうです」

「やはりそう来たか」

「背後の扉を入ってすぐの所に弾薬補給車を待機しているようです」

「たくっ……了解。レイヴン、スパルタン。追加ミッションを受諾する」

 

 まったく、用意の良いことで。

 

* * * * * *

 

エルベ藩王国 ホーイックロックス山中 キサラギ異界生物研究所

制御室

 

 大型モニターが置かれた室内に白衣の変態……いや、研究者達が集まり議論を交わしていた。

 

「最強のMT傭兵スパルタンか……やはりクレスト派だけあって実弾兵器が目につきますなぁ」

「ふふふ。実弾耐性に秀でた作品達をどう処理するのでしょうねぇ」

 

 気持ち悪い笑みを湛えた変態達が生体兵器のレポートに魅入っている。

 スパルタンが戦死した場合、彼らは施設内の生物兵器にどう対処するのだろうか。……というようなことを考えないのがキサラギがキサラギたる所以(ゆえん)である。

 

「そんなことより、彼女の様子はどうです? 楽しんでくれてますかね」

「ええ、始祖AMIDAと融合させたのがヨかったみたいです。卵嚢の生産効率が三倍増しですよ」

「ほう。それは行幸」

 

 モニターではなく、この部屋と接している強化ガラスの先には始祖AMIDA---ほぼB988A M-Type---が大量の卵嚢の中で蠢いている。その腹部には雌型竜人族のような器官が付いていた……。始祖AMIDAが暴走したら、強化ガラスの強度を上回っているのだが……やはり、そこを考えないのがキサラギである。

 

「それにしても、食い意地が張った娘ですなぁ」

「まさか、アンパンでホイホイ着いて来るとは……亜神とは皆このようなのでしょうかねぇ」

 

 研究員が言うように強引に攫ったのではなく、アンパンで餌付けして当人の了解のもとで施設へと招き入れたのである。施設へ入った後でされることについては了解していなかったに違いない。

 

「さあどうでしょうね。さて研究進捗についてですが、力の制御はまだまだで未解明な点が多く捗っていません」

「そこは追々で。我々はミラージュとクレストの潰し合いを眺めながら、ゆっくり研究するとしましょう」

「そうですな。(ゲート)が壊れても、こちらで研究すればいいだけですしな」




※独自設定:EOコアの残弾は収納したら回復

ゲート自衛隊とアーマードコアを混ぜたのに、「現代兵器に驚く中世風敵兵」というテンプレが盛り込まれていなかったので挿入した回です。

あとは、魔法兵VSアーマードコアをどうにか描写したいところ。
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