孤高のボーダー隊員観察記録   作:ベルトのつち

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第6話「そのまま続くはずもなく」

俺は走っていた。

正しくは逃げていた。

 

あの殺戮者から。

 

そして自分の無力さに苛立ちながら。

 

 

周りの人々がどんどん殺されていく。

名前も知らない何かに。

 

とりあえず無心で走った。

全て見ていては心が持たない。

 

一人一人のこれまでの人生が、そしてこれからの人生が奪われていく。

 

俺は無心で走った。

 

隣にいた母親はもういない。

妹は、泣きじゃくっていた。

 

俺は、どんな顔をしていただろう。

悲哀に満ちた顔か。それとも絶望か。

 

それとも。

 

〇━〇━〇━〇

 

 

もう12月。12月になったらいきなりクリスマスって顔するよね、日本。3ヶ月前に双葉に問われた俺の過去。全て包み隠さず答えてやった。

 

双葉はすごい顔をしていた。同情と怒りとほんの少しの何かが混じった顔。

可愛い顔が台無しだ。こんなクソみたいな話聞くべきじゃないのよ。うん。

問題はそれから毎日同じ夢を見ることだ。俺が近界民(ネイバー)に追われ、母親が死に、妹が泣く夢。ただし今日のは何か違った。いつものとは違う、違和感

学校は休もう。防衛任務のシフトにも入っていないし。

 

「お兄ちゃん、起きてるー?」

「あぁ、ご飯か?」

「うん、早く降りてきてね。」

 

これが夢の中で泣きじゃくっていた妹。鹿島 湊。今中2だったかな。自分の兄弟の年齢って覚えられなくね?早く下に行こう。怒られる。

 

よっこいせっと。

 

「「いただきます。」」

 

「ねね、お兄ちゃん。」

「ん?」

 

今日の朝食はご飯と味噌汁、鮭の塩焼き、ほうれん草のおひたし。湊とはローテーションを組んで朝、弁当、夜を当番制で分けている。といっても1日ごとなんだけど。

 

「私、ボーダーに入りたいんだけど。」

「それはお前、俺じゃなくて親父に言った方がいいんじゃないか?」

「それはそうなんだけど、とりあえずお兄ちゃんに言っとこうかなーとか思ったから。」

「別に俺は反対しないよ。命の危険はないし、ボーダーのトリガーも日々進歩してるからな。」

 

そう、進歩している。2年前以降ボーダーの隊員が死んだなんてのは聞いたことがない。

「ならいいんだけど…」

「父親の説得は骨が折れる、か?」

「うん、そうなの。だからちょっと手伝ってほしいなーとか!」

「断る。がんばれ。ごちそうさま。」

「ありが…え?断るの!?大切な妹のお願いだよ??」

「自分のことは自分でどうにかしな。俺今日学校休むから。」

「えええぇぇぇ。ちょっと待ってよ…」

 

はにかみながら答えた俺になにやら悲痛な叫びが聞こえるが別に問題ない。どうせどうにかするだろうし。

 

とりあえず俺は迅さんに電話しないと。今日みた夢の様子を伝えるために。倒置法になってんな。穂苅さんかよ。

夢の内容は毎回同じだが、場所と時間は毎度毎度バラバラだ。だからそれを伝えて、未来視と照らし合わせる。そうするとなにが起こるか、そして正確な場所、時間帯がわかる

 

prrrr、prrrr

 

『はいもしもしこちら実力派エリー…』

「あのさあ、迅さん。」

迅 悠一とはこういうどこかおちゃらけてはいるが、何かを掴んでいる人間だ。こんな性格じゃないと未来視のサイドエフェクトなんて使っていけないのだろう。

 

『なんだ?お前が俺に電話をかけてくるってことはなんかあったのか?』

「ここ数日の間に昔の弓手町駅の近くで何かある。」

『…ん。分かった。情報提供どうもありがとう。』

「そんじゃ。」

 

素っ気ない?そんなもんさ、男同士の電話なんて。そんなダラダラやっても気持ち悪いだけだ、らさて、俺も動き出すことにしよう。

 

今日はテンションが低い。ローテンションだ。ローテンションな俺は着替えて出かけることにする。でも夢の中では夕焼けてたから、何かあるとすれば午後からだな。

 

 

〇━〇━〇━〇

 

 

あんな夢見てテンションあげてけるほうがおかしいような気がするぜ!うん!!

はぁ。行くか。

 

旧弓手町駅周辺はもうすでに放棄されているため、誰もいない。静かである。ベンチに腰掛けながら考える。悪いことがあるときに見る夢はだいたい第一次侵攻の夢と、もう1つの夢を見る。

俺は夢の記憶力はあまりよろしくないため起きたらすぐにメモを取るようにしている。場所とか雰囲気とか事細かく。でも二度寝なんてした日には、ね。

しかもそーゆー時に限ってやばいことが起きたりする。勘は利くけど運が悪い。

 

うだうだ考えていると遠くから緊急警報が聞こえてきた。3時間近く座ってたのか?俺は。

 

「トリガー起動。」

 

多分俺の違和感の根源は今ゲートが開いたところにあるだろう。グラスホッパーとバッグワームを展開させつつ、超特急ひかり号で向かう。

なんじゃこら。ついて見てみるとこりゃぁたまげた。バムスターがバラバラに。誰か俺の前に隊員が来たのか?

「すっげーバッラバラじゃん。こりゃA級の誰かだろー。」

「陽介。」

「ん?健斗か。なんでここに?」

「嫌な予感がしたからな。おい三輪、誰か来た記録はあるか?」

「いや、俺たちの部隊が一番乗りだったはずだ。」

じゃあ一体誰がこれを…?

 

「三輪、回収班を呼べ。こいつのトリガーの反応を解析しよう。多分ボーダーのものじゃないのが出るはずだ。」

「ボーダーのじゃないのってなんだよ。」

「ボーダー以外のトリガーの反応…近界民(ネイバー)か。」

「多分。半分勘だけどな。」

「回収班は要請した。鹿島、お前はどうする?」

「本部に行くよ。お前らも防衛任務が終わり次第くるだろ?」

「ああ。わかった。」

 

じゃあ本部に行って何をするのか。玉狛へ転属するための転属願いを出すための本部へ行くためのグラスホッパー。

 

話が逸れたな。本部にいって玉狛への転属願いを貰って提出するってことだ。ただタイミングは調整しなきゃならないから、そこはどうにかしよう。

 

玉狛に転属するのはいいが…

 

どうするのが正解なんだろうか。

正解なんてないとか言うやつはあっちこっちにいる。それでも俺は、正解が欲しい。本部に向かいつつ考える。

このトリオンの感じからしておそらく空閑 有吾のものだろう。あの人が来ているのかどうかはわからないが、俺は…

 

 

 

 

…どうすればいい?

 

 

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