マインドイリュージョンの所が上手く書けずにずっと投稿出来ませんでした。
とにかく02本編編までは投稿できるよう頑張ります。
ヴェノムヴァンデモンの謎の攻撃を受けその場に立ち尽くす選ばれし子供達にそれぞれのパートナーデジモンが駆け寄る。
「ヒカリ! ヒカリ! 大丈夫か!? ……どうした? 返事をしてくれ!!」
「タイチ! タイチ!! 何があったんだ!! ――タイチ!」
ヴェノムヴァンデモンの攻撃をまともに受けながらも傷一つ見当たらない選ばれし子供達だったが、明らかに様子がおかしかった。
目は焦点があっておらず、ただ茫然と前を見ているだけで、どんなに体を揺すっても何の反応も無い。
まるで精巧な人形の様な存在になってしまった選ばれし子供達にパートナー達は怒りの表情をヴェノムヴァンデモンに向ける。
「ヴァンデモン……!! ヒカリ達に何をした!?」
「フッフッフ! さっき言った通りだ。ただそいつ等にとっての理想の世界を見せてやってるだけさ」
怒声を自身に向けるエンジェウーモンの姿に、ヴェノムヴァンデモンは心底楽しいと言わんばかりに返答する。
「理想の世界、だと?」
「そうさ! 人間という生き物は例外なく今の環境、自分自身に少なからず不満や悩みを持っている。
オレのマインドイリュージョンは、それらを引き出し理想の世界を過ごさせてやるという素晴らしい技さ!」
「戯言を! 偽りの世界に何の価値があると言うんだ!」
高らかに笑うヴェノムヴァンデモンの言葉をホーリーエンジェモンは否定する。
だがその言葉にヴェノムヴァンデモンは更に笑みを深めた。
「なら何故コイツ等はその偽りの世界から帰って来ないんだ?
オレのマインドイリュージョンはオマエの言う通り、偽り――幻の世界を対象に見せるだけの技だ。
掛かった奴がそれに気付き、拒む事さえ出来れば脱出するのはそう難しい事じゃない。
だと言うのにコイツ等は未だ幻に囚われたままだ。
それが意味するのは自分の理想の世界に飲み込まれたか、もしくは――――元の世界に戻りたくないとコイツ等自身が望んだからじゃないのか?」
「ヤマト達がそんな事を望む筈が無いだろ!」
「それを決めるのはオマエ達じゃない。ソイツ等自身だ。そうだろ?」
「……仮にタケル達が自分達だけで戻って来れないのならワタシ達が迎えに行くだけだ。――貴様を倒してな!」
ホーリーエンジェモンはそう告げるとタケル達に背を向け、右腕の剣をヴェノムヴァンデモンに向ける。
その姿にウォーグレイモン達も自身のパートナー達から視線を外し、再びヴェノムヴァンデモンに立ち向かっていった。
ヴェノムヴァンデモンのマインドイリュージョンを受けてしまった選ばれし子供達は夢の中に居た。
彼の作り出した世界は選ばれし子供達にとってまさに理想の世界だった。
八神太一は満員のスタジアムでプロサッカー選手として走り回り、
世界中の歓声を浴びながらゴールを決め、その姿を観客席からアグモンや仲間達が笑っている世界。
八神ヒカリは幼稚園の先生として子供達に囲まれながら、
テイルモンと共に自分達が経験した冒険の話を子供達とそれぞれのパートナーデジモンに話す世界。
火田伊織はアルマジモンと共に再開した亡き父にデジタルワールドを案内する世界。
それぞれが突如叶った理想の世界に僅かに違和感を覚えながらも
この世界はまさに理想の世界だと断言した。
――――だが、選ばれし子供達はその世界を否定した。
「この世界は理想の世界だ。だけど、本当の世界じゃない」
誰か一人がその答えに気が付くと、それに続くように一人、また一人とそれぞれの世界の違和感に気が付き、そしてそう確信する。
そして同時に思い出した。自分達が今どうしてこんな場所に居て、自分達のパートナーデジモンがどういう状況なのかという事を。
「――――戻らなくちゃ」
自分のパートナーが戦っているのにこんな世界に囚われている場合ではない。
――――例え戻っても、自分達に出来る事が無いかもしれないと理解しながらも彼等の考えは変わらない。
「アグモン達が戦ってるのに俺達がこんな所で道草している場合じゃない」
「俺達はアイツ等のパートナーだ」
「どんな状況だろうと最後まで諦めたりなんてしません!」
理想の世界という誘惑に打ち勝った選ばれし子供達の直ぐ近くの空間にひびが入り、
隙間から自分のパートナーがヴェノムヴァンデモンと戦っている姿が見えた。
未だ勝機が見えないヴェノムヴァンデモンの姿に一瞬恐怖を覚えながらも
殆どの選ばれし子供達はひび割れた空間に手を添えて理想の世界から脱出した。
「みんな! ……悪い、待たせたな」
「!! ――大丈夫。みんななら絶対帰ってきてくれるって信じてたから」
太一の方を振り返ることなくウォーグレイモンは答えながらもその口元を大きくニヤつかせると、気持ちを入れ直すべく咆哮を上げながら最前線へ飛び出す。
――それと同時にウォーグレイモンの体が一瞬だけ光――その力を高めた。
そんなウォーグレイモンの姿に太一はなんとも言えない表情を浮かべながら口元を緩ませると、今度はポケットからデジヴァイスを取り出した。
「ヴァンデモン……俺はもう揺らがない。折れかけた俺達を信じて待っていてくれたウォーグレイモン達の為にも。そして皮肉にもお前が見せてくれた俺の理想を叶える為にも。
――絶対にお前を倒す!!」
そう宣言するようにデジヴァイスをかざすと、先程のウォーグレイモンと同じ……それ以上の光が太一の内側から浮かび上がり、その光は二つの形へと変わる。
一つは――勇気の紋章。
そしてもう一つは、
かつて奇跡を起こした天使の矢――
強まった想いによって再現されたかつての力がウォーグレイモンの力を爆発的に高めた。
――――そしてその変化は勿論太一やウォーグレイモンだけでは無かった。
戻ってこれた選ばれし子供達も同じように新たな覚悟が形となって自分達のパートナーを強化した。
ヤマトはタイチと同じように紋章と天使の矢の力を再現し、
空、丈、光子郎、タケル、ヒカリの五人は紋章の力と、有り余る光でパートナーを飛躍的に高めた。
伊織は父のように強く、大きな存在になりたいという想いが形となり――ブラキモンが巨大化しその力を増大させた。
――そして空、丈、光子郎の3人が紋章を手にしたことで3体はかつての最終形態へと進化する。
「バードラモン進化――ガルダモン!」
「イッカクモン進化――ズドモン!」
「カブテリモン進化――アトラーカブテリモン!」
これまでに無い程の力を放つ2体の究極体と6体の完全体の集結にヴェノムヴァンデモンは忌々しさと苛立ちで体を震わせる。
「大人しくアノ世界に囚われていればいいものを」
計画通りに事が進まないことに苛立ちながらもヴェノムヴァンデモンはいまだ焦りの感情を見せることはなかった。